オンラインショッピングが普及する中、小売業の将来を心配する方は多いのでしょうか?
この記事では、小売業のトレンドや小売業の未来予想をまとめて紹介しています。「小売業は将来どうなる?」「小売店業が生き残るためにはどうしたらいい?」など、小売業の将来に不安を感じている人や、実店舗の出店を計画している人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
2024年の小売業のトレンド6選
- オンラインストアの実店舗出店による小売市場の競争激化
- ショールームの人気上昇
- ポップアップストアの増加
- オンラインとオフラインの融合
- 消費者のサステナビリティへの意識
- AIによるパーソナライズされた顧客体験
1.オンラインストアの実店舗出店による小売市場の競争激化
より多くの顧客が店舗に足を運ぶようになり、元々はオンラインストアでのみ出店していた店が物理的な実店舗展開に進出するケースが増えています。
2023年末にインサイダー・インテリジェンスは、いずれはアメリカの小売売上の約85%が実店舗での購入によるものになるだろうと予測しています。
消費者を店舗に引き寄せる要因として、豊富な商品の選択肢、商品のみつけやすさ、そして知識豊富なスタッフとの対面でのやりとりが挙げられています。
また、ShopifyとIpsosの調査では、調査対象の小売業者の82%が、実店舗は引き続き販売業において重要な役割を担うと確信している(英語)ことがわかりました。
これらのトレンドにより、オンラインに特化したブランドが実店舗を開く動きが加速し、物理的な小売スペースでの競争が一層激化することが予測されます。
2.ショールームの人気上昇
消費者が実店舗で商品を実際に見たり試した後にオンラインショップで購入を完了するというハイブリッドなショッピング体験を実現する、ショールーミング(ショールームを作ること)が小売業の間でトレンドとなっています。近年では、通販ストアのSHEIN(シーン)が「Shein Tokyo」をオープンし、注目を集めました。
ショールーミングは、オンライン販売を促進する効果があり、調査によれば、新しい実店舗をオープンした後の四半期には、ブランドのホームページへのトラフィックが平均で37%増加する(英語)とされています。一部の小売業者は、このトレンドを活用し、主にショールームとして機能する小売店を設計しています。この戦略には、普通の小売店と比べて以下の3つの大きな利点があります:
在庫管理の簡易化
ショールーミングでは、消費者が購入を直接オンラインストアで行うことが一般的です。そのため、実店舗に多くの在庫を置く必要がなくなります。これにより、店舗内に体験型のイベントや顧客との交流のためのスペースを確保することができます。
もちろん、スペースの状況に応じて、在庫の大部分をバックルームや倉庫に保管することも可能です。
スペースの節約
販売フロアに同じ商品の複数のユニットを展示しない場合、必要な床面積が少なくなり、より小さな店舗を選ぶことができます。これにより、運営コストを削減できるほか、より人通りのある地価の高い魅力的な場所に、商業スペースを借りることが可能になります。
クロスセルとアップセル
ショールーミングでは、店舗を訪れる顧客一人ひとりにより多くの時間を割くことができ、クロスセルやアップセルの機会が増えます。また、POSシステムによっては、顧客のプロフィールや購買履歴に基づいてパーソナライズされたおすすめを提供するチャンスも増えます。
このアプローチの大きなデメリットは、店舗で商品について学んだ顧客が、帰宅後に競合他社のオンラインストアで似た商品を購入してしまうリスクがあることです。ショールームをオープンする際には、意欲の高い顧客がその場で注文できるよう、ポータブルPOSのような技術を活用することを検討しましょう。
3.ポップアップストアの増加
ポップアップストアは、ブランドが新しい顧客にリーチし、エンゲージメントを高め、ブランド認知度を向上させるために利用する一時的な店舗や実店舗体験です。また、イベントの集客を活用したり、新しい実店舗の場所を探ったりする企業にも人気が高まっています。
4.オンラインとオフラインの融合
オンラインとオフラインを融合させた「オムニチャネルマーケティング」が重視されてきています。オムニチャネルは、ECサイトでも実店舗でも、あらゆるチャネルで一貫した購買体験を提供するマーケティング手法で、顧客満足度を高め購買へとつなげます。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
- アプリで商品を注文して実店舗で受け取る
- ECサイトで商品を探して、実店舗で試着する
- 実店舗の在庫をアプリから確認する
消費者は利便性の良い方法をスムーズに選択できるため、満足度が向上する傾向にあります。また、実店舗と自社ECサイトを連動させることで、実店舗を訪れた消費者が同一の商品を他社ECサイトで購入するショールーミングを防ぐことができるのもメリットのひとつです。
5.消費者のサステナビリティへの意識
昨今では、サステナビリティやSDGsへの関心が高まっているため、長く使える商品やエシカル商品、環境に配慮した取り組みが消費者から支持される傾向にあります。
しかし、実際はサステナビリティを意識した取り組みまで手が回っていない小売業者も多く、以下のような取り組みをすることで、競合他社と差別化することができます。
- リサイクル素材の包装を利用する
- 環境負荷の低い製造方法の商品を仕入れる
- ペーパーレス化を進める
消費者は製品やサービスだけでなく企業の取り組みも評価しているので、サステナビリティに対する取り組みを適切に伝えることで、企業へのロイヤリティや顧客満足度の向上につながります。
6.AIによるパーソナライズされた顧客体験
顧客はますます、ショッピング体験のあらゆる側面でブランドにパーソナライズを期待するようになっています。2021年のマッキンゼーのレポート(英語)によれば、71%の消費者がパーソナライズされたやり取りを期待しており、76%がこれらの体験が提供されないと不満を感じています。
消費者は、特に「ハイパーパーソナライゼーション」と呼ばれる高度なパーソナライゼーション戦略に強く反応します。ハイパーパーソナライゼーションとは、個々の意思決定者のニーズ、プロフィール、行動、過去のやり取りや予測に基づいて、ユニークなメッセージを提供することを指します。
ブランドは、生成AIツールなどの人工知能技術を活用して、顧客の期待に応え、ショッピング体験全体でパーソナライゼーションを向上させています。主な応用例としては、AI対応の検索と発見機能、そしてパーソナライズされたマーケティングメッセージがあります。
小売業はなくなるのか
小売業がなくなってしまうことはありません。ECサイトの需要拡大により、小売業の中でも特に実店舗がなくなることを不安に感じている事業主もいるかもしれませんが、ネットショップがポップアップストアやショールームなど、オンラインだけではなく実店舗を展開するのが最新の小売界のトレンドとなっています。
小売業の未来の市場予測
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2030年の小売業の市場規模は114兆9,770億円と予想されています。2022年と比較すると約14%市場規模が縮小する見込みです。
減少の理由としては、ECサイトの需要拡大が見込まれる一方で、2030年には物流を担っているドライバーが不足するため、配送に対応しきれなくなることが挙げられます。
物流網の改善は大きな課題であるものの、配送に頼らない仕組み作りも欠かせないでしょう。そのため、2030年に向けてBOPISの導入を進め、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取る仕組みを強化するのも重要です。
また、2030年には外国人旅行者数6,000万人を目標としているため、免税対応や多言語対応などのインバウンド市場の拡大に対応できるような取り組みも重要となります。拡大予定のインバウンドの需要に対応することで、小売市場の売上上昇にもつながるでしょう。
まとめ
小売業はECサイトとの両立やオムニチャネル化、DXの促進などによって、実店舗の売上減少や人手不足などの課題を克服することができ、今後も生き残ることが可能です。
コロナ禍の影響で実店舗の売り上げは大幅に減少しましたが、ECサイトの売り上げは上昇傾向にあります。オンラインとオフラインの境界をなくして一貫した購買体験を提供することで、相乗効果や機会損失の防止によって売り上げを向上させることができるでしょう。
また、AIの導入などDXが進めば限られた人員でも効率よく店舗運営ができ、小売業の課題である人手不足の解消につながります。
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よくある質問
小売業とは?
卸売業者などから仕入れた商品を消費者に販売するBtoCのビジネススタイルです。主な小売業としては以下の例が挙げられます。
- コンビニエンスストア
- 専門店
- 家電量販店
- ドラッグストア
- スーパーマーケット
2023年の小売業の販売額は?
2023年の上期の小売業全体の販売額は、2021年の上期から5.9%増加した79兆2,530億円でした。
業態別では、コンビニエンスストアやドラッグストア、スーパーマーケット、百貨店の販売額が増加傾向にあります。これは、コロナ禍が落ち着き、外出機会が増え、インバウンドの需要が回復したことが理由です。
実店舗が今後なくなる可能性はあるのか
実店舗が今後なくなる可能性はありません。商品を直接みて確かめられるのは、ほかには変えられない実店舗の強みです。
しかし、実店舗の売り上げは減少傾向にあるため、今後はECサイトとの両立が求められるでしょう。