アパレルECサイト業界のトレンドは毎年変化し続けています。2025年のトレンドは、ショッピングプロセスのパーソナライズ化、重要視されるサステナビリティ、ソーシャルコマースの台頭などです。
しかし、変化していないことが1つあります。それは、世界のアパレルECサイト業界が成長し続けていることです。世界のファッションブランドのECサイトにおける売上は、2030年には16億ドルを超える(英語)と予想されています。
ECサイトでのアパレル起業を考えている方、すでにあるECサイトを強化し事業を拡大したいと考えている方にとって今はビジネスの好機となっています。
この記事では、アパレルECサイトの種類と特徴、機能やデザインについて、30の事例を通して解説します。
参考情報:Shopifyによる起業家を対象とした最近の分析(英語)によると、ファッション業界において平均注文額が高いチャネルのランキングに、アフィリエイトやソーシャルネットワーク経由によるチャネルが上位に入っています。楽天ルームなどのアフィリエイトやインフルエンサーとのECサイトの連携も注目度を高めています。
アパレルECサイトの種類2つ

実際にアパレルブランドをECサイトで立ち上げるに当たり、まずはECサイトの種類と特徴をおさえましょう。
ECサイトは大きく分けると以下のモール型ECサイトと自社ECサイトの2つがあります。
1. モール型ECサイト
モール型ECサイトとは、さまざまなECサイトが集まる巨大なショッピングモール型のプラットフォームです。Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWNなどがあり、特にZOZOTOWNはファッションに特化しています。
メリット
- 専門知識がなくても出品・出店しやすい。
- モールのブランド力で集客ができる。
デメリット
- 販売競争が激しい。
- サイトのカスタマイズが難しく、差別化しにくい。
- 販売手数料、出店料などがかかる。
2. 自社ECサイト
自社ECサイトとは、自社独自で運営するものです。ユニクロ、無印良品、Appleなどがあります。
メリット
- サイトを自由に構築でき、差別化が図れる。
- 顧客データの収集・活用がしやすい。
デメリット
- 運営コストが高くなる場合がある。
- 比較的、集客が難しい。
Shopifyは、自社ECサイトを構築・運営できるプラットフォームです。初期費用は無料なため未経験の方でもアパレルネットショップを手軽に構築できます。また、アパレルネットショップに必要な機能などをアパレルショップ向けのShopifyアプリで追加することも可能です。
アパレルECサイトの成功事例(デザイン編17選)
1. Tabio(タビオ)

Tabioは、ファーストビューに数枚の画像を使用し、自動的に画像が切り替わるカルーセルという表示方法を用いています。季節を感じさせる商品イメージやお得な商品などの最新情報を効果的に紹介しています。
2. BEAMS(ビームス)

BEAMSでは、スタッフが投稿するスタイリング・コーディネートの紹介が豊富で、全部で9万件ほど載せられています。着用動画も多く、ユーザーが着用感をイメージして購入しやすくなっています。また、トップページ左下には、サイトを多言語化するアプリによる言語選択のボタンがあり、他言語に簡単に切り替えることができグローバルに対応しています。
3. SHOPLIST(ショップリスト)

SHOPLISTは、さまざまな種類のセールをサイト上で年間を通して行っています。メガセールやゴールデンウィークセール、ハロウィーンセール、また24時間から72時間という短期間のタイムセールなどほぼ毎日といっていいほど何かしらのセールがあり、顧客の購買意欲を高め定期的な閲覧を促します。また、多数の商品写真や紹介文を同じサイズやフォーマットで掲載しており、チラシ広告を思わせるようなサイトデザインです。
4. ZARA Japan (ザラ 日本)

大手ファストファッションブランドのZARAのECサイトは、シンプルで洗練されたデザインで統一されています。大きめサイズの商品画像に極小サイズの文字要素という組み合わせの商品紹介デザインによりスタイリッシュなブランドの世界観が表現されています。余白を活かしたミニマルなレイアウトもスッキリした印象です。
5. Paul Smith(ポールスミス)

Paul SmithのECサイトのファーストビューも、商品画像を2枚に絞り、文字数も極力少なくすることで英国発祥のブランドが持つ洗練されたイメージを作り出しています。また、サイトの背景カラーを白と黒にすることでシックなブランドイメージを表現しています。
6. coca(コカ)

cocaのECサイトの特徴は商品画像が鮮明で、きれいな点にあり、また、すべての画像において統一感があります。白とグレーの落ち着いた配色を基調に、シンプルなレイアウトで構成されており、ブランドの上品さを表現しています。
7. Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)

Louis VuittonのECサイトのファーストビューには画面全体を使った魅力的な商品紹介の動画が載せられており、モデルが着用した雰囲気やクローズアップされた商品をさまざまな角度から閲覧することができます。写真ではわかりづらい商品の質感や揺れ感を見ることができ、商品購入を後押しする効果があります。また、商品テーマにあった音楽も流れ、高級ブランドの世界観を表現しています。
8. 銀座・和光

銀座・和光のサイトファーストビューは、複数の画像がヘッダーバナー全体に滑らかに入り込むスライドショーになっており、エレガントで高級なブランドの世界観を演出しています。スクロールに応じて商品画像が動き、縮小される仕組みで閲覧者の目を引く工夫も施されています。
9. THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)

ロゴ入りのバックパックが有名なTHE NORTH FACEのECサイトの特徴は、「特集ページ」を通しての商品紹介方法です。新コレクション特集では、商品を着用したモデルが実際に外で走っている様子を映したYoutube番組に移るリンクが用意されており、リアルな商品体験を味わうことができます。「Gear Guide Channel」の特集ページでは、大学やビジネス、週末のお買い物などのシーンをカラフルな写真画像で示し、それぞれのシーンに合ったバックパックのモデルを紹介しています。これにより、閲覧者は実際の使用シーンを想像しやすくなります。
10. PUMA(プーマ)

PUMAのECサイトは、ブランドロゴとマッチした黒と白を基調とした配色が特徴です。レイアウトもシンプルに整理され、スッキリしたイメージの見やすいデザインになっています。商品紹介も大きな画像を使用し、視覚的に強いインパクトを与えています。
11. GU(ジーユー)

「YOUR FREEDOM(ユア フリーダム)自分を新しくする自由を」をブランドのコンセプトに掲げるGUのECサイトは、全体的に軽やかで新鮮な世界観が広がるデザインになっています。トップページではモデルの全身写真が多く紹介され、コーディネートのヒントが示されています。商品の仕立て方や機能性の細部の特徴も説明されており、オンラインでも安心して購入しやすい工夫が施されています。
12. INGNI(イング)

INGNIのECサイトでは、淡いピンクと白の色使いとやわらかい印象のフォントによりフェミニンで可愛らしいブランドイメージが表現されています。Instagram(インスタグラム)などのSNSと連携しており、ユーザーによって投稿されたコーデフォトが閲覧できるほか、コーデの動画も充実しています。
13. Niko and …(ニコアンド)

Niko and …は、「スタイルエディトリアルブランド」をコンセプトに、ライフスタイルをちょっと楽しく、ユニークに、豊かにするヒントを集めたECサイトを構築しています。毎日を楽しくするヒントを集めた特集ページにはトレンドアイテムの紹介特集ページや、タレントの写真集による注目アイテム紹介ページ、ブログ形式の連載コンテンツなどファッション雑誌をめくるようなワクワク感を感じさせるデザインになっています。ブランドキャラクター「Billy」の英会話教室が掲載されているところもユニークです。
14. Suunto(スント)

通常、ニュースレターの登録ボタン表示は小さいものですが、Suuntoはトップページ下の画面をフルに使った大きなサイズで表示しており、赤く目立つ登録ボタンを中央に置いて登録を促しています。また、ニュースレターに登録すると10%オフになるという文言がトップページの最上部に表示され、顧客とのつながりを深める工夫がされています。
15. FREITAG(フライターグ)

FREITAGの商品はリサイクル素材や再生可能な素材から作られており、その循環型の商品イメージを表現するために大きな太字のフォントを使ったキャッチコピーがトップページをぐるぐると回り続けるデザインになっています。この回り続けるキャッチコピーのデザインスタイルは、トップページだけでなく、他のページでも使用されブランドコンセプトを強調する効果を演出しています。
16. MAGASEEK(マガシーク)

MAGASEEKは雑誌で見た商品を購入できるという「マガジン+シーク(探し求める)」をコンセプトにしており、ファッション雑誌を思わせるデザインを採用しています。また、多様なブランドの商品写真を掲載し、顧客がウィンドウショッピング感覚で楽しめるサイト作りを目指しています。
17. SHEIN(シーイン)

トレンドアイテムの豊富な品揃えと低価格が評判のSHEINは、新作アイテムやビッグセールなどの表示を目立たせて購買意欲を高めています。個別の商品紹介ページだけでなく、トップページにあるすべての商品画像の下にも価格が明確に記されており、価格重視で商品を選びたい顧客のニーズに応えています。
アパレルECサイトの成功事例(機能編13選)
1. UNIQLO(ユニクロ)

アパレルECサイトの中で売上高1位のUNIQLOは、実店舗、ECサイト、アプリを融合したオムニチャネル戦略を採用して相乗効果を得ています。ECサイトをスマホアプリ化し、アプリで会員証を作って購入の際に提示できるなどのユーザーの利便性を追求しています。
2. GLOBAL WORK(グローバルワーク)

GLOBAL WORKのECサイトは、スタッフが自社の商品を着用してコーディネートを紹介するページが充実しているのに加え、さらに動画での商品紹介も4,000件以上用意されています。スタッフの商品紹介の絞り込み機能には、身長や体型、年代などがあり、ユーザーは自分に合うスタイルを見つけやすくなっています。
3. ONWARD CROSSET (オンワード・クローゼット)

日本の大手アパレル企業、オンワードグループが運営するECサイトONWARD CROSSETでは、ストアにバーチャル試着アプリを導入し、顧客が自宅で商品を仮想試着できるサービスを提供しています。バーチャル試着はARの技術を活用しており、顧客は自分の全身写真をアップロードするだけで実際の着用感を確認することができます。
4. ABC-MART(エービーシーマート)

ABC-MARTでは、商品の選びやすさに工夫をこらしています。レディース・メンズ・キッズ・ジュニアのカテゴリ表示は色分けされたアイコンが使われ、一目でわかるようになっています。また、靴のサイズは左側に表示される商品の絞り込み機能からワンクリックで選べます。右下にはGoogleのカスタマーレビューのボタンがあるため、レビューの確認が簡単で、スムーズに商品を選ぶことができます。
5. SHIPS(シップス)

SHIPSでは、ECサイトに骨格診断を載せており、骨格のタイプ別のおすすめ素材やサイズ感、装飾感を表示することで、ユーザーがどのようなスタイリングの商品を選べばいいかわかるようになっています。同ページの下には、スタッフが着こなすコーデの例を骨格のタイプ別に分けて表示しており、ユーザーがより自分に似合う商品を選べるようになっています。
6. しまむら

しまむらのECサイトでは、サイズ診断は、商品紹介ページの右横に表示され、ページの遷移なしにサイズ選びができるようになっています。サイズ診断では、身長や体重などの基本的情報の他、好みのゆとりや部位ごとの気になるところ、よく着るブランドなどの簡単なアンケートに答えるだけで体型にぴったり合ったサイズが表示されます。
7. Zoff(ゾフ)

メガネブランドのZoffは、オンラインで手軽にリアルな試着ができるバーチャル試着サービスを提供しています。LIVEカメラを用いてユーザーの顔を映し出し、リアルタイムでさまざまなな角度からの着用イメージが確認できます。実際の店舗にいかなくても気軽に試着したイメージをつかむことができ、商品を選びやすくしています。
8. ZOZOTOWN(ゾゾタウン)

ZOZOTOWNには、14,000件のコーディネートが揃う日本最大級のファッションコーディネートアプリがあり、最新の服のコーディネート画像を見たり、アイテムを検索してユーザーの好きな服や靴のコーディネートを探したりすることができます。また、ユーザーに合うファッション診断の機能もあり、ユーザー自身がコーディネートを投稿することもできます。
9. Levi’s(リーバイス)

Levi’sでは、オンライン限定の会員プログラム「リーバイスレッドタブ」を提供しています。特典として購入商品の常時5%オフや、マイルを貯めてクーポン交換、誕生日クーポン、限定イベント招待などがあり、常連客を惹きつけています。
10. 無印良品

無印良品では、さまざまなネットストア限定のサービスを提供しています。ネット限定の後払いサービスは、携帯番号とメールアドレスのみで利用でき、月ごとの利用料金をまとめて後払いできる「atone翌月払い」がある他、ネットでまとめ買いをすると5%割引など、ユーザーの利便性を高めるさまざまな機能が取り入れられています。
11. WORLD ONLINE STORE(ワールドオンラインストア)

WORLD ONLINE STOREは、直営通販サイトとして、レディース、メンズ、キッズ、生活雑貨など幅広いカテゴリーで、 50以上ものブランドを扱っています。この膨大な品揃えの中から商品を選ぶための工夫として、ブランド一覧ページが設けられており、各ブランドが写真付きでアルファベット順に並べられています。このページにはブランドの頭文字から検索できる機能もあるので、お気に入りブランドのページをすぐに閲覧することができます。
12. WORKMAN(ワークマン)

WORKMANのECサイトでは、商品検索をトップの中央に配置し、商品やブランド名の各カテゴリにアイコンやブランドマークを並べることで、一目で探したい商品がわかるデザインになっています。新着商品もファーストビューにカルーセル方式で表示され、すぐに情報を得ることができます。
13. Honey’s (ハニーズ)

Honey’sでは、オンラインショップ会員の特典が充実しています。最新情報を得られるメールマガジンの他、お気に入り登録した商品の在庫が少なくなった際に届く「あとわずかメール」という機能があります。「あとわずかメール」では、1時間毎に在庫状況を確認し、商品がのこりわずかになった場合に顧客に通知するため、顧客が商品を確実に購入できるよう工夫しています。
まとめ
アパレルECサイトについて、モール型ECサイトと自社ECサイトの2種類をご紹介しました。また、ファッションブランディングに成功しているアパレルECサイト事例(デザイン編・機能編)を見てきました。これら30のファッションブランドのECサイトにはそれぞれ独自の特徴があります。ぜひ参考にしてみてください。
その他、ShopifyでECサイトを構築して成功しているブランドも無数にあります。そういったShopifyのストアデザイン例も、ECサイトのデザイン・機能例として参考になるでしょう。
この記事が、 現在の活況なファッションECサイト市場を利用して、ECサイトを起業しようとしている方、すでに起業していてECサイトを強化しようとしている方のお役に立てば幸いです。
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よくある質問
アパレルEC業界が成長している理由は?
- コロナ禍をきっかけにオンラインショッピング利用者が急増し、その後もその傾向が継続している
- それとともにアパレルECの管理・運用をよりシンプルかつ高度にするツールやソリューションが作られ、業界全体の業務が効率化された
- 結果的に、アパレルECの運営が以前よりも簡単で使いやすくなりアパレル業界の成長が促進された
EC事業に最適なECプラットフォームは?
EC事業に最適なプラットフォームには以下の要素が必要です。
- 統合された複数の販売チャネルで販売できる
- チェックアウトがわかりやすく、多様な支払い方法で最大数の顧客を購入に導ける
- 国際的な取引に対応しており、グローバルに事業拡大できる
- 外部サービスやシステムとの強力な連携を活用して、すべてのビジネスが1箇所で運営できる
Shopifyは、これらの条件をすべて満たしており、ブランドの成長をサポートします。
Shopifyは、ファッションブランドに最適か?
Shopifyは、顧客の増加やコンバージョンレート向上、事業拡大を目指すイノベーティブなEC企業のために設計されており、ファッションブランドに最適と言えます。
これまでに多くのファッションブランドが、ECサイト構築の最適なプラットフォームとしてShopifyを利用しており、土屋鞄製造所、コンバース、オールバーズなど有名店もShopifyを利用しています。
文:Harumi Miyabayashi