スモールビジネスは、一人または少人数のチームで始められるため、機動力が高く、自由に運営できるのが魅力です。成功させるには、限られた予算や時間を最大限に活用するための戦略が必要です。この記事では、スモールビジネスの具体的な始め方を解説するとともに、成功するための18のポイントを、事例をまじえて紹介します。
スモールビジネスとは
スモールビジネスとは、少人数で運営されるビジネスで、いわゆる中小企業よりもさらに小規模なものを指します。起業には大きな資金や店舗契約が必要なイメージがありますが、スモールビジネスは個人もしくは数人で、最低限のコストでスタートします。意思決定に関わる人が少ないので機動力が高く、スピード感をもって事業を運営できるのがスモールビジネスの魅力です。
スモールビジネスの始め方
1. 参入分野を選ぶ
スモールビジネスは自由に始められるため、自分の趣味を生かしたビジネスや、経験や専門知識が生かせる分野を選ぶのがおすすめです。専門知識や興味のある分野であれば、ビジネスが軌道に乗るまで途中で苦労しても続けやすく、軌道修正なども行いやすくなります。
2. 事業計画を立てる
分野を決めたら、事業内容や目的、ビジネスモデルなどをまとめて事業計画を立てます。計画ができたらスタートに必要なものをリストアップし、資金や収支の計画をまとめた事業計画書を作成してください。
3. 資金を準備する
事業を始めるには、最低限の資金や準備が必要です。事業計画書を元に、自己資金、ローン、投資家からの融資、クラウドファンディングなどを駆使して資金を準備しましょう。
3. 起業する
ビジネスの目的や規模にあわせて会社形態を選び起業します。初期費用を安く抑えたい場合、個人事業主という形態を選べば、届出を出すだけで無料で開業できます。収支が安定するまでは、サイドビジネスとするのもいいでしょう。
すぐに資金調達が必要な場合やある程度高額な売り上げが見込める場合は、融資が受けやすく社会的な信用も得やすい法人の立ち上げがおすすめです。
4. ブランドとウェブサイトの構築
ブランド名を決め、ロゴをつくり、ブランドイメージを構築したら、オンラインでのタッチポイントとしてホームページを作成したり、ECサイトを開設したりします。同時にSNSのアカウントも開設しましょう。
5. 仕事を受注する
準備が整ったら、サイトを公開したりクラウドソーシングなどを活用したりして仕事を始めましょう。スモールビジネスの強みは柔軟性です。最初に決めたプランがうまくいかなくても、新しい方法に挑戦して、事業を展開していきましょう。
スモールビジネスを成功させるための18のコツ
1. 計画を立てて時間を使う
限りある時間を有効に使いましょう。朝起きたらまず、1日にやるべきことのリストを作ることをおすすめします。
たとえば、自分の最も集中できる時間帯に優先的に取り組むべき重要なプロジェクトに取り組み、午後の眠くなる時間帯にはメールの返信など、集中力を使わない作業をするとよいでしょう。また、時間やタスクを管理するには、次のようなアプリ・サービスも役立ちます。
- 一日予定表:1日の予定を24時間の円グラフで管理する、無料のスケジュール管理アプリです。1日の終わりにその日の予定を振り返ることができ、無駄な時間を可視化できます。
- Todoist(トゥードゥーイスト):タスク管理とToDoリストに特化したアプリです。無料プランも用意されています。
- Focus To-Do(フォーカス・トゥードゥー):時間を25分ずつの単位に分け、それぞれの単位にタスクを割り当てるという「ポモドーロテクニック」を使った時間管理のためのアプリです。
2. ターゲット層を絞る
Amazon(アマゾン)のような大企業であれば、幅広い分野に力をいれることができますが、始めたばかりのスモールビジネスでは、自分の分野を絞り、特定のニッチに集中するという戦略がおすすめです。
たとえば、アパレルブランドの立ち上げを考えている場合、着る人の年代、性別、体型、どんな機会に着てほしいかなどを細かく考えましょう。キーワード調査ツールを使って、自社のニッチ市場を探るのも効果的です。
3. ブランドを構築する
ビジネス、商品、サービスに独自性を持たせ、競合から際立たせてブランド構築をしましょう。ブランド名、キャッチコピー、価値観、使命、独自性、ターゲット層、ストーリーを言語化することで、ブランドの個性が際立ちます。
名前やロゴが決まらないときは、Shopifyの次のツールも役に立ちます。
あわせてブランドガイドラインをまとめることも重要です。ブランドガイドラインとは、ブランドのイメージを一貫したものにするための指針やルールをまとめたものです。ブランドにどのようなイメージを持たせたいかを考え、そのイメージに合ったブランドロゴ、ブランドカラー、ブランドフォントなど、ブランドのデザイン表現に関しての基本的なルールをまとめましょう。
4. ブランドに適した画像を用意する
ブランドや商品、サービスのよさを明確に発信するための画像を用意します。先に決めたブランドガイドラインにのっとり、ブランドのイメージ、価値観、メッセージが伝わるようなビジュアルをつくりましょう。ウェブサイト、SNS、広告、商品説明ページなど、さまざまなプラットフォームで、一貫したイメージができれば、顧客との信頼関係を築くのにも役立ちます。
たとえば、「たのしく、書く人。」をスローガンに「書く」ための道具を販売している文具店カキモリは、ロゴにも万年筆で書いた文字を使用しています。ECサイトの商品写真は文具の魅力が伝わるように白背景でまとめられ、周りのアイコンやあしらいには、ブランドのコンセプトがそのまま伝わるような、ペン画タッチのイラストが散りばめられています。
5. 購入プロセスを簡単にする
購入プロセスをできるだけ簡単にすることも重要です。購入までの導線をシンプルにし、チェックアウトまでの不要なページ遷移を省き、チェックアウトで入力するフォーム数も最小限に抑えましょう。支払いに関しては、できるだけ多くの支払い方法に対応できるのが理想です。顧客が商品を「ほしい」と思ったとき、最小の手間で買えるような仕組みを整えましょう。
Shop Payのようなシステムを使用するのがおすすめです。Shop Payは、ワンタップでチェックアウトできるため、通常のチェックアウト方法と比較して、コンバージョン率を最大50%向上させています。また、類似のチェックアウトシステムと比べても、少なくとも10%以上はコンバージョン率が高いという結果を出しています。
6. 経費を削減する
キャッシュフローが適切になるよう、経費削減の努力をしましょう。まずは、どこに経費がかかっているのかを確認し、削減できそうな項目がないか検討することから始めてください。freee(フリー)や弥生会計のような会計ソフトを使えば、カテゴリ別に使途を把握することができます。
たとえば、不必要なソフトウェアのサブスクリプションを停止する、リース・購入する機器を中古のものにする、オフィスを共有オフィススペースに切り替える、商品の材料を見直すなどの方法で、経費が削減できるかもしれません。
スモールビジネスにとっては、ひとつひとつは少額でもその積み重ねが非常に大きな負担となります。現金の流れや財務状況を健全に保つために、削減できるものは何でも見直し、調整しましょう。
7. 最新のマーケティングトレンドを把握する
トレンドを把握して、ターゲット層を引きつけるプロモーションを展開しましょう。誰にも知ってもらえなければ、ビジネスは成長しません。マーケティングのトレンドを学び、それを実践してビジネスを広める必要があります。具体的には、以下のような方法で最新のマーケティングを学びましょう。
- SNSで有名マーケターをフォローし、そのノウハウを学ぶ
- マーケティング関連のブログを読む
- 「Marketer’s Talk」や「マーケティング・ゼロ」など、マーケティングをテーマとするポッドキャストを聞く
- マーケティング関連のイベントやカンファレンスに参加する
また、地元のマーケターとつながるのも効果的です。地元の消費者に響くプロモーションのヒントを得ることができるでしょう。
8. 人脈をつくる
ビジネスの成功には人脈が欠かせません。他の人から成功法や失敗談をきくことで、自分のためのベストプラクティスを導くことができます。また、会話を通じて新しいアイデアが生まれることもあります。また、得た人脈によって新しい機会の扉が開くかもしれません。
まずは、自分の業界に関連するフォーラムやグループ、イベントに参加しましょう。オンラインであれば、他の人のスレッドにコメントしたり、自分のスレッドを立てたりして、自分のスキルや興味に合った話題に参加してみてください。
会話というものは、お互いが作り上げるものです。自分にとって価値のある情報を得たいのであれば、自分からも相手にとって価値のある情報を提供するようにしましょう。
9. チームをつくる
ひとりでビジネスを運営することも可能ですが、成長には限界があります。どんなに才能があっても、自分に不足しているスキルは他の人に頼る必要があります。たとえば、SNSマーケティングが苦手ならそういったことが得意な人を、営業が苦手なら話すのが得意な人を探しましょう。ビジネスの目指すことや価値観に共感してくれる人をみつけ、それぞれの強みを生かしたマネジメントができれば、ビジネスを加速させることができます。
また、専門的な業務は専門家に任せることも有効です。たとえば、税務や会計などは、専門家に入ってもらえば、納税でミスをするリスクが減ります。
10. コンテンツをつくる
オンラインでの存在感を高めたいなら、コンテンツマーケティングが効果的です。コンテンツを通じて、商品やブランドに対する関心を集めることができます。
動画やブログ記事、写真、イラスト、ポッドキャスト、漫画など、コンテンツにはさまざまな表現方法があります。SNSと組み合わせて展開していきましょう。
内容は、自社の最新情報から商品に関するヒントやコツまで、さまざまなアイデアが考えられます。たとえば、次のようなアイデアが挙げられるでしょう。
- 人気のある時事ネタへのコメント
- 業界にまつわるインフォグラフィック
- 社員インタビュー
- 商品開発の舞台裏
11. メーリングリストをつくる
メルマガは、費用対効果の高いマーケティング方法として知られており、スモールビジネスでも効果的です。ウェブサイトに登録フォームを設置して、顧客からメールアドレスを収集して、メーリングリストをつくりましょう。
Shopifyを利用している場合は、Shopifyメールというツールの使用がおすすめです。メールの作成から送信、メーリングリストの管理までを一元化できます。テンプレートを利用して、単純なテキストではなく、ブランドにあわせたデザイン性の高いメールを簡単につくることができます。
12. 課題に対する解決策を考える
スモールビジネスを成功させるための糸口のひとつは、自分や周りの人が抱える課題に対して解決策を考えることです。課題に対する解決策を提示できれば、その課題に困っている人や解決策に共感してくれる人がビジネスパートナーや顧客として関わってくれるようになります。
たとえば、花をサブスクリプションで販売するLIFFT(リフト)は、花卉業界の抱える課題に対する解決策としてサービスを開始しました。花卉業界は、店頭販売される花のほぼ半数が廃棄されてしまうこと、梱包や輸送コストがかさむこと、収益性の低さからくる低賃金、重労働といった問題を抱えています。こうした業界の課題に対するひとつの解決策として、LIFFTは「花農家から直送」かつ「サブスクリプション」で花を届けるというスタイルを考え出し、ビジネスパートナーである花農家や顧客の共感を得ています。
13. カスタマーサービスを整える
スモールビジネスの顧客維持に効果的なのは、高品質なカスタマーサービスを提供することです。カスタマーサービスがよければ、顧客満足度が高まり、顧客がブランドのファンになってくれます。
カスタマーサービスの質を上げるには、顧客が何を求めているかを正確に把握した上で対応することが重要です。よくある質問に対する回答をFAQページにまとめておけば、問い合わせする前に顧客が自分で疑問を解決できます。やりとりが必要なときは、無料のメッセージアプリであるShopify Inboxがおすすめです。Shopifyで構築したECサイトやShopアプリから、直接チャットで問い合わせを受け取ることができます。受け取ったフィードバックは、貴重な資産です。改善すべき点を特定して、顧客体験を向上させるための変更を行うようにしましょう。
また、あわせて顧客に対しレビューを依頼するのもいいでしょう。レビューは他の顧客から信頼を獲得するためのユーザー生成コンテンツ(UGC:User Generated Content)であり、スモールビジネスが社会的証明(ソーシャルプルーフ)を構築するための武器にもなります。
14. 競合分析をする
どんなビジネスにも競合他社は存在します。自分のビジネスと似た事業のやり方をリサーチし、消費者が競合の商品のどこを好んでいるのか、レビューを集めて把握しましょう。競合分析を行うことで、他の事業者との差別化を図るための長期的な戦略を立てることができます。
まずは、同様の製品やサービスを提供している企業を調べ、一覧を作ります。その後、それぞれの競合について情報を収集し、自分のビジネスの強みと弱みを、競合と比較して評価しましょう。情報の収集には次のツールが役立ちます。
- Googleサーチコンソール:アクセス解析ツール
- Similarweb(シミラーウェブ):アクセス解析ツール
- Mailcharts(メールチャーツ):Eメールを使ったマーケティング関連データを提供してくれるツール
- Buzzsumo(バズスモ):競合相手のドメイン名を入力すると、最もアクセスの多いコンテンツに加え、SNSでコンテンツがシェアされた合計回数や、シェアされた場所などをチェックできるツール
15. 単純作業を自動化する
単純作業には積極的にツールを活用し、できるものは自動化して作業時間を短縮しましょう。単純作業に割く時間が減り、よりクリエイティブな作業に時間を使えるようになります。
たとえば、経費計上をするとき、手動で金額を入力するのは手間がかかりますが、スマホのカメラを利用したOCRでレシートの金額が入力できれば、時間短縮になります。
自動化には次のようなツールもおすすめです。
- Trello(トレロ):プロジェクト管理ツール。こなさなければならないタスクを可視化し、共同で作業するメンバーに締切を告知する
- Google Calendar:ミーティングなどの予定をいれておくと、参加者へリマインドを送ってくれる
- IVRy(アイブリー):電話対応を効率化するIVR(自動応答)システム
16. 仕事以外の誘惑を遠ざけておく
スモールビジネスのオーナーは、在宅で仕事をする場合が多いです。家にある仕事以外のものに手をつけてしまうと、集中力が削がれてしまいます。たとえば、息抜きのつもりで始めたスマホゲームで1日が終わってしまったり、ちょっと始めた掃除が大掃除になってしまってしまったりと、家には気を散らす誘惑がたくさんあります。それらの影響をなるべく最小限に抑え、集中するための方法をみつけましょう。
たとえば、SNSの通知があるとついスマホをさわってしまうようなら、作業中は通知をオフにするのもいいでしょう。また、周囲の音が気になる場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンを使用するのも有効です。自分なりに、最も集中できる環境をつくりましょう。
17. 自分自身をメンテナンスする
ビジネスをまわしていくために、何より自分自身の心身を大切にしましょう。副業として始めた場合などは、時間を確保するだけでも精一杯かもしれません。なんとかして休みをとり、リズムをつくって、自分の心や体をきちんとメンテナンスしましょう。
以下の習慣をつけましょう。
- 睡眠時間は、1日7〜9時間はとる
- 定期的に運動する
- 栄養バランスのいい食事を摂る
- 仕事から離れてリフレッシュする時間をとる
ビジネスは短距離走ではなく長距離走です。長くビジネスを続けていくために、自分にとって一番いいリズムをみつけてください。
18. テクノロジーに投資する
テクノロジーに投資することで、顧客体験を向上させ、ビジネスを成長させることができます。新しいテクノロジーが使いこなせるか不安で、導入を躊躇する人もいるかもしれませんが、テクノロジーに投資することで顧客体験の向上や、提供するサービスの拡大が可能になります。
テクノロジーに投資した成功例として、静岡発のクラフトビールBeer OWLE(ビア アウル)があります。Beer OWLEは、店頭販売における在庫の計上ミスや配送事故などのトラブルを減らすため、Shopifyと連携したShopify POSを導入しました。古いシステムに代わり、Shopify POSを導入したことで、実店舗とECサイトにある在庫がリアルタイムで一元管理されるようになり、効率的な販売につながりました。
まとめ
スモールビジネスを成功させるには、計画的な準備と柔軟な対応が不可欠です。まずは自分の興味や知識を生かせる分野を選び、しっかりとした事業計画を立てましょう。また、資金準備や必要な手続きを怠らず進めることも重要です。始めた後は、競合分析や最新のマーケティング手法を取り入れつつ、効率的な運営をめざしましょう。集中できる環境をつくったり、心身をメンテナンスしたりと、長く元気に働ける習慣作りも大切にしてください。
よくある質問
スモールビジネスで儲けるには?
スモールビジネスで儲けるには、利益を確保することが大切です。目安としては20%の利益率を目指しましょう。これは、ビジネスの売り上げのうち5分の1が利益として残るということです。
スモールビジネスで重要なことは?
スモールビジネスで重要なことは、資金の確保とマーケティングです。資金不足はスモールビジネスが失敗する大きな原因のひとつです。キャッシュフローを維持し、顧客を満足させ続けることが成功につながります。
スモールビジネスでおすすめのアイデアは?
スモールビジネスでおすすめのアイデアは、自分の興味のある分野や、自分の趣味を生かしたビジネス、経験や知識が生かせるものです。例としては次が挙げられます。
- ハンドメイド作品の販売
- イラスト・絵・アートの販売
- 写真販売
- オンライン講座の開設
- コンサルティング
- ネットショップ運営
- コンテンツ制作
- 記事執筆
- 翻訳・通訳
- 動画制作
- 文章や漫画の販売
- 家事代行サービス
- 地元の観光ガイド
文:Taeko Adachi