どんなに調子のいいときでもモチベーションの維持は難しいものです。アントレプレナーは特に、収入や事業の不安定さやそこからくる不安の影響を受けやすく、インポスター症候群(自分を過小評価してしまう心理状態)になってしまったり、上司の目などもないため先延ばし癖が出てしまったりして、モチベーションが下がりやすいことがあります。
経験を積むことで、行き詰まったときなどどんな状況下でもモチベーションを高く保つ考え方や方法が身についてきますが、誰でも起業家精神を持っているわけでないため、モチベーションの保ち方を模索している人も多いでしょう。
この記事では、起業家やクリエイターからのアドバイスや戦略をもとに、モチベーションを保つ方法を紹介します。起業家に限らず、何か目標に向かって努力したい人、起業家マインドを身につけたい人は、ぜひ参考にしてください。
モチベーションの要因

起業家であれば起業理由とモチベーションは密接に結びついているため、事業を始める動機を理解していないとモチベーションはすぐに枯渇してしまいます。そのため、特に起業初期の段階では、自分のモチベーションの要因を見つけることが重要です。
「なぜその事業をするのか」といったブランドストーリーの起点となるものや、マイルストーンや目標達成時の報酬など、モチベーションの源となるものを理解しておくことで、売り上げが低迷しているときやストレスが溜まっているときなどに、その要因を思い出してモチベーションを上げることが可能になります。
内発的モチベーションと外発的モチベーション
内発的モチベーション(内発的動機づけ)は自分の内面から生じるものです。必ずしも具体的な報酬を目的とするのではなく、純粋な興味関心や熱意から生まれます。学ぶこと、成長すること、経験を積むこと、何かを達成することへの好奇心は目標達成へと人々を突き動かします。
一方で、外発的モチベーション(外発的動機づけ)は、仕事をすることで得られる金銭や他者からの評価のような具体的な報酬に基づいています。また、必要な仕事やタスクをやらないことによる悪影響や失敗を避けたいという気持ちも、モチベーションの外的要因になると考えられています。
モチベーションの保ち方:効果的な11の方法

起業家やクリエイターに、モチベーションを保つためにしている戦略を教えてもらいました。習慣にする方法、集中力の保ち方、目標を達成する方法と併せてご紹介します。
1.趣味を仕事にする
社会的ステータスや金銭的な報酬よりも、音楽活動やイラスト制作などクリエイティブな活動から得る充足感を重視する人は、作品や好きなことへの熱意がモチベーションになります。このタイプの人は、趣味を仕事にするか、サイドビジネスとして取り組むとよいでしょう。
事業を始めるのであれば、自分の事業案について「自分はこれを楽しめるのか?」自問してみましょう。もし楽しめないと感じるのであればモチベーションを維持するのに苦労するかもしれません。幸福感が得られることがわかっているなら、それを基にした事業にするとモチベーションが維持しやすいはずです。
稲盛和夫(京セラ・第二電電創業者)氏は「仕事をとことん好きになれ」と言っています。好きなことをするのに勝るモチベーションを保つ方法はないため、趣味を仕事にする、あるいは稲盛氏の言うように仕事を趣味にできれば、モチベーション維持につながります。
2.上昇志向になる
売り上げノルマの実現、昇進、プロジェクトの成功など、目標の達成は大いにモチベーションを保つ要因になります。達成可能な範囲のKPIや目標を数値で設定するとさらに効果的です。
明確に目標設定したら目につく場所にリマインダーを表示し、目標達成につながる行動も習慣付けましょう。また、目標がぼやけてくるとモチベーションが低下しかねないので、定期的に目標を見直し、必要に応じて調整してください。
アメリカの大リーグで活躍する大谷翔平選手は、高校生のころから目標達成シートを作り、目標と取り組むべきことを書いていました。その際、フィジカル面の取り組みは数値目標を設定しています。
3.自分の基本的なニーズを満たす
基本的なニーズは、経済的な安定性、家族を支えること、精神的に健康でいられることなど、人により異なります。自分のニーズを理解していると、それを軸に他のするべきことや活動を調整できます。
例えば、仕事を優先しすぎてストレスが溜まっていると感じたら、いつもの行動パターンから抜け出して友人と楽しい時間を過ごします。これが結果的に仕事のモチベーションや新たな視点をもたらすことがあります。
4.無駄を排除する
日常的にモチベーションを感じるには、刺激やインスピレーションをくれるものごとの中に身を置いて退屈を避けましょう。それと同時に、自分の主要な目標の達成に結びつかないプロジェクトや活動に時間を費やすような無駄を排除することも大切です。
目的からの逸脱や無駄なこと以外に、単調さもモチベーションを下げる原因になります。意図的に単調さをなくすようにしたり、何か物珍しいことを取り入れたりするとよいでしょう。例えば、何か作業を進めるのに今までとは違う方法を学ぶと、新鮮な気持ちで取り組めるかもしれません。
5.先延ばしを根本的に解決する
モチベーションが湧かないのは先延ばし癖のせいである可能性もあります。業務が退屈に感じられる、もしくは大変そうで取りかかるのが億劫だと感じるようになると、先延ばしが習慣化してしまいます。これを克服しモチベーションを取り戻すには、その原因を解消する必要があります。
例えば複雑なプロジェクトの業務を細分化して、一つ終わるごとに自分に小さなご褒美をあげるようにすると、達成感が生まれて次の課題に取り組むモチベーションが湧くかもしれません。
6.モチベーションが高まる作業環境を作る
長時間を過ごすデスク周りや作業スペースなどは、生産性を高めるオフィスレイアウトにしましょう。楽しい気持ちにしてくれたり、目標を思い出させてくれたりするスペースにしてみてください。植木鉢を置く、動線を整える、モチベーションの湧く格言を書いて貼るなど、簡単な工夫でモチベーションが湧きやすくなります。
7.ポジティブなイメージを持つ
心から満たされているときや目標を達成したときの気持ちなど理想の未来を心に描きましょう。これはポジティブ・ビジュアライゼーションといって、想像力を駆使して望み通りの未来をイメージするウェルネス(健康を基盤とし、よりよく生きるための生活を目指すこと)のテクニックです。目標が鮮明に意識できるとモチベーションを高める手助けになるので、ぜひ取り入れてみてください。
ポジティブなイメージを持つだけでは結果にはつながりませんが、行動を起こす第一歩、そして目標達成にむけて挑戦し続けるスタート地点になります。ポジティブ・ビジュアライゼーションは、競技前に不安を抱えたアスリートが自信を高めるのに効果的であることが証明されています。
8.刺激を取り入れる
モチベーション維持には、ものごとを刺激的に保つことも重要です。行動的な人なら特に、すべてが順調なときであっても、刺激を得るためにあえて状況を変えてみるのもよいでしょう。新しいアイデアを追求する刺激は強力なモチベーションになります。あえてリスクの許容範囲を広げたり、未知の世界に少しだけ足を踏み入れたりしてみるのもよいかもしれません。
9.周りにモチベーションを求める
周囲から得られるモチベーション源には、本、ポッドキャスト、好きな料理、ビジネスメンターとの会話、気持ちを鼓舞するような名言、日記を書くこと、インスピレーションをくれる記事、仕事でもらった良いフィードバック、元気をくれる音楽などがあります。モチベーションを維持する方法の一つとして日常に取り入れてみてください。
司会者や慈善家として有名なオプラ・ウィンフリー氏は、毎日日記をつける、名言を読む、といったことを取り入れ、モチベーションを高めています。
10.自己実現を目指したり向上心を高めたりする
自己実現もモチベーションを保つ大きな要因になります。学ぶことや自己成長に興味があるなら、生活の中でそれが可能な機会を見つけて取り入れましょう。また、定期的に仕事から離れて新しいスキルの習得や人生を充実させることでリフレッシュすることも、結果としてモチベーションにつながります。
アスリートや音楽家などは、技術力の向上自体がモチベーションになっています。多くのアスリートがコロナ禍に試合の目処がたっていなくても日々練習に励むことができたのは、試合で結果を残すという外的要因だけでなく、自己実現という自発的な要因がモチベーションにつながっていたからです。
11.自分へのご褒美を欠かさない
モチベーションが高まるご褒美は人それぞれです。目標を設定したら、達成したときのご褒美やお祝いする時間も計画に組み込みましょう。
また、行動科学の専門家によると(英語)、報酬は目に見えるものとは限らず、体内で生じる化学反応が報酬となることもあります。ドーパミンは「幸せホルモン」の一つで、何かに成功したときに分泌されます。この「成功→報酬」の流れを体験した脳は、パブロフの犬のように報酬を期待するだけでドーパミンを出すことがあります。一度のドーパミン反応で脳が目標達成行動を繰り返すフィードバックループ(自己強化の経路)を作り出すので、モチベーションが維持されます。
まとめ
モチベーションの保ち方には、目標設定や環境の整備、習慣の見直しなどがあります。やる気を奪う習慣を打破して日々のルーチンを整え、自分にインスピレーションを与え続けることも大切です。
しかし、それには、自分のモチベーションの要因となるものが何であるかを理解することも必要です。目標に集中し、起業した理由など「なぜその行動をしたいのか」を思い出しましょう。自発的なモチベーションと外的要因によるモチベーションを解明したら、この記事を参考に継続的にモチベーションを高められる工夫を取り入れましょう。
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よくある質問
モチベーションを保つ一番の方法は?
モチベーションを保つ最善策は人によりますが、内発的モチベーションを保つなら充実感や向上心を刺激する、外的要因によるモチベーションを保つなら、ご褒美を用意するのが効果的です。モチベーション不足に苦しむ人は目標が曖昧すぎたり、報酬が苦労に見合っていなかったりすることが多くあります。
仕事のモチベーションがなくなってしまったら?
仕事でモチベーションがなくなってしまったら、まずは、自分の健康状態や生活習慣、職場環境を見直してみましょう。生活習慣や気の散る環境などがモチベーションの低下を招いているかもしれません。また、目標の見直しがモチベーション維持の方法として効果的な可能性もあります。仕事における目標設定に無理がないか見直し、場合によっては目標そのものややり方を修正しましょう。
モチベーションが上がる名言は?
- 小さなことを重ねることがとんでもないところへ行く唯一つの道(プロ野球選手・イチロー氏)
- 常に明るさを失わず努力する人には、神はちゃんと未来を準備してくれます。(京セラ創業者・稲盛和夫氏)
- 現状維持では、後退するばかりである(ウォルト・ディズニー)
文:Non Osakabe