自宅でお金を稼ぐ方法の1つとして、手作り石鹸のオンライン販売は有効です。自宅で簡単に作ることができ、材料も安価なことから、稼げる副業を始めたい人にもおすすめです。
また、スキンケアブランドを立ち上げたい人にとっても、オリジナル商品製造の第一歩となるでしょう。
この記事では、オンラインで手作り石鹸を販売する手順、初期費用、マーケティング戦略まで解説します。
手作り石鹸の販売に許可は必要?

手作り石鹸を販売する場合は、どのような石鹸を、どのように販売するかによって必要な許認可や手続きが異なります。
化粧品として販売する場合(洗顔・ボディ用など)
薬機法の化粧品に該当する場合は、手作り石鹸の販売には都道府県知事の許認可が必要です。薬剤師や大学の理系学部卒でなくても要件を満たす方法があるため、比較的申請しやすくなっています。
化粧品を製造・販売するには、以下の許可申請や届出を行います。
- 化粧品製造販売業許可:製品を市場に流通させるための許可
- 化粧品製造業許可:製品を製造するための許可
- 化粧品製造販売届:化粧品に関する情報を品目ごとに都道府県に申告する届出
なお化粧品の定義は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律から抜粋)」です。
そのため、例えば身体を清潔にするための「手洗い・洗顔・ボディ用の石鹸」は薬機法の化粧品に該当します。
また上記は自身で石鹸を手作りする場合で、OEM(自社ブランドの製品をメーカーに製造してもらうこと)で化粧品の製造から梱包まで委託する場合は、メーカーが許可申請や届出を行うため、自身では許可の取得や資格が必要ないことがほとんどです。
医薬部外品として販売する場合(薬用石鹸など)
手作り石鹸が医薬部外品に該当する場合は、都道府県知事・厚生労働省などから許認可を受ける必要があります。医薬部外品販売の許認可を得るために、薬剤師や薬学や化学を専攻した人などを総括製造販売責任者として置かなければならないなど、化粧品に比べて申請要件が厳しくなっています。
なお、医薬部外品の定義は「あせもやただれ等の防止などのために使用されるもので、人体に対する作用が緩和なものをいう。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律から抜粋)」で、例えば下記のような薬用石鹸が医薬部外品に該当します。
- メディカルソープ:肌荒れ防止を目的にした石鹸
- デオドラントソープ:肌の殺菌消毒を目的にした石鹸
雑貨として販売する場合
人体に使用しない雑貨としての石鹸の場合は薬機法の対象とならず、許認可が不要となる場合があります。
しかし、一部の石鹸には法的な定義があるため、含有量などに注意して製造する必要があるでしょう。下記が雑貨としての石鹸の例です。
- インテリアの石鹸(規定なし)
- 台所用の石鹸(純石けん分の含有重量が界面活性剤の総含有重量の60%以上)
- 洗濯用石鹸(純石けん分の含有重量が界面活性剤の総含有重量の70%以上)
雑貨として石鹸を販売する場合、パッケージやウェブサイトに石鹸による何らかの効果や「化粧品」「顔」「肌」などといった文言を記載すると化粧品扱いとなり、薬機法違反となってしまうので注意しましょう。
手作り石鹸のオンライン販売を始めるのにかかる費用はどれくらい?

手作り石鹸販売のビジネスは、50万円ほどで立ち上げることが可能と言われています。ビジネスが成長するにつれて費用は増加するため、以下の主要なコストごとに予算を考えましょう。
材料
選ぶ材料によってコストが変わります。多くの手作り石鹸は、苛性ソーダと油脂またはオイルの組み合わせでできています。オリーブオイルやココナッツオイルなどの高級油脂は、大量生産した菜種油よりも高価です。また一部の石鹸には、保湿剤やエッセンシャルオイル、染料などの追加成分が含まれています。
設備
手作り石鹸を作る一般的な方法は、ホットプロセスとコールドプロセスの2種類です。ホットプロセスとは石鹸の材料を加熱して作る方法、コールドプロセスとは材料が反応して発生する熱だけで作る方法で、自宅で製造する場合は下記の道具を使用します。
- 石鹸をカットする包丁やナイフ
- ブレンダーまたは泡立て器
- 電子レンジまたは湯煎のできる調理器具
- 苛性ソーダ用のボウル(ステンレスやガラス製)
- 石鹸用の型 など
ネットショップの準備
小規模に始める場合でも、ドメインの購入やウェブサイトの作成にかかる費用を予算に入れる必要があります。自身のドメインを持つことはサイトの信頼性を上げ、SEOの観点でも有利に働きます。
また、ウェブサイトのデザインを自分で行うかデザイナーに委託するか、商品撮影を自分で行うかフォトグラファーにお願いするかによってもコストが大きく変わります。
送料
送料には運送会社に支払う配送料と梱包材などの費用が含まれます。送料無料や一部負担するなどの販売戦略によってはコストが大きくなるため、注文金額や発送先、発送手段などさまざまな要素を踏まえて送料を設定する必要があります。
事業保険
オンラインで手作り石鹸を販売する際には、下記3点のリスクが考えられるため、事業保険への加入を必ず検討しましょう。PL保険(生産物賠償責任保険)や休業補填・サイバー保険等がこれらのリスクに対する主な事業保険です。
- 販売する商品の欠陥リスク
- 消費者の個人情報漏えいリスク
- オンライン販売運営者の急病や、災害等による休業リスク
手作り石鹸のオンライン販売を始めるための8つのステップ

1. ビジネスプランを策定する
手作り石鹸の製造とオンライン販売を成功させるうえで、明確なビジネスプランが欠かせません。ペルソナ設定を通して販売対象者を明らかにし、市場調査・競合調査をもとに差別化の方法を見出しましょう。
また手作り石鹸は自身でオンラインストアを立ち上げるだけでなく、minne(ミンネ)やEtsyなどのハンドメイド販売サイトを通じて石鹸を販売することができます。また、フリーマーケットへの出店や委託販売など対面で販売する手段もあり、オンライン・対面のマルチチャネルで販売する人もいます。
資金調達については、地方自治体の小規模ビジネスローンや補助金・助成金、また信用金庫の融資などを検討してみてください。
2. 事業用の口座・クレジットカードを作る
事業用の口座を作成することで資金管理がスムーズになり、また銀行口座に屋号がつくため顧客・取引先からの信用度向上を狙えます。
また事業に関わる支払いでクレジットカードを用いることで、いつ・どこで・どれくらいのお金を使ったか履歴で残すことができ、経費を計上する際の漏れを防ぐことができます。現在は、freeeなどクレジットカードの明細が自動で反映される便利な会計ソフトもあるため、経理や確定申告の手間を大幅に省くことができます。
3. 製品を差別化する
市場では多くの石鹸が販売されているため、自社商品には顧客が注目してくれる要素がなければ収益化は難しくなります。例えば珍しいデザインや成分を取り入れるなど、石鹸そのものに工夫を凝らすことを念頭に置くべきでしょう。
防腐剤や合成香料、合成着色剤などを使用しない石鹸を手作りして販売するnature-faloは、本業が無農薬栽培を行う農家であるという点で競合との差別化に成功しています。
自然派の石鹸を製造販売するサイトは数多くあるものの、自身の農園で育てたハーブから抽出したアロマオイルやアスパラガスの成分を使用することで独自性を出し、注目度を高めています。

4. ビジネスをブランディングする
ブランディングは顧客との信頼構築を築く上で欠かせない要素です。主に以下の4点を考えましょう。
ブランドアイデンティティを反映させたウェブサイトでは、Aboutページで製品に込める想いや製造の背景などのストーリーテリングを行うのも有効です。また、パッケージは自社商品の特徴やイメージを反映させたものにしましょう。自然派の石鹸であればエコパッケージを採用することで、開封体験や付加価値が高まります。
5. 材料と資材を調達する
材料を仕入れる前に、仕入れ先の価格を比較しましょう。大口発注やリピート利用で仕入れ価格を抑えられるかもしれません。
また、適正在庫を見極めることも大切です。石鹸を作るためのリードタイムや材料の経年劣化なども考慮して材料を注文する頻度や量を考えましょう。材料を供給する業者が必要な材料を常に持っているとも限らないため、メインの取引先以外にバックアップとなる業者を見つけておくようにしましょう。
6. 手作り石鹸を作る
さまざまな油脂、香料、装飾技法を試して、自身が魅力的に感じる製品を作り上げましょう。
また、注文を受け付け始める時点でどれだけの在庫を確保しておくべきかを考えておきましょう。大量のストックを抱える必要はありませんが、すぐに発送できる在庫を持っておくことが重要です。
まずは数種類の製品を小ロットで作り、売り上げなどで製品を評価し分類するABC分析などを用いて顧客に人気のある石鹸の種類を確認し、売れ筋に応じて生産を調整しましょう。
なお、経営の健全性を判断するうえで在庫管理は必要不可欠です。在庫を戦略的に管理できれば、余剰在庫や欠品のリスクを防いで利益を確保しやすくなるため、徹底的に管理しましょう。
7. 手作り石鹸の価格を設定する
価格設定する前に、原材料、製造時間、梱包資材などを含めたコストを把握します。また、競合他社の価格を理解するために市場調査を行いましょう。
製造コストや市場相場を把握したら、自社製品に合った価格を決定します。このとき、無理に市場相場に合わせる必要はありません。手作りの石鹸は時間と手間を要し、消費者もその付加価値を理解しやすいため、自分にとって適正だと思える価格を設定しましょう。
価格戦略として、最低購入金額を満たす顧客には送料無料を提供するか、価格に送料を含めるのも良いでしょう。
8. 手作り石鹸をマーケティングする
石鹸が完成し販売する準備が整ったら、マーケティングの成功事例を参考にターゲットにリーチしましょう。以下は手作り石鹸販売に有効なマーケティング戦略の一例です。
- SNSマーケティングを行う:インスタグラムでプレゼントキャンペーンを実施する
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)を共有する:ハッシュタグを作りSNS投稿を促す
- 動画マーケティングを活用する:泡立ち具合などを動画で伝える
- 口コミマーケティングを行う:レビューを商品ページで紹介する
- コンテンツマーケティングを行う:ターゲット層が抱える不満を解決するブログを作成する
- 無料サンプルを提供する:アンケート回答者に無料サンプルを配布したりお試しサイズを無料提供したりする
- リファラルマーケティングを実施する:クーポンコードを使った紹介キャンペーンを行う
例えば、沖縄で手作り石鹸を販売するSavonnerie de la luneは、ワークショップに参加した顧客のUGCをシェアすることで、ブランドの信頼性やブランド認知を高めています。UGCや動画は視聴者の記憶に残りやすく、シェアされることでより多くの人々にリーチできるメリットがあります。

まとめ
手作り石鹸を販売し利益を得るためには、適切なマーケティング戦略はもちろん、大前提として薬機法などの十分な理解が欠かせません。この記事を参考に、手作り石鹸の販売に必要な許認可について正しく理解し、マーケティングや販売の戦略を考えて、ターゲット層へ適切かつ効果的に製品を届けられるようにしましょう。
手作り石鹸のオンライン販売に関するよくある質問
ラベルなしで手作り石鹸をオンライン販売できますか?
手作り石鹸をオンライン販売するのに許認可は必要ですか?
化粧品として手作り石鹸を販売する場合、必要に応じて下記の許可・届出が必要です。
- 化粧品製造販売業許可
- 化粧品製造業許可(1号区分)
- 化粧品製造業許可(2号区分)
- 化粧品製造販売届
なお雑貨として手作り石鹸を販売する場合は、許可・届出が不要です。
少ない予算で手作り石鹸のオンライン販売を始められますか?
石鹸の基本的な材料は安価です。小ロットから始めれば、低予算で石鹸ビジネスを立ち上げることが可能です。
手作り石鹸を販売するために実店舗は必要ですか?
石鹸を販売するために実店舗は必要ありません。ECストアを立ち上げたり、オンラインマーケットプレイスを通じて販売したりするほか、フリーマーケットやポップアップストアで販売できます。
手作り石鹸の販売に資格は必要ですか?
手作り石鹸の販売に必ずしも資格は必要ありません。化粧品や医薬部外品としての石鹸を自身で製造・販売する場合は、許認可の申請に薬剤師の資格または理系大学の学士課程や、薬学・化学の課目を履修した上での実務経験などが必要になる場合があります。OEMなどであれば、メーカーが許認可まで請け負ってくれるため、資格は必要ありません。
文:Ryutaro Yamauchi