スモールビジネスに限らず、事業を展開していれば誰でも行き詰まることはあります。閉店を余儀なくされたり、以前は好調だった売り上げが激減してしまったり、さまざまな問題が起こるでしょう。
自分のビジネスを始めるというのは地図のない旅に出るようなもので、問題が立ちはだかると途方に暮れることもあると思います。
そこでこの記事では、そんな行き詰まりを切り開くためにするべきことを、さまざまな角度から紹介します。
行き詰まりを切り開く対応力

仕事で行き詰まったときに役立つスキルに、対応力があります。中でも、心理学者がLearned Resourcefulness(学習性対応力)(英語)と呼ぶ概念は、適切な方法を学ぶことで培われる対応力を意味し、行き詰まった際に精神をコントロールして解決策を考えられる冷静さを保つスキルや行動を指します。
学習性対応力で注目されるセルフコントロールには以下のようなものがあります。
- ポジティブな独り言を言う:挑戦する前から悲観的に考えている人は、失敗しやすい環境を自ら作り出してしまいます。成功した起業家には、いつでも楽観的な姿勢を維持してきた人が多く見られます。ポジティブな独り言で前向きな意識を保つようにしましょう。
- 問題解決までを手順として捉える:問題を明確化する、考え得る解決策を挙げる、各解決策を評価し順位をつける、そしてベストな解決策を実行する、この流れを順を追って行うことが大切です。問題が起きたときに、この手順を踏むことを認識していれば冷静に判断できます。
- 満足遅延行動をとる:満足遅延とは、より大きな利益を得るために、即座に手に入る小さな利益を我慢することです。ビジネスにおいても、大きな目標を実現するには長期間にわたる多大な努力を必要とするため、目先の利益にとらわれないようにすることが大切です。しかし、マイルストーンや中間目標の達成を祝うのは意欲向上に効果的です。
- 自己効力感:自分には目標を達成する力がある、自分自身や周囲の環境、そして結果をコントロールする力があるという信念を持つことも大切です。
さらに、学習性対応力は、社会とつながり周囲に手助けを依頼できる社会性も含みます。
つまり、仕事で行き詰まったときには、セルフコントロールと他者や社会に助けを求めることの両方が重要だということです。
行き詰まりを解消する5つの対策と事例

1. 現状を客観的に把握し、目標を設定する
多くの経営者が初めて行き詰まりを感じるのは、事業の立ち上げ時ではなく、売り上げが頭打ちになったときです。目標達成に遠く及ばない時点で手詰まりを感じたときは、一度立ち止まり、現状の把握とこれまで達成したことや行ってきたビジネス戦略などを書き出し、客観的に見つめなおす時間をもつことが大切です。
起業家の資質として素早い実行力も大切ですが、一度立ち止まって計画を立てる時間をとることも大切です。この時間は、目標を明確にし、競争力のある価格設定や外注化、資金確保など、目標達成のために最適な戦略を選ぶのに必要不可欠です。
立ち止まって現状把握することで行き詰まりを解決した例として、日本のアニメなどをモチーフにしたキーホルダーを販売するN/A Stock Company(エヌエイストックカンパニー)社のアダム・リブナオ氏のケースを見てみましょう。
行き詰まり
事業の初期段階にあった2、3年間、リブナオ氏とビジネスパートナーは、経営についての計画性を持たないまま、その場しのぎとも言えるビジネスプランを立てていました。最初の頃は売り上げも出て、新商品の製作や新しいビジネスチャンスにも恵まれましたが、事業は小規模なままでした。そして、次第に業績が伸び悩むようになり、新商品も作れず何週間も売り上げがない状態が続きました。その結果、大幅な割引をするしかないところまで追い込まれました。
行き詰まりの解決方法
行き詰まりを解決したのは、分析と調査をもとにした節目ごとの目標設定です。顧客は何を必要としているのか市場分析を行い、何が上手くいっていないのか、改善できる点は何かを調査し、そして、現実的な売り上げ目標は何かを考えました。
まず、1年の目標を掲げ、その目標に向けた6週間ごとのプロジェクト計画を立てました。事業を客観的に分析し課題と向き合い改善策を立てたことで、起業家精神も育ち、在庫過多の状態から、売り上げが3倍になるほどまで改善しました。さらに、ビジネスパートナーとよりよい協力関係を築け、作業プロセスもより簡単になるなど、事業全体が改善されました。
今までのペースを少し緩めて、経営について学んだすべての知識をもとに事業計画を練り直したことが非常に効果的だったとリブナオ氏は言います。そうすることで、自分たちのアイデアを整理してまとめることができ、新製品発表を定期的に行いながら事業を成長させていくというビジネスの道筋を見出すことできました。
2. Googleを活用する
Googleは、解決策を探すのに便利なツールです。Googleで自分が直面している問題を検索すると、同じ悩みを持つ人がいるだけでなく、解決策も見つけられることがよくあります。対応力を培うというのは、こういったツールを使いこなして自分で問題を解決できるようになることでもあります。
Googleで検索するときは、以下のような工夫をするのがおすすめです。
- 「" "」を質問に追加する:「" "」を使うことで、特定キーワードと完全一致する内容だけを表示するようにフィルタリングできます。例えば、「"2019年のクリスマスギフトガイド" ウェルネス製品」と検索すると、2019年のウェルネス製品の情報を見ることができ、自社の新しいウェルネス製品の特長を際立たせるコピーライティングの参考にすることができます。
- 「site:」コマンドをURLの前に追加する:「site:」の後に特定のURLを入力してキーワード検索すると、指定したサイトに限定して検索できます。例えば、「site:linkedin.com インフルエンサーマーケティング」と検索すると、LinkedIn内に限定したインフルエンサーマーケティングについての情報が表示されます。
- YouTubeで検索する:YouTubeの用途は音楽動画やエンターテイメントだけではありません。「〜をする方法/〜入門」といった学べる動画は、YouTubeの中でも非常に人気の高いコンテンツです。自分の問題に関連した解決策も見つけられるでしょう。
- 特定のキーワードで検索結果を強化する:「成功事例」というキーワードを追加し、「化粧品ブランド Facebook広告 成功事例」と検索すれば、Facebook広告を利用した化粧品ブランドの成功事例のみが表示されます。
「比較」というキーワードも便利です。例えば、「SMSマーケティング Eメールマーケティング 比較」というように検索してみましょう。
もし検索結果に不必要なものが含まれていたら、除外したいキーワードの前に「-」を追加することにより、その内容が検索結果に含まれないようにできます。
- Shopifyアプリストアで検索する:Shopifyアプリストアには、1,000個以上のアプリがあり、「デザイン性に優れたサイズチャート作成方法」といった簡単な内容から、「コンバージョン率の改善」のようなより大きな課題に至るまで、多岐にわたる問題を解決してくれます。
3. 競合相手からインスピレーションを得る
競合相手と自社を比較することから見えてくることはたくさんあります。アクセス数の増やし方、価格設定、市場で自社の商品を際立たせる方法など、さまざまなインスピレーションを得られるでしょう。
競合分析するには、ウェブサイトを閲覧するだけでなく、以下のような調査をしてより詳しく競合のビジネス戦略を探りましょう。
1. 競合のマーケティング戦略を分析する
SimilarWeb(シミラーウェブ)のような競合サイト分析ツールを使うことにより、競合他社がどのようにホームページへ誘導しているか、どのサイトがその企業のリンクを貼っているかなどを見ることができます。こういった情報は、自社のウェブサイトでどこに注力すべきかを判断する際にとても役立ちます。
2. 他社の広告を調べる
Meta広告ライブラリで、他社がどんな広告を使っているかを検索できます。デザインやコピーライティングの参考にしたり、差別化を図るための切り口を見つけたりできるでしょう。
3. 他社のメルマガを調べる
EC事業で重要なメールマーケティング戦略を他社がどのように実施しているのかを調べるのも大切です。競合他社のメルマガに登録して、配信頻度や件名、本文の構成やプロモーションの伝え方などを確認しましょう。調査で得た情報を整理し、メルマガテンプレートなども活用することで、効果的でオリジナリティのあるメルマガを配信できるようになります。
4. 第三者の手を借りる
他者や社会の手を借りるという社会性も学習性対応力のひとつです。他の起業家や専門家とつながることができるコミュニティやオンラインサービスを利用して、助言を求めてみましょう。
事業内容が似ている人や志を同じくする人を集めて、自らマスターマインドグループを立ち上げ、互いに助け合うという方法もあります。
例えば、以下のようなサービスやコミュニティがあります。
- カスタマーサポート:事業運営に使うほとんどのツールには、問題解決の手助けをしてくれるカスタマーサポートが付いています。Shopifyヘルプセンターでは、ビジネスやShopifyでの販売に関する質問にチャットボットが24時間対応します。
- オンライン交流会:起業家が集うオンライン交流会に参加することで、経験者から直接アドバイスをもらえたり、また自分の経験が誰かの助けになったりと、お互いに助け合うことができます。
- 専門家:店舗デザインや資金調達など、専門知識が必要となる部分で行き詰まっているのであれば、専門家に依頼すると良いでしょう。専門家は、検索エンジンで個別に探す以外にも、ランサーズのようなプラットフォームでフリーランスの専門家を探すことも可能です。Shopifyでは経験豊富なShopifyパートナーに依頼することができます。
- オンラインフォーラム:フォーラムには同じような関心や疑問を持った人々が集まるので、自分と同じ問題がすでに相談されていて解決策がすぐに見つかる可能性があります。Shopifyコミュニティのディスカッションフォーラムは質問内容で検索できるため、同じ質問が過去にされているか調べやすくなっています。
- オンラインコミュニティ:Facebookのコミュニティなど、起業家のためのオンラインコミュニティや会員制オンラインサロンをただ閲覧するだけでもたくさんのアイデアを得ることができます。具体的なアドバイスがほしいときは自分でも投稿すれば、世界中の起業家からアイデアをもらうことができるでしょう。
自分に適した相談場所を見つけたりコミュニティを形成したりできれば、生涯にわたる貴重な情報源となります。相談相手やコミュニティで交流する人は、必ずしも指導者やビジネスの先駆者である必要はありません。志を同じくする仲間が集うコミュニティの中で、解決方法が見えてくることもあります。
自分に合ったコミュニティに属し、仲間と助け合うことは、起業家のメンタルヘルスにとっても大切です。
環境に配慮したハンドメイド品を販売するsoo.ala(ソーアラ)社のリナ・ラヴェロハオナ氏は、起業家向けの短期講座で最適なコミュニティに出会いました。
ラヴェロハオナ氏が第三者の助けを借りて行き詰まりを解消したケースを見てみましょう。
行き詰まり
ラヴェロハオナ氏が初めて行き詰まりを感じたのは、2回目にフリーマーケットに参加したときでした。初回もあまり上手くは行かなかったものの、2回目はちょうどクリスマス前ということで売り上げが見込めると考えていました。しかし、売れた商品は1つだけでした。
隣にいた女性は何百個ものジュエリーを販売していたこともあり、ラヴェロハオナ氏は自分の結果にショックを受け落ち込んだだけでなく、自分のビジネスを続けていくべきかについて悩みはじめました。
行き詰まりの解決方法
行き詰まりを解消できたのは、一人で悩んでビジネスを諦めるのではなく、他の起業家と交流して情報や刺激を得ようと考え方を改めたからでした。
ラヴェロハオナ氏は起業家が集まるビジネス短期講座への参加を決め、助言し合うことのできる仲間を作りました。さらに、その中の何人かとは事業提携も行い、現在の事業の方向性へ切り替えるきっかけも生みだしています。
このように、一人で悩むのではなくコミュニティに入って悩みを共有したりアイデアを得たりしたことで、行き詰まりが解消されビジネスを続ける原動力にもなりました。
5. ビジネスの方向転換を検討する
事業は常に計画通りに行くとは限りません。予期せぬタイミングで好機が巡ってくることもあれば、ビジネスの主軸となっていたものが突然なくなり、事業のバランスが崩れてしまうこともあるでしょう。
大企業でも、大きな方向転換をしているところは多くあります。例えば、ECサイトを簡単に作成できるプラットフォームで広く知られるShopifyは、事業開始当初はスノーボードの販売をする小売業でした。
しかし、市場調査もせず、方向転換が良策だと裏付けるデータもないまま事業の方向性を変えるのは危険です。以下のような方法をベースに、市場やターゲット、競合分析を行ってから方向転換するようにしましょう。
- ターゲット層の変更や、新しい顧客層を獲得する方法を模索する:例えば、清涼感のある制汗剤などで有名なシーブリーズは、元々は20~30代のマリンスポーツを楽しむ男性をターゲットとしていました。しかし、日本市場を分析した結果、需要が10~20代の女性にあると判断し、ターゲット層を女子高校生に変更したことでヒットにつながりました。
- 特定の顧客を惹きつけるために商品またはブランドポジショニングを変更する:スポーツ飲料としてすでにブランド力のあったポカリスエットは、競合商品が飽和したことを受けて製品ポジショニングを変更しました。体液に近いイオンバランスで水分補給に適していることをアピールし、運動をする人だけでなく、体調不良の人や日常生活で効果的に水分補給をしたい人などに適した、健康的な清涼飲料水というポジションを獲得しました。
- 顧客のニーズに合わせて、販売方法を見直す:おやつのサブスクリプションサービスを提供するsnaq.me(スナックミー)は、単品でも購入したいという顧客の要望に応え、取り扱い店舗や直営店を設け対面での販売も開始しました。ニーズに応えたことで顧客満足度が高まっただけでなく、マルチチャネル販売が可能になり、売り上げ増加にもつながっています。
パーティドレスなどをデザインし販売するLovelee Designs(ラブリーデザインズ)社のリリー・ヒベール氏は、新型コロナウイルスの打撃を受けた際、大きく方向転換することで行き詰まりを解消しました。
行き詰まり
パンデミックの発生で世界中が自粛ムードになり、お祝いの席やイベント向けのカスタムデザインドレスの需要も激減してしまいました。
主要な収入源であった複数のファッションショーも中止され、ビジネスを続けても生活を維持できるかどうかわからず、会社勤めの生活に戻ることも真剣に検討するほどでした。
行き詰まりの解決方法
行き詰まりを解消できたのは、「このような状況下で顧客は何を必要としているのか」に注目し、マスク義務化のニュースを見てマスク販売に大きく方向転換したからでした。
ファッションデザイナーとしてのスキルと既存顧客やターゲット層の需要を組み合わせ、ファッショナブルで安全なマスクの販売に乗り出すことで、既存顧客を維持しながらブランドポジショニングを新しく獲得することに成功しました。ネットショップも新たに開設することで新しい顧客層も獲得し、より多くの人に自分のブランドを知ってもらうことができています。
まとめ
事業運営は常に順調に進むとは限りません。行き詰まったことを失敗と捉えたり、他人や社会の助けを借りることを弱さと思ったりせず、その都度適した方法を試みることができる対応力をつければ、行き詰まりをビジネスの成長につなげることができます。
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よくある質問
広告の活用に行き詰まりを感じたらどうしたらいい?
広告の活用に行き詰まりを感じたら、Meta広告ライブラリで他社がどんな広告を使っているかを検索してみましょう。デザインやコピーライティングについてインスピレーションを得たり、差別化を図るための切り口を見出したりできるでしょう。
競合のECサイトを分析するには?
SimilarWebという競合サイトを分析できるツールがあります。競合他社がどのようにホームページへ誘導しているか、どのサイトがその企業のリンクを貼っているか、などを見ることができます。
売り上げが頭打ちになったときにするべきことは?
売り上げが頭打ちになったときは、まず一度立ち止まり、現状と今まで何をしてきたのかを客観的に見てみます。そして、顧客は何を必要としているのか、何が上手くいっていないのか、改善できる点は何かを調査し、節目ごとの目標と1年後の目標、そして事業計画を立て直すと良いでしょう。
文:Kyoko Kitamura