EC事業者にとって、顧客の行動や評価はショップ運営においてとても大切な指標となります。Googleアナリティクスなどを使うことで、顧客の行動などについての洞察を得ることはできますが、重要な要因である「信頼性」を完全に理解するのはなかなか難しいでしょう。
初めて訪れるネットショップを利用するときや新商品を購入する際、顧客の信頼はどのように構築されていくのでしょうか?Shopifyが行った調査では、ネットショップでの購買体験における信頼性構築の要因が明らかになりました。
この記事では、顧客の信頼を育む要因と、逆に信頼を損なう要因について、具体的な事例とともに解説していきます。ネットショップを開業したい人、ECサイトの集客に悩んでいる人は、ぜひこの記事を読んで信頼できるネットショップ構築に役立ててください。
ネットショップの信頼性を高める要因
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Shopifyは、ネットショップでの購買行動について継続的な調査を行っています。その一環として、ネットショップへの信頼がどのように築かれていくのか調べるため、北米の多様な購買層に対し、初めて購入する商品、もしくは初めて利用するショップでの最近の購買体験について詳しくインタビューを行いました。さらに、これまで利用したことのないShopifyのショップで実際に商品を40ドル以下で購入してもらい、その購買行動を分析しました。
この調査では具体的に、以下の点について理解を深めることを目指しました。
- 初めて購入する商品や初めて利用するショップで購入する際、購入者の信頼はどのように形成されるのか
- ショップのどのページや要素が顧客の信頼を得るうえで最も重要なのか
顧客の購買行動を分析して見つかったいくつかのパターンから、ネットショップの「信頼を高める要因」と「信頼を損なう要因」となるサイトのデザイン要素を特定することができました。
顧客の信頼を高める要因とは、購入者の疑問が解消され、安心して購入できるようなサイトのデザイン要素のことです。一方、信頼を損なう要因は、購入者にそのショップやビジネスの正当性について疑問を抱かせ、購入が安全な選択かどうか不安を感じさせるものです。
ネットショップの信頼性を高める要素5つ
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Shopifyの調査で、ネットショップで顧客の信頼を獲得し高めるために不可欠な手段が5つあることが明らかになりました。
1.ポジティブな第一印象を与えるホームページをつくる
🔍 顧客の視点:このネットショップは安全か?探しているものが見つかるだろうか?ECサイトは使いやすいか?
🎯 ビジネス目標:初めて訪れたときに、ショップ全体の雰囲気がわかる、親しみやすいホームページを作成する。
Shopifyの調査から、商品の知識レベルに関係なく、初めてのネットショップを訪れる多くの人がそのデザインやレイアウトを厳しくチェックすることが明らかになりました。
ホームページはデジタル版のエントランスのような役割を果たします。そのため、好感度の高いデザインとスムーズに買い物できる直感的な動線づくりが欠かせません。顧客がホームページを評価する際に見ている「必須要素」と、ネットショップへの評価がさらに高まる「あると良い追加の要素」は以下のとおりです。
必須要素
- ネットショップ全体で一貫性のある、洗練されたコンテンツと高品質な画像や誤字脱字などのないテキスト
- シンプルで見やすい整ったレイアウトやカテゴリー別のナビゲーション
- どのデバイスからでも使いやすいレスポンシブデザイン
あると良い追加要素
- わかりやすいカテゴリー名(例:ショップ、レディース、メンズ、About、お問い合わせ)
- 海外向け販売の場合には、顧客の現地言語に翻訳され、価格が現地通貨で表示されていること
- ショップ全体のページの読み込み速度が速く、エラーがないこと
実例:顧客を惹きつけるHat Clubのホームページ
スポーツキャップを販売するHat Club(ハットクラブ)の強みは会員向け割引プログラム「Hat Club Membership(ハットクラブメンバーシップ)」です。このロイヤリティプログラムを通じて顧客との信頼関係を築きつつ、関係を強化して長期的なリピート販売を目指しています。そのために顧客をトップページから会員プログラム登録や商品ページへと自然に誘導し、会員特典の価値を効果的に伝える工夫がされています。
ネットショップの信頼性を高める優れた工夫
- 顧客が購入へと至りやすい、わかりやすいレイアウトとシンプルなナビゲーションの提供
- 大きくわかりやすいロイヤリティプログラムページ
- 「Drops」ページで新商品や限定アイテムのリリース情報を提供し、バレンタインや桜などシーズンに合わせたものやユニークなオファーを展開
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2.顧客に必要な情報を提供する
🔍 顧客の視点:この商品は自分のニーズに合うか?品質は良いか?サイズや寸法は合うか?価格は妥当で予算内か?探しているものが見つかるか?ECサイトは使いやすいか?
🎯 ビジネス目標:検索で目的の商品がすぐに見つかる、商品詳細ページやコレクションページで顧客がほしい商品情報がすぐに見つかる。
新規顧客はほとんどの場合、ホームページのすぐ後に商品ページを訪れます。使いやすく正確な検索機能があると、顧客は目的の商品をすぐに見つけることができるため、購買意欲を保ったまま商品ページを見ることができます。商品ページでは、商品画像、商品説明、サイズ表、在庫状況、送料、税金など、顧客が重視する情報をわかりやすく配置することで、購買促進につながります。
商品ページのデザインに絶対的な正解はありませんが、信頼性を構築するための重要な要素は業界を超えて共通しています。調査でわかった、ネットショップの信頼性を築くために必要な商品ページの要素は以下のようになっています。
必須要素
あると良い追加要素
実例:知りたい情報がすべて見つかるEM Cosmeticsの商品ページ
EM Cosmetics(エムコスメティクス)は、商品写真や詳細情報に加えて商品レビューも商品ページに掲載することで、説得力のあるソーシャルプルーフ(社会的証明)を構築しています。一目でほしい情報がどこにあるかわかるレイアウトや容量の単位表記など、知りたい情報がすべてわかるという「信頼を高める要素」をしっかりとおさえています。レビューでは顧客は第三者の等身大の体験を知ることができ、同時にブランドへの信頼感も高まります。批評にオープンな姿勢も、ネットショップの信頼性向上に貢献しています。
ネットショップの信頼性を高める優れた工夫
- レイアウトが明確で簡潔、セクションと見出しにより情報を整理
- 製品の容量をミリリットルと液量オンスの両方で表示
- 顧客レビューの数と現在の評価をページの上部にわかりやすく提示
- 在庫切れの商品ページでは、商品再入荷時のメールアラート登録オプションを用意
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3.起業のきっかけや独自のストーリーを伝える
🔍 顧客の視点:このネットショップで安全に取引ができるか?ショップは誰に対しても平等かつ公正に対応しているか?
🎯 ビジネス目標:顧客の不安を解消し、正当なネットショップであることを感じさせるために、起業したきっかけをブランドストーリーとして共有する。
Shopifyの調査で、顧客はAboutページを通じてネットショップの信頼性と価値観を評価していることが明らかになりました。Aboutページを訪れる人たちの中には、ショップが正規のものであるかどうかを疑っている人や、自分と同じ価値観を共有できているかどうかチェックしている人もいます。そういった人たちには以下のような要素を提供する必要があります。
必須要素
- ブランドの理念や目標を伝えるAboutページ
- 特定商取引法に基づく表記
- お問い合わせページ
- 詳細なブランドストーリー
あると良い追加要素
- ネットショップと同じドメインを使用したメールアドレス
- オンラインチャット(お問い合わせサポートサービスの一環として)
実例:Teaseの共感を呼ぶ「About+」ページ
Tease(ティーズ)は、持続可能な方法で調達したリーフティーを専門とするブランドです。商品販売にとどまらず、Charitea(チャリティ)プログラムを通じて女性を支援するなど、明確な社会的使命を持っています。このことが「About +」ページで効果的に伝えられ、ブランドの誠実さを示しています。ブランドの理念や価値観をしっかりと伝えることが、顧客との信頼関係を築く重要な要因となっています。
ネットショップの信頼性を高める優れた工夫
- 環境への強いコミットメントを明確に提示
- 創業者の個人的なストーリーを通じてブランドに対する親近感を生み出す
- 売り上げの一部を女性起業家の支援に充てる社会貢献活動を強調し、ブランドの社会的価値を訴求
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実例:信頼関係を築くKotnのお問い合わせページ
Kotn(コットン)はカナダを拠点とするエシカル(倫理的)でサステナブルなファッションブランドです。エジプト産エジプト綿を100%使用し、高品質なベーシックアイテムをネットショップと小売店で販売しています。お問い合わせページでは、顧客が連絡しやすい環境を整え、週7日体制で24時間以内に返信することを明記し、迅速かつ丁寧なカスタマーサポートを提供することでネットショップの信頼性を高めています。
ネットショップの信頼性を高める優れた工夫
- カスタマーサポートチームが24時間以内に返信するメールアドレスを掲載
- オンラインチャットサポートを提供
- ソーシャルメディアのリンクを提供
- 小売店と直接連絡が取れるメールアドレスと電話番号を掲載
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4.顧客満足度を示す
🔍 顧客の視点:商品説明に誤りはないか?どの顧客にも公平に対応しているか?他の顧客のリアルな評価は?
🎯 ビジネス目標:客観的な情報提供、透明性の確保、コミュニティの声への誠実な対応を行う。
顧客は新しいネットショップで購入を考えるとき、まず商品ページや外部ECサイト、さらにSNSで利用者の声やショップへの評価を確認することが多くあります。例えば、Instagramのフォロワー数といいねの数も信頼性を判断する指標の一つになっています。また、既存の顧客からの否定的な意見や、ネットショップの情報と食い違うレビューにも敏感です。ショップは、コミュニティの評判が商品購入の決定に大きな影響を与えることを理解し、顧客の声をしっかりと受け止め、サービスや商品の向上に活かすことが求められます。フィードバックへの対応の姿勢が、ネットショップの信頼性を大きく左右するのです。
必須要素
- 70%以上の高評価な商品レビュー
- SNSに投稿されたポジティブな内容の商品レビュー(例:InstagramやYouTubeなどでシェアされたレビューなど)
- 商品の品質や顧客体験について具体的に記述されたレビュー
- InstagramやFacebookなどのプラットフォームでのフォロワー数
あると良い追加要素
- 写真や動画付きの商品レビュー
- 衣類、アクセサリー、健康・美容に関する商品レビューで、レビュアー自身の説明が含まれているもの(これにより、購入者がレビューに共感しやすくなる)
- 目立つ場所に掲載したネットショップのSNSアカウントへのリンク
実例:カスタマーレビューで信頼性を高めるEM Cosmetics
EM Cosmeticsは、カスタマーレビューを活用して信頼性を高めることに成功しています。特に注目すべきは、購入した製品の写真やその使い方、効果、感想などの具体的な情報の投稿を積極的に呼びかけている点です。このような透明性の高い取り組みは、時として厳しい意見にさらされるリスクもありますが、「私も同じように思った」と共感を生み、ネットショップの信頼性向上につながっています。
ネットショップの信頼性を高める優れた工夫
- 実際の使用写真(他の顧客が共感しやすく、購入の参考になる)
- 一目でわかる5つ星評価
- 利用者による商品説明の掲載
- レビュー投稿者自身の特徴(肌質など)
- 「em cosmetics review」を検索すると商品レビュー動画や人気サイトでの評価記事など、公式サイト以外の情報源からも商品の評価を確認できる
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5.取引の透明性と簡易性を確保する
🔍 顧客の視点:配送料、税金、関税はいくらか?馴染みのある安全な支払いオプションはあるか?きちんと機能しているか?
🎯 ビジネス目標:配送費や支払い手数料を計算する際、顧客が抱いている疑問やリスク要因を払拭する。
高画質の画像や説得力のある宣伝文句は商品価値を伝えるためには効果的ですが、顧客は商品が「価格に見合った価値のあるものか?」どうかを見極めるため、できる限り早い段階で割引や手数料をすべて含めた最終的な支払い額を知りたいと思っています。送料や手数料などの追加費用を明確に表示し、顧客が安心して購入を決定できる環境を整えることが、ネットショップの信頼性を高めるうえでの基本です。
必須要素
あると良い追加要素
- 明確な配送料金の表示
- カート内で割引コードを適用できる機能
- PayPal(ペイパル)やShop Pay(ショップペイ)などの信頼性のある決済方法
- 注文状況の追跡機能
- 注文確認ページで次回購入特典やディスカウントの案内
- 言語と通貨の切り替え機能(海外向けネットショップの場合)
実例:L.L. Beanの透明性とスムーズな購買体験
アウトドアアパレルのL.L. Bean(エルエルビーン)では、顧客が安心して購入できるよう返品ポリシーや保証内容を明確に提示しています。特に「100%満足」保証は、顧客が製品に満足できない場合、いつでも返品や交換が可能であることを示しており、顧客の信頼性を築く重要な要素となっています。
送料は、5,000円以上の注文で送料無料となるため、コストの透明性が確保されています。このような送料設定は顧客にとって予算を立てやすくし、購入意欲を高める要因となります。また、全国一律の送料は、地域による不公平感を排除し、すべての顧客に平等なサービスを提供することに寄与しています。
L.L. Beanでは、すべての支払い方法において厳重なセキュリティ対策が施されています。顧客の個人情報や支払い情報は、最新の暗号化技術を用いて安全に管理されており、安心して取引を行うことができます。特に、クレジットカード情報は決済代行サービスによって処理され、L.L. Bean自体では保持されないため、顧客のプライバシーが守られています。このような取り組みは、顧客の信頼性を高め、リピーターを増やす要因となっています。
ネットショップの信頼性を高める優れた工夫
- 配送状況や返品ポリシーなど詳しい情報を提示する
- チェックアウトページの上部に、信頼性の高い決済プロバイダーを示す
- 発注を完了する前に、割引や手数料などの内訳を記した合計金額を明記する
- 税込み金額であることを明確に伝える(海外発送の場合)
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まとめ
売り上げも大きく左右する「信頼性」は、どんなビジネスであっても最善を尽くして確保する必要のある大切なものです。特にネットショップでは販売者の顔が見えにくいため、顧客はショップの信頼性を厳しく評価します。
信頼性の構築は一朝一夕にはいきませんが、Shopifyの調査で判明した信頼性を高める要因などを理解し、実績のある手法を取り入れることで、顧客との信頼関係が構築されます。その結果、継続的な利用やレビューによる潜在顧客の獲得などにもつながり、ネットショップも大きく成長できるでしょう。
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ネットショップの信頼性に関するよくある質問
ネットショップの信頼性を高めるには?
- ポジティブな第一印象を与えるホームページをつくる
- 顧客に必要な情報を提供する
- 起業のきっかけや独自のストーリーを伝える
- 顧客満足度を示す
- 取引の透明性と簡易性を確保する
顧客レビューが大切なのはなぜ?
顧客レビューが大切なのは、商品が説明通りであるか、企業が顧客を公正に扱っているかを示す客観的な証拠となるからです。
国内のネットショッピングを利用する人の割合は?
総務省の調査(2025年インターネットショッピングの利用状況に関する調査)によると、国内のネットショッピングの個人利用率は全年代平均で7割を超えています。特に若い年代は、商品の安さや豊富な品揃えを求めてネットショッピングを利用する人が多く、シニア層は実店舗で商品を購入する時間や労力を省くためにネットショッピングを利用する人が多いことがわかっています。
文:Asami Miyamoto