Web広告は、現代のデジタルマーケティング戦略において、企業とユーザーをつなぎ、消費者の購買行動を促進する重要な役割を担っています。新しい顧客層へのアプローチやブランド認知の向上など、事業におけるさまざまな目標の達成に役立つでしょう。しかし、効果的な活用には広告の種類、運用方法を正しく理解することが重要です。本記事では、Web広告の基本、月々にかかる費用や成功するためのコツまで、わかりやすく解説します。
Web広告とは?
Web広告とは、インターネット上で配信される広告の総称です。インターネット広告とも呼ばれ、ウェブサイト、検索エンジン、SNS、動画配信プラットフォーム、アプリなど、オンライン上のさまざまな場所の広告枠に表示されるもので、身近な例では、InstagramやFacebookなどに表示される広告や、閲覧しているページに現れるディスプレイ広告などがあります。自社の広告を有料で掲載してもらうペイドメディアの一種で、ネット広告やオンライン広告などとも呼ばれます。
Web広告のメリット
Web広告の大きなメリットは、広告を見て欲しいターゲット層を選んで広告を配信できるという点です。これは多くの企業のデジタルマーケティング戦略において非常に重要です。Web広告には具体的に以下のようなメリットがあります。
- ブランド認知度を高める:Web広告を使うことで、商品やサービスに関する情報をより早く広範囲に伝え、認知度を高めることができます。
- 特定のオーディエンスにリーチする:キャンペーン設定時に、性別、年齢などのデモグラフィックデータに基づいた人や特定のウェブサイトを訪問した人、リンクをクリックした人など、広告を表示するオーディエンスを設定して、ターゲットを絞ることができます。
- 売上を増加させる:有料の広告はオンラインストアへと顧客を誘導することができるため(トラフィック効果)、収益の増加につながります。
- 少額の費用で配信できる:少額で配信可能なWeb広告もあるため、予算が限られている中小企業や個人事業主でも比較的負担なく始めることができます
- 効果を検証しながら方向性を調整できる:入稿から配信までにかかる時間が短いため、広告配信の結果を見ながら新たな広告の内容や予算、期間をリアルタイムで調整できます。
Web広告の種類と仕組み
1. SNS広告
SNS広告では、各ソーシャルメディアに対して広告料を支払うことで、それぞれのアルゴリズムを活用してターゲットオーディエンスに効果的にコンテンツを配信することができます。主要なSNSプラットフォームでは、さまざまな種類の広告(バナー広告、動画広告、ストーリーズ広告など)を販売しています。いくつか例を見てみましょう。
- Xのプロモ広告:Xで出稿できる通常のポスト形式の有料広告です。広告費を支払うことで、より多くの人の目に触れるチャンスを増やせます。テキスト、写真、動画などを使用できます。
- Instagramのストーリーズ広告:Instagram広告には、モバイル画面いっぱいに表示されるストーリーズを利用した広告があります。通常の投稿であるオーガニック投稿は24時間後に消えてしまいますが、有料広告ではストーリーズをより多くのオーディエンスに公開し、より長い期間表示させることができます。
- Instagramのカルーセル広告:カルーセルとは、複数の画像や動画を横並びで表示する形式の広告のことです。一つの広告で複数の商品やサービスを紹介できるため、人気のある広告フォーマットのひとつです。
- Facebookのブースト投稿:Facebook広告では、広告費を支払う(ブーストする)ことで投稿、動画、イベント情報などをターゲットオーディエンスに対し宣伝することができます。
2. 検索連動型広告
検索連動型広告(リスティング広告)は、検索エンジン上の検索結果のページに表示される広告のことです。検索連動型広告では、ユーザーが検索したキーワードに関連する広告を表示します。
検索連動型広告のひとつに、PPC(クリック課金型)広告があります。PPC広告では、検索結果のページに表示されるだけでは料金はかからず、ユーザーが広告をクリックした場合に広告費の支払いが発生します。Google広告ではこのクリック課金型を採用しており、Googleの検索結果ページにPPC広告を表示できます。検索連動型広告は、ユーザーが検索するキーワードに連動して広告を配信するので、基本的に「特定のニーズを持った」意欲の高いユーザーがターゲットになります。
3. ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、一般的なデジタル広告のひとつです。ポップアップ、バナー広告、動画広告など、ウェブサイト上で目にする広告のほとんどがこのディスプレイ広告に該当します。
企業は特定の行動をする顧客をターゲットとして、ディスプレイ広告を表示することができます。たとえば、一度見た商品の広告などが、ネット上の画面に何度も表示されたことはないでしょうか? これはリターゲティング広告と呼ばれるものですが、何度も表示することでユーザーの興味関心や、購買意欲を掻き立てることを目的としています。
4. インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングでは、コンテンツクリエイターに報酬を支払い、自社の商品やサービスをPRしてもらいます。具体的には、SNSへの投稿、ブログ投稿などで自社ブランドをおすすめしてもらうなどの活動が含まれます。また費用を支払った上で、インフルエンサー自身のブログやSNSにゲストとして投稿するケースもあります。この場合、コンテンツは企業から提供され、インフルエンサーは依頼主である企業の名義でコンテンツを投稿します。投稿には依頼主のサイトへのリンクを入れ、コンバージョンへの導線を確保するつくりになっています。
Web広告の費用と課金方式
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以下は各Web広告の月ごとにかかる費用と課金方式です。
SNS広告(ソーシャルメディア広告)
費用の目安:約30万円/月
課金方式:
- クリック課金型(CPC):広告がクリックされるごと
- インプレッション課金型(CPM):広告が1,000回表示されるごと
- アプリインストール課金型(CPI):広告経由でアプリがインストールされるごと
- 動画再生課金型(CPV):SNS上の動画広告が再生されるごと
- エンゲージメント課金型(CPE):広告に対してエンゲージメント(「いいね」等)が生じるごと
検索連動型広告(リスティング広告)
費用の目安:約15万~30万円/月
課金方式:
- クリック課金型(CPC):ユーザーが広告をクリックするごと
ディスプレイ広告
費用の目安:約20万〜30万円/月
課金方式:
- クリック課金型(CPC):ユーザーが広告をクリックするごと
- インプレッション課金型(CPM):広告が1,000回表示されるごと
- コンバージョン課金型(CPA):ユーザーが特定のアクション(例:購入、登録)を行った際
インフルエンサーマーケティング
費用の目安:インフルエンサーのフォロワー数や影響力、契約内容によって決定
課金方式:
- 固定報酬型:フォロワー数×企業が設定する単価で算出した一定の報酬を支払い
- 成果報酬型:商品販売や特定のアクションに応じて報酬を支払い
広告に資金を投入するのが難しいという方は無料で広告を出すこともできます。媒体などは限られるものの、広告を使ったマーケティングが初めてという場合は無料広告から始めるのもよいかもしれません。
Web広告運用の流れ
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1. 予算を設定する
マーケティング予算を確認し、Web広告にいくら予算を割けるか金額を決定しましょう。広告枠の費用の確認やベンダーの選定を行い、ベンダーとのやり取りに必要と思われる時間も考慮します。広告を自分で制作する場合と広告代理店に依頼する場合の費用も確認しておきましょう。
2. ターゲットオーディエンスとゴールを決める
キャンペーンの最終目的を設定するために、広告のターゲットオーディエンスとマーケティング上のゴールを決定しましょう。使っても良い予算額、ビジネスの優先順位、そして各Web広告のメリットを考慮し検討しましょう。
たとえば、マーケティングの最も重要なゴールが、ブランドの認知向上である場合、ターゲットは新しいオーディエンスとなるかもしれません。
最終目的が明確になったところで、各目的に対して予算内で達成可能な具体的なステップを決めます。(例:最終目的が「ブランド認知度の向上」、そのために「Instagramで◯◯人のフォロワー獲得」など)「目標を立てたところで達成できるかわからないのに…」と思うかもしれませんが、この作業はスキップせずにしっかり検討しましょう。測定可能な目標を設定することで、たとえ達成できなくても結果から学びを得られるはずです。
3. 媒体を選ぶ
ターゲットオーディエンスの情報と利用可能なメディア形式(画像、動画など)の種類を確認し、どのペイドメディアチャンネルを使うか決めましょう。たとえば、オーディエンスの興味を惹きつけるために印象的な動画広告を投稿したいのであれば、文字のみのリスティング広告は選択肢から除外され、TikTok広告などが選択肢にあがります。
4. クリエイティブの制作とキャンペーンを管理する
クリエイティブとは、画像や動画などWeb広告の素材のことです。ターゲットにリーチしやすくなるよう、キーワードや内容を精査し広告を作成します。訴求力の高い広告になるよう、ターゲットの嗜好やニーズに合わせるだけでなく、目を引く画像や動画を用意することも大切です。必要に応じて画像編集ソフトや動画編集ソフトなどを使うとよいでしょう。
5. 運用レポートの確認と戦略の調整を行う
広告を掲載したら、運用レポートで運用結果を確認します。あまり効果が出ていない広告がある場合は、成功している広告と比較し、コンテンツの種類や配信方法に何か違いがないか確認しましょう。この作業では広告代理店などのサポートを受けることもできます。ベンダーはWeb広告のキャンペーン管理において豊富な経験や知見を持っているので、今後のキャンペーン調整にあたってアドバイスをもらいましょう。
Web広告運用を成功させる5つのコツ
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- 目的の明確化:広告の目的を具体的に設定し、ブランド認知度の向上、見込み客の獲得など達成すべき目標を明確にしましょう。
- ターゲットの設定:広告の対象となるユーザーの性別、年齢、地域、興味関心、購買行動などペルソナを具体的に設定します。どんなユーザーなら商品に興味を持ってもらえるか想像してみましょう。
- 効果的な広告の作成:動画やリスティングなどターゲットに響く広告内容を作成し、適切な媒体を選定して配信します。
- 効果測定と改善:広告の効果を定期的に測定し、データに基づいて改善策を講じます。
- PDCAサイクルの実施:計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクルを回し、効果測定のデータを参考に広告運用を継続的に最適化しましょう。
Web広告の成功事例
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SNS広告などのWeb広告を活用し、ブランド認知や売上拡大などにつながった成功事例を紹介します。Web広告の出し方や効果的なマーケティングの参考にしてください。
カネボウ化粧品(KATE)リップモンスター
現在約1万8,000人のフォロワーを獲得しているカネボウ化粧品(KATE)のTikTok公式アカウントでは、TikTokクリエイターを起用し、エフェクトを活用した動画を投稿しています。さらに、インフィード広告を活用して話題性を高める施策も実施しました。その結果、エフェクトを使用した動画の総再生回数は460万回に達し、発売から約1年半で累計出荷数が550万本を突破しています。エフェクトを真似するユーザーも多く、UGC投稿も増加しました。

ていねい通販 boco to deco(ボコとデコ)
ていねい通販を運営する生活総合サービスは、捨てられがちな明日葉の茎や根まで丸ごと使ったアップサイクル青汁のboco to decoのInstagramアカウントでWeb広告を展開しています。
同ブランドは当初、動画広告クリエイティブの出稿・検証は、月に0〜1本程度と少ない状況でしたが、現在ではツールなど活用し月に約5本を制作・配信しています。
その結果、目標CPAを維持しながら、それらの動画広告クリエイティブによるCV数を単月で約1.5倍に増加させることに成功しました。
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株式会社スナックミー snaq.me(スナックミー)
snaq.meは、YouTube広告のTrueViewアクション広告を活用し、視聴者を自社サイトへ誘導するアニメーション動画を制作しました。その結果、広告開始から1か月で申込数が3倍に増加しています。さらに、指名検索やSNS流入も増え、ブランド認知の向上と新規顧客獲得に成功しています。
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NY発コスメブランド Glossier(グロシエ)
コスメブランドのGlossierは、顧客に愛される商品づくり、的確なブランド戦略、SNSを通じた優良顧客のコミュニティ形成に力を入れており、有料の広告を使って新規顧客の獲得のためのアプローチを積極的に行っています。
たとえば、拡散力の高いインフルエンサーマーケティングやUGCを活用し、広告費用を抑えながら効果的にSNS広告を投稿しています。
結果、短期間で企業評価額10億ドルに達するブランドとして飛躍的に成長しました。
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まとめ
Web広告は、的確なターゲティングと運用を行うことで、効率的に成果をあげられる強力なツールです。費用対効果を意識しつつ、継続的な改善を図ることが成功への鍵となります。この記事を参考に、ビジネスの成長に向けて最適な広告戦略を構築してください。正しい運用が、目標達成への第一歩となるでしょう。
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Web広告に関するよくある質問
ネット広告は逆効果?
ネット広告は、ターゲティングが不適切だったり、表示回数が多すぎたりすると、ユーザーに不快感を与え購買意欲を損なうことがあります。特に、関心のない広告が繰り返し表示されるとユーザーは「広告疲れ」を起こし、広告に対して嫌悪感すら覚えるようになります。また、質の低い広告やユーザーの利便性を損なう様な表示方法は(ポップアップ広告や動画の自動再生など)、ブランドの印象を悪化させる可能性もあります。広告の効果を最大化するには、正確なターゲティングとユーザーに配慮した広告デザインが欠かせません。
予算はいくら見積もっておくべき?
消費者向け(BtoC)小売業であれば、平均して収入の10%弱をマーケティングの予算とするとよいでしょう。
しかし、マーケティング予算のうち、どの程度をWeb広告で使うべきか明確なルールはありません。一般的に、企業は総収入の1%を広告費として充てるとも言われています。まずは少ない予算から始め、広告媒体のコストと投資収益率(ROI、広告にかかった費用に対してどのくらいの利益が得られたかを表す指標)を確認して運用結果を評価し、今後のWeb広告費用を再検討することもできます。Web広告に予算を投じることで、高い投資収益率となっているようであれば、さらに多くの追加予算を割り当てることを検討しましょう。
自社のWeb広告キャンペーンに合ったプラットフォームはどう選べばいい?
ターゲットオーディエンスとメディア形式(画像、動画など)に基づき、どの媒体を使用するか決めましょう。ターゲットに人気のある媒体や、希望のメディア形式で効果的に広告が表示できるプラットフォームを選択しましょう。
ターゲットとするオーディエンスに確実に広告を見てもらうには?
一部のチャンネル(SNSプラットフォーム、検索エンジン、その他ディスプレイ広告掲載サービスなど)では、顧客のデモグラフィックや行動データに基づき、ターゲットとする特定のオーディエンス層に絞って広告を配信することができます。ターゲットオーディエンスに人気のある配信チャンネルを選択し、追加のオーディエンス情報や詳細なターゲティングのオプションについてベンダーに確認してみましょう。
文:Miyuki Kakuishi