WordPress(ワードプレス)には、ECサイトの開設や運営に役立つプラグイン(拡張機能)が豊富にあります。使い慣れたWordPressを活用しながら、既存のウェブサイトを簡単にECサイト化したり、Shopifyの販売管理機能と連携させたり、デジタルコンテンツやサブスクリプションサービスを販売したりすることができます。一方で、読み込み速度に影響を及ぼすプラグインもあるため、不要なプラグインのインストールは避ける必要があります。
この記事では、ECサイト向けにおすすめのプラグインと、その選び方やポイントについて解説します。
WordPressのECサイトプラグイン8選
1. Shopifyの購入ボタン(Buy Button)
購入ボタン(Buy Button)は、Shopifyと連携したカート機能や商品詳細の表示機能をWordPressサイトなどに設置できるプラグインです。既存サイトを活用しながら、Shopifyの決済機能や在庫管理機能を利用できるので、新しいECサイトを立ち上げる手間がかかりません。利用料金はShopifyのプランに含まれているため、追加費用も不要です。購入ボタンの設置方法は以下のとおりです。
- Shopifyの管理画面の設定から「アプリと販売チャネル」を選ぶ
- アプリと販売チャネルのページから「購入ボタン」を選択する
- 「販売チャネルを開く」を選択し、「購入ボタンを作成」をクリックする
- 「商品購入ボタン」を選ぶ
- ボタンに紐づける商品を検索機能またはカタログから探して「選択」をクリックする
- 「次へ」をクリックし、「コードをコピー」を選ぶ
- クリップボードにコードがコピーされるので、購入ボタンを表示させたいウェブページのHTMLに組み込む
アプリと販売チャネルのページで「コレクション購入ボタン」を選択すると、Shopifyのコレクションに登録された商品の購入ボタンを一括で作成することができます。
また、購入ボタンは商品に合わせて以下のカスタマイズも可能です。
- 商品のバリエーションを選択する
- ボタンのデザインを変更する
- ユーザーがボタンをクリックした際のアクションを変更する
- 同じブラウザタブで決済画面を開くようにする
2. WooCommerce
WooCommerce(ウーコマース)は、WordPressを活用してECサイトを構築するためのプラグインです。2023年5月時点で世界500万以上のサイトで利用されており、オープンソースのため基本機能は無料で利用することができます。ECサイトに必要な機能は一通りそろっており、商品数や訪問者数にも制限がありません。主な機能は以下のとおりです。
- ショップ管理
- 商品管理
- 在庫管理
- 注文管理
- SKU対応
- 顧客管理
- レビュー設定
- ショッピングカート
- 注文手続き
- カート管理
- クーポン作成
- 決済・配送
- 配送オプションの設定
- 決済方法の選択
- 消費税率の設定
- 分析・レポート
- 在庫レポート
- 売上レポート
- 顧客分析
また、拡張機能を追加することで以下のような機能も利用できます。
- SNS連携
- 会計ソフトとの同期
- 定期購入商品の販売
- 海外のECモールとの連携
拡張機能の一部は有料であるため、確認のうえ追加しましょう。
3. Easy Digital Downloads
Easy Digital Downloads(イージー・デジタル・ダウンローズ)は、WordPressでデジタルコンテンツを販売したい方におすすめのプラグインです。電子書籍や音声データ・PDFファイルのようなデジタル商品に特化しており、ファイルへのアクセス権限やアクティビティの追跡機能などを搭載したコンテンツのダウンロード販売機能をウェブサイトに追加することができます。セットアップウィザードが用意されており、初心者でもその指示に従って簡単に設定できるので、すぐに利用を開始できるでしょう。
商品登録や販売以外の主な機能は以下のとおりです。
- 購入者データの管理
- クーポン発行
- 分析レポート
- アフィリエイトシステム
- メーリングリスト
PayPalやGoogle Pay・Apple Payなどさまざまな決済方法とも連携できるため、ユーザーが自分に合った方法で商品を購入できます。なお利用料金は、無料プランから年額499ドルのプランまで複数用意されています。
4. Welcart e-Commerce
Welcart e-Commerce(ウェルカート イーコマース)は、日本企業が提供しているプラグインで、国内では2万6000サイトの導入実績があります。商品の登録や注文の管理をWordPressの管理画面から行えるようになり、標準で会員機能やポイント機能、セキュリティ機能などを備え、ダウンロードコンテンツや定期購入商品の販売にも対応することが可能です。
また、オープンソースのフリーウェアとして提供されているため利用料は無料で、プログラミングの知識があれば独自機能を自分で追加できるカスタマイズ性も特徴です。有料プランでは、サイト構築やメンテナンス、機能カスタマイズ、サーバーホスティングなどのサービスを利用することができます。
5. MemberPress
MemberPress(メンバープレス)は、WordPressサイトで会員制サービスやサブスクリプションビジネスを構築する際におすすめのプラグインです。会員レベルに応じたコンテンツへのアクセス制限から、会員ごとの料金やお試し期間などの詳細なカスタマイズ、決済処理まで全般的に対応できます。主な機能は以下のとおりです。
- 無制限の会員作成
- 会員へのメールマガジンの発行
- クーポンコードの作成
ただし、利用する際には359〜999ドルの年会費(初年度は50%オフ)を支払う必要があるため注意しましょう。無料トライアル期間として14日間は返金保証がされているので、導入に悩んでいる人にもおすすめです。
6. Ecwid Ecommerce Shopping Cart
Ecwid Ecommerce Shopping Cartは、WordPressサイトでネットショップを始めるために必要な機能を搭載したプラグインです。無料プランでは10種類の商品しか扱えませんが、月額35ドルで100種類、月額99ドルで無制限に商品を販売できます。
また、以下のような複数の販売チャネルとも連携できるので、一元管理で効率的な販売が可能です。
24時間365日対応の電話とチャットのカスタマーサポート(英語)が設けられていることに加え、有料プランでは無料コンサルティングや優先サポートも受けられます。クレジットカード業界のセキュリティ基準であるPCI DSSレベル1の認定を受けているため、安全にカード決済が利用できることも特徴です。
7. カラーミーショップ WordPress プラグイン
ECサイト構築サービスであるカラーミーショップに登録された商品情報に基づいた、WordPress上での商品ページの自動作成機能とXMLサイトマップの出力機能を追加するプラグインです。商品管理やショッピングカートの機能はカラーミーショップのシステムを利用しており、利用には同サービスの契約が必須となります。そのため、すでに同サービスを利用している、あるいはECサイト運営のための機能や料金プランに魅力を感じるというユーザー向けのプラグインといえるでしょう。
8. WP-OliverCart
WP-OliverCart(ダブリューピー・オリバーカート)は、WordPressで手軽にECサイトを立ち上げられる日本語対応のプラグインです。商品管理機能とショッピングカート機能・決済機能は、無料版でも利用できます。
有料版では顧客管理や受注管理のような、本格的な運用に役立つ機能も使えるようになります。初心者でも扱いやすく、個人店から小規模の事業者までさまざまなニーズに応えられるでしょう。
端末の画面サイズなどに応じて表示を変更できるレスポンシブデザインに対応しており、スマートフォンでの販売機会の拡大を測ることもできます。
WordPressのECサイトプラグインを選ぶ方法
WordPressにECサイトプラグインを導入する際は、ポイントを押さえて適切なプラグインを選びましょう。
1. 必要な機能を把握する
ECサイトに必要な機能をリストアップすることで、ビジネスモデルに合った機能を導入できます。主な機能は以下のとおりです。
- ショッピングカート機能:商品の選択と購入までの流れを管理する
- 決済機能:クレジットカードや電子マネーなどの支払い方法に対応する
- 管理機能:顧客情報や在庫、注文情報を管理する
- お問い合わせフォーム:ユーザーからの質問や要望を受け付ける
- マーケティング機能:SEOやSNSなどを使って商品の販売を促進する
ショッピングカート・決裁・管理については、必要不可欠な機能といえます。お問い合わせフォームでは、メールのほかチャットなどでリアルタイムにやり取りできるものもあります。また、マーケティング機能にはSNSとの連携や販売傾向の分析など、プラグインによって多くのバリエーションがあります。どのような機能を重視するか事前にリストアップしておくことで、プラグイン選びはスムーズになるでしょう。
2. プラグインの互換性とツールとの統合性を確かめる
既存WordPressサイトで使用されているテーマや、すでにインストール済みのプラグイン・SEOツールなどによっては、新しいプラグインの追加が不具合やトラブルの原因になる可能性もあります。
プラグインをインストールする前に、公式ページでWordPress本体、主要プラグイン・テーマとの互換性情報を調べておきましょう。ただし、互換性に問題があっても、プラグインやテーマのアップデートで対応できる場合もあります。
3. デモや無料お試し期間を利用して動作をチェックする
デモや無料お試し期間を利用して、機能や使い勝手を事前に確認することも重要です。プラグインの多くがデモや無料トライアル期間を設けているため、本格的な導入前に実際に操作して動作を確認できます。
また、サポート体制についてのチェックも欠かせません。質の高いQ&Aやサポート体制があれば、万が一不具合やトラブルが発生しても安心して利用できるでしょう。
WordPressのECサイトプラグインを利用するデメリット
1. セキュリティ面の不安がある
WordPressやWooCommerceなどで構築されたECサイトは、ソースコードが公開されているため、悪意あるハッカーからの攻撃リスクが高くなる傾向にあります。脆弱性に関する最新の情報も出回るスピードが早いので、深刻な被害を受ける危険性も少なくありません。
定期的なバックアップをとったうえで、WordPressを最新バージョンにアップデートし、安全性の高いプラグインを選ぶ必要があります。専用のセキュリティプラグインの導入も検討しましょう。
十分なセキュリティ対策ができない場合は、Shopifyのようなセキュリティが万全なECプラットフォームに切り替えることも選択肢の一つです。
2. 決済方法の種類が少ない
WordPressは、機能の制約や相性により最新の決済方法を導入できない可能性があります。昨今のユーザーは、自分に合った決済手段を求める傾向が強いため、EC販売における決済方法の選択肢が限られていると、機会損失につながることも少なくありません。できる限りさまざまな決済方法を用意しておきましょう。
3. カスタマイズに専門知識が必要な場合がある
WordPressのプラグインをカスタマイズする際に、専門知識が必要になる場合があります。たとえば、デザイン面ではテーマをカスタマイズしたりCSSを書き換えるために、HTMLとCSSの知識が必要です。また、機能の追加や改修にはPHPの知識も求められます。悪意ある攻撃からサイトやユーザー情報を守るには、幅広いセキュリティ知識も欠かせません。
WordPressのECサイトプラグインを選ぶ際のポイント
ECサイトプラグインを選ぶ際は、機能面だけでなくサポート体制や価格に関しても確認する必要があります。ユーザーが快適に利用できるようなプラグインを選びましょう。
1.サイトの読み込み速度に影響がないか
プラグインを導入することでサイトの読み込み速度が遅くなってしまうと、ユーザーが離脱してしまう可能性が高くなります。動作が重くなるプラグインは避けることと、不必要なプラグインはインストールし内容にしましょう。
使用していないプラグインがあれば、アンインストールすることで読み込み速度が改善されます。
2. ユーザーレビューは問題ないか
レビューに悪いコメントの多いプラグインは、不具合やトラブルを引き起こす可能性があります。新しいプラグインを選ぶ際は、必ずレビューを見てから導入を検討しましょう。
ただし、肯定的な評価しかない場合、開発元がレビュアーにコメントを指定してるケースがあります。客観的な視点で、メリットとデメリットがバランスよく書かれたレビューを参考にするのがおすすめです。また、古いレビューは最新のアップデートを反映していないことがあるため、新しいレビューを参考にしましょう。
3. カスタマーサポートは設けられているか
カスタマーサポートが設けられていれば、万が一トラブルや不具合が発生しても迅速に対応できます。メールやチャット、電話などで専門家に相談できれば、ウェブサイトの技術的な問題の解決や運用に関する相談まで可能となるでしょう。
4. 価格は問題ないか
優れた機能を備えていても、プラグインの利用料が予算を超えてしまうと、ECサイトの運営に支障をきたす可能性があります。ただし、安いオプションを利用した結果、機能面に制約がでたり不具合の発生リスクが高まったりするケースもあるので注意が必要です。
まとめ
WordPressサイトにECサイト機能を追加するプラグインには、さまざまな選択肢があります。デジタルコンテンツに特化したプラグインや複数の販売チャネルと連携したプラグインなど、代表的なプラグインの特徴をご紹介しました。既存のサイトやテーマとの相性による不具合や読み込み速度への影響が出ることもあるので、デモや無料お試し期間を活用して確かめておくと良いでしょう。
WordPressでECサイトの開設を考えている人は、ぜひこの記事を参考に、適切なプラグインを導入してみてください。
よくある質問
WordPressのECサイトプラグインにはどんな機能が必要?
WordPressでECサイトを構築する際には、以下のようなプラグインが必要です。
- ショッピングカート機能
- 決済機能
- 管理機能
- お問い合わせフォーム
- マーケティング機能
プラグインを利用することで、WordPressサイトを簡単にECサイトとして活用できるようになります。
WordPressでブログを始める方法は?
WordPressでブログを始める方法は以下のとおりです。
- レンタルサーバーを契約する
- 独自ドメインを取得する
- WordPressをインストールする
- 初期設定をする
- テーマを設定する
- プラグインを導入する
- 記事を作成し、公開する
WordPressは、手順に従うことで、初心者でも簡単にブログを始められます。
ネットショップを開業するためのサービスにはどんなものがある?
ネットショップを開業するためのサービスは以下のとおりです。
- BASE:初期費用・月額費用0円でネットショップを開設できる
- STORES:豊富なデザインテンプレートを利用して簡単にカスタマイズできる
- カラーミーショップ:サポートが充実している
- Shopify:世界でもトップクラスに利用されているECプラットフォーム
初期費用や月額料金がかからないサービスも多いですが、無料で使える機能の範囲を事前に確認しておきましょう。
文:Kana Fukuzumi