この記事は Command C の創業者であるSara Bacon氏がRFPへの回答よりも重要なことをまとめています。
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RFP(Request for Proposal: 提案依頼書)は、長い間わたしの悩みの種となっていました。わたしが怠惰で対応したくないからではなく、自分の12年間の経験を無料で提供することに抵抗があるからです。また、この手のゲームに参加してしまうと、業界のみんながそれに倣うべきだという前例を作ってしまいます。
そもそもRFPのあり方や概念について問題があると思います。世の中には良いRFP、悪いRFP、そしてどちらでもない曖昧なRFPもあります。しかし、経験上今まで見てきたRFPの大多数は、ひどく欠陥がある間違いだらけの資料ばかりで、その資料は知識も経験も資格もない人々によって用意されていました。
これの深刻な問題点は、そのRFPには最も望ましいソリューションとそれに対して支払われる対価が正確に記されていることです。つまり、実際に導入開発や作業をする人や経験豊富なプロが関わることなく、クライアントが社内リソースを使って自社分析・評価をしているか、もしくは二流コンサルタントを雇っていることになります。これはわたしたちみんなにとって、由々しき事態です。
ここで明確にしておきますが、わたしがこの記事で取り上げるのは、ベーシックなウェブサイトよりも複雑なソリューションを必要とするタイプのRFPです。eコマースサイトは、ある種の複雑さを体現しているものですが、Shopifyはこのかつて非常に複雑だった世界を、なんともシンプルなものに変えました。
ですから、わたしがここで話すWebソリューションとは、デザインテンプレートをパパッと適用して終了、というタイプのものではありません。わたしがここで扱う問題は、それを解決するためにクライアントのビジネスとオペレーションの深い理解が要求されるような類のものです。そこには複数のインテグレーションと複数のステークホルダーが関与します。
RFPとは?
先ずはRFPの定義と、デジタル業界でそれが通常どのようなものであるかを見てみましょう。
RFPとは、特定のサービスを探している会社が提出するドキュメントです。会社は自分たちの課題を詳述し(ほとんど場合解決策も記されている)、業者に対してどのような解決策をいくらで提供できるか説明したドキュメントの提出を期限付きで求めます。このドキュメントには、業者の会社概要、技術や実績など証拠となる情報、プロジェクトの詳細な開発スケジュールなどの多くの情報が含まれていることを求められます。
これら全て、事業者が案件獲得のための投資として捉えて、クライアントに無料で提供しています。例えば、体調を見てもらい相談するために病院を訪れたとしても、診察料の支払いが生じます。なぜクリエイティブ領域では、仕事や経験を無料で提供することがこんなにも頻繁に要求されるのでしょうか?
問題点
デジタル業界では、あらゆる商品、アイデア、サービス、人がコモディティ化しています。また、似たサービスや商品を提供している企業が多いため、事業者にとって選択肢が多くあります。しかし、かかる費用はどこも安くはありません。。そのことは、わたしたちは理解しています。しかし、期待する以上の成果を保証するような代替プロセスがあってもいいのではないでしょうか?
以下のような対応を何度もしたことがあります。
「このRFPに回答するということは、限られた少ない時間でこのプロジェクトが必要としているゴールを理解しなければならないことを意味します。そして技術調査や戦略がなく、どこに落とし穴や地雷があるか分からない中で、わたしたちの基準に沿ったプロジェクト開発費用を提示することになります。入札に参加している他の企業から得る回答も同じようなことが言えます。」
この言い方はとても厳しく、案件を失うリスクがありますが、運のいいことにわたしは、自分の信念に基づく仕事をし続けることができ、極限までコストを削ることがなくなりました。このアプローチによって、いかなる形であれ自分の会社の経営や企業文化の健全性を損ねたことはありません。
問題は、わたしたちの多くは前に見たことのあるやり方に従ってしまうということです。それもまあ、人間の性質です。しかし、これはデジタル業界の挑戦、行動喚起であり、新しい業界基準を地道に作り上げる作業となります。過去の方法論から脱却して、新しい、より良い、公平な道へとわたしたちは進むべきです。
ソリューション
この問題への正しい対処法は、有料のテクニカル・ディスカバリー(技術調査)です。事前に専門家に費用を支払い、複数の会社にあなたのビジネスの潜在的な課題解決方法を探ってもらうことで、何が真実かを理解できます。現在のテクノロジー界においては、特定の問題を解決するのに1つの解決策しかないということはありません。
問題が複雑であるほど、最良のソリューションです。時間とお金を前もって費やすことで、企業のオペレーションを研究し、さまざまなチームからの提案を比較し、投資への保証を実施できます。最良の結果を得るための、明らかにスマートで投資家的な方法といえます。
わたしたちは、テクニカル・ディスカバリーを経ていないRFPには回答しません。わたしたちは、このプロセスを数年の間に進化させてきました。今後も、機会あるごとに改良していくでしょう。手掛ける作業範囲に応じて、このプロセスをフェーズごとに区分けしています。
Technical Discovery プロセス
テクニカル・ディスカバリー(技術調査)の最初のフェーズでは、プロジェクトのフレームワークを確立させます。プロジェクトの全体的なゴールを定義することもここに含まれます。たとえば、ある種のゴールは次のように表現できるでしょう。「コアオペレーションを最小限のコストで実現できるような、サードパーティのツールをできるだけ少なく絞って選定する」
つまりわたしたちの仕事は、クライアントのオペレーションの棚卸しです。それをやるために、プロジェクト毎のステークホルダーを特定します。これはオペレーションに関与している全ての人たちです。そして彼らにインタビューをして、日々のタスク内容や仕事における重要事項を把握します。「絶対必要」な機能と、「あれば良い」機能を区別することがここでは大切です。
把握した内容の概要をドキュメントにしてクライアントに送り、内容が正しいか確認してもらいます。それから、包括的なプロジェクトの目標を達成できるように、それぞれのインタビュー内容を最終ドキュメントにまとめ、そこにはサードパーティのツールで解決する各コンポーネントを記載します。このディスカバリープロセスでは、偏見のない第三者(つまりわたしたちのような)が関与するのが最適です。
この時点で、サードパーティのプロバイダーを調査して提案するフェーズに入ります。在庫管理、POSレジ、3PL、配送などのプロバイダーがここに含まれてきますが、これらに限定されるわけではありません。検討するソフトウェアのデモをセットアップし、クライアントが実際に業務で使えそうかどうか、その感触を確かめてもらいます。
このプロセスでは、正しいソリューションとなりそうなものを絞り込みます。最終的にクライアントが望むのはベストな選択肢ですが、わたしたちの仕事は専門用語を排してその選択判断を助け、第三者の視点から抜け穴や溝を指摘することです。
ベストなソフトウェアの選定をクライアントが行ったら、わたしたちは作業範囲を明確にしてコストを算出します。一般的なRFPは、ソリューションが決まるまで専門家を蚊帳の外に置くか、これらの作業を専門家に対して無報酬で提供することを要求します。これでは、このプロセスに必要な徹底性をまっとうするインセンティブはとても小さくなります。
このディスカバリープロセスの利点は3つにまとめられます。
- クライアントは誤ったプラットフォームを選択するリスクを大幅に下げられる。
- プロジェクトの計画は事前に徹底的に明確化されているため、将来的に見落としが発生する可能性が低くなる。この結果、通常は実装のタイムラインを短縮でき、技術チームにとって見積もりのための作業範囲が明らかなので、未知数の要素に対する価格の高騰を避けられる。
- 8桁円の契約をする前に、お互いの信頼の基礎が築かれる。これはとても良いこと。
例えるならば
医療の例に戻りましょう。わたしが今まで目にしてきた大半の間違ったRFPの結果は、次のようなシナリオを反映しています。
歯が痛くなったので、歯医者に行きます。歯医者は、虫歯があり、根管治療か抜歯が必要だとわたしに告げます。痛みの原因を特定するため、X線などを使ったもう少し詳しい検査をする必要があると言われます。わたしは、オフィスを訪問したことの費用に加え、再検査の費用も支払う必要があります。
しかしその代わりに、わたしは歯医者にこれは虫歯だと主張します。わたしは歯医者ではなく、限られた知識しかありませんが、問題の当事者です。わたしはほかの可能性を認めず、虫歯を埋めることを選択します。数ヶ月後、わたしはまた歯医者に来て根管治療の支払いをしています。再検査の費用を事前に支払いたくなかったために、間違った問題解決の方法を取ってしまったからです。1つの問題を解決するために、2度のソリューションの費用を払いました。RFPに関する問題点は、まさにこのようなものです。
アクションを起こそう
わたしが友人や同僚に伝えたいのは、業界の品位を保ち向上させるために、わたしたちの時間は貴重であると主張することで、自分たちの役割を果たすようにしてほしいということです。あなたの経験と投資の両方に対して支払いが受けられるよう要求しましょう。あなたが専門家であるということが、クライアントにとって最大の利益となるのですから。
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