創業したばかりの個人事業主にとって、資金調達は難しいものです。そんなとき、補助金・助成金・給付金など、返済不要の資金援助は大変ありがたく、利用したいと考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、どんな補助金があるのか、個人事業主でも申請できるのかなど、わからないことも多いと思います。
そこでこの記事では、個人事業主も利用できる補助金や給付金をまとめました。補助金を得るためのポイントなども解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナの時代の変化に対応するために、思い切った事業再構築を目指す個人事業主や中小企業の挑戦を支援する補助金です。成長分野出枠とコロナ回復加速化枠が設けられています。
成長分野進出枠
ポストコロナに対応した事業再構築を行う事業者が対象です。
- 通常類型:成長分野での事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場の縮小等により、事業再構築が強く求められる事業者を支援
- GX進出類型:グリーン成長戦略「実行計画」14分野での取り組みをこれから行う事業者を支援
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
最低賃金引き上げの影響を大きく受ける事業者が対象です。
どちらの枠も、上乗せ措置(卒業促進上乗せ措置・中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置など)も実施しています。成長分野進出枠とコロナ回復加速化枠に同時申請することも可能です。
2025年のスケジュール
応募締切:第13回公募 令和7年3月26日(水)
補助金交付候補者の採択発表:令和7年6月下旬~7月上旬頃(予定)
IT導入補助金
IT導入補助金は、個人事業主向け補助金の中でも個人事業主の採択数が多い補助金です。業務効率化に向けたITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援していますが、対象となるITツールは事前に事務局の審査を受け、IT導入補助金のウェブサイトに公開されているものとなります。また、相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。
通常枠
自社の課題やニーズに合ったITツールを導入するための経費の一部を補助します。
インボイス枠
インボイス制度に対応した「会計」・「受発注」・「決済」の機能があるソフトウェア、PC・ハードウェア等を導入するための費用を補助します。
インボイス枠(電子取引類型)
インボイス制度に対応した「受発注」の機能があるソフトウェアを導入するための費用を補助します。
セキュリティ対策推進枠
サイバーセキュリティ対策を強化するためのITツールを導入する費用を補助します。
複数社連携IT導入類枠
サプライチェーンや商店街などの複数の中小企業・小規模事業者等が連携するITツールを導入するための費用を補助します。
これらの枠では、事業の目的ごとに補助対象となるITツールが異なるので、申請枠を間違えると審査を通過できない可能性があります。また、各枠に応じて補助率と補助額が異なるので、公式サイトを確認しておきましょう。
2025年のスケジュール
交付申請期間 2025年3月31日(月)受付開始~(予定)
第一次締切日 2025年5月12日(月)(予定)
中小企業省力化投資補助事業
中小企業省力化投資補助事業は、IoTやロボットなどの付加価値を高めたり生産性を向上させたりするのに効果的な汎用製品を導入することで、中小企業等の人手不足の解消や賃上げにつなげることを目的とした補助金です。
カタログ注文型
既存事業の省力化を支援する製品をカタログから選んで導入します。登録されている省力化製品は、業務プロセスの改善方法、省力化効果、価格妥当性などがすでに審査で検証されているため、自身で効果のある製品を探す必要がありません。
補助対象製品のカテゴリは、清掃ロボット、配膳ロボット、自動倉庫検品・仕分システム無人搬送車(AGV・AMR、スチームコンベクションオーブン券売機、自動チェックイン機自動精算機など幅広く、今後さらに拡大する見込みです。
一般型
一般型は、人手不足解消に効果がある設備を導入するための経費の一部を補助します。業務プロセスの自動化・高度化やロボット生産プロセスの改善、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、中小企業や個人事業主の現場の設備や事業内容等に合わせた設備導入・システム構築など、多様な省力化投資を促進し、生産性向上や賃上げにつなげることを目的としています。
2025年のスケジュール
申請様式公開:3月上旬
申請受付開始:3月中旬
申請締切:3月下旬
(いずれも予定)
事業承継・M&A補助金
事業承継・M&A補助金は、個人事業主が事業を売却したり引き継いだりするときに利用できる補助金です。2025年、事業継承・引継ぎ補助金から名称が変わりました。
事業継承促進枠
5年以内の親族内継承や従業員継承を予定している人が対象で、事業継承に関わる設備投資などの費用を補助します。
専門家活用枠
M&A時のフィナンシャルアドバイザー利用や仲介に関わる費用などを補助します。経営資源を譲り渡す側も譲り受ける側も申請することができます。
廃業・再チャレンジ枠
事業継承やM&Aに伴う廃業などに関わる費用を補助します。事業継承促進枠や専門家活用枠との併用も可能です。
PMI推進枠
M&A後の経営統合(PMI)に関わる、専門家に依頼する費用や設備投資などを補助します。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、創業間もない個人事業主やスモールビジネスでも申請しやすい補助金です。ウェブサイトの作成、販促、展示会出品など、新たな販路の開拓にかかる経費の一部が補助の対象となります。
小規模事業者持続化補助金の対象経費となるもの
- 機械装置等費
- 広報費
- ウェブサイト関連費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 新商品開発費
- 資料購入費
- 借料
- 設備処分費
- 委託・外注費
一定の要件を満たす場合にはインボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア等も対象となる場合があります。
補助金を申請するには、まず経営計画書や補助事業計画書を作成し、地域の商工会議所等から「事業支援計画書」の交付を受けなければなりません。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、賃上げ、インボイス導入などの制度変更に対応するための設備投資などを支援するものです。
ものづくり補助金は中小企業・小規模事業者などを対象にした制度ですが、個人事業主も中小事業者等に該当するため、ものづくり補助金の申請が可能です。しかし、個人事業主は法人と比べて、規模や財務状況などが小さく、補助金を活用した補助事業を適切に実施しにくいと判断されるため、ものづくり補助金の受給が難しい傾向にあります。申請する際は審査されるポイントを把握し、必要書類をしっかり作り込むことが必要です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための助成金ですが、個人事業主であっても条件を満たせば支給申請が可能です。特に個人事業主の場合、社会保険と雇用保険の適用事業所であることが対象条件として重要です。
業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者を対象としており、個人事業主でも申請が可能です。しかし、主な目的が従業員の事業場内最低賃金を引き上げることを支援することなので、従業員を雇用しているのが条件です。
中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成
中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成は、個人事業主や小規模事業者向けの退職金制度である中小企業退職金共済制度(中退共)の掛け金を補助する制度です。月々の掛け金の一部を国が助成してくれるほか、掛け金は経費として計上もできます。
助成要件
- 新規加入:掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間助成。特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)加入者である、短時間労働者については、さらに上乗せして助成。
例)掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円
- 月額助成:掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の3分の1を増額月から1年間助成。
住居確保給付金
住居確保給付金は、離職・廃業後2年以内であるか、もしくは収入が減った人に対して、住宅および就労機会の確保支援を行うのが目的の制度で、個人事業主やフリーランスも受けられます。ほかの補助金とは異なり、事業を直接支援するものではありません。
その他の資金調達方法3選
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1. 個人事業主向け融資
個人事業主向け融資は、新たに起業する人が事業資金を確保する最も一般的な方法の一つです。補助金とは異なり返済が必要なため、必要な資金額や使い道、そしてどのように収益を上げて返済するかを明確にしておくことが重要です。
2. クラウドファンディング
クラウドファンディングは、新規事業の資金調達方法として広く利用される手段の一つとなりました。オンラインのクラウドファンディングサイトで支援を募るのが一般的です。
クラウドファンディングは、少数の団体やエンジェル投資家から多額の資金を調達するのではなく、そのビジネスの可能性を信じる多くの一般の人々から少額の資金を集める方法です。
3. 投資家やベンチャーキャピタルによる資金提供
個人で新興企業を支援するエンジェル投資家や、未上場のスタートアップ企業に出資するベンチャーキャピタルからの支援も主な資金調達方法の1つです。投資家やベンチャーキャピタルは、新規事業に資金を提供し、その見返りとして株式の所有権や転換社債(将来的に株式に転換できる債券)などを得ます。
たとえば、アメリカのベンチャーキャピタルであるバックステージキャピタルは、女性や有色人種、LGBTQ+など、起業において過小評価されがちな起業家が所有する中小企業に資金を提供しています。日本でも類似する取り組みがあるため、そういったベンチャーキャピタルを探すのも投資家とマッチングする方法の一つです。
投資家やベンチャーキャピタルに支援をお願いする最大のメリットは、比較的短期間で多額の資金を提供してもらえることです。また、時には、事業を成長させる過程で貴重なメンターとしてサポートしてくれることもあります。
個人事業主向け補助金・助成金・給付金を獲得するには
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1. 自分の業種で利用できる補助金・助成金・給付金を探す
個人事業主向けの補助金・助成金は業種別であることも多いため、特定の業界団体や研究機関に絞って探すと、利用できる補助金や給付金を見つけられる可能性が高まります。業種を限定して探すことで、自分の事業に関心を持つ人から助言をもらったり、投資の機会をもたらしてくれる業界の専門家とのつながりを築いたりすることができます。
2. 資格要件をよく読む
当たり前のように思えるかもしれませんが、資格要件を見落として、実際には申請資格がない補助金に申請してしまうことはよくあります。要件をしっかり読み、補助金の資格を満たしているかどうか確認してください。もし自分が適格かどうか不明な場合は、団体に問い合わせて確認しましょう。
3. 自分の事業が支援団体のミッションと一致しているか確認する
個人事業主に補助金を提供する団体は、事業を支援することでその団体の目標を達成することを目指しています。支援を受ける際は、自分のビジネスがこの目的達成に貢献できるのか自問してみましょう。貢献できるか不安が残る場合は、補助金の獲得が難しいかもしれません。他の団体の補助金申請も検討してみましょう。
4. 補助金を何に使うか、用途を把握しておく
団体によっては、補助金で認められる経費を定めているところもあります。しかし、定めていない場合でも、どのようにお金を使うかを考えておくことは重要です。団体があなたの事業に補助金を支給するかどうかを判断する際、しっかりとした事業計画を持ち、その資金の使い道を明確にしておくと、事業が支援団体のミッションに合致していることを理解してもらいやすくなります。
5. イノベーションと事業拡大に焦点を当ててアピールする
個人事業主に給付金を提供する団体は、成長の見込みのある事業を好みます。事業をどのように拡大する計画があるのか、自社の商品や技術の将来性、そして自分の事業がその団体のミッションにどう貢献できるかに焦点を当ててアピールしてみましょう。
6. 支援団体との約束を守る
個人事業主に補助金を提供する団体には目的があり、あなたのビジネスアイデアがその目的を達成するのに貢献できると考えて、資金を提供してくれます。そのため、補助金の使い道について規定を設けていることが多くあります。助成金や給付金を受け取ったら、支援団体の規定を順守してビジネスに活用し、支援団体の目標に貢献できるようにしましょう。
まとめ
個人事業主向け補助金・助成金・給付金は、融資ではないので返済する必要はなく、事業資産を譲渡する必要もありません。しかし、団体の支援目的やミッションに合致していなければ、補助金を得ることはできません。まずは、自分のビジネスが制度の目的に合っているのか考えてみましょう。そして、もらったお金は使い道を明確にし、計画性をもって利用しましょう。
また、補助金や助成金を受けられないからといって、資金調達ができないというわけではありません。クラウドファンディングや融資など、個人事業主でも資金調達できる方法は他にもあります。
この記事を参考に、自分のビジネスに合った補助金や給付金を見つけてみてください。
よくある質問
補助金と助成金の違いは?
補助金は経済産業省や自治体などからの援助であるのに対し、助成金は厚生労働省系団体からの雇用に関わる援助という違いがあります。助成金はある一定の条件を満たせば受給できることが多く、補助金は、受給条件を満たしていても厳しい審査を通過しなければ受給できないという違いもあります。これは、助成金は人材育成を目的としているのに対して、補助金は、新規サービスの導入など特定の用途や事業について申請する必要があるからです。
個人事業主が融資を受けやすい金融機関は?
個人事業主が融資を受けやすい金融機関は、日本政策金融公庫です。政府系金融機関であり、創業時や事業拡大時など、さまざまな用途で利用できる融資制度が用意されています。その他には、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して提供する融資制度もあります。また地域密着型の金融機関である信用金庫も、個人事業主にとって心強い味方です。
補助金・助成金をもらうメリット・デメリットは?
メリット
- 返済の必要がない
- 初期投資や設備投資、人材育成といった費用を軽減できる
- 事業計画をブラッシュアップできる
デメリット
- 誰でも簡単に受給できるわけではない
- 前払いではない
- 課税対象となる
個人事業主の資金調達におすすめのクラウドファンディングサイトは?
エクイティ・クラウドファンディングは、個人事業主でも利用できる?
エクイティ・クラウドファンディングは、株式投資型クラウドファンディングであり、投資家に株式を発行する必要があるため、個人事業主は利用できません。法人化が必要となります。
個人事業主が給付金をもらう際に注意するべきことは?
- 使用用途を明確にする
- 余裕をもって準備する
- ローンを利用する際は借入れ前に返済計画を立てておく
また、個人事業主を対象としていても、事業の設立年度(開業届の提出時期)や確定申告の有無で利用対象外となってしまうこともあります。利用要件に見落としがないように注意してください。
文:Maiko Ito