ECサイトを訪れたユーザーが目にするのは、サイトのデザイン、商品の画像や説明ですが、その裏側ではCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が複雑な取引処理や在庫管理をサポートしています。CMSにはさまざまな種類がありますが、ショッピング特有の機能が求められるECサイトの構築とその運営においては、ECサイトに特化したCMSが非常に便利です。
この記事では、ECサイト用CMSの概要とメリット、おすすめのECサイト構築プラットフォームを6つ紹介します。
ECサイト用CMSとは?
ECサイト用のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)とは、ECサイトに特化したCMSです。
CMSとは、ウェブサイトを構築・管理するためのシステムのことです。ECサイトは通常のウェブサイトと比較して、決済や在庫管理、顧客とのやり取りの記録など、さまざまな機能が求められます。ECサイトの構築には、ECサイト用CMSを利用すると、ショッピングカートや決済、配送管理など、ECに必須の機能を簡単に実装することができ、ECサイトを複数のユーザーで同時に管理できるようになります。
ECサイト用CMSには、次の2つのタイプがあります。
SaaS(サース/サーズ)型
SaaS型CMSは、定額料金を支払うことで、インターネット上でウェブサイトが作れるCMSです。CMSの提供元がクラウド上でホストしており、セキュリティ対策や定期的なアップデートを行ってくれます。管理画面からログインするだけで使用することができ、導入や運用に専門知識は不要です。
オープンソース型
無料でダウンロードしてカスタマイズできるCMSです。商用・非商用を問わず誰でも利用できますが、希望通りにカスタマイズするには高度な技術的知識が求められます。
ECサイト構築でCMSを利用するメリット
使いやすい
ECストアのデザインのカスタマイズ、商品の追加や在庫の更新、注文の処理などを、簡単に行うことができます。直感的に操作しやすいダッシュボード、わかりやすい設定、質の高いヘルプセンターにより、日々の運営をスムーズに進めて時間を節約し、最も重要であるビジネスの拡大に時間を割くことができます。オーナーにとっての管理のしやすさは、ユーザーにとっての使いやすさにもつながります。
他のツールやシステムと連携できる
決済ゲートウェイや、CRM(顧客関係管理)ソフトウェア、在庫管理ソフトウェアなど、さまざまツールやシステムと連携して、ECサイトの機能を拡張することができます。ニーズに応じて適切なツールやシステムを連携することで、運営効率を向上させることができます。
SEO対策ができる
ECサイト向けのCMSにはSEO対策ツールが組み込まれていることが多く、サイトを検索エンジンの上位に表示できるように、商品説明や画像、その他のコンテンツを最適化できます。サイト内の各ページのURL構造を整理し、サイトマップをつくり、メタタグをつけることも簡単にできるので、検索ページで潜在顧客に見つけてもらいやすくなります。
サポートが受けられる
サポート体制がしっかりしているCMSを利用することで、CMSの機能を最大限に活用し、スムーズにストアを運営できます。ECサイトに技術的な問題が発生した場合に、専門的なサポートを受けることができれば、サイトのダウンタイムを最小限に抑えられます。
ホスティングが付帯していることが多い
ECサイト向けのCMSでは、多くの場合、ホスティングが付帯しています。ホスティングとは、サイトのデータやファイルを保存し、サイトを稼働させるサーバーを確保することです。主に「マネージドホスティング」と「セルフホスティング」の2つがあります。
マネージドホスティングでは、環境やセキュリティの管理、サーバーのメンテナンスをプロバイダーが行ってくれます。技術的な作業をプロバイダーに任せられるので、使いやすく管理が簡単というメリットがある一方で、カスタマイズ性に制限がある、コストが高くなる傾向があります。セルフホスティングでは、自社で用意したサーバーを使います。サイトのデザインや決済ゲートウェイなどの機能を自由に設定でき、すべての管理を自社で行うことができますが、高度なスキルが必要になります。
ホスティングの選択は、ネットショップの開業で直面する最初の壁のひとつです。マネージドホスティングが付帯している場合は、設定に悩むことなくストアをオープンできます。
おすすめのECサイト用CMSプラットフォーム6選
1. Shopify
Shopify(ショッピファイ)は、SaaS型でクラウドベースのECサイト用CMSを提供しているサービスです。自社でサーバーのメンテナンスやアップデートを行う必要がなく、ビジネスの拡大に集中できます。使いやすいプラットフォームであるため、始めたばかりの小規模のネットショップにも適している一方で、拡張性にも優れており、大規模事業者にも対応しています。また、幅広いオンライン決済サービスを導入できるので、国内向けECサイトはもちろん、越境ECを目指す方にもおすすめです。
主な特徴
- オムニチャネル戦略:パソコンやモバイルからのアクセス、SNSなどの外部アプリを通じたオンライン販売、実店舗での販売まで、複数チャネルでの販売を連携させて一元管理できる、オムニチャネル戦略をとることができます。
- 規模に応じて拡張できる:サイトへの訪問数が増加したり、売上が増えたりしても、それに応じてサイトを拡張することができます。事業の規模が変わっても、サイトのパフォーマンスを損なうことなく、サイトを稼働させ続けられます。
- カスタマイズの自由度が高い:カスタマイズできる部分が多く、事業に合わせてストアフロントやバックエンドシステムを調整できます。カスタマイズの幅が広いだけではなく、APIを活用して外部サービスと連携することもできるので、多様な機能を実装することが可能です。
料金
- ベーシック:月額換算3,650円(税込)
- スタンダード:月額換算10,100円(税込)
- プレミアム:月額換算44,000円(税込)
2. EC-CUBE
EC-CUBE(イーシーキューブ)は、日本発のオープンソース型CMSで、自由にカスタマイズできる高い柔軟性が特徴です。オープンソースであるため、開発者コミュニティも活発で、さまざまなプラグインやテーマが提供されています。自社で開発することが難しい場合は、開発・運用を得意とするパートナー企業に依頼することも可能です。
主な特徴
- 豊富なプラグイン:EC-CUBEは多くのプラグインやテーマが用意されています。
- 活発なコミュニティ:公式サイトや開発者コミュニティ、専門のパートナー企業からのサポートが充実しています。
料金
EC-CUBE自体は、オープンソースで無料で利用可能です。カスタマイズやメンテナンス費用については、要件により異なります。
3. Adobe Commerce
Adobe Commerce(アドビ・コマース)は、B2BおよびB2C市場に、パーソナライズした顧客体験を提供するためのECサイト用CMSです。拡張性と、顧客向けのカスタマイズに重点を置いており、AI(人工知能)を活用したコンテンツやプロモーションを展開することができます。高度なカスタマイズを求める大企業向けのCMSです。
主な特徴
- AIを活用した商品レコメンド:AIを活用して、買い物客の行動やトレンド、購入商品の類似性などを分析し、商品をおすすめできます。
- 強力な在庫管理機能:オンラインで購入した商品を実店舗で受け取る、実店舗で購入した商品を自宅に配送するなど、多様なフルフィルメントオプションを提供しています。複数のサイト、実店舗、倉庫をまたいで、シームレスなショッピング体験を提供できます。
- 測定して最適化できる:Adobe Analyticsなどと連携して見込み顧客を予測するなど、詳細なインサイトに基づいてECサイトを最適化できます。
料金
価格については、ウェブサイトのフォームから問い合わせが必要です。オープンソース版のMagentoは無料で使用できますが、こちらはサポートがついていないので注意してください。
4. makeshop
makeshop(メイクショップ)は、国内発のSaaS型のEC向けCMSです。初めてオンラインショップを運営する人から企業まで、幅広く利用されています。他のサービスと比較して利用料金が高額ですが、クーポンの発行やポイント機能、レビュー機能、カレンダー表示、在庫アラートなど、651個の機能を基本料金で利用できます。
主な特徴
- テンプレート0円:すべてのテンプレートを追加料金なしで利用できます。
- 国内流通総額1位:日本では導入実績12,000社以上あり、12年連続で流通総額第1位を獲得しています。
料金
- 初期費用11,000円、月額12,100円(契約期間に応じて割引あり)
セキュリティ対策としての常時SSL化や容量の追加には別途料金が必要
5. Wix
Wix(ウィックス)は、使いやすいドラッグ&ドロップのインターフェースで、広く利用されているウェブサイトビルダーです。ECに特化しているわけではありませんが、ECの機能も組み込むことができます。豊富なデザインテンプレートがあり、深い技術的ノウハウやデザインの専門知識がなくても魅力的なネットショップを構築することができます。
主な特徴
- 直感的な操作:ドラッグ&ドロップで、視覚的にECストアをデザインできます。
- 豊富なテンプレート:プロがデザインしたECサイト向けのテンプレートが用意されており、魅力的なオンラインストアフロントをすばやく構築できます。
- サイト作成無料:サイトの作成自体は無料です。月額契約をすることで販売を開始できます。
料金
- パーソナル:月額1,200円(税込)
- スモールビジネス:月額2,100円(税込)
- ビジネス:月額2,600円(税込)
- ビジネスプライム:月額12,000円(税込)
6. OpenCart
OpenCart(オープンカート)は、オープンソース型のECサイト用CMSです。自己ホスティング、またはOpenCartを通じた管理ホスティングのいずれかを選択できます。小規模から中規模の企業におすすめです。主に英語ですが、使い方などのガイドは一部日本語に翻訳されており、ウェブサイトで確認できます。
主な特徴
- 使いやすいインターフェース:直感的なインターフェースで、サイトを簡単に管理できます。
- 豊富な拡張機能:プラグインやテーマを利用して、ストアの機能やデザインを簡単に拡張できます。
- ホスティングの柔軟性:コントロールしたい場合、セルフホスティングを選択することも可能です。
料金
OpenCartそのものはオープンソースで無料ですが、ホスティングは別途契約をする必要があります。OpenCart Cloudのマネージドホスティングを契約した場合、料金は以下のとおりです。
- Bronze:59ドル(月額)
- Silver:99ドル(月額)
- Gold:199ドル(月額)
まとめ
EC事業の立ち上げを目指す人にとって、ECサイト用CMSはとても便利なツールです。ECサイト用CMSを導入することで、専門的な知識がなくても、デザインをカスタマイズしたり、在庫管理や決済機能を導入することができ、スムーズにECサイトを運営できます。SEO対策や他のシステムとの連携ができるだけでなく、サポートも受けられるので、初めての方でも安心してネットショップを始められます。
ShopifyなどのECサイト構築プラットフォームは、初心者から大規模事業者まで、幅広いニーズに応じた機能を提供しています。ECサイト用CMSを活用して、あなたらしいネットショップをつくりましょう。
ECサイト向けCMSについてのよくある質問
CMSとは?
CMSとは、ウェブサイトを構築・管理するためのシステムを指します。ウェブサイトのコンテンツを簡単に管理できるように設計されており、複数のユーザーが同時にコンテンツを操作できる機能を提供します。
ShopifyはCMSと考えられますか?
はい。Shopifyは、ECサイトに特化したCMSとみなすことができます。
ECサイト向けCMSのメリットは?
- 使いやすい
- 他のツールやシステムと連携できる
- SEO対策ができる
- サポートが受けられる
- ホスティングが付帯していることが多い
文:Taeko Adachi