ピンバッジはファッションアイテムとして広く普及しており、多くのビジネスチャンスを生み出しています。ごく小さなサイズながらも、個性的なイラストやブランドのロゴなどさまざまなデザインを取り入れ、自分らしさを表現できる点が人気の理由です。
ここでは、ピンバッジのデザインから作り方、マーケティングの方法まで、オリジナルピンバッジを作成して販売するために必要な情報を解説します。
ピンバッジを作成するべき理由

ピンバッジは自己表現の手段として使われたり、自分の好きなものをアピールする目的で身に着けられたりしています。リュックや帽子、シャツなど、さまざまな場所に取り付けることができ、ファッションアイテムとして楽しまれています。
ピンバッジづくりがイラストレーターやアーティストに好まれる理由は、以下のとおりです。
- 衣類やステッカーとともに販売しやすい
- 利益率が高い
- 作成と配送が簡単
- 創造性を活かせる
グラフィックデザインのスキルを活かしたいと考えている人にとって、ピンバッジビジネスは大きな可能性を秘めた分野といえます。
ピンバッジの種類
ソフトエナメルピンバッジ

ソフトエナメルピンバッジは、くぼんだ部分に塗料を流し込んで仕上げるタイプのピンバッジです。輪郭線や縁取りが盛り上がった、凹凸のある立体的な質感になります。安価かつ短期間で作成できるほか、使用できる色数が豊富なため、初心者からは特に人気のあるピンバッジです。
細部を表現しやすく自分好みのアレンジもできますが、耐久性の面では低く、ハードエナメルより傷がつきやすい点には注意が必要です。作成は比較的簡単ですが、長期的な使用にはあまり向いていないといえます。
ハードエナメルピンバッジ

ハードエナメルピンバッジは、透明な樹脂でコーティングすることにより、ソフトエナメルに比べて耐久性を高めた作りが特長です。その分、製作コストがやや高くなる傾向があり、使用できる色にも制限が出やすいです。また、発色はソフトエナメルほど鮮やかではなく、落ち着いた印象になることがあります。
表面がコーティングされることで、凹凸のない滑らかな仕上がりになります。長期間にわたって使用できるピンバッジを販売する場合に適しています。たとえば、ピンバッジをリュックに付けたまま屋外で使いたいと考えている人をターゲットにしているのであれば、ハードエナメルピンバッジが最適といえるでしょう。
ダイキャスト(3Dモールド)ピンバッジ

ダイキャストピンバッジは、金型に溶かした金属を流し込み、圧力をかけて成形するピンバッジです。一般的には、亜鉛合金や錫合金が使用されており、上品な印象に仕上がります。
ダイキャストピンバッジは、切れ込みの入った複雑な形状などを表現したい場合に適しています。たとえば、動物やおもちゃ、飛行機、記号などをデザインする際に最適です。
オフセット印刷エポキシコーディングピンバッジ

オフセット印刷エポキシコーティングピンバッジは、ソフトエナメルやオフセット印刷で仕上げたピンの上に、エポキシと呼ばれる透明な樹脂をコーティングしたピンバッジです。樹脂層によって表面に光沢が出るだけでなく、色あせや擦り傷による経年劣化を防ぐ効果も期待できます。そのため、イラストや写真を印刷してピンバッジをデザインする場合におすすめです。
スタンププレスピンバッジ

スタンププレスピンバッジは、鉄や金、銅などの金属を鋼製の金型に強い圧力で打ち付けて成形するピンバッジです。金属を打ち抜くことで凹んだ部分ができ、その部分に七宝仕上げなどの色を加えることができます。業者によっては、凹んだ部分にサンドブラスト加工を施すことで金属の質感に変化をつけ、ツートーンカラーにすることも可能です。
ダブルメッキピンバッジ
ダブルメッキピンバッジは、ピンバッジのなかでも高級感が際立つ仕様です。一つのピンに異なる2種類の金属メッキを施すことで、デザインにコントラストをつけられます。
たとえば、主要な部分に金メッキを、細部には銀メッキを使うなど、メッキの組み合わせは自由で、デザインの方向性に合わせて選べます。ただし、複雑な加工が求められるため、製造コストが高くなりやすい点には注意が必要です。
メタリックエナメルピンバッジ
メタリックエナメルピンバッジは、小さな金属片を含んだ塗料を使って仕上げるため、光を受けて輝くのが魅力のピンバッジです。角度によってきらめき方が変わる点も魅力の一つといえるでしょう。
高級感を演出したいと考えているものの、派手すぎる仕上がりにはしたくない場合には特に適した選択肢です。星や宇宙など、きらめきがポイントとなるモチーフにも適しています。
オリジナルピンバッジの作り方

1. ピンバッジをデザインする
デザインスキルがなくても、ピンバッジを作ることは可能です。
本格的なデザインツールとしては、Adobe Illustrator(アドビイラストレーター)やPhotoshop(フォトショップ)などが一般的です。どちらのソフトも持っていない場合は、以下のような無料ツールでもデザインを作成することができます。
ピンズファクトリーや缶タロウなどのピンバッジ専門の制作会社にデザインを依頼する方法もあります。また、デザインに必要な素材を購入できるマーケットプレイスやデザイナーに直接依頼できるサービスも便利です。日本語で使えるサービスを4つ紹介します。
上記のようなサービスを通じてデザイン素材を購入する際には、商用利用が認められているかを必ず確認しましょう。
ピンバッジのデザインを作る際には、以下のようなポイントを考慮しておく必要があります。
- エナメル塗料として使用できるのは単色で、グラデーションや透明色は使用不可
- 世界共通の色見本であるPANTONE(パントン)カラーなどで指定する方法が一般的
- サイズが小さいため、細かすぎる文字や装飾は避けたほうが無難
- 業者に提出するデータ形式はJPGやPNG、またはベクターデータ(AI、SVGなど)
- サイズや塗り足しの指定など、業者が規定するルールを守る必要がある
2. 適切な材料を選ぶ
見た目が魅力的で、長く使える品質のピンバッジを作るためには、使用する材料選びが重要です。まずは、ソフトエナメルにするか、ハードエナメルにするかを決めましょう。
- ハードエナメルピンバッジ:光沢のある滑らかな仕上がりで高級感があるが、製造コストが高め
- ソフトエナメルピンバッジ:凹凸のある質感が特徴で、丁寧に作ればコストを抑えて美しく仕上げられる
ベースに使う金属としては、亜鉛合金がおすすめです。耐久性が高く、細かなデザインにも対応できるうえ、コスト面でも優れています。銀や金メッキなど、より高価な金属を使うこともできますが、まずは予算やターゲットに合わせて、基本的な素材からビジネスを始めるのがよいでしょう。
仕上げに使うメッキの種類によっても、見た目の印象が異なります。一般的には、以下3種類のメッキがよく使われています。
- 金メッキ:高級感がある
- 銀メッキ:モダンで着用シーンを選ばない
- 黒ニッケル:モダンでシャープな印象を与えられる
ピンの裏側に取り付ける留め具についても考える必要があります。留め具には、主に以下の2種類があります。
- バタフライクラッチ:一般的で、しっかりと固定できる
- ゴム製の留め具:傷みやすい生地に適しているが、劣化が早い
3. ピンバッジのサイズを決める
ピンバッジのサイズ決めも、作成には欠かせない工程です。小さすぎるとデザインがつぶれて判別しづらくなり、大きすぎるとブローチのようになってしまいます。
ピンバッジとして扱いやすいサイズは、1〜1.5インチ(2.5〜3.8cm)程度です。このサイズであればデザインを細部まで表現でき、ピンバッジを取り付ける生地への負担も少なく、コスト面でもバランスが取れています。
サイズを決める際は、購入者がピンバッジをどこに付けるかを考慮することが大切です。たとえば、7cm程度の大きなピンバッジはインパクトがあるものの、服に付けるにはやや大きすぎるため、使われなくなってしまう可能性があります。
適したピンバッジのサイズを決める際には、以下の目安を参考にするとよいでしょう。
- 約2cm:ロゴやシンプルなデザイン向き
- 約2.5cm:人気が高く、用途も幅広い実用的サイズ
- 約3.8cm:文字入りや細かなイラストに最適
- 3.8cm以上:製造コストは高くなるが、存在感を出したいピンにおすすめ
製造業者はサイズによって料金を設定するため、mm単位の違いでも原価が変わります。デザインと予算、販売価格のバランスを考慮したうえで、最もふさわしいサイズを決めることがポイントです。
4. ピンバッジの作成方法を決定する
理想のピンバッジを作成するためには、信頼できるビジネスパートナーを見つけることが欠かせません。代表的な製造業者を紹介します。
製造業者を選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
なお、依頼の際は最初から大量発注するのではなく、まずはサンプルを取り寄せると安全です。ホームページに掲載されていた写真と実物の色味に違いがないかなど、サンプルを見て確かめましょう。
5. ピンバッジの生産を管理する
製造業者を選定したあとは、コストを抑えて品質を保つための管理が重要となります。ピンバッジの価格に影響を及ぼすのは、以下4つの要素です。
- デザインの複雑さ:細かい表現を含むデザインは製造工程が増えるため、コストが高くなる
- 使用する色の数:色数が多いほど作業工程が増え、コストが増加する
- サイズ:ピンが大きいほど使用する材料も増えるため、単価が高くなる
- 注文数:金型の製作には初期費用がかかるが、注文数が多ければ多いほど1個あたりのコストは低くなる
多くの製造業者では、ハードエナメルやソフトエナメルのほかにも、ピンに使用するベース素材や仕上げの質感を細かくカスタマイズできます。色を入れる前の状態で、素材の色味や質感を確認できるように依頼しておくと安心です。ピンの裏面に取り付ける針の種類や留め具も選べる場合があるため、選択肢をあらかじめ確認しておきましょう。
納品時の梱包方法についても、あわせて確認することをおすすめします。一般的には小さなビニール袋で包装されますが、製造業者によってはオリジナルの台紙を同封することも可能です。台紙を利用する場合は、色数の制限や塗り足し範囲といったデザインデータの入稿規定についても確認しておく必要があります。
オリジナルピンバッジをオンラインで販売する方法

1. ネットショップを開設する
ピンバッジを作成してオリジナルグッズ販売を行う際、多くのクリエイターがマーケットプレイスを活用したり自社サイトを立ち上げたりして、ネットショップを開設しています。代表的な販売プラットフォームとして挙げられるのは、次の3つです。
こうしたサービスを利用すれば、専門的な知識がなくても簡単に自分のネットショップを開設できます。Shopifyには、販売チャネルを一括管理できる機能が備わっており、複数の販売先の状況を一つの画面で確認できる特徴があります。
マーケットプレイスを活用するのも一つの手ですが、自分のブランドを細かく管理するためには、ネットショップを開設する必要があります。ネットショップがデジタル上の店舗として、顧客との関係を深める際にも役立ちます。
たとえば、パリオリンピック日本代表のグッズを扱うTEAM JAPAN OFFICIAL ONLINE SHOP(チームジャパンオフィシャルオンラインショップ)では、エンブレムをモチーフにしたピンバッジを販売しています。国を代表するチームのアイテムという特性から、ファンからの人気も高く、売り切れとなっている商品もあります。
このように、外部のマーケットプレイスを使わず、自分のネットショップで販売を完結させると手数料が発生せず、すべての利益を自社で確保できる点もメリットの一つです。
2. 魅力的な商品写真を撮る
ターゲットは商品を細部まで確認したいと考えているため、ピンバッジを販売する際には、商品の写真を精細に撮る必要があります。時間をかけてデザインした作品だからこそ、写真にもこだわって商品の魅力をうまく伝えましょう。
写真のクオリティを高めるためのポイントは、以下のとおりです。
- 背景はシンプルに整える:白やベージュなどの無地の背景紙を使うと効果的です。Amazon(アマゾン)などの通販サイトでも安価に購入でき、プロのような仕上がりになります。
- ライトボックスを使う:段ボールなどに白い紙を貼り付けて作成するライトボックスを使用すると、光が商品に均一に当たるようになり、影やムラのない写真が撮れます。
- 編集で仕上げを整える:どれほどよい写真であっても、微調整が必要です。Canva(キャンバ)やShopify Magic(ショッピファイマジック)などのツールを使って、背景の補正や色味の調整を行いましょう。
3. 利益を確保できる価格を設定する
利益を確保できる価格を設定するにあたって、まずは一個あたりのトータルコストを正確に算出します。計算に含めるべき項目は、以下のとおりです。
- ピンバッジ本体の製造コスト
- 製造業者からの送料
- 台紙やビニール袋などの梱包材コスト
- その他、作成や発送などに必要な備品の費用
- 決済代行サービスの手数料
- マーケティングコスト
ピンバッジの製造価格は、サイズやデザインによって異なります。製造業者が作れるピンバッジのサイズは1〜7cm程度で、一個あたりの金額は100~900円程度が目安となります。大量に注文すれば単価を下げられますが、予算が足りなくなるリスクがあるため、注意が必要です。
安定した利益を出しているピンバッジ販売者の多くは、製造原価の4〜5倍の価格設定を行っています。たとえば、製造コストが200円であれば、販売価格を800~1,000円程度に設定するとよいでしょう。一見すると利益率を高く設定しているように感じるかもしれませんが、上記の諸経費を差し引けば、妥当な価格設定といえます。
なお、適正な販売価格を計算するためには、Shopifyの利益率計算ツールを活用するのがおすすめです。
4. 開設したネットショップをマーケティングする
オリジナルのピンバッジを販売するネットショップを開設したあとは、次の方法でマーケティングを行いましょう。
- 検索エンジン対策(SEO):SEO対策を実施することで、特定のピンバッジデザインを探している、購入意欲の高いユーザーにアプローチできます。商品ページへのアクセス数が増えて、売上アップにつながりやすくなります。
- インスタマーケティング:Instagram(インスタグラム)は、視覚的な魅力を伝えるのに適したSNSです。投稿やストーリー、リールなどを組み合わせて活用することで、フォロワーとつながることができます。フォロワーが楽しめるコンテンツを作ることで、商品を購入してもらいやすくなります。
- Facebook(フェイスブック)広告:ターゲットを絞って広告を出せるため、ピンバッジを効果的にアピールできます。
- インフルエンサーマーケティング:ユーチューバーやインスタグラマー、ティックトッカーなどの影響力ある発信者と連携することで、商品を効率よく広めることができます。実施する際は、自分のブランドと近い層のファンを持つインフルエンサーを選びましょう。
売り上げをさらに伸ばすためには、統一感のあるデザインのピンバッジをセット販売したり、複数購入で割引を提供したり、数量限定の商品を販売するといった戦略も効果的です。どのような手法を採用するにしても、配送スピードには注意しましょう。ピンバッジの到着が遅いと、顧客満足度が下がってしまいます。
まとめ
ピンバッジの作成と販売は、堅実に段階を踏んでいけば大きなチャンスのあるビジネスになります。まずは副業として始めて、事業を少しずつ拡大しましょう。販売実績を重ねることで、より利益率の高い仕入れ方法や販売手段などが見えてきます。
ピンバッジの作成・販売を行う際には、自分のネットショップを開設するのがおすすめです。Shopifyを活用すれば、専門知識のない人でも簡単にネットショップを構築できます。YouTubeを使ったグッズ販売やオンデマンド印刷を活用したグッズ制作ができることもおすすめできる理由の一つです。無料体験も実施していますので、お気軽にお試しください。
よくある質問
自作のオリジナルエナメルピンの作り方は?
- ピンバッジをデザインする
- 適切な材料を選ぶ
- ピンバッジのサイズを決める
- ピンバッジの作成方法を決定する
- ピンバッジの生産を管理する
- 利益を確保できる価格を設定する
- ピンバッジの販路を決める
オリジナル商品を作って販売したい人が気を付けるべきポイントは?
- 他人のデザインや写真を許可なく使用しない
- 商品説明を誤りなく記載する
- 税金の申告や収支管理を行う
- 素材や商品によっては販売許可が必要になる場合がある
- 在庫管理に気を付ける
- 販売手数料について理解する
文:Yukihiro Kawata イラスト:Pete Ryan