近年、気候変動の深刻化に伴い、異常気象や食料価格の高騰などの問題が私たちの生活に影響を及ぼしています。こうした背景から、環境に優しい商品を求める消費者の動きが年々高まっています。事業者は、環境に配慮した商品に取り組むことで、SDGsの目標や持続可能な未来に貢献できるだけでなく、売り上げの面でもプラスの影響を得られると言えるでしょう。
ここでは、環境に配慮した商品や、サステナブルな商品、エシカル商品について、また環境に配慮した商品の例や、成功した企業の例をお伝えします。
環境に配慮した商品とは
環境に配慮した商品とは、エコフレンドリーな商品、あるいは環境に優しい商品とも呼ばれ、地球環境や生態系に悪影響を与えない、あるいは悪影響が及ぶのを最小限に抑えることを目指したモノやサービスを指します。これには、再生可能な材料から作られた商品、エネルギー消費が少ない商品、またはリサイクル可能な商品などが含まれます。企業がこれらの商品に取り組んだり、消費者がこれらを選んだりすることは、環境への負担を減らし、持続可能な消費を促進する手助けとなります。
「環境に配慮した商品」に類似する言葉
「環境に配慮した商品」と似たような文脈で使われる言葉に、「サステナブルな商品(持続可能な商品)」「エシカル商品」があります。それぞれの意味や特徴、違いを見ていきましょう。
サステナブルな商品とは
サステナブルな商品とは持続可能な商品とも呼ばれ、環境面だけでなく、社会や経済の面においても持続可能である、つまり未来の暮らしも損なわないことを目指したモノやサービスを指します。「環境に配慮した商品」とよく似た言葉ですが、配慮の対象が環境だけでなく、社会や経済にも及ぶということ、また未来を意識している点が異なります。また、原料の調達から生産、販売、廃棄までのすべての過程において、持続可能な手段を取っていることが条件となります。
サステナブルな商品の具体例として、リサイクルできる素材で作られているタイルカーペットが挙げられます。こうしたタイルカーペットは使用済みとなった場合に、カーペットメーカーが引き取ってその一部を新しいタイルカーペットの原料にすることができます。
このような、循環型の流れを実現できている商品であることが、サステナブルな商品の条件となります。
エシカル商品とは
エシカル商品とは倫理的な商品とも呼ばれ、環境や人、社会に倫理的な配慮を行った上で作られたモノやサービスを指します。「エシカル(Ethical)」は「倫理的」という意味ですが、法律で定められているか否かを基準とするのではなく、「こうするべき」という良識に基づいて作られた商品を意味します。
たとえば、過酷な児童労働や労働者搾取、環境破壊、動物実験、食品ロスなどが改善される商品、というのはエシカル商品と言えるでしょう。エシカル商品の例として、フェアトレードコーヒーとフェアトレードチョコレートが挙げられます。フェアトレードとは「公平な貿易」という意味で、開発途上国で作られた商品を買い叩かず、適正な価格で継続的に取引することを意味します。こうすることで特に弱い立場にある開発途上国の生産者が適正な収入を得られるようになります。そのような条件で作られたものがフェアトレードコーヒーやフェアトレードチョコレートですが、こうしたものは倫理的な判断に基づき作られたものであるため、エシカル商品と言えるでしょう。
環境に配慮した商品の例7つ
ここでは、リサイクル可能な材料を利用したり、廃棄物削減に寄与したりすることで、地球環境にポジティブな影響をもたらす商品の例を紹介します。EC事業の立ち上げを考えており、販売に適した商品を探している方も参考にしてください。なお、環境に配慮した商品は、環境に優しい代替品を求める意識の高い消費者向けのニッチ市場で扱われる商品であるとも言えます。
1. 竹製の歯ブラシ
成長が早く、持続可能な資源として知られている竹を使った歯ブラシは、環境に配慮した商品の一つと言えるでしょう。土に還るため環境負荷が少なく、プラスチックの使用を減らすことにもつながります。なお、竹歯ブラシ市場は、ここ5年で世界的に堅調な成長を遂げると予測されています。また、竹製の歯ブラシは元来デザイン性が高いため、パッケージデザインもおしゃれなものにすれば、ECサイトでの販売で成功しやすい商品となることでしょう。
2. リサイクル素材を使用した衣類
ペットボトルや古着などを資源とするリサイクル素材を使用して作られた衣類は、廃棄物の削減と資源の有効活用の両方に貢献するため、環境に配慮した商品と言えます。これにより、素材をリサイクルして衣類を生産する場合、一から素材を作って衣類を生産する場合と比較して二酸化炭素の排出が少なくなるというデータがあります。このため、リサイクル素材を使用した衣類は、温室効果ガス削減につながる商品と言えるでしょう。
3. 再生素材のエコバッグ
エコバッグは繰り返し使うことでレジ袋使用の削減につながり、プラスチック廃棄物の発生を抑えることができますが、リサイクル素材を使用したエコバッグなら、さらに環境への効果が期待できます。エコバッグ自体がペットボトルを再利用したポリエステル素材や再生コットン、再生不織布などの再生素材で作られているため、新しい素材を使用するよりもエネルギー資源の消費を抑えることができます。
4. ソーラーパネル搭載の充電器
ソーラーパネル搭載の充電器は、太陽光を利用して電力を供給するため、環境に配慮した商品と言えるでしょう。ソーラー充電器は持ち運びができるように設計されており、アウトドア用や災害時の非常用としてよく利用されます。ソーラー充電器市場は今後拡大すると予測されているため、ECサイトでの販売にも適した商品と言えるでしょう。
5. 生分解性プラスチックで作られた食器
生分解性プラスチック(PLA樹脂)は、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解され、自然に還る性質を持つプラスチックのことですが、こうしたプラスチックで作られた食器は廃棄しても環境汚染の原因となりません。とうもろこしやサトウキビなどの再生可能資源から作られており、人体や生態系を脅かすマイクロプラスチック問題に大きく貢献できると注目されている素材です。生分解性プラスチックを使用した食器は、耐水性や耐油性に優れ、強度もあることから、使い捨てではなく繰り返し使用できます。こうした点からも、環境に優しい商品と言えるでしょう。
また、生分解性プラスチック市場は今後10年で伸びると予測されており、こうしたプラスチックを使った商品はECサイトで取り扱うものとしても適していると言えるでしょう。
6. 洗剤やヘアケア商品のつめかえパック
洗剤やヘアケア商品のつめかえパックは、プラスチック容器使用の削減につながるため、環境に配慮した商品です。消費者は使用する際、その容器を洗剤やヘアケア商品メーカーのものだけでなく、自分で選んだものも自由に使えるようになるため、つめかえパックのある商品は、使用する容器にこだわりのある方にも人気です。なお、つめかえパックの製造に使用するプラスチックの量は、本体容器と比較して7~8割ほど少ないというデータがあります。環境に対して確実にポジティブな影響がある商品と言えるでしょう。
7. 天然素材のスポンジ
へちまやコットンなどの天然素材から作られたスポンジは、プラスチックを使用せず持続可能な資源から作られているため、環境への影響を抑えることができます。生分解性を持つため、使用後に自然界で分解され土に還り、廃棄物の処理問題を軽減します。特にへちまは、耐久性にも優れているため、頻繁に買い替えなければならない合成スポンジとは異なり、長持ちすることで知られています。
上記のような環境に配慮した商品は、持続可能な消費を促進し、環境保護に貢献することができます。
環境に配慮した商品で成功した企業例5つ
1. CONVERSE(コンバース)
ALL STAR(オールスター)、JACK PURCELL(ジャックパーセル)などのスニーカーなどで知られるCONVERSEは、アメリカのシューズ製造販売会社です。CONVERSEが展開している「converse e.c.lab(コンバースイーシーラボ)」は、環境と社会に配慮したエコ素材やエシカル素材を使用しているサステナブルなシリーズです。このシリーズの商品は、スニーカーのアッパー(上部の生地)にペットボトルから作られたエコ素材を取り入れています。
このほか、革部分のなめし(革の原料である動物の皮の腐食を防ぐ処理)に化学薬品を避け、天然素材を使用したスニーカーや、食品や植物の加工後に出る、搾りかすを原料とした「のこり染」で染めた、リサイクルコットン100%のキャンバス生地を使用したスニーカーを開発しています。
2. NAGIE(ナギエ)
NAGIEは三菱商事ファッションが提供するEC専業のアパレルブランドで、リサイクル素材で作られた商品を限定受注生産で提供するという環境に配慮した運営を行っています。商品や包装をサステナブルにするだけではなく、受注生産を行うことで服の余剰を防ぐ取り組みを進めています。
NAGIEが開発した素材である「アディクテックス」には、ペットボトルを再利用して開発されたポリエステルが77%含まれています。たとえば、アディクテックスジャケットには29本分、アディクテックススキニーパンツには20本分のペットボトルが使用されています。
3. Patagonia(パタゴニア)
Patagoniaは、環境保護活動に積極的に取り組むアウトドアウェアメーカーです。リサイクル素材を多用し、持続可能な製品開発を進めています。
代表的な製品として、ペットボトルをリサイクルして作られたポリエステル素材を使用したジャケットや、有機(オーガニック)農法で栽培されたコットンを使用したTシャツ、合成ゴムの代替として天然ゴムを使用したウェットスーツなどが挙げられます。Patagoniaは、1993年に企業としては初めて、ペットボトルから再生されたリサイクル素材を使用した製品を作りました。以来、こうした素材を使用した製品ラインナップを増やしています。
4. Pangaia(パンゲア)
英国発で現在は米国に拠点を置くアパレルブランドのPangaiaは、さまざまなサステナブル素材を自ら開発し、それをアパレル製品に使用している企業です。たとえば、ユーカリの樹液と海藻の粉末を100%混ぜ合わせた生分解性(菌類やバクテリアなどの微生物の働きによって、水やCO2、バイオマスに完全に変換される物質の性質)の繊維を開発し、その素材からTシャツなどを製造しました。このほか、バナナの葉とパイナップルの葉の繊維、竹を使った素材や、野草を使った素材からアパレル製品を製造するなど、サステナブルな素材づくりに力を入れています。
5. A Sustainable Village(サステナブルビレッジ)
A Sustainable Villageは、マンハッタンのイーストビレッジに構えた実店舗と、オンラインで販売を行っている小売店ですが、女性やマイノリティの方々が設立した小規模ブランドによるサステナブルな製品を主に取り扱っている、という点が一般的な店舗と異なっています。「そもそもゴミを出さない」ゼロウェイストをコンセプトにした商品や、使い捨てを減らし、プラスチックを使わず植物性の成分でできた商品などを販売しています。
まとめ
環境に配慮した商品は、地球資源を節約し、環境汚染を最小限に抑えることを目指すものです。企業や消費者がこうした商品を選ぶことで、地球環境への負担を減らし、持続可能な社会を推進できます。竹製の歯ブラシやリサイクル素材を使用した衣類などは、その一例です。
環境に配慮した商品で成功した企業には、CONVERSE、NAGIE、Patagonia、Pangaia、A Sustainable Villageなどがあります。これらの企業は、リサイクル素材の使用や持続可能な製品の開発を通じて、環境保護に貢献しています。
よくある質問
エシカル商品とは?
エシカル商品とは倫理的な商品とも呼ばれ、環境や人、社会に倫理的な配慮を行った上で作られたモノやサービスを指します。「エシカル(Ethical)」は「倫理的」という意味ですが、法律で定められているか否かを基準とするのではなく、「こうするべき」という良識に基づいて作られた商品を意味します。
サステナブル商品は売れない?
サステナブル商品は、諸外国と比較すると日本ではまだまだ購入する人の割合が少ないことが調査結果からわかっています。PwC Japan(ピーダブリュシージャパン)グループが2022年に日本、米国、英国、中国の4か国で実施したサステナビリティに関する消費者調査によると、過去1年間でサステナブルな商品を購入していないと回答した人は米国では21%、英国では16%、中国では9%とわずかであるのに対し、日本では42%という結果になっています。
日本の消費者がサステナブル商品を購入しない理由には、こうした商品の価格が比較的高いことや、商品があまり認知されていないということが挙げられます。とはいえ、環境に配慮した商品は今後売れる可能性があると2024年消費トレンドでも予想されています。また、サステナブル商品は小売業のトレンドになると言われています。今後の伸びが期待できる分野と言えるでしょう。
環境に配慮した商品には、どのようなものがありますか。
環境に配慮した商品とは、地球環境や生態系に悪影響を与えない、あるいは悪影響が及ぶのを最小限に抑えることを目指したモノやサービスのことですが、たとえば以下のようなものを指します。
- 竹製の歯ブラシ
- リサイクル素材を使用した衣類
- 再生素材のエコバッグ
- ソーラーパネル搭載の充電器
- 生分解性プラスチックで作られた食器
- 洗剤やヘアケア商品のつめかえパック
- 天然素材のスポンジ
文: Kyo Yamada