ECサイトは無料で開設できない、と思っている方もいるかもしれませんが、無料で販売サイトを開設することは可能です。今回の記事では、無料でECサイトを作れるサービスと、各サービスの特徴、サービスを選ぶ際に注意すべきポイントも合わせてご紹介します。
ECサイトを無料で作る3つの方法
1. SaaSを利用する
SaaSとは、クラウドベースで運営・管理されているソフトウェアとして提供されるサービスのことです。「Software as a Service(ソフトウェア アズ ア サービス)」の略で、サースまたはサーズと呼ばれています。SaaSには、複数のユーザーがサーバーやソフトウェアを共有するという特徴があります。
SaaS型ECサイトの中には、初期費用無料でサイトを開設できるサービスがあります。ただし、発生した売り上げに対して、販売手数料やサービス利用料、決済手数料がかかります。月額費用のかかるプランにアップグレードすると、これらの手数料の割合が下がることもあります。また、有料プランでは利用できる機能が増えたり、カスタマイズしやすくなったりすることもあるので、売上金額や使用したい機能に合わせてアップグレードを検討すると良いでしょう。
SaaSを利用するメリット
- 初心者でもECサイトを作りやすい
- ECサイトを構築・運営するのに必要な機能が揃っている
- ホスティングも含まれている
- ある程度カスタマイズできる
- 売り上げが増えた場合は、有料プランにアップグレードできる
SaaSを利用するデメリット
- 販売手数料やサービス利用料、決済手数料がかかる
- 独自ドメインを使えない場合がある
- 使用可能な決済方法は、利用するSaaSによって異なる
2. オープンソースを利用する
オープンソースとは、企業や個人が開発・無料公開しているソフトウェアのコードのことで、このソースコードを使ってECサイトを作ることができます。高度なカスタマイズを行いたい場合は、コーディングの知識が必要になりますが、コーディングを行わずにECサイトを構築できるソフトウェアもあります。また、プラグインやアプリなどの拡張機能を追加することで、コーディングをせずにカスタマイズする方法もあります。
オープンソースのソフトウェアを使ってECサイトを自分で開設する場合は、レンタルサーバーやドメイン取得などの費用が必要になります。自社ECサイトの構築が初めての方は、販売開始までに手間と時間がかかる可能性があることを覚えておいてください。
オープンソースを利用するメリット
- 独自ドメインでECサイトを開設できる
- サイトデザインを自由に決められるので、ブランディングがしやすい
- ソフトウェア使用料がかからない
オープンソースを利用するデメリット
- 高度なカスタマイズを行う場合やバグが発生した場合は、コーディングの知識がないと難しい
- 場合によっては、専門家に依頼する必要がある
- レンタルサーバー費用やドメイン費用が必要
- 自社でセキュリティ対策を行う必要がある
- 集客にはSEO対策などが必要になる
3. ECモールを利用する
ECモールとは、複数のブランドやショップが出店する、オンライン上のショッピングモールです。ECモールでは、すでに存在しているECサイトに自分のショップを出店する形式なので、アカウントを作成すれば、すぐに商品をネット販売することができます。
ECモールは、集客力があるため、ネットショップを開業したばかりの事業者もアクセスを集めやすいというメリットがあります。また、知名度のあるモールに出品することで、安心して商品を購入してもらいやすくなります。
SaaSやオープンソースを活用して開設する自社ECサイトとECモールの違いは、自社ECサイトは事業主が管理するのに対し、ECモールは複数の事業者が1つのECプラットフォーム内で商品やサービスを販売するところにあります。
ECモールを利用するメリット
- 集客力が高く、低コストで新規顧客を獲得しやすい
- テンプレートが用意されているので、簡単にECサイトが作れる
- ECサイトを構築・運営するのに必要な機能が備わっている
- モール自体の信頼度が高ければ、安心して商品を購入してもらえる
ECモールを利用するデメリット
- 自社ECサイトに比べるとカスタマイズ性が低い
- モールのデザインや機能を使うため、差別化が難しい
- 販売手数料や決済手数料などの料金がかかる
- 決済方法や機能は、モールが提供しているものに限定される
- 同モール内に競合他社がいるため競争率が高く、価格競争に陥りやすい
- 顧客データへのアクセスが限定的
- 独自ドメインは使えない
無料でECサイトが作れるサービス14選
SaaS
1. BASE(ベイス)
BASEは、初期費用・月額費用が無料で、新規参入事業者や初めてECサイトを開設したい人におすすめです。商品が売れた際には、決済手数料とサービス利用料がかかります。
集客やマーケティング、運営効率化をはかる機能は、どのプランでも無料で利用できます。さらに、直感的に操作ができるUIを採用しているため、デザインやサイト構築の知識がない方にも安心です。無料ですぐに使用できるテンプレートも充実しているため、ブランディングに合わせたECサイト構築ができます。
費用
- 決済手数料:3.6%+40円(Amazon PayまたはPayPalの場合は4.6%+40円)
- サービス利用料:3%
2. STORES(ストアーズ)
STORESは、無料プランでも商品登録数が無制限で、有料のベーシックプランと同じデザインエディタやテンプレートを使用できます。ECサイトを開設した場合に発生する費用は決済手数料のみで、メールマガジン機能やInstagram販売連携などの機能も充実しています。
無料プランでは、独自ドメインやアクセス解析などの機能が使用できない、というデメリットがありますが、STORESはネットショップだけではなく予約システムや決済、POSレジなどのサービスも提供しているため、販売チャネル拡大を視野に入れている人にも適しています。
費用
- 決済手数料:5.5%
3. おちゃのこネット
おちゃのこネットは、サイト構築やデザインの知識がなくてもネットショップが開設できるサービスで、無料プランでは商品数100点まで登録できます。SNS連携や会員・グループ管理、ポイントクーポンなどの機能もあり、試しにネットショップを開いてみたい方だけでなく、EC事業を拡大させたい人にも活用されています。
初期費用無料のスタートアッププランでは、使用できるドメインは共用ドメインのみです。独自ドメインを使用したい場合は、有料プランへのアップグレードが必要です。
費用
- 決済手数料:6.6%(税別)
4. easy my shop(イージーマイショップ)
easy my shopは、お得感のあるセット販売やオーダーメイド商品の販売に向いているSaaSサービスです。FacebookショップやInstagramショップと連携させることもできるため、ECサイトだけなくソーシャルコマースによる販売促進も可能です。
無料版ではデータ容量が200 MBまでとなっており、セット販売やオーダーメイド商品販売の機能を使いたい場合は、有料プランが必要となります。
費用
- 決済方法に応じた決済手数料
5. Cafe24(カフェ24)
Cafe24は、初期費用や月額費用、販売手数料が無料のECサイト開設サービスです。商品登録数や容量も無制限で、海外販売のできるECサイトを開設することもできます。1つのアカウントで最大6つまでECサイトを開設できます。
デザインツールはドラッグ&ドロップで簡単に操作できるほか、売上分析やデータ分析、顧客分析機能を活用して、売上アップや顧客維持につなげることが可能です。
費用
- 決済方法に応じた決済手数料
6. カラーミーショップ
カラーミーショップは、初期費用と月額費用が無料のフリープランを提供しており、月商10万円以下の事業者が対象となります。商品登録数は無制限ですが、容量は200 MBまでという制限があります。独自ドメインを設定できる、ランディングページや紹介ページなどを掲載できるフリーページを10ページまで作成できる機能があります。
費用
- 決済手数料:受注1件につき6.6%+30円(税抜)
- Amazon Payの場合の決済手数料:6.5%+30円(税抜)
7. Square(スクエア)オンラインビジネス
Squareは、フリープランを利用すれば、オンラインストアビルダーを使ってECサイトを無料で作成できます。SNSでの販売ができるだけでなく、SEOツールやクーポン、見込み客情報収集フォームといった機能も充実しているため、集客の効率化や売上アップを目指せます。
ECサイトは、SquareのPOSレジシステムと連携させることができるので、実店舗とオンラインでの販売を検討している人にもおすすめです。
費用
- 決済手数料:取引ごとに3.6%
オープンソース
8. WordPress(ワードプレス)
WordPressは、オープンソースのソフトウェアで、ブログやホームページ、ECサイトが作れます。簡単にページの作成や更新ができるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)なので、コーディングの知識がなくてもウェブサイトを作れます。
WordPressを使ってECサイトを開設するには、ECサイトの機能を追加するプラグイン(拡張機能)を追加する必要があります。WordPressをECサイト化する主なプラグインは次のとおりです。
- WooCommerce(ウーコマース)
- Welcart e-Commerce(ウェルカート イーコマース)
- MemberPress(メンバープレス、英語)
- WP-OliverCart(ダブリューピーオリバーカート)
ShopifyでECサイトを運営している方は、Shopifyの購入ボタン(Buy Button)を追加することで、WordPressをECサイト化することもできます。上記のプラグインを追加せずにボタンを追加する作業だけでECサイトの機能を追加できるため、すばやく販売チャネルを増やしたい人にもおすすめです。
9. EC-CUBE(イーシーキューブ)
EC-CUBEは、日本発のECオープンソースパッケージで、稼働店舗数は3万5000店舗以上に上ります。自社のビジネスモデルや提供する商品・サービスに合わせて自由にカスタマイズできるので、デザインや機能にこだわりたい方におすすめです。プラグインを追加することで機能を増やすこともできます。
EC-CUBEには相談窓口があるので、新規構築やリニューアル、事業拡大などの相談をしたり、サポートを受けたりすることができます。
10. Magento Open Source(マジェントオープンソース)
Magento Open Sourceは、世界中で利用されているオープンソースのECサイト構築ソフトです。2018年にアドビ社に買収されたことから、有料版はAdobe Commerce(アドビコマース)と呼ばれています。
Magento Open Sourceのソースコードは、GitHub(ギットハブ)と呼ばれるソフトウェア開発プラットフォームからダウンロードするため、ウェブサイト構築やコーディングの知識が必要となります。
ECモール
11. Amazon(アマゾン)
Amazonでは、自社ブランドのAmazonストアを無料で作成・編集することができ、Amazonの集客力を活用して、新規顧客開拓やブランド・商品の認知度向上が狙えます。毎月49点までの商品を販売する場合は、小口出品プランに該当するため、初期費用はかかりません。ただし、商品が1つ売れるごとに100円の成約金と販売手数料が発生します。
費用
- 成約金:商品1つにつき100円
- 販売手数料:商品のカテゴリーによる。最低販売手数料が設けられている場合がある。
12. Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、初期費用や月額システム利用料、売上ロイヤリティが無料のECモールです。Yahoo! JAPANやソフトバンク、LINE、PayPayなどのグループ企業の顧客基盤があるため、集客力にも定評があり、新規事業者にもおすすめのプラットフォームです。
費用
- ストアポイント原資負担:1%~15%
- キャンペーン原資負担:1.5%
- アフィリエイトパートナー報酬:1%~50%
- アフィリエイト手数料:アフィリエイトパートナー報酬の30%
13. Qoo10(キューテン)
初期費用や月額費用が無料のQoo10は、女性からの支持を得ているECモールです。費用をかけずにECサイトを立ち上げられるので、ノーリスクでEC事業に乗り出せます。また、ショップ運営に関するノウハウをまとめた記事や動画、事例などのコンテンツも充実しています。出店の準備から集客、販売、配送までをサポートする体制も整っています。
費用
- 販売手数料:6~10%(決済手数料込み)
- 追加手数料:キャンペーンや予約販売等の場合に発生する手数料
- 振込手数料:1回あたり150円
14. メルカリShops(ショップス)
メルカリShopsは、フリマアプリで有名なメルカリのECモールです。固定費や初期費用は無料で、商品が売れた場合には、商品価格の10%が手数料として引かれる仕組みです。
すでに自社サイトやネットショップを持っている場合は、API連携機能を使ってECサイトを一元管理できるほか、商品の一括登録やタイムセール機能など、出品・運営がしやすいという特徴があります。毎月2,300万人以上が訪れるメルカリに商品を掲載できるので、販路拡大を狙う場合にも適しています。
費用
販売手数料:販売価格の10%
無料でECサイトを開設する際の注意点
売り上げと運用コストのバランス
無料でECサイトを開設する場合に、特に気を付けたいのが売り上げと運用コストのバランスです。初期費用や月額費用が無料の場合、規模が小さい場合はコストをかけずに安心して事業を始められます。規模が小さく売り上げが少ない間は、手数料が高くても大きな影響はないかもしれませんが、ビジネスの規模が大きくなるにつれて、決済手数料や販売手数料を無視できなくなる可能性があります。そのため、ある程度の売り上げが見込める場合は、初期費用や月額費用を支払っても、決済手数料や販売手数料が低いサービスを利用する方が利益をあげやすいでしょう。
起業したばかりの頃は月額無料のプランを利用し、売り上げの増加に合わせて有料プランに切り替えることも念頭に置いておくことをおすすめします。
ECサイトをオープンするまでにかかる時間
ECサイトの制作開始からオープンするまでに必要な期間は、利用するサービスによって異なります。審査が必要になる場合や、審査は不要でも自社でサイト構築をするために時間がかかってしまう場合もあります。また、ブランディングのためにデザインにこだわってECサイトを開設することもできますが、高度な機能やデザインを採用することで、オープンが遅くなってしまう可能性もあります。
サイトをオープンするまでにかかる時間は、ECサイトの規模や取り扱う商品の数にも影響されるため、サイト構築から商品出品までにかかる時間を把握し、リリース予定日に間に合うように余裕をもって準備をすると良いでしょう。
機能の確認
初期費用や月額費用、手数料などを目安に利用するサービスを決定する人は少なくありませんが、自社商品やサービスを販売するうえで必要な機能が備わっているかどうかを忘れずに確認しましょう。
費用面ばかりに注目してしまうと、いざECサイトをオープンする際に機能が不足しており、サービスを乗り換えたり、再度ECサイトを作ったりしなければならなくなる可能性があります。将来的に必要になりそうな機能が備わっているか、備わっていない場合は追加できるかどうか、といった点も確認しておくと安心です。
セキュリティ対策
顧客の住所や電話番号、クレジットカード情報といった個人情報を扱うことになるので、セキュリティ対策がしっかりしたサービスを選ぶ必要があります。セキュリティ対策を怠ったことで情報が漏洩してしまった場合、顧客からの信用を失うだけでなく、損害賠償請求を受ける可能性もあります。トラブルを避けるためにも、利用を検討しているサービスのセキュリティ対策やサポートを事前に確認しておきましょう。
プラン変更ができるかどうか
ビジネスの成長に合わせて、プランを変更できるサービスが安心です。事業の拡大に合わせて取扱商品数を増やしたり、機能を追加したりする必要が出てくる可能性は十分にあります。一時的に売り上げが落ち込んだ時にダウングレードしたいというケースも考えられます。事業規模に合わせて柔軟にプランを変更できるサービスを利用しましょう。
まとめ
ECサイトを無料で開設する方法には、SaaS、オープンソース、ECモールの3つがあります。無料のSaaSやECモールは、初心者でも操作がしやすい反面、カスタマイズが限定的であったり、独自ドメインが使えなかったりする場合があります。オープンソースの場合は、ECサイトの開設自体は費用がかかりませんが、自分でレンタルサーバー契約をしたり、ドメイン名を取得・更新したりする必要があるほか、高度なカスタマイズを行うには専門知識が必要になってきます。
この記事では、無料でECサイトが作れるサービスをご紹介しました。これからECサイトを立ち上げる予定の方は、今回紹介したサービスの長所と短所をよく理解したうえで、自分のビジネスに合ったサービスを見つけて活用してみてください。
Shopifyには、3日間の無料体験期間があり、最初の1か月間は月額150円でご利用いただけます。これからEC事業を始める方や、ECプラットフォームの乗り換えを検討している方にも安心してお試しいただけますので、是非ご活用ください。
ECサイトを無料で開設する方法に関するよくある質問
ECサイトを無料で開設するメリットは?
- 初期費用や固定費を抑えられる
- 既存のテンプレートを使うことで、開設にかかる時間も節約できる
- 小規模ビジネスでも安心して始められる
ECサイトを無料で開設するデメリットは?
- 販売手数料や決済手数料が高額な場合がある
- デザインの自由度が低い
- サービスによって利用できる機能が異なる
ECサイトを無料で開設するサービスを選ぶ際に比較すべきポイントは?
- 利用できる機能
- 販売手数料
- 決済手数料
- 登録できる商品数
- プラン変更の可否
- 有料プランの機能やコスト