商品の配達スピードは、EC事業で成功するための最も重要な要素のひとつです。商品を購入者の元へ、なるべく早く、効率的に、遅延なく届けることができれば、顧客の信頼を得ることができます。しかし、商品の配達スピードを最適化することは、決して簡単なことではありません。どのサービスを利用すればいいのか、どうすれば納期を確実に守れるのか、悩む人も少なくはないでしょう。
この記事では、配達スピードがビジネスに与える影響を解説し、配達スピードを最適化する方法を紹介します。
発送予定日とは
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発送予定日とは、商品が倉庫や店舗から出荷される日のことです。発送予定日は、次の要素によって決まります。
- 在庫状況:在庫があり発送が可能か、取り寄せが必要か
- 注文処理時間:注文が確定してから、ピッキング、流通加工、梱包、出荷の作業にどのくらいかかるか
- 営業日:注文が確定してから、稼働日は何日あるか。土日祝日をはさむ場合、対応をするか
ネットショップなどの通信販売においては、特定商取引法により、商品の発送予定日を明記することが義務付けられています。発送予定日が曖昧だと、商品が魅力的でも、カゴ落ちにつながってしまうおそれがあります。商品ページやカートで発送予定日を提示し、購入者に明確なスケジュールを伝えましょう。
発送予定日は、一般的には「注文後3営業日以内に発送」「12時までの注文は翌日発送」というように、注文からの期間で表記されます。
配送予定日とは
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配送予定日とは、発送された商品が顧客の手元に到着する日を指します。発送予定日はショップ側である程度コントロールできますが、配送予定日は選択した配送方法や配送業者のスケジュールに依存します。
配送予定日は以下の要素によって決まります。
- 配送オプション:通常配送か速達か。複数商品の場合、まとめて配送かなど。
- 配送業者の稼働状況:混雑期や天候による遅延がないか
- 配送距離:国内配送か、海外配送か。国内の場合、地域はどこか。
実際に商品が手に届く日がいつになるかは、消費者にとっても購入を決定する重要なポイントになります。
配達スピードを顧客に明示するメリット
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ブランドの信用が向上する
配達スピードを明示することは、ブランドの信用の向上にもつながります。
商品の注文から到着までのEC物流のプロセスと、それにかかる期間を、顧客に把握してもらえる状態にしておきましょう。商品が、注文されたあと何日後に発送され、発送予定日から何日で届くか、購入前に配送の流れを顧客に示すことができれば、顧客は安心して購入を完了することができます。また、提示した流れ通りに配達を完了できれば、ブランドの信頼性も向上します。
配送については、次を明確にしておくことが重要です。
- 発送までにかかる期間
- 配送にかかる期間
- 送料
配送ポリシーのページや、商品ページ、チェックアウトページなどで、これら3つの要素が確実に分かるようにしておきましょう。
カゴ落ち防止
配送費用や配達予定日を明確に表示することで、カゴ落ちを防止し、購入完了率を向上させることができます。
たとえば、チョコレートを販売している信州ショコラトリーGAKU(ガク)は、バレンタインが近づく二月上旬に、到着日に対する注文の締め切りを明記した表を提示しています。
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配達予定日は購入を決定する重要な要素です。特に、ギフトでは配達が間に合うかどうかが購入の決め手になることがあります。GAKUでは、配達予定日が明確に表示されているため、顧客は安心して商品を選んでカートに進むことができます。
また、酒ガチャの販売で有名なKURAND(クランド)では、各商品の送料については、配送ポリシーのページやカート内で示しつつも、送料無料商品をまとめたページをつくるという工夫を行っています。
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KURANDの送料無料商品は定期的に入れ替わります。「余計な配送料がかかるのではないか」という顧客の不安を払拭すると同時に、売り出したい商品に対して注目を集めることに成功しています。
カスタマーサービスと顧客体験の向上
昨今では、顧客が配送状況をすぐに確認できることが求められています。特に、配送の遅延や盗難の不安、サプライズギフトの演出といった理由から、配送状況の確認は重要視されています。
たとえば、Shopify(ショッピファイ)のアプリであるShop(ショップ)には、顧客が購入後の配送状況をリアルタイムで確認できる配送追跡システムが導入されています。
配達スピードが明確になり、さらに配送追跡システムが組み合わさると、顧客体験が向上します。また、配送状況に関する疑問も、ほとんどが解決されるようになるため、問い合わせが減り、カスタマーサポート業務の負担が軽減します。
安定した配達スピードを実現するには
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安定した配達スピードを実現するためには、注文処理のスピード、商品を保管・発送する拠点の位置、季節的なピークや天候の影響など、複数の要素を同時に考慮する必要があります。それぞれの要素を理解し、自分のブランドにあった配送戦略を選ぶことで、安定した配達スピードが実現できます。安定した配送を実現することができれば、顧客の満足度が向上し、リピーターの獲得にもつながります。
適切な配送オプションを設定する
配送方法を設定する際は、まず自社の現状を把握することからはじめましょう。チームの規模、倉庫のオペレーション、1日の平均注文数などを考えた上で、適切な配送オプションを作成することが重要です。
たとえば、おもちゃブランドがクリスマスシーズンに翌日配送を導入するのは有益な配送オプションのように思えますが、少人数のチームでは処理が追いつかず、ミスが増えるリスクがあります。
また、扱う商品や業界によっては繁忙期と閑散期があるため、一年を通して同じように発送することが難しい場合もあります。自社と顧客にあわせた配送オプションをつくり、時期にあわせた配送計画を立てましょう。
たとえば、商品を届けるまでにかかる時間によって、次のような配送オプションを設定することができます。
- エコノミー(5~7営業日):送料を抑えたい顧客や、大量注文向けのオプション
- スタンダード(3~4営業日):標準的な配送オプション
- エクスプレス(1~2営業日):追加料金をとり、急ぎの顧客に対応するオプション
- 即日配送(特定地域のみ):倉庫から近い場所など、特定の地域のみに即日で配送するオプション
Shopifyの配送ツールでできる設定
- 配送プロファイルを設定し、特定の地域や商品ごとに異なる配送オプションを設定する(例:衣類とアクセサリーで別の配送オプションを適用する)
- ストアに連携したアプリや配送業者によって送料が計算済みの場合、顧客がチェックアウト時に配送料を確認できるようにする
- 注文金額、重量、配送先などに応じて条件をつけた送料を適用する(例:家具の注文が1万円未満なら送料1,500円、3万円以上なら送料無料)
- 近隣に直接配達するローカルデリバリーや、店舗手渡しを設定する
注文処理時間を短縮する
配達スピードを向上させるには、注文フルフィルメントの最初のステップである、注文処理のスピードを向上させることが必要です。注文を受けてから発送までの業務で、効率化できる部分は効率化し、自社のビジネスモデルに適した仕組みをつくっていきましょう。
たとえば、次のような方法が考えられます。
- 締め切り時間の設定:「14時以降の注文は翌営業日に処理する」など明確なルールを設定する
- 作業環境の整備:注文の種類ごとに作業エリアを分け、通常配送と速達を分離する、動線を整えるなど、動きやすい作業環境を確保する
- 自動化の導入:注文リストの自動生成、優先度ごとの仕分け、ラベルの一括印刷などの機能を活用する
- 在庫管理の効率化:在庫管理システムを利用し、在庫切れを防ぎながらリアルタイムで注文可能数を更新する
- 優先度による注文の仕分け:Shopify Flowを活用して、優先度の高い注文を自動で仕分けする
戦略的に在庫を配置する
戦略的に在庫を配置することで、配送コストの削減と配送時間が短縮されます。
たとえば、大型の商品は広い保管場所が必要になり、配送にもコストがかかります。関東に倉庫があれば、関東圏の顧客に対しては配送コストを抑えて対応できるものの、北海道や九州、沖縄などの顧客に対しては、配送コストが高くなってしまいます。顧客情報を分析して、需要の高いエリアに在庫を置くのも戦略のひとつです。
また、季節によっても需要は変動します。たとえばクリスマスシーズンによく売れる商品を販売している場合、クリスマスシーズンのみ首都圏にポップアップストアを出したり、倉庫を確保したりするという戦略も考えられます。首都圏からであれば、広い範囲に対して配送時間と配送コストを抑えて配送ができるためです。
Shopifyでできる在庫配置対策
- 倉庫、実店舗、ポップアップストアを含む複数拠点の在庫を一括管理し、各拠点のリアルタイムの在庫状況を確認する
- 配送先に最も近い倉庫から自動的に出荷し、配送時間を短縮し、送料を削減する
不確定な外部要因への対策をたてる
どんなに計画を立てても、天候や配送業者の遅延、季節的なピークなど、不確定な外部要因による影響を完全に避けることはできません。
たとえば、大雪による高速道路の通行止めや、台風の影響による飛行機の欠航などで、配送の遅れが発生することは十分にありえます。また、年末年始やお盆の繁忙期には配送業者の処理能力が限界に達し、通常よりも配送日数がかかることがあります。
不確定要素を予測して、事前に対策をし、さらに柔軟に対応できる体制を整えておきましょう。不確定要素に対しては次のような対策が考えられます。
- 過去のデータを分析し、遅延が発生しやすい時期やルートを特定する:北海道・東北・北陸エリアでは冬季の雪による遅延が頻発します。また、台風シーズンの九州・沖縄エリアは空輸の影響を受けるため、天候リスクを考慮した配送計画が求められます。
- 複数の配送業者を活用し、リスクを分散する:特定の配送業者に依存しないことで、遅延リスクを抑えることができます。配送データの分析により、地域ごとの平均配送時間や遅延パターンを把握し、最適な配送業者を選定するのも効果的です。また、Shopify Flowを活用すれば、遅延が発生した際に自動で別の配送ルートを設定しておくことができます。
- 繁忙期の発送予定日を早める:11月下旬~12月のブラックフライデー・サイバーマンデーやクリスマス商戦、1月の初売りなどは配送業者への依頼が殺到します。この期間は通常よりも発送予定日を早められるよう、配送希望日に応じて注文締め切り日を早めに設定するなど、顧客にも配送遅延の可能性と注文から発送までの流れを明確に伝えておきましょう。
- EC事業保険に加入し、配送遅延、紛失、盗難時の補償を強化する:売上額が大きい場合や、商品が高額な場合、EC事業保険への加入を検討するのもいいでしょう。
Shopifyの配送ツールを活用する
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Shopifyの配送ツールは、ビジネスの規模に関わらず活用できます。スモールビジネスでシンプルな配送見積もりが必要な場合も、複数の倉庫を持つ企業で複雑なルール設定が求められる場合も、段階的に適応できる仕組みが整っています。
Shopifyの配送ツールの魅力は、必要な機能を自由に組み合わせ、ビジネスの成長に応じてカスタマイズできる点にあります。Shopifyで利用できる機能には次が挙げられます。
- Shopify Flow:注文の自動ルーティング、ピックリストの作成、注文ステータス更新の自動化などを行い、フルフィルメント作業を効率化できます。
- 配送プロファイル:商品や地域ごとに異なる配送ルールを設定できます。壊れやすい商品には特別な取り扱いを適用し、通常の商品は標準の配送手順に従うといった管理が可能です。
- ロケーションベースのルール設定:顧客に最も近い倉庫から発送することで、配送時間を短縮し、送料を最適化できます
- 注文ルーティング:在庫状況や配達スピードに応じて、各注文を最適なフルフィルメント拠点に自動で割り当てることができます。
- 配達スピードの追加:顧客が、標準配送、エコノミー配送、エクスプレス配送など、希望の配送オプションを選択できるように設定できます(2025年2月現在、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、イギリスで対応)
ツールを活用して、効率的な配送管理を実現し、顧客満足度の向上につなげていきましょう。
それでも配送の遅延が発生してしまったら
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配送遅延を完全に避けることはできません。繁忙期や悪天候、災害などの要因で、配送業者の処理能力が限界に達し、予定よりも配達が遅れてしまうことはありえます。
このような状況で大切なのは顧客との「明確なコミュニケーション」です。状況をしっかり伝えて、顧客の不安を解消できれば、顧客との関係強化につながることさえあります。
配達スピードを伝えるだけでなく、遅延が発生した場合には、「注文がどうなっているのか」「配送遅延の影響を受けるのか」など積極的に情報を共有することが重要です。配送遅延が発生してしまったら、次の点に注意して、顧客とコミュニケーションをとりましょう。
- こちらから顧客に対して積極的に情報を共有する:どの地域で影響が出ているのか、いつまで遅延が続くのかを具体的に伝えましょう。もし遅延がなくなる正確な時期が分からなくても、現時点での見通しを伝えるだけでも顧客の不安は軽減されます。チェックアウトページに通知を表示し、購入前に遅延の可能性を知らせておくのも効果的です。
- 複数のコミュニケーション手段を活用する:ウェブサイト・メール・SNSなど、複数のチャネルを使って遅延情報を発信・共有し、できるだけ多くの顧客に、情報を伝えましょう。
- 他のEC事業者の動向をチェックする:遅延の原因が業者側の問題であれば、他のEC事業者も同じ問題に直面している可能性があります。競合の対応をチェックし、遅れをとらないように対応しましょう。
まとめ
商品の配達スピードは、顧客満足度やブランドの信頼にも大きく影響します。発送予定日や配送予定日を明確にし、配達スピードの透明性を高めることで、カゴ落ちを防ぎ、売り上げの向上につなげることができます。さらに、戦略的な在庫配置や配送オプションの最適化、不確定要素への備えをしっかり行うことで、安定した配送体制を築くことができます。配達スピードを向上させることは、物流コストの削減につながるだけではなく、顧客体験を高め、リピーターを増やすための大切な戦略です。適切なツールやデータを活用しながら、自社に合った配送戦略を実践していきましょう。
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よくある質問
発送予定日と配送予定日の違いは?
発送予定日は、商品が倉庫や販売元から出荷される予定の日を指すのに対し、配送予定日は、商品が最終的に顧客の元へ届く予定の日を指します。
発送予定日はどのように設定する?
発送予定日は、在庫状況や注文処理時間、営業日を考慮して決めます。「注文後3営業日以内に発送」「14時までの注文は当日発送」のように注文からの期間で設定するのが一般的です。
配送予定日はどのように計算する?
配送予定日は、配送業者の標準配送日数に基づいて算出します。「発送から3〜7日後にお届け」のように表示することが一般的です。天候など不確定な外部要因の影響も考慮して、余裕を持った設定をし、ずれる可能性があることも明記しておきましょう。
配送予定日は保証できる?
配送予定日は、天候や交通状況、配送業者の都合などにより前後する可能性があるため、厳密に保証することは難しいですが、多くのECサイトでは、配送ポリシーのページに配送業者の標準スケジュールに基づいた目安を提示しています。
配達スピードとは?
配達スピードとは、商品や荷物が発送元から目的地に到着するまでの所要時間のことを指します。配達スピードは、配送方法、発送元と配送先の距離、輸送中の遅延やトラブルなどの要因によって異なります。
顧客が希望の配達スピードを選べるように次のような複数のオプションを提供しているネットショップも多くあります。
- エコノミー(5~7営業日):送料を抑えたい顧客や、大量注文向けのオプション
- スタンダード(3~4営業日):標準的な配送オプション
- エクスプレス(1~2営業日):追加料金をとり急ぎの顧客に対応するオプション
- 即日配送(特定地域のみ):倉庫から近い場所など、特定の地域のみに即日で配送するオプション
安定した配達スピードを実現するコツとは?
- 配送オプションを設定する
- 注文処理時間を短縮する
- 戦略的に在庫を配置する
- 不確定な外部要因への対策を立てる
文:Taeko Adachi