自分のネットショップやビジネスが安定してきて余剰資金の運用を考えるようになった場合、新たな事業に投資をする際には事前にしっかり現状を把握し評価することが重要です。確かな理解をすることにより、ビジネスの発展のために正しい決断ができるようになります。大胆な発想や挑戦する姿勢と同じくらい、現状を正しく理解し、冷静に判断する力がアントレプレナー(起業家)には欠かせません。
投資の手法やタイミングを決定する際には、以下の4つを考慮することが重要です。これらを十分に把握できれば、事業にいくら投資すべきかを正しく判断できるようになります。
自社の財務状況を把握する

事業の成長に向けた投資を決断する前に、財務状況を把握しておく必要があります。こうした作業は、会計士に任せるべき領域だと思われるかもしれません。しかし、事業に関して最終的な意思決定をするのは経営者です。どれほど信頼できる会計士であっても、助言以上のことはできません。具体的には次の3つを行うことで、財務状況が把握できるようになります。
1. 投資に回せる金額を算出する
投資に回せる金額を算出するには、まず事業収入を「経営者の報酬」「事業経費」「税金」「利益」という4つのカテゴリーに振り分けます。これは、Mike Michalowicz(マイク・ミカロウィッツ)の著書『PROFIT FIRST お金を増やす技術—―借金が減り、キャッシュリッチな会社に変わる』で紹介されている方法です。
「まず利益を確保する」というのがPROFIT FIRST(プロフィットファースト)の基本です。一般的には「売り上げから必要経費を引き、残った額を利益とする」という考え方が主流ですが、プロフィットファーストではその逆を取ります。つまり、「売り上げから先に利益を確保し、残った額から経費を捻出する」という考え方です。では、利益をどのくらい確保すべきなのでしょうか。
本書には事業規模別に目標とすべき配分比率が記されています。事業規模が25万ドル(2025年2月時点で約3,756万円)以下の場合、利益5%、経営者の報酬50%、税金15%、事業経費30%が適切な配分とされています。ただし、税率は日本の制度に基づき調整が必要です。
たとえば、月間売り上げが100万円の会社の場合、目標とすべき毎月の内訳は次のようになります。
- 経営者の報酬:50万円(50%)
- 事業経費:30万円(30%)
- 税金:15万円(15%)
- 利益:5万円(5%)
投資に充てる資金は、基本的に「事業経費」から確保します。しかし、事業経費をすべて商品販売やその他の運営費用に充てざるを得ない場合、投資資金の確保は難しくなります。その際は、「経営者の報酬」を削減するか、一時的に「利益」の配分を抑えることを検討する必要があります。どちらを選択するかは、事業の状態や自身の経済状況を踏まえて判断します。
2. 年次予測を立てる
過去の売り上げデータに基づき、今後1年間の売り上げ予測を立てます。まずは季節ごとの需要を予測します。こうすることで、今後1年の流れや収支が見通せるようになるため、たとえば事業の閑散期にウェブデザインに投資をする、といったこともやりやすくなります。年単位で流れを考えることで、年度末に収支の帳尻を合わせ、赤字を防ぐことができます。
3. キャッシュフローの状況を把握する
事業投資を決定するときはいつでも、あらかじめ事業における現金の出入り(キャッシュフロー)の状況を把握しておくことが必要です。広告に大金を投入して、商品の仕入れができなくなってしまうようなことがあってはいけません。投資をする際にローンを組む予定であってもそうでなくても、いずれにせよキャッシュフローの状況を把握しておきましょう。
自分個人の経済状況を把握する
経営者個人の経済状況を把握することも、事業投資を考える上で大切です。事業は利益を生み出し、その一部は生活費として活用されるはずです。たとえ事業収入に頼らず生活できる状況でも、まずは自分の経済状況を把握し、それを踏まえて投資の方針を決めると良いでしょう。
また、事業があなた個人の主な収入源となっているのかどうかも、事業投資を考える上で重要です。事業を副業として営んでおり主な収入源が他にあるなら、経営者の報酬を低めに設定して事業投資の資金を確保することを検討してみましょう。事業が主な収入源だとしても、個人の支出の中身を見直すことで、経営者の報酬を減らし、その分を事業成長のための資金に回すことができるかもしれません。重要なのは、まず自分の経済状況を詳細に把握して改善の余地がないかを考察することです。
経営者の報酬における適正額を見極めるには

経営者個人の生活にかかる費用を正確に把握することで、経営者の報酬における適正額を見極めやすくなります。個人の事業を法人化している場合、給料の支払いも受け取りも自分で管理することになります。経営者は、自身の報酬額を決める権限があります。報酬額は自由に設定できますが、その額次第で事業に投資できる資金も変わります。
経営者個人の生活費を正確に把握するには、以下の3つを行うのが効果的です。
1. 家計簿アプリを使う
まずは、Zaim(ザイム)やMoney Forward ME(マネーフォワードミー)などの家計簿アプリを使ってみましょう。こうしたアプリを銀行口座やクレジットカードと連携させることで、実際にいくら使っているかが一目瞭然となります。
2. 個人の銀行口座における入出金状況を把握する
個人の銀行口座における過去数か月分の取引明細を確認することで、支出のパターンが見えてきます。支出のパターンを把握したところで、月ごとの支出計画を立てます。支出を見直す際には、過剰な削減は避けるのが賢明です。「外食を一切やめる」というような極端な計画ではなく、無理なく続けられる現実的な支出計画を立てることが大切です。
3. イレギュラーな支出を考慮に入れる
年に1回の支出やイレギュラーな支出、緊急時に発生する支出なども、忘れずに考慮にいれます。ファイナンシャルプランナーの多くは、いざというときに備え3〜6か月分の報酬を蓄えておくよう勧めています。
上記の3つを行い、月々に生活費として必要な額が把握できれば、自身(経営者)に対する適正な報酬額がわかるようになります。個人と事業の経済状況を完全に把握することで、目標達成に向けた効果的なお金の使い方を判断しやすくなります。
事業の目標を定める
自社の財務状況や個人の経済状況を把握できたら、次は事業投資における目標を定めましょう。まずは、資金をどこに投資するのかを決めていきます。在庫を増やすことに費やすのか、商品の写真をもっと美しく撮るために新しいカメラを購入するのか、ShopifyパートナーのようなECの専門家に支援を依頼するのかなど、ビジネスの特徴に沿って検討しなければなりません。
事業投資の計画を具体的に決める際、やっておくべきことが3つあります。これは、目標の内容に関わらず重要となります。
1. シナリオを立てる
投資の目標を決める際には、「この投資によってどんな結果を得るのか」という具体的なシナリオを考えることが重要です。投資対象は、事業に価値をもたらす活動につながるものであるべきです。売り上げに直結しない投資を行う場合も、投資の目的をはっきりさせることが必要です。
たとえば、カメラ機材を販売するなら、「使い方を詳しく説明するコンテンツを用意し、自社製品の価値を高める」というシナリオが考えられます。高級化粧品市場への参入を考えている場合は、「インフルエンサーを活用し、ブランドの認知度を高める」というシナリオが考えられます。
いずれにしても、投資対象を感覚で決めたり、誰かの手法をただまねたりするのではなく、事業の成長につながるようなシナリオを立て、そこに対して投資を考えることが大切です。
2. 評価基準を設ける
企業が設定した目標に対する任意の時点での達成度を測るための指標であるKPI(重要業績評価指標)を設定し、成果を数値で確認できるようにします。投資によってどのような成果が生まれ、それがどの数値に表れるのかを考え、適切なKPIを設定します。
売り上げアップを目標にするのであれば、売上額や新規顧客の獲得数などをKPIとして設定します。このように目標を数値で設定しておくことにより、「達成率〇%」と明確に評価することができます。
ECサイトを運営している場合は、成果をデータとして正しく知るために、無料のウェブサイト分析ツールであるGoogle アナリティクスを使用するのもよいでしょう。
3. 投資を再評価するタイミングを決める
事業投資を見直すタイミングについて、あらかじめ決めておきましょう。こうすることで、投資があまり効果的でなかった場合も、早めに軌道修正しやすくなります。たとえば、投資利益率(ROI)の最低ラインを下回った場合は投資を見直す、と決めるのも一つの手です。ROIは「投資からの総利益」から「投資コスト」を引き、その差を「投資コスト」で割った数値です。
まとめ
個人でビジネスを営む人が事業に資金を投資する際には、自社の財務状況と自分個人の経済状況、事業の目標の3つをあらかじめ把握しておく必要があります。これらを精査することで、事業投資に回せる資金額が見極められるようになります。
新たな投資先としてECサイトを立ち上げる際には、Shopify(ショッピファイ)をぜひご活用ください。ShopifyはEコマース分析ツールを備え、先に紹介したGoogleアナリティクスとも連携できるため、自社のECサイトの状況をデータで明確に把握することができます。まずは無料体験からお気軽にお試しください。
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よくある質問
重要業績評価指標(KPI)とは?
Key Performance Indicator(キー パフォーマンス インジケーター)の略で、企業が設定した目標に対する、任意の時点での達成度を測るための指標を意味します。
余剰資金とは?
必要な経費を差し引いた後に残る資金のことです。
事業投資する前に知っておくべきことは?
1.自社の財務状況、2.経営者個人の経済状況、3.経営者の報酬における適正額、4.事業の目標の4点をまずは把握するのが重要です。
投資利益率(ROI)とは?
投資した金額に対する利益率のことで、「投資からの総利益」から「投資コスト」を引き、その差を「投資コスト」で割った数値です。英語表記は「Return on Investment」、略してROIです。
文:Kyoko Kitamura