小売店舗を運営するのに、もはや重くて巨大なレジは必要ありません。今は、タブレットやスマートフォンといったデバイスに、POSソフトウェアやアプリを組み合わせることで、常設店舗だけでなくポップアップストアやイベント出展など、どこでも取引を行うことができます。
幅広い種類のアプリを組み合わせ、状況にあわせて活用していけば、ただ運営するだけではなく、お店の売上をさらにアップさせていくことができます。この記事では、店舗の売上を上げるのに役立つアプリを、店舗運営の最適化、新規顧客開拓、在庫管理、顧客維持の4つのカテゴリ別にリストアップしました。
店舗運営の最適化に役立つアプリ7選
1. Shopify POS
用途:店舗とECの販売管理の統合
価格:基本機能は無料(Shopifyベーシックプラン以上の場合)
Shopify POS(ショッピファイ・ポス)は、店舗とECサイトでの販売管理や在庫管理、顧客管理などを連携させて一括管理できるPOSシステムです。商品の在庫や注文、顧客情報などがシームレスに同期されるため、商品が売れるたびにECサイトの情報を更新する必要がなくなります。レポートや分析の機能により的確な販売戦略もサポートします。
また、「オンラインで気になった商品をお店で実物を確認してから買う」「ECサイトで注文した商品を近隣の店舗で受け取る」など、オムニチャネル戦略による販売促進につなげることができます。
2. ubiregi
用途:個人店からチェーン店まで対応する販売管理
価格:1ヶ月間お試し無料。プランは月額6,900円〜
ubiregi(ユビレジ)は、iPadでつかえるクラウド型POSシステムです。レジ機能、売上管理、顧客管理まで備える多機能性に加えて、直感的に操作ができる点が特徴です。リアルタイムでのデータ同期により、どこからでも売り上げや在庫状況を把握できます。また、APIで決済システムや基幹システムなどの外部サービスと連携することも可能です。
3. キヅクモ
用途:店舗来客数をカウントできるセキュリティカメラ
価格:月額1,320円〜+初期費用(デバイス)35,000円~
キヅクモは、実店舗への来客数をリアルタイムで計測し、分析できるネットワークカメラサービスです。AI画像分析により車や人を識別し、来店客数などのデータをクラウドに送信します。店舗オーナーはスマートフォンやPCからデータや映像を確認できるため、セキュリティが向上するだけでなく、店内の導線分析や待ち状況の可視化を行い、スタッフ配置の最適化などに役立てることができます。
4. Magicplan
用途:店舗の見取り図シミュレーション
価格:無料。追加機能ができる課金プランは月額1,500円〜
どこに商品を配置し、どこにレジをもうけるかなど、店舗のレイアウトを設計するときに役立つのが、magicplan(マジックプラン)です。AR(拡張現実)技術により、スマートフォンやタブレットで実際の部屋をスキャンすることで店舗の見取り図を作成できます。そのデータをもとに、什器サイズや作業の見積もりを作成したり、オブジェクトを配置したレイアウトイメージを3Dで表示したりすることができます。
公式サイトは英語ですが、Apple Store、Google Playで提供されているアプリは日本語で利用できます。
5. DocuSign
用途:電子署名
価格:ダウンロードは無料。個人向けプランは月額1,208円~、チーム向けプランは月額3,100円〜
DocuSign(ドキュサイン)は、世界で100万社以上が使用している電子署名サービスです。電子署名とデジタル取引を簡単にし、ビジネスのペーパーレス化をサポートします。契約書や同意書、雇用関連の書類などの作成から送信、署名、管理まで、スマートフォンやタブレットで簡単に行うことができます。
アプリのインターフェースは直感的で使いやすく、どのデバイスからでもアクセスできるため、いつでもどこでも迅速に文書を処理できます。
セキュリティ面でも非常に高い水準を誇り、GDPRやeIDASといった国際規格に準拠しているため、法的に有効な取引を安全に行うことができます。
6. BookThatApp
用途:予約管理
価格:無料プランあり(上限10件)
BookThatApp(ブックザットアップ)は、ShopifyのECサイトに予約機能を導入できるアプリです。提供するサービスの種類に合わせて6種類の予約フォームが用意されており、レンタルサービス、美容院やサロン、ホテル、ツアーやアクティビティなど、予約が必要なあらゆるサービスに対応できます。
フォームは24時間365日予約可能で、リアルタイムで同期されるため、ダブルブッキングを受け付ける心配がありません。Googleカレンダーとの連携も可能です。
7. Shopify Marketplace Connect
用途:マルチチャネルのマーケットプレイス出品管理
価格:マーケットプレイスへの出品と、手動での注文インポートは無料
Shopify Marketplace Connect(ショッピファイ・マーケットプレイス・コネクト)はShopifyストアを複数の主要なECモールに連携し、商品を出品できるアプリです。すべての注文、リスティング、在庫を同期できるため、1ヶ所で管理が可能となります。
連携できるのは、以下のマーケットプレイスです。
- Amazon
- Target Plus(アメリカのみ)
- Walmart(アメリカのみ)
- eBay
- Etsy
マーケットプレイス連携には通貨両替が組み込まれているため、選択したマーケットプレイスに対応している通貨で商品を販売できます。
新規顧客開拓に役立つアプリ7選
1. Shop
用途:ブランド認知の拡大
価格:無料(Shopifyベーシックプラン以上の場合)
Shopアプリは、Shopifyで構築されたサイトで販売されている商品を、顧客がECモールのように検索できるアプリです。類似の商品やブランドを検索した顧客へのレコメンド機能や、季節ごとのイベントに応じた特集などにより、店舗の露出拡大を狙うことができます。
2024年9月現在、ユーザーインターフェースは英語で提供されており日本語には翻訳されていませんが、多数の海外ユーザーが利用しているため越境ECなどを考えている場合には最適です。また、Shopアプリには最寄り店舗の検索機能があるため、実店舗の顧客獲得も期待することができます。
2. Google ビジネスプロフィール
用途:ローカルSEOと店舗情報の管理
価格:無料
Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)は、企業の所在地、営業時間、写真、レビューなどをGoogle検索とGoogleマップ上に表示させることができる無料ツールです。
行きたい店舗や欲しい商品をGoogleで検索するユーザーにとって、Googleビジネスプロフィールは貴重な情報源です。また、検索サービスからビジネスの基本情報が表示されれば、顧客に信頼感や安心感を与えることにもつながります。
設定しておくことでユーザーに発見してもらいやすくなり、Google検索からの新規顧客の流入が期待できます。
3. Google & Youtube
用途:Google広告
価格:インストールは無料。キャンペーン開始には課金が必要
Google & YouTube(グーグルアンドユーチューブ)は、Shopifyで作成したストアと、GoogleやYouTubeを連携させるアプリです。検索で上位にいかない場合でも、Google広告を出すと潜在顧客にリーチできる可能性は高くなります。このアプリを利用すれば、Shopifyのダッシュボードから簡単にPPC(ペイ・パー・クリック)広告の出稿や予算調整を行なうことができます。
また、YouTubeを通じてShopifyストアの商品を販売することもできます。Google Merchant Centerのアカウントを持っている場合は、Googleショッピングに商品を無料で掲載可能です。Google アナリティクスも連携されるため、ECの分析データも利用できるようになります。
4. Facebook & Instagram
用途:FacebookとInstagramでの販売
価格:インストールは無料。キャンペーン開始には課金が必要
Facebook & Instagram(フェイスブックアンドインスタグラム)は、FacebookショップとInstagramショッピングを、ShopifyのECサイトに同期してくれるアプリです。注文や在庫の管理をShopifyの管理画面で一括して行えると同時に、人気商品がどれかといったインサイトを得ることができます。
また、購入画面へ直結する広告の出稿も簡単に行うことができ、Meta(メタ)からメールとチャットでサポートを受けることも可能です。このアプリにより、日本の人気SNSランキング1位のFacebookと4位のInstagramを活用した、新規顧客へのリーチが簡単になります。
5. TikTok
用途:TikTok広告
価格:無料
TikTok(ティックトック)は、トレンドが拡散されやすく、特にZ世代へのアプローチに最適なSNSです。またTikTok広告には、宣伝ではなくコンテンツとして認識されやすく、視聴者からの反応を得やすいという特徴があります。TikTok For BusinessのアカウントをShopifyと連携すれば、Shopifyの管理画面からECサイト上の商品写真にエフェクトやテキストを追加して簡単に広告を作成でき、そのまま出稿することができます。
さらに、TikTokピクセルというタグを利用することで、広告効果の分析やリターゲティングも可能になります。
6. Shopcodes
用途:商品の二次元バーコード作成
価格:無料
Shopcodes(ショップコード)は、商品情報をひもづけたQRコードを数分で手軽に作成できるアプリです。パッケージや店舗の商品タグにQRコードをつけておくと、顧客はスマートフォンのカメラでスキャンして商品の詳細を閲覧でき、そのまま購入に進むことも可能です。
QRコードに対して割引を追加できるほか、各QRコードがスキャンされた回数や購入に関するレポートも確認できるので、マーケティングにも役立ちます。
7. Shopifyメール
用途:メールマーケティング
価格:Shopifyベーシックプラン以上の場合は毎月10,000通まで無料。
Shopifyメールは、新規顧客の獲得と、エンゲージメントの強化に役立つメールマーケティング機能です。テンプレートを使って、ロゴや商品、ストアカラーを取り入れたメールを数分で作成することができます。テンプレートには、かご落ちメールや再入荷通知など、さまざまな目的に合わせたものが用意されており、メルマガの配信を簡単に行なうことができます。顧客の購入履歴に基づくリターゲティングもできるので、効果的なマーケティングが可能です。
在庫管理に役立つアプリ5選
1. ロジクラ
用途:iPhoneを利用した在庫管理の一元化
価格:Liteプランは月額12,800円〜
ロジクラは、店舗や倉庫での在庫管理の手間を軽減するクラウドベースのアプリです。入荷時や出荷時に商品バーコードをスキャンするだけで、在庫をクラウドで管理できます。品出しなどの作業もiPhoneで商品画像をみながら行うことができるので、商品を間違うことがありません。
商品マスタの作成は、CSVファイルをインポートすることが可能です。Shopifyとも連携できるので、店舗とEC両方の在庫をあわせて管理できます。
2. zaico
用途:在庫管理
価格:ミニマムプランは月額3980円〜
zaico(ザイコ)は、直感的で使いやすいインターフェースが特徴の在庫管理アプリです。クラウドベースなので、倉庫への入荷、営業担当者による出先での出庫記録、店頭販売など、異なる現場での在庫の増減がリアルタイムで反映されます。
バーコードスキャンを利用した入出荷管理には、特別な研修やトレーニングは必要ありません。棚卸しの時間が大幅に減少した、作業人数が半減したという導入事例が多く報告されています。
3. SetGo
用途:セット販売における在庫管理
価格:月額14ドル〜
SetGo(セットゴー)は、店舗の商品を組み合わせたセット商品を販売したい時に便利なアプリです。Shopifyのストアに登録されている商品の中からセット販売したい商品を選ぶだけで、セット商品をつくることができます。単品商品の在庫がなくなるとセット商品も自動で販売停止されるため、過剰販売の心配がありません。また、単品商品の在庫が補充されると、セット商品も自動で販売を再開できます。
4. StoreCRM
用途:再入荷メール
価格:無料体験あり。スタンダードプラン月額30ドル〜
StoreCRM(ストアシーアールエム)は、Shopifyストアの顧客関係管理アプリです。顧客情報や購買データをもとにしたカゴ落ちメールや誕生日メール、再入荷メール機能など、豊富な機能がそろっています。再入荷メールとは、顧客が在庫切れの商品に興味をもったときに登録しておくと、再入荷時に自動で通知メールを送る機能です。
再入荷メールにより販売機会の喪失を防ぎ、店舗の売上を上げるだけでなく、顧客満足度を高めることができます。また、StoreCRMは顧客の購入履歴や行動データを活用して、パーソナライズされたメッセージを送ることも可能です。
5. 販売在庫予測
用途:在庫の推移の分析と、販売予測
価格:対象SKU 10件までは無料で利用可能。スタンダードプランは9.8ドル〜
Shopifyアプリの販売在庫予測を活用すると、在庫状況を可視化し、販売予測を立てることができます。在庫推移、在庫消化日数、在庫切れ予測日、平均購入数などが可視化されることで、売れ行きが把握できるようになり、在庫切れによる販売機会の喪失を防止します。
また、任意の曜日や時間に在庫を確認するようにリマインドしてくれる機能もついています。
顧客維持に役立つアプリ4選
1. どこポイ
用途:ポイントシステムの導入
価格:無料プランあり。ベーシックプラン49ドル〜
どこポイは、Shopifyで作成したネットショップにポイント機能を追加できるアプリです。Shopify POSに連携することで、実店舗とECのどちらでも顧客にポイントを付与できるようになり、顧客維持に貢献します。
日本製のアプリであるため、日本語による導入サポートがあり、他ECシステムからShopifyへサイトを移行するときのポイント移行パッケージも提供しています。
2. Loloyal
用途:ロイヤリティプログラムの導入
価格:無料プランあり。月額29ドル〜
Loloyalは、Shopifyで利用できるロイヤリティプログラム構築用アプリです。ポイント、特典付与、友達からの紹介プログラム、会員ランクの設定や期間限定オファーなど、幅広い機能に対応しています。香港に本社をもつ会社が開発したアプリですが、日本語を含めた複数の言語に翻訳されています。
Shopify POSに連携することで、実店舗とECのどちらでも顧客にポイントを付与できるようになります。
3. VIP
用途:ロイヤリティプログラムの導入
価格:年額3600ドル〜
VIP(ビップ)は、Shopifyで利用できる日本製のロイヤリティプログラム構築用アプリです。Shopify POSと連携し、実店舗、オンラインストア、アプリで共通のロイヤリティプログラムを構築することができます。ポイントや会員ランク、リワードや友達紹介、会員限定価格などに対応しています。
2022年にはShopify Plus App Developer of the Yearを受賞しており、日本国内で多く利用されているアプリです。レビューアプリやEギフトのアプリなどと連携することも可能です。
4.Joy
用途:ロイヤリティプログラムの導入
価格:無料プランあり。プロフェッショナルプランは月額24.99ドル〜
Joy(ジョイ)は、Shopifyで利用できるロイヤリティプログラム構築用アプリです。ポイント機能のほか、「5回目や10回目の注文」などに対するマイルストーン報酬にも対応しています。POSとの連携やメール通知などの機能も提供しており、実店舗でも利用できます。レビュー数が多く、信頼性の高いアプリといえます。
まとめ
店舗運営の効率化は、店舗の売上を上げることにつながっています。POSシステムやリアルタイムでデータを同期できるアプリを導入することで、売上管理、在庫管理、顧客管理を一元化し、店舗運営の効率を大幅に向上させることが可能です。
新規顧客の獲得や顧客維持には、オンラインのアプリもフル活用していきましょう。GoogleビジネスプロフィールやSNS連携アプリを活用することで、オンラインでの集客力を強化し、ローカルSEO対策を行うことができます。
また、適切な在庫管理で販売機会を逃さないことや、メールマーケティングやポイントシステムの導入によりリピーターを増やし、顧客満足度を高めることも重要です。
店舗の状況にあわせて適切なアプリを導入し、KPIの達成を目指しましょう。
よくある質問
小売用アプリとは?
小売用アプリとは、小売業者が店舗運営を効率的に行うためのアプリです。店舗を訪れた顧客のスムーズな購入体験をサポートするアプリでもあります。
お店の売上を上げるには?
お店の売上を上げるには、次の方法が考えられます。
- 店舗運営を最適化することで顧客にスムーズなショッピング体験を提供する
- オンライン・オフラインの両面から新規顧客を開拓する
- 適切な在庫管理により、販売機会の損失を防止する
- ロイヤリティプログラムなどを駆使して、既存の顧客をリピーターに変える
文:Taeko Adachi