これまで何度も耳にされているかもしれませんが、新規のお客様を獲得するよりも、既存のお客様に繰り返し商品を購入していただく方がコストはかかりません。クリック数やコンバージョンが常に増加し続けているような、人気のEコマース分野では特にそうです。
既存のお客様に向けて、最後に何らかのアクションを起こしたのはいつでしょうか。一度購入していただいてからまだ何もしていないのであれば、ぜひこの記事を読み終わった後に実践してみましょう。お客様に繰り返し購入していただくための戦略を構築する具体的な方法をご紹介します。
顧客維持(カスタマーリテンション)とは何か?
顧客維持とは、リピート数を増やし、既存顧客一人一人からの利益率を高めるためにビジネスが用いる行動のことです。
顧客維持戦略は、既存顧客に価値を提供すると同時に、彼らから価値を引き出すことを可能にします。労力を費やしてようやく獲得した顧客には、ショップにとどまってもらうと同時に、素晴らしい体験をしてもらい、商品から継続的に価値を得てもらうことが大切になります。
端的に言えば、顧客獲得とは顧客ベースを構築すること、一方で顧客維持戦略とは既存顧客との関係を築き、彼ら一人一人からの収益をいかに最大化するかに注力することです。とはいえ、どのくらいの時間と労力を、顧客維持計画に費やすべきなのでしょうか。それは、ショップの種類によって異なります。
顧客維持に集中すべきタイミングとは?
顧客獲得あるいは顧客維持のどちらに注力するべきかは、ショップのライフサイクルによって大きく左右されます。例えば、昨日オープンしたばかりのショップは、長年営業をしてきたショップとは顕著に異なります。
下のタイムラインで、ショップの一般的な投資基準を見てみましょう。
- 開店直後:ショップ開店直後に注力すべきことはただ一つ、とにかく顧客を獲得することです。この時点では、顧客獲得への努力が顧客維持へとつながります。そのため、顧客ベース拡大に役立つ戦略にフォーカスしましょう。
- 弾みがつく時期:これは、そろそろ顧客が付き始め、まばらに売り上げを得ることがある時期を示します。この段階では、顧客一人一人により多くの購入を促すために、顧客維持戦略の要素を取り入れることができます。まずは過去の顧客にリピート購入を促すべく、顧客維持Eメールキャンペーンを始めることがおすすめです。
- 着実に伸びる時期:まだEコマースの優良企業とは言えないものの、売り上げが堅調に伸びている段階を示します。この時点では、顧客獲得と顧客維持の戦略を組み合わせること検討し始めましょう。例えば友人紹介プログラムやロイヤルティプログラムを導入する、あるいはマーケティング活動の自動化などを始めもいいかもしれません。
- 安定時期:ここまでくると、一定の売り上げを得ることができるEコマースショップであることを示しています。この規模の小売店に見られる共通の課題は、さらに成長するためにはどうしたら良いかということです。顧客獲得努力は多くの単発購入につながります。しかし顧客維持戦略を取り入れることで、顧客により多くの購入を促すことができ、結果として顧客の生涯価値を高めることが可能になります。そのため、この段階では顧客維持への取り組みに労力を費やすことが必要になるのです。
- 定着時期:この段階にいるショップは、初期の苦境を乗り越え、多くの目標達成を果たし、業務処理や自動化プロセスを万全に整えているはずです。この時期こそ、顧客維持に重点を置くには絶好のタイミングと言えます。
例えば下のグラフのように、各ショップに100人の顧客がいて、毎月一人当たり10ドルの商品を一点購入するとします。薄紫色で示したショップは毎月顧客の5%を維持し、濃い紫色で示したショップは10%維持するとしましょう。グラフを見ればお分かりの通り、顧客維持率が5%高いショップの売り上げは急成長し、もう一方のショップが新規顧客を獲得していても到底追いけなくなるのが見て取れます。
例えば、次のグラフでは、各ショップそれぞれに毎月10ドルの商品を購入する100人のお客様を表しています。明るい紫色で示されたショップは、毎月お客様の5%を維持しています。濃い紫色で示されたショップは、10%を保持しています。ご覧のとおり、5%の増加が急速な成長に繋がる可能性があるのですが、単純に新規顧客の獲得を行なうだけでは難しいかもしれません。
また、ショップのライフサイクルの周期とは別に、販売する商品によっても戦略は変わってきます。
顧客維持戦略とビジネスの適合性
どの戦略を取るかは、何を販売しているかによって大きく左右されます。例えば革製高級家具を販売している小売店の戦略は、紅茶やコーヒーを販売する小売店とはまったく異なります。
顧客が高額商品を頻繁に購入するショップは、最も高い顧客生涯価値(CLV)を有します。このようなショップは、確固たる顧客維持戦略を通して利益を得るタイプのビジネスを展開しています。
一般的には、グラフの右側に行けば行くほど、ショップは顧客維持戦略に注力すべきだと言えます。ただし大切なのは顧客維持と顧客獲得の良いバランスを取り、ビジネスにとって最も理に叶う戦略を実施すべきである、ということを覚えておきましょう。
重要な顧客維持の指標
顧客維持率の改善の鍵となるのは、その基本的な指標を理解することです。とは言え、その指標とは一体何なのでしょうか。そしてどのように測定し、どう改善すべきものなのでしょうか。
これらの質問に答えることにより、ショップの収益性に継続的で大きな影響を及ぼす顧客維持戦略に必要なツールを用意してくれます。そのためにまず最も重要な3つの顧客維持指標を見て、なぜそれらが大切なのかを考察していきましょう。
1.リピート率
リピート率は顧客維持の軸となる指標です。顧客がどのくらいの割合で二回目の購入をするのかをパーセンテージで表します。リピート率は、顧客維持戦略が実際どのくらいの効果をあげているのかを評価する際に大いに役立ちます。リピート率が高ければ高いほど、顧客がショップに戻ってくることを示しています。
リピート率の計算方法
リテンション指標を測定するとなると、複雑な計算が必要ですが、リピート率の計算はいたってシンプルです。以下二つの情報があれば計算できます。
A. 複数回購入したお客様の数
一定期間内に複数回の購入を行なったお客様の人数を表します。全体像を知るには、年間を通して見ることをお勧めします。
B. ユニークカスタマー数
こちらは、一定期間内に購入したお客様の総数を表します。注文数とは異なりますので注意しましょう。
この数値は、Shopifyレポートにおいても算出されます。手動で計算する場合には、複数回の購入をしたお客様の人数をユニークカスタマー数で割るだけです。
この方程式を書き出すと、次のようになります。
複数回購入した顧客数 ÷ ユニークカスタマー数
2. 購入頻度
お客様がショップから購入する頻度を示します。これは、リピーターが平均的ショップの年間収益の40%を負担していると考える場合に特に重要です。
購入頻度の計算方法
ショップの購入頻度を計算することは、リピート率を計算するのと似ています。リピート率の計算に利用した期間と同じ枠を用いて、ショップの注文総数をユニークカスタマー数で割ります。
この方程式を書き出すと、次のようになります。
注文数 ÷ ユニークカスタマー数
3. 平均注文額
リピート率と購入頻度を理解したら、次にそれぞれの購入金額はどのくらいかを計算しましょう。この基準は平均注文額と呼ばれ、お客様が各購入において使う金額を表します。
平均注文額の計算方法
平均注文額は購入頻度と同様、リピート率で設定したのと同じ期間を用いて計算します。ここでは、年間収益を注文数で割るだけです。Shopifyレポートにおいてもこの数値は算出されます。
この方程式は、次のようになります。
総収益 ÷ 注文数
顧客価値:顧客維持の全体像
これらの指標を一つずつまたは一度に改善しようとしまいと、顧客維持マーケティングの最終目標は「顧客価値を高める」ことに尽きます。「顧客価値」はパズルの最後のピースのようなもので、それぞれの顧客がどのくらいの値打ちがあるのかを把握することに役立ちます。
この指標を計算するためには、購入頻度と平均注文額を割り出しておく必要があります。そして両者を掛け合わせることによって、顧客維持マーケティングの真の成果を算出することができます。計算式は以下の通りです。
顧客価値 = 購入頻度 x 平均注文額
そして、これらの指標を改善することがどうビジネスの成長に役立つのかを見るためにも、顧客維持戦略を構築するには今がベストなタイミングと言えるでしょう。
顧客維持戦略の強化
ここまでに、既存顧客維持戦略を展開することは、新規顧客を開拓することと同等の価値があること、またそのためにはどんな指標を使えば良いのかを説明してきました。ではここからは、顧客維持率を改善するための具体的な案を見て行きましょう。
1. お客様アカウントを使用する
お客様アカウントには一長一短の特徴があります。注文履歴や配送先履歴へ素早くアクセスでき、再購入がより簡単にできる一方で、新規顧客にとっては記入することが多く面倒だと思われがちです。
そのため、多くの人は選択肢があればゲストとして購入することを選びます。ではどのようにすれば新規顧客のコンバージョンを妨げることなく、お客様アカウントの作成を促すことができるのでしょうか。
このような場合には、初回発注が完了した時点でアカウント作成の選択肢を提供することが効果的です。
Shopifyをお使いでお客様アカウント作成がオプション項目となっているならば、購入プロセスが完了した後に、顧客に招待を直接送りアカウントを有効にするよう促すことができます。
2. カスタマーサポートを改善する
カスタマーサポート制度があれば顧客と効果的にコミュニケーションを取り、適切なサポートを提供することができます。購入前後に顧客と明確なコミュニケーションを取ることができるのもサポート制度があるおかげです。
さらにチャットやヘルプデスクツールがあると、ウェブサイト、Eメール、SNSから届く顧客の問い合わせを販売へと導くことができ、また苦情があった場合にはそれを解決へとつなげることが可能になります。苦情や問題を効果的に解決した場合には、最初は不機嫌だった顧客が得意客となることもよくあります。顧客からのフィードバックも、商品やショッピング体験の改善に大いに役立つため非常に有益です。
顧客を喜ばせることは大切ですが、彼らは迅速で親しみやすく、一貫性のあるカスタマーサービスを優れたサービスの判断基準としていることがデータによってわかっています。顧客が問題を回避し、商品から最大限のメリットを得ることを助けることができれば、ビジネスにも大いに役立つはずです。
ニッチ市場の特性やショップの商品構成、または利益率の程度によっては、一番の得意客にささやかなギフトを贈ることをおすすめします。思いがけないサプライズで顧客満足度を高めることができる一方で、リピート購入を促すきっかけにもなります。なぜなら、予想外のギフトを贈ることによって、“ポジティブな行為には同じくポジティブな行為で応える”という「互恵性の法則」がはたらくからです。
例えば、すべてが瞬時にインターネット上で行われる世界では、時にはペースを緩めたいと願っている人もいるでしょう。そんな人たちには手書きの感謝状を送ると、思いやりの気持ちが伝わり、また同じショップから買いたいと思ってもらうことができます。
手書きメッセージは、時間をかけて個人的に何かを伝えようと努力している気持ちが伝わります。このような気配りは、自動化されたレシートや注文確認用Eメールとは一線を画します。思いやりや気配りの精神は大いに効果を発揮し、生涯続く上顧客を獲得することにつながるでしょう。
3. ロイヤリティプログラムを開始する
顧客維持プログラムとも呼ばれるロイヤリティプログラムは、価値ある特典を得ようとする顧客の購入意欲をかき立てるため、購買頻度を高めるには効果的な方法です。
ロイヤリティプログラムは、ショップと顧客の両者にとって収益性のある「交換取引」のようなものです。顧客は買い物するたびにより多くの価値(特典)を得ることができ、ショップ側はリピート取引を得ることで利益を上げることができます。
アカウント作成時に入会特典ポイントを付与することによって、顧客にロイヤリティプログラムへの加入を促すことができます。簡単に特典を得ることができると感じた顧客は、特典をさらに集めようとショップに戻ってくるのです。
ロイヤリティプログラムは、二回目の購入があったリピート客や、一定の購入金額に達した顧客に対して特典を付与するようなシンプルなものでも構いません。ショップレポート を見れば、金額や注文数別に誰が得意客であるのかを簡単に調べることができます。また、自動のロイヤリティアプリを起用することにより、ショップ内での顧客のさまざまな行動に対して特典を付与することも可能です。
4. お客様の関心を引くEメールを送信する
購買頻度が顧客維持の基本であるならば、Eメールマーケティングは顧客とのエンゲージメントを高めるための基本的なツールであると言えるでしょう。
Eメールは、初購入の前後に顧客との継続した関係性を築く機会を与えてくれます。送信するそれぞれのメッセージの中で、顧客体験に何らかの価値を与えることが大切になります。そうでないと、潜在的な顧客を失ってしまう可能性があるからです。
ブラックフライデーとサイバーマンデーからのShopifyデータでは、Eメールが他の手段と比較すると4.29%と最も高いコンバージョン率を得ていたことがわかりました。2番手は検索によるコンバージョンであったため、Eメールがコンバージョンにより適した手段だということは明らかです。
Eメールでのコミュニケーションは、まずフォローアップメールを送ることをおすすめします。例えば初購入のあった顧客に対して、購入の1週間後にお礼メールを送ってみてください。このような感謝の意思表示をすることで、顧客はあなたのショップから買ってよかったと感じ、より親しい気持ちを抱くことでしょう。
この初回メールの中で、初購入アイテムを補うような別商品を推奨し、より印象に残る内容にすることも可能です。また、Eメールに顧客レビューを記載するのも効果的です。このような内容を含めることは、推奨商品の価値や顧客の購買意欲を高めることに役立ちます。
初回のフォローアップメールを送信した後は、それぞれの顧客に向けてカスタマイズしたメッセージを定期的に送るようにしましょう。Beard King社は新商品やセールのお知らせを記載したカスタマイズEメールを2、3週間に一度顧客に送っています。おすすめ商品やセール、プロモーションへの招待状を送ることは、初回購入のあった顧客と連絡を取り続けるには効果的な方法です。
日持ちのしない商品、消費財、あるいは時間が経つにつれ在庫を一新しなければならいような商品を取り扱っている場合には、商品寿命を把握し、タイミングを合わせてEメールを送信することで、停滞状態の顧客にショップへと戻ってきてもらうきっかけを作ることができます。適切な人に対して、的確なタイミングで有意義なメッセージを送るわけですから、この手法は非常に効果があります。
例えばLuxy Hair社の「よくある質問」欄には、ヘアーエクステンションの寿命は平均3〜6ヶ月、場合によっては1年間ほどであると表記してあります。
そこでLuxy社は自動メールを設定し、顧客が商品を購入してから3ヶ月後、半年後、1年後にメールを自動送信し、新しいヘアーエクテンションを購入するメリットを説明しています。このようなEメールは、顧客に素晴らしいショッピング体験を提供するとともに、顧客に知識を与え、Luxy社へのリピートを促すことを可能にします。
購入後のマーケティング関連のコミュニケーションの中では、そもそもなぜあなたのショップから商品を購入するに至ったのかを、顧客に思い起こさせることが大切です。顧客にショップへ戻ってきてもらうのは、他の商品を買う価値があると説得するあなたの手腕にかかっています。
5. 返品に割引やクレジットを提供する
一般的には、割引には用心深く対応するようにアドバイスをしています。商品を割り引いてしまうと、顧客は常に価格が安くなることを期待するために価格競争に陥り、最終的にはショップの損失へとつながってしまう可能性があるからです。利益率が低い場合には、価格を割り引くことでリスクがより高くなってしまうでしょう。
しかし、初回購入した顧客に割引案内を送るととても喜ばれることも事実です。次回の購入用に割引コードを送ることは、顧客にリピートを促すにはとても優れた方法です。そのため、しばらく購入が滞っている顧客にリピートしてもらうには、割引をオファーすることが効果的な方法であると言えます。
その場合、標準的な10%よりも高い割引率を提供するとより効果的です。もちろん20%以上の割引はとてもインパクトがあります。Market Wired社の調査によると、2回目の購入で戻ってきた顧客は、54%の割合で再びリピートすることがわかっています。そのため、20%の割引分を、リピート率を高めるための投資と思えば、妥当な数字であると考えることができます。
さらに、割引(例:一回分の購入金額から10%割引)の代わりに、ショップで使えるクレジット(例:一回分の購入に対して10ドル分を付与)を提供することも試してみることをおすすめします。
ビジネスの成長のため、お客様の維持に努めましょう
既存の顧客ベースはショップが持つ最高の資産です。彼らはすでにブランドや商品のことを把握しており、サービスにも満足しているでしょう。
そんな大切な既存顧客のショッピング体験を改善することに時間や労力を費やすことは、新しい顧客を開拓する代わりに、ショップの収益性を増やすための非常にパワフルな手段になり得ると言えるのではないでしょうか。