ウェブサイトを訪れたときに、URLの先頭に付加された拡張子に気づいたことはありませんか?ウェブサイトの成長にサブドメインは重要ですが、その意味や設定方法、実際の使い方は初心者にとって理解しにくいかもしれません。この記事では、サブドメインについての基本的な内容や、設定の方法、そして初心者でも活用しやすい具体的な使い方までをわかりやすく解説します。
サブドメインとは?
サブドメインとは、メインのドメインを示す住所というべきURLに、任意の文字列を追加して作成できるドメインです。サブドメインを作成することで、既存のブランドやイメージを維持しながら新しいウェブサイトを作成できます。
例えばメインサイトのドメイン名が「○○.com」の場合、「blog.○○.com」や「help.○○.com」のようにblogやhelpなどのプレフィックス(接頭辞)が付いたものがサブドメインです。ちなみに、「○○」部分がルートドメイン、「.com」部分がトップレベルドメイン(TLD)と呼ばれます。ドメインを取得する方法を熟知していなくても簡単に設定することができます。
サブドメインとドメインの違い
サブドメインは、ルートドメインの拡張要素として機能するものです。独立したサイトのように扱え、本体ドメインのウェブサイトと用途やターゲットを分けやすくなります。ドメインは、これら複数のサブドメインやウェブページが紐づけられる、大きなまとまり全体を指します。
ただし、サブドメインは検索エンジン上で本体ドメインのURLが示すウェブサイトとは別のサイトとして認識されます。そのため両者のSEO対策はお互いに影響せず、サブドメインを作成した初期段階では検索順位の上位に表示されにくい傾向があります。
サブドメインとサブディレクトリの違い
![サブドメインとサブディレクトリの違い](https://cdn.shopify.com/s/files/1/1958/6155/files/shopify_h2_24_c67cb79c-0b3e-4dee-a56a-ecdf76cd0e26.png?v=1738961501)
サブドメインがメインサイトとは別のウェブサイトを作成する一方、サブディレクトリはウェブサイト内の一部として機能するページなどを作成するための仕組みです。URLで例をあげると、「○○.com/■■■」といった場合の「/■■■」部分がサブディレクトリを示しています。また、サブディレクトリはメインサイトの内部リンクやデータ、SEO対策をそのまま共有することができます。
サブドメインの使用目的
1. 海外での商品販売
サブドメインを使用することで、越境EC用のページを個別のウェブサイトとして作成できます。例えば、数カ国にわたって販売を行うのであれば、複数のサブドメインを作り各国の言語に対応したページをそれぞれ作成すると良いでしょう。
サブドメインの拡張子には地域名、国名、大陸名などを使うのがおすすめです。例えば、イギリスの顧客向けには「uk.○○.com」などを使うことで、ユーザーにより本体ドメインと関連性のある正当なサイトとして認識してもらえます。そうすることで、ドメインのSEO対策としても間接的な効果が見込めます。
2. サイトの試験運用
サブドメインを使用することによって、公開前にウェブサイトや個々のページを実際の動作環境で試すことが可能になります。一般のユーザーがアクセスする前に問題点やバグを見つけることができるので、サイトのリニューアル時や最新キャンペーンの案内時など、安心して公開できるでしょう。
使用するサブドメインは「test」など試験サイトであることがひと目でわかるものにします。そうすることで作業者にとってわかりやすいだけでなく、万が一間違って公開されてしまい一般ユーザーの目にふれてしまったときにも、正式なものではないと気がついてもらいやすくなります。
3. モバイル環境の最適化
モバイルサイト専用のサブドメインを作成することで、スマホなどに合わせた画面調整や専用ページ、機能の追加が可能なため、モバイルユーザーの使い勝手を向上させることができます。
Mordor Intelligence(英語)が2024年に公開したレポートによると、世界のモバイルコマース市場は2029年頃には1兆7,096億米ドルに拡大し、その間の年平均成長率(CAGR)は32.4%に達する見通しだと述べられています。これからのモバイルコマースの需要を考慮すると、モバイルでの応答性が重要であることがわかります。
サブドメインは、「mobile」のようにモバイル専用サイトであることをわかりやすく示すと良いでしょう。
4. ECサイトの立ち上げ
メインドメインのブランドやイメージを利用しつつ新しくECサイトを立ち上げたい場合、サブドメインが使用されることがあります。
ブログで収益化を図るために開設されたサイトやアフィリエイトサイトが、後からeコマース機能を加えたいと思ったときに、サブドメインを利用することで既存の読者やファンなどをECサイトへ誘導することができます。
既存のメインドメインを利用してEコマース用のサブドメインを作る場合には、「store」や「buy」など、ショッピングに特化したサイトであることがわかるようなサブドメインを利用しましょう。
5. 問い合わせ先
問い合わせページや技術サポート用のページにも、サブドメインを使用すると良い場合があります。メインサイトがデザイン性やブランディングを重視している場合でも、問い合わせや技術サポートなどのページではわかりやすさを重視したいことも多いでしょう。そのような場合、サブドメインを使うことでメインサイトとは別であることをユーザーに示し、デザインや印象に大きな違いがあっても違和感を抱かせないようにすることができます。
問い合わせ先やカスタマーサポートなどのサブドメインには、「help」「contact」「support」などがわかりやすくて良いでしょう。
6. カスタマーポータル
サブドメインを利用して、企業専用ログイン画面や登録情報を管理するためのカスタマーポータル(会員専用のウェブサイト)を設けているケースもあります。ログインすれば個々の注文状況、注文履歴、最新のプロモーション、ロイヤルティプログラムのステータスなどをチェックできるため、カスタマーポータルは顧客にとってとても便利な機能です。企業側にとっても、顧客自ら注文状況をチェックしてもらえるため、カスタマーサポートの負担減というメリットがあります。
カスタマーポータルなど顧客の個別ページへつながるサブドメインは、「clientportal」「my○○」や「mypage」など、自分専用ページだとイメージしやすいものにしましょう。
7. ブログ
ウェブサイトの中には、サブドメインを使ってブログページをメインページと区別するものもあります。ブログ用のCMS(コンテンツマネジメントシステム)には通常のウェブサイト作成とは異なる特化した機能も豊富で、ブログを始める場合にはそういったサービスを利用した方が良い場合もあります。その場合は、サブドメインを使ってCMSを導入すると良いでしょう。
サブドメインは「blog」「diary」「journal」などが考えられます。
8. ターゲット販売
メインドメインとは異なるユーザー層へアプローチしたり、複数の事業目標を達成したりするためにサブドメインを使うことも可能です。例えば、不動産会社が家具を扱う事業を始める場合、サブドメインとして「interior」を加えることで、顧客にひと目で新しく始めたインテリア事業だと認識してもらえます。
メインドメインとは別のサービスを新しく始めたい場合、サブドメインにその新規事業を連想させる単語を使用することで、認知の拡大が見込めます。英語表記では伝わりにくいと感じたら、日本語ドメインでサブドメインを作成できないか、利用しているサーバーを確認してみると良いでしょう。
サブドメインの設定方法
サブドメインの作り方は簡単です。DNSレコードを直接編集する場合や、ドメイン取得サービスの管理画面から設定する方法があります。
ここではShopify(ショッピファイ)を例に、ドメイン登録をした後のサブドメインの作り方を解説します。
- 管理画面から [設定] 、 [ドメイン] の順に選択
- 設定するメインドメイン(ルートドメイン)をクリック
- [サブドメイン] セクションで、[サブドメインを追加] をクリック
- 追加するサブドメイン(プレフィックス)を入力
- [保存] をクリック
サブドメインの使用例
Shopify
Shopifyヘルプセンターの日本語サイトは、「help.shopify.com/ja/」というサブドメインを使って、メインドメインとは別の場所にヘルプページを設けています。
サブドメインを使用することでよくある質問へのアクセスを分散させ、メインドメインの負荷を軽減することが可能です。ユーザーも、サポートが必要な状況でメインホームページ内を探しまわる必要がなくなります。
Benesse
通信教育などのサービスを提供するBenesse(ベネッセ)では、オンライン講座プラットフォームであるUdemy(ユーデミー)の情報サイトにサブドメインを利用しています。
Udemy自体はアメリカのUdemy, Inc.が運営し、プラットフォームのドメインは「udemy.com」ですが、日本での運営はベネッセが担っています。そのため、情報サイトのドメインを「udemy.benesse.co.jp」とすることで、日本での窓口がベネッセであることを明示しています。
Steam
ゲーム配信プラットフォームのSteam(スチーム)は、ストア、サポートページをサブドメインで分けています。ストアページでは「store.steampowered.com」を使用し、サポートページでは「help.steampowered.com」を使用しています。
ストアページはサブドメインを使って下層ページを作ることで、最新情報の頻繁な更新や多岐にわたるカテゴリーによるウェブサイトへの負担を軽減できます。
サブドメインを運用する際に気を付けること
SEO対策
サブドメインを使用する際には、独自のSEO対策を行いましょう。サブドメインのサイトはメインドメインとは別扱いとなり、基本的にSEO評価は引き継がれません。そのため、検索順位を上げるには個別の対策が必要です。Googleアナリティクスの設定を変更し、クロスドメイントラッキング(異なるドメインを持つ複数のサイト間で、Googleアナリティクスを使ってセッションとユーザー数を共有する方法)を導入すると、メインドメインとの流入経路を正確に計測できます。
ただし、関連性が高いと判断される場合はドメイン全体のSEO評価の影響を受ける可能性があるため、設定変更時にはサブドメインへの影響も考慮しましょう。
セキュリティ対策
サブドメインを作成する際は、セキュリティ対策をより万全にしなければなりません。例えば、セキュリティ対策が不十分なサブドメインでウイルスに感染したことで、顧客情報をやり取りしているメインドメインからも情報が漏洩してしまう、というケースも起こりかねません。また、管理不足で放置されていたサブドメインが他者に乗っ取られてしまう可能性もあります。
サブドメインを増やしたら、メインドメインと同様にウイルス対策やDNSレコードの管理をしっかりと行うなど、万全なセキュリティ対策を施しましょう。
まとめ
サブドメインをうまく利用すれば、ユーザーや企業側にも使い勝手の良いサイト構成が可能になります。新規事業の開始や新しいページ作成時などには、メインドメインの良い影響を維持しながら新しいウェブサイトを作成することも可能です。ただし、それと同時にSEO対策やセキュリティ対策など、考慮しなければならない側面が増えるのも事実です。
メインドメインとサブドメインの関係性や影響を吟味し、上手に活用して有益なサイト構築を目指しましょう。
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よくある質問
サブドメインとは?
サブドメインとは、ルートメインのURL冒頭に任意の文字を追加して作成したドメインのことです。例えば、「hanako.○○.com」というURLのドメインでは、「hanako」がサブドメインとなります。
サブドメインは独立したウェブサイト?
サブドメインはメインドメインの下位に位置するため独立したウェブサイトではありませんが、Googleなどの検索エンジンからはメインドメインとは別のサイトとして扱われています。
サブドメインを作る目的は?
サブドメインは、海外での販売、サイトの試験運用、モバイル環境の最適化、ECサイトやブログの派生など、様々な目的で利用することができます。
サブドメインとドメインの違いは?
サブドメインは、ドメインを拡張するための仕組みであるという点に違いがあります。ドメインは、複数のサブドメインやウェブページが集まったまとまり全体のことです。
サブドメインとサブディレクトリの違いは?
サブドメインは1つの個別のウェブサイトで、サブディレクトリは同じドメイン内で別の階層構造を構築したものです。例えば「help.shopify.com/ja」というURLの場合、「help」がサブドメインで「ja」がサブディレクトリであることがわかります。
文:Ryotetsu