Etsy(エッツィー)はハンドメイド商品を販売できる世界規模のECモールとして知られており、クリエイターにとって魅力的なプラットフォームです。ウェブサイトのデザインや、マーケティングに詳しくない初心者でも簡単に販売開始できます。
しかし、ビジネスが成長するにつれて、自分のネットショップを持ちたいと思うハンドメイド作家やクリエイターも多いでしょう。自分のストアを運営すれば、プラットフォームに依存せずにより独自の世界観を表現したブランディングができ、消費者にアピールできます。
ここでは、ShopifyとEtsyの比較や両プラットフォームを統合する方法、EtsyとShopifyの両方を使用して成功したクリエイターの実例などを紹介します。自社ECサイトとECモールを併用する際の参考にしてください。
EtsyとShopifyそれぞれのメリット

ShopifyとEtsyは、それぞれ販売におけるメリットがあります。一方のプラットフォームでの販売がもう一方での販売を妨げることもないため、両方利用して双方のメリットを享受しながらEtsyとShopifyの顧客を増やすのがおすすめです。
併用による相乗効果を高めるため、まずはそれぞれのメリットを理解しておきましょう。
Shopifyのメリット5つ
Shopifyは、世界中で広く利用されているカナダ発のECプラットフォームで、個人事業主やスモールビジネスから大企業まで100万以上の店舗に利用されています。Shopifyを利用すると、以下のようなメリットがあります。
1. クリエイターのこだわりを自由に表現できる
Shopifyでは、Shopifyテーマストアの数百を超えるテーマの中から好きなテーマを選んで自由にカスタマイズできるため、こだわりの詰まったオリジナルECサイトを作成可能です。
サイトデザインの自由度が高く、ショップの外観や雰囲気をクリエイターの思うままに表現できます。クリエイター独自のオリジナルの世界観を演出することで、自社ブランドの確立につながるでしょう。また、Shopifyアプリストアのアプリで機能面でのカスタマイズをすることもでき、競合他社との差別化や顧客体験の向上につなげることもできます。

2. 売り上げが多いほど利益を確保できる
Shopifyでは、月額手数料はかかりますが、取引手数料が抑えられるため利益が確保しやすくなっています。売り上げや取引量が多いクリエイターほど一取引あたりの手数料が安くなり、Shopifyでストアを運営するメリットが大きくなるでしょう。
Etsyや他社のプラットフォームでも販売を行い規模を拡大すれば、Shopifyの利点をより享受できます。
3. ブランドのファンを作れる
顧客セグメンテーションを行ってさまざまなマーケティング戦略を試せるShopifyでオリジナルストアを構築すると、ブランドポジショニングをより強固にできます。
SNSやメールマガジン、ブログなどでファンと積極的にコミュニケーションをとりましょう。また、サイト内でオリジナルコンテンツを作ったり、ブランドストーリーやオーナーのユニークなプロフィールを紹介したりするなどの工夫によってもファンの獲得や顧客基盤の成長につなげることができます。
4. 中長期的に安定的に運用できる
独自ドメインも取得できるShopifyで作成されたECサイトは、無料ドメインの制約などを受けることなく運営できるため、ブランドを安定して成長させることができます。
さらに、Shopifyで作成されたサイトは事業の成長に合わせて機能の追加やプランのアップグレードなどもできます。
5. 8000を超えるアプリで拡張できる
Shopifyの強みは拡張性の高さで、Shopifyアプリを利用することでEtsyではできない方法で売り上げの向上や販路拡大につなげることができます。
Shopifyには8000を超える拡張アプリがあり、追加したい機能のアプリを導入するだけで簡単にサイトを拡張することができます。例えば、SNSショップとの連携、SNSマーケティング、Web広告運用、越境ECサイトの機能拡充などが可能です。
Etsyのメリット3つ
Etsyとは、2005年米国ニューヨーク発のECプラットフォームで、ハンドメイド作品、クラフト用品、アート作品、ビンテージ商品に特化したハンドメイド販売サイトです。Etsyで販売する利点には、以下のようなものがあります。

1. 作品の購買意欲が高いバイヤーが集まる
Etsyには、9300万人を超えるアクティブバイヤーが世界中にいます。プラットフォームには、オリジナルの作品や1点もののハンドメイド作品を探しているバイヤーが集まるため、購買意欲の高いユーザーに効率的にアプローチできます。
Etsyは有料広告を掲載することも可能です。プラットフォーム内で集客が可能なため、オンライン広告やメールマーケティング、SEOなど複数のマーケティングを行う手間を省くことができ、作品作りに集中できる環境を整えられます。
2. 初期費用が安い
Etsyでは初期費用が抑えられます。商品を出品する際の出品手数料や、商品が売れた場合の販売手数料や配送手数料は発生しますが、初期費用が低額のため、初心者や販売量の少ない人は低リスクで開始できます。
3. 初心者でも簡単に始められる
Etsyはスモールスタートで気軽に始めるのに最適なプラットフォームです。国際商取引向けのオンライン決済サービスであるPayoneerアカウントとクレジットカードがあれば、簡単にアカウントを作成できます。
また、ブランド構築やマーケティング戦略ができていなくても、テンプレートにビジネス名とアバターを入力するだけですぐにショップを開設できます。手作り雑貨などの趣味で起業する初心者に最適なプラットフォームです。
EtsyとShopify両チャネルでの販売

EtsyとShopify両方のチャネルで販売することで多くのメリットを享受できるでしょう。Etsyはコミュニティ内のユーザーが多いためハンドメイド商品を探すバイヤーに見つけてもらいやすいです。Shopifyで作成したオリジナルストアは、中長期的にオリジナルブランドを安定させ、ブランドの確立やファンとのコミュニケーションを活発にします。
Etsyストアでの販売が順調であれば、オリジナルストアを開設して併用することを検討しましょう。ShopifyとEtsyを統合することで、両方の人気ECプラットフォームで顧客を獲得することができます。
EtsyショップとShopifyストアを連携する方法
アプリを使えば、EtsyショップとShopifyを簡単に連携できます。販売と在庫管理を一元化できるほか、データのエクスポートや価格の管理が可能になります。
日本語に対応した統合アプリにはEtsy Sync ‑ velopLabがあります。アプリは、Shopify App Storeからダウンロードできます。他にも、レビューデータの抽出など多くの便利なアプリが揃っているので、自分のビジネスを拡大するのに良いアプリを探してみてください。また、Shopifyが公式に契約しているShopifyパートナーにEtsyとShopifyの連携を委託することも可能です。
EtsyとShopifyの成功事例2選
EtsyとShopify両方を使ったマルチチャネル販売で成功している日本人クリエイターのショップを紹介します。
1. Etsyでターゲットにリーチし、Shopifyで関係を強化
chirimenbunny(チリメンバニー)は、日本の伝統的なつまみ細工や着物グッズ、ちりめん、手拭い、かんざし、風呂敷などを海外向けに販売しているショップです。
chirimenbunnyは2011年にEtsyショップを創設しました。海外ユーザーの多いEtsyを利用することで、日本の伝統文化や工芸品に興味ある層にリーチし、独自のファンを築くことに成功しています。
Etsyは購入した商品についてレビューしやすい環境が整っているため、商品を販売してレビューを獲得する、そのレビューを見た潜在顧客が購入を決めるという好循環を生み、世界中のユーザーから注目を集めています。

Etsyでファンを獲得し、市場や需要を把握したchirimenbunnyは、Shopifyを使って自社サイトも立ち上げ、さらなる販路拡大やブランド認知度向上を目指しました。
Shopifyストアでは、EC機能による販売の他に、ブランディング、ブログでのコンテンツマーケティング、メルマガ登録の促進などを行っています。
例えば、Shopifyストアでは、ブランドアイデンティティとして朱色をベースに統一感のあるサイトをデザインし、ブランドの世界観をさらに確立することに成功しています。
また、海外向けに風呂敷の使い方を解説した記事や日本の伝統行事を伝える記事などを掲載し、ショップの専門性や権威性を高めています。その他にも、メールマガジンの配信などでコンテンツマーケティングを行っています。サイトが多通貨に対応した越境ECとなっており、英語圏だけでなく中東やアジアにも販路を拡大しています。

このように、マーケットプレイスにはない柔軟性や拡張性を利用して、独自のコンテンツを配信したり、ブランドポジショニングを確立したりして、ファンとの関係を強固なものにしています。
2. ゼロからEtsyとShopifyで販売

Blue Cat Craftは、猫などの可愛いマスコットを刺繍したファブリック小物や手作りキットを販売しているショップです。
子育てをきっかけにビジネスを立ち上げることにした創業者のMoeさんは、ハンドメイド販売の世界的なマーケットプレイスであるEtsyでの出店と同時に、Shopifyでもオリジナルストアを開設しました。
Shopifyストアでは、優しい色調のグリーンと、青い猫が特徴的なロゴなどのブランドアイデンティティを前面に押し出したサイトデザインによって、ブランドの世界観を印象づけています。
さらに、FAQページを多言語対応にし、質問内容も言語に合わせたものにするなど、マーケットプレイスではできない細かな情報提供や市場に合わせたサービスを提供しています。

Etsyでは、マーケットプレイス独自のストア評価(スターセラー)やレビューを活用し、ショップの信頼性を高めています。
さらに、Etsyのユーザーが購入した作品やキットで作った自分の作品を写真とともにレビューすることでショップのコミュニティが形成され、さらなる顧客やファンの獲得につながっています。このようなコミュニティの活発さはEstyを利用するメリットのひとつでしょう。
Blue Cat Craftは、EtsyとShopifyどちらにも作成者やマスコットのプロフィール、なぜ刺繍なのかやKawaiiとは何かなどを伝えるAboutページを設けています。このようにブランドストーリーを語ることは、ブランドや独自のファンを確立するのに欠かせません。
ユーザーの多いマーケットプレイスと世界観を表現した独自サイトの両方にAboutページを作ることで、より多くの人にブランドの使命や想いを伝えることができ、結果としてファンや顧客の獲得につなげることに成功しています。
まとめ
すでにEtsyで成功しているビジネスがあるのであれば、ShopifyでのオリジナルECサイトの立ち上げは次の正しいステップとなるでしょう。
ビジネスを強化する最良の方法は、ファンを作ることです。オリジナルのブランドストーリーを語ってブランドを確立し、顧客と直接つながれるチャネルを持っておくことで、アルゴリズムが変わったり、マーケットプレイスの制限に直面したりしたとしても、他の販売チャネルに頼ることができます。
新しいチャネルを構築するには時間と労力が必要ですが、オリジナルのオンラインショップを開設することは、あなたのビジネスを次のレベルに引き上げる鍵となるかもしれません。Shopifyを利用することで、簡単かつ効率的に、Etsyとの相乗効果が見込めるオリジナルのECサイトを構築できるでしょう。
EtsyとShopifyに関するよくある質問
EtsyとShopifyの両方で販売できる?
EtsyとShopifyの両方で同時に販売できます。複数のチャネルで販売することは、ビジネスを成長させるときに大切です。Etsyが持つマーケットプレイスのメリットを活かしつつ、Shopifyを併用することで独自のブランドを成長させることができます。
EtsyとShopifyの違いは?
Etsyは、Esty内の検索機能でストアを見つけてもらうことができる一方、マーケットプレイスの制約を受けるのに対し、Shopifyは自由なサイト構築ができますが、マーケティングや集客は自分で行う必要があります。料金体系も異なるため、自分のビジネスに最適な方法を選択しましょう。
EtsyとShopifyのメリットは?
Etsyのメリット
- 購入意欲の高いバイヤーが集まる
- 海外マーケットに気軽に参入できる
- 簡単にセットアップできる
- 広告ツールでマーケティングや集客が簡単にできる
- 標準の無料プランがある(販売または製品をリストする際にのみ支払うか、Etsy Plusにアップグレードする)
Shopifyのメリット
- デザインの自由度が高い
- 豊富なアプリで機能を拡張できる
- メールリストや顧客リストを所有できる
- 取引手数料が安く、大規模になるほど有利になる
- Shopify POSを使用して小売店にシームレスに拡張できる
ShopifyをEtsyストアに接続する方法は?
アプリを利用することで、EtsyとShopifyを接続できます。Shopifyアプリストアにある、Etsy Sync ‑ velopLabのようなツールを使うことで、簡単に統合できます。
EtsyとShopifyの在庫を管理する方法は?
Shopifyアプリストアの統合ツールアプリを使用することで、両方のプラットフォームで在庫を同期でき、在庫管理を簡単に行えます。
文:Shigemi Saki