サイト訪問者は十分いるのに売り上げが伸びない場合、考えられる原因はいくつかあります。購入率が下がる原因を把握して対策を講じれば、収益が大きく改善する可能性があります。
この記事では、ECサイトの購入率を上げる方法を7つ紹介しています。それぞれのポイントを理解して実践し、サイト訪問者の購買を促せるような魅力的なサイトを作りましょう。
ECサイトの購入率とは?
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ECサイトの購入率とは、ECサイトを訪れたユーザーのなかで、実際に商品を購入した人の割合を指します。CVR(コンバージョン率)や買上率、転換率とも呼ばれます。
購入率は、商品が売れているかを把握するために使われ、業績や顧客サービスを客観的に評価するのに重要な指標の一つです。たとえば、サイトの訪問者数が上がったにもかかわらず、購入率が下がっている場合は、顧客サービスに課題がある可能性が考えられます。
また、売り上げを伸ばすためには、基本的に購入率を改善しなければなりません。ユーザーのニーズに合った商品を提供できているか、価格設定は適正かなどを見直す必要があるでしょう。
ECサイトの購入率を上げるためにできる7つの方法
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1. サイト設計を見直す
ECサイトの購入率を上げるためには、ユーザーが必要な商品を簡単に見つけられて、商品をスムーズに購入できるような動線を整えることが重要です。
商品ページにスムーズにアクセスできないと、サイトからの離脱につながり、購入率が低下してしまいます。サイト設計を見直す際は、以下の点を確認しましょう。
- 商品のカテゴリー設定は適切か:初めてサイトを訪れるユーザーにもわかりやすいカテゴリー分けにする。
- ヘッダーのナビゲーションメニューは使いやすいか:商品ページ、Aboutページ、問い合わせやよくある質問など重要なページに簡単に移動できるようにする。
- 購買行動を促すキャッチコピーがあるか:簡潔で印象に残るようなコピーを作る。
- CTA(コール・トゥ・アクション)の位置やデザインの視認性は十分か:顧客の行動を促すCTAを、わかりやすくクリックしやすい大きさや配置にする。
- サイト全体の文字情報が多すぎないか:重要な情報が埋もれないよう、文字情報と画像やグラフィックのバランスを整える。
- スマートフォンからも見やすいデザインか:モバイル専用レイアウトやレスポンシブデザインを採用する。
- ページの読み込み速度は適切か:使用する画像をウェブサイトに適切なサイズにするなどして、読み込み速度が遅くならないようにする。
簡潔に必要な情報を伝えられるように、すっきりとしたサイトデザインを意識しましょう。
2. ペルソナ設定と消費行動の分析を行う
ペルソナとは、実際の顧客データをもとに作成された架空の人物像を指します。ペルソナ設定を行い顧客の行動を分析することで、ECサイト購入率改善のための施策の確度を上げられます。サイト訪問者の行動を分析する際は、以下の点を注視してみましょう。
- 商品をカゴに入れているか確認する:GoogleアナリティクスやShopifyストア分析を使って顧客が商品を購入しようとしているかどうかを調べる。カートに進む人自体が少ない場合は、商品や商品説明、価格などを見直す。
- サイト内での行動を分析する:ページの滞在時間やクリック率などを分析することで、ユーザーが簡単に商品を見つけられているか、必要な情報にすぐにたどり着けているかなどを理解し、改善する。
- カスタマージャーニーマップを活用する:カスタマージャーニーマップも併用し、顧客の視点から購買行動を分析して課題を特定する。
- ファネル分析を行う:定量(データ分析アナリティクスなど)・定性(アンケートやインタビューなど)の両方の調査方法を用い、サイト訪問から商品購入までの各段階で、どこでユーザーが離脱しているかを特定する。
3. 決済方法や送料を見直し、明確に記載する
決済方法や送料は購入率に大きく影響します。まずは、顧客が希望する決済方法があるか、送料は適切かなどを見直しましょう。どのような決済方法が使えるのか、発送予定日や配送日数などを明確に伝えることも大切です。
- 配送ポリシーや返品ポリシーを商品ページや決済画面など複数箇所に記載し、ユーザーの見落としを減らす。
- 決済代行サービスを利用して多様な決済方法に対応し、購入を断念するユーザーを減らす。
- Shop Payのようなワンクリック購入ツールを導入する。
- 送料無料キャンペーンを検討する。
4. 商品ページの情報を充実させる
ECサイトは実店舗のように商品を手にとって観察できず店員による接客もない分、サイト訪問者が自分で必要な情報を確認し、使用感などもイメージできるようにする必要があります。
商品ページの情報を充実させるポイントには以下のようなものがあります。
- 商品の色やサイズ、機能などの基本情報と画像に加え、動画も掲載する。
- アパレルショップであれば、身長ごとの洋服の丈感を掲載する。
- 商品写真のクオリティを上げ、必要に応じて画像編集ソフトで調整する。
- ペルソナをイメージして商品説明を書く。商品情報は簡潔にわかりやすい文章で記載する。
5. 購入フォームの項目を見直す
購入フォームの入力項目が多すぎると、ユーザーが手間に感じて途中で離脱してしまいます。最低限の記載で済むようにしましょう。
一般的に、以下の情報があれば問題なく商品を届けられます。
- 氏名
- メールアドレス
- 住所
- 決済情報
また、入力項目ごとに、エラーメッセージを表示させるシステムを取り入れるのも効果的です。決済に進む際に、入力ミスをしている項目がすぐに伝わるため、ユーザーが迷うことなく修正を進められます。
そのほかに、ゲストユーザーが購入できるプロセスを整えるという方策もあります。会員登録を手間に感じるユーザーの機会損失を減らし、購入率の向上につなげられるでしょう。
6. サイトの信頼性を向上させる
ECサイトの購入率を上げるためには、安心して購入してもらえるようネットショップの信頼性を高める必要があります。信頼できるショップであることを示すには、以下のような方法があります。
- 誤字、脱字や言葉の誤用をなくす:不自然な日本語や誤字脱字、誤用が多いサイトは顧客に不信感を抱かせるため、しっかりと校正する。
- カスタマーサポートを提供する:問い合わせフォームなどを用意し、疑問や問題が生じた際に顧客がサポートを受けやすい体制を整える。
- SNSマーケティングでサイトの認知度を上げる:顧客がよく使うプラットフォームで顧客と交流し、質問に回答したり問題を解決したりすることで、ブランド認知度を上げて安心感を与える。
- 口コミやレビューを掲載する:当事者よりも第三者の口コミや評価に信頼性を感じるという「ウィンザー効果」を利用する。
口コミを記載してくれたことに対する謝礼として、割引やクーポン、ポイントなどの特典を用意すれば、より多くのユーザーの評価を集められます。
7. リターゲティング広告やカゴ落ちメールを活用する
ECサイトの購入率を上げるには、新規顧客を獲得して購入してもらうよりも、すでにサイトを訪問したことのある人や購入の一歩手前まで行った人に購買を促す方が効率的です。以下の対策を行ってみましょう。
- リターゲティングを行う:サイトを訪問したことのある人をターゲットにWeb広告を出す。
- カゴ落ちメールを送る:商品をカートに追加したままで購入に至っていない顧客にメールを送り、サイトへの再訪と商品の購入を促す。
Shopifyの場合は、メール機能とShopifyアプリを活用することでカゴ落ちメールを複数回送ることが可能です。実際にカゴ落ちメールをクリックした人の約半数は購入に至ると言われるため、ぜひカゴ落ちメールで本来得られるはずだった収益を得られるようにしましょう。
購入率の計算方法
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購入率は以下の計算式で求められます。
- 購入率(%)= 購入者数 ÷ 訪問者数 × 100
たとえば、100人のユーザーがECサイトを訪れて10人が商品を購入した場合の購入率の出し方は以下のとおりです。
- 10人(購入者数)÷ 100人(訪問者数)× 100 = 10%
企業やブランドによっては、購入件数から購入率を求めるケースもあります。
購入率を計算することで、売り上げだけでは気づけない課題や問題を分析できます。売り上げが伸びていたとしても、購入率が下がっている事態も起こり得るため、定期的に確認しましょう。
ECサイトのコンバージョン率の目安
ECサイトのコンバージョン率の目安は、1〜3%程度です。ただし、ジャンルや季節によっても購入率は変化します。
IRP Commerseの調査(英語)によると、2024年1月〜2024年12月のジャンルごとの平均コンバージョン率は以下のとおりです。
- ファッション・アクセサリー:1.2〜1.9%
- 食品:0.8〜1.8%
- 家電製品:2.9〜3.5%
- ベビー用品:0.5〜1.2%
- ペット用品:1.6〜2.8%
一年を通して比較的安定した購入率になっているのは家電製品です。ファッション・アクセサリーやペット用品は冬にかけて購入率が上昇する傾向にあります。また、食品も11月や12月は購入率が上がるのが特徴です。
小売店の購入率の平均
小売店の平均的な購入率は2〜30%程度です。一般的に、高級店の購入率は低く、消耗品などを扱う比較的安価な価格帯の小売店は高い数値が出る傾向にあります。
購入率が1%上昇するだけで数億円単位の利益につながる場合もあるため、購入率をもとに、顧客サービスや商品の仕入れなどを見直すのが重要です。
ECサイトの購入率が低い時に考えられる主な原因
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1. サイトが使いにくい
サイトが使いにくいとページの離脱につながってしまうため、購入率が下がってしまいます。おしゃれなデザインばかりを優先せず、ユーザーの使いやすさや購入までの動線を重視することで、購入率の上昇につなげられるでしょう。
2. 商品がニーズに合っていない
サイトを訪れるユーザーのニーズに合う商品を扱っていなければ、訪問者数が増えても購入率は上がりません。流行や季節によって変化するトレンドも意識して、商品の仕入れをしましょう。
また、ニーズに合っているだけでなく、サイズや色、性能などを比較できるように複数の商品を用意するのも重要です。ほかの商品と比較して、より良い商品を購入したい人は少なくありません。比較できる商品がないとサイトから離脱されてしまう原因にもなるので、バリエーションも増やしましょう。
あるいは、ニッチ市場をターゲットにした商品を扱うという方法もあります。ニッチな商品は競合サイトが少なく、消費者も購買意欲が高い傾向にあるため、購入率が上がりやすくなります。
3. 競合よりも価格が高い
競合するサイトよりも価格や送料が高いと購入率が低下してしまいます。
特に、送料が高い場合、商品が安くてもトータルコストで高額だと判断されてしまうことがあります。競合サイトが送料無料を提示していれば、そちらで購入されてしまう可能性もあるでしょう。競合と比較して、価格設定や送料を見直せないか確認しましょう。
ただし、商品の価格が高い場合でも、商品情報や口コミから質のよさが伝われば、購入につながることがあります。利益率を下げないように慎重に検討しましょう。
4. セキュリティに不安を感じる
サイトのセキュリティ対策が不十分だと、ユーザーが決済情報や個人情報の入力に不安を感じるため、購入率が上がりません。セキュリティ対策を十分に実施するのはもちろんのこと、安全性や個人情報の扱いについて明記し、サイト訪問者にしっかりと伝わるようにしましょう。特定商取引法に基づく表記や返品ポリシーなどを明記することも大切です。
また、サイト内で大げさな表現が使われていないかどうかも確認しましょう。過剰な表現や度を超えた自賛は顧客からの信頼の低下につながります。読み手が納得する適切な言い回しで表現できているかどうかという点にも注意すると良いでしょう。
5. 適切なマーケティングを行っていない
適切なマーケティングを行っていないと、せっかくサイトを訪問してもらっても購買に至らずに終わってしまいます。商品・価格・流通・プロモーションというマーケティングの4Pを意識して、適切なマーケティング戦略を練りましょう。
たとえば、サイトや商品の信頼性を高めて購買の不安をなくすには、SNSでのUGCの活用やインフルエンサーマーケティングが効果的です。メールマーケティングや、有料広告なども活用し、ターゲットを絞ってマーケティングを行うのも有効です。
まとめ
ECサイトの購入率を上げるには、スムーズに商品を購入できるようなサイト設計や重要な情報の明記、マーケティングが重要です。
商品検索がしにくかったり、ページの読み込み速度が遅かったりすると、サイトからの離脱につながります。また、購入フォームの項目は、ユーザーの負担にならないよう最低限の内容にとどめましょう。商品の口コミやレビューの掲載も有効です。顧客の生の声を掲載しているサイトは信頼を得やすく、購入の不安を払拭することができます。
ECサイトの購入率に悩んでいる人は、自分のサイトがユーザーにとって使いやすいサイトになっているか、この記事を参考に見直してみてください。
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よくある質問
購入率と購買率の違いは?
購入率と購入率に違いはありません。どちらもECサイトや小売店を訪れた顧客が商品を購入した割合を示します。
購入率は英語で何という?
購入率は英語に直訳すると「purchase rate」といいます。しかし、一般的には「conversion rate(獲得率)」と表現する場合がほとんどです。
カゴ落ちが起きる理由は?
カゴ落ちが起きる主な理由は、以下のとおりです。
- ウェブサイトが信頼できない
- アカウント作成が必要
- 合計金額が思ったより高い
- 使いたい決算手段がない
- 配送が遅い
- 購入完了までのプロセスが長い
- 返信ポリシーに納得がいかない
イラスト:Rose Wong 文:Ryutaro Yamauchi