「自分の部屋の窓からビルしか見えなかったのです。もしかしたらこれがストレスの原因にもなっているんじゃないかなと」
10年以上前のある日、学生だった姜さんはロサンゼルスの自室でふと気付きました。研究や勉強に追われストレスが溜まる日々…そのストレスの原因は自分の部屋の構造にもあるのではないかと考えたのです。
それから月日が経過し数年後、デジタル窓のAtmoph Windowが世に生まれました。
Atmoph Windowは世界初のスマートなデジタル窓。部屋に置くだけで、世界中の様々な景色を楽しむことができます。とても開放的な気分にしてくれて、まるで世界中を旅行している気分になります。
「人々に開放感とか世界との繋がりを感じられるようなものを提供していきたい」とAtmophの共同創業者の姜京日氏は説明します。勤めていた会社を辞め、自ら新しい世界へと飛び込んで行ったきっかけは、学生時代の生活にストレスにありました。
日常のストレスが商品のアイデアに
ロサンゼルスに留学中、自室の閉鎖的な空間がストレスの原因にもなっているのではないかと考えた姜さん。なんとかしてストレスを取り除こうとパソコンやテレビにビーチの画像や映像を流していましたが、すぐに他の作業などで使ってしまう。どうすればいいのか解決策は見つからなかったそうです。
その後、日本に帰国して、会社で働きながらどのようにすればいいのかと試行錯誤を繰り返しました。そして、時代は進み、世の中にはスマートフォンやタブレット型端末が登場。姜さんはそこでも壁紙を風景などにしましたが、画面が小さすぎて開放感とはほど遠かったそうです。
「あのときの自分の悩みを解決するためにと思って、タブレットやプロジェクターに風景を写したりと色々してみたんですよね。一昔前のVRとかも試しました。でも結局、外したら現実が待っているし、タブレットでも絵はがきみたいに小さくてどうでもよくなっちゃって、『違うな』と5年以上思っていました」
しかし、技術の進歩がついに一つの答えを生み出します。「ちょうど液晶パネルが薄くなって、4Kのカメラも登場、Raspberry Piといった小さなPCも出てきて、もはや窓という形を作っちゃえば・・・そもそも壁にかければいいんじゃないかって思い始めて、約5年前から自分でプロトタイプを作り始めてみたのが誕生のきっかけです」
「こんなものを待っていた!」
アイデアが形になり、会社を辞め一念発起。同僚とともにAtmophを立ち上げました。彼らは資金調達にクラウドファンディングを使用し、キックスターターで約2000万円、Makuakeで約700万円を500人から集めました。
「デジタルな窓を買う人なんかいないという意見も聞いて、本当に買う人がいるのか実験してみようということで始めてみました。すると、『こんなものを待っていた!』とか、『家にいながらパリにいた気分になれる、最高!』という方も結構いらっしゃったんですよね。もちろん、興味がない人もいましたが、買ってくれる人が世界中にいるっていうことが分かりました」
Atmoph Windowのお客様は世界中に幅広く存在しています。当初は都市に住む人の購入が多いと予想をしていましたが、いざ蓋を開けてみると、世界各国の都市部と地方の人々が半々くらいの割合で購入していると説明します。「地方の人が購入する理由を想像してみると、すべての人が絶景とか開放的な風景を持っているわけではなく、隣の家しか見えないとか、生垣しか見えないとか、同じ景色に飽きる人も多いからだと思います。地方は地方の毎日の繰り返しがあるのかなと」
また、窓に映し出される世界各国の景色はすべてAtmophが独自に用意したものです。現在、景色のラインアップはおよそ1000本ありますが、約半分はユーザーのリクエストから現地に行き撮影をしているとのことです。
Shopify以外に選択肢がない
彼らがオンライン販売で選んだプラットフォームはShopifyです。姜さんは「何よりも楽」と使用している理由を語ってくれました。「一番は楽っていうこと。ワンストップでできるのがとても楽なのでずっと使っています。さらに、アプリもどんどん増え、コミュニティもあり、新しい機能も追加される。私たちにぴったりのサービスでした」
「とにかく手がかからずに簡単なことから細かいことまですべてできる。日本の既存のサービスだと販売のこの部分まではできるけど、このアプリとの連動ができませんとか、配送でこういうパターンは対応していませんとか、いろんな条件があるじゃないですか。Shopifyでは細かいところまでのパターンが用意され、ストアに合ったことが最初から組み込まれているという便利さが魅力です。Shopify以外に選択肢がない。乗り換えるとかそういう余地がありません」
Atmoph Windowをより多くの人に知ってもらうために、ネットショップとSNSの連携はもちろん、実店舗との連動も行なっています。昨年は六本木のCAFE RANDYとアイスランドをテーマにしたコラボイベントを開催しました。また、Shopifyが六本木で行なった日本初の公式ポップアップイベントの「スタート Shopify」にも出店いただき、非常に好評でした。
今後は旅行ビジネスともコラボレーションしていきたいと展望を語ります。「買ってくださる人の半分以上が旅行の好きな人なので、旅行ビジネスとつながるようなことができたらと思います」
おじいちゃんになってから後悔は嫌
勤めていた会社を退職し、新しい世界へと飛び込んだ姜さん。自分と同じ道を辿るであろう未来の起業家に向けて「飛び込んでみよう」と熱く語ります。「今は良い時代なのでクラウドファンディングもあれば、仮想通貨もあるかもしれない。しかも仕事はどこにでもあります。もし、チャレンジをしてダメだったとしても、アルバイトをすればまたチャレンジができるという良い時代なので飛び込んでみたら良いんじゃないかなと思います」
「自分たちもキックスターターがダメだったら『バイトするしかないね』ってなっていました。そのときはそのとき。でも、自分が思っているよりなんとかなると思います」
学生時代に悩んでいたストレスが姜さんの人生を大きく変えました。挑戦したことに後悔はまったくありません。むしろやらずに後悔をしたくありませんでした。
「あのとき、もしやらなかったらあとでいつか後悔するなって。僕がおじいちゃんになったときに自分の孫に『もし、あの時あれをやっていれば…』とか言いたくないので、それに尽きるかなと思います。今、毎日楽しくできているのは自分がそうやって始めることができたからだと思います。あとで後悔しないって意味でもチャレンジしたことは間違いではありませんでした」
続きを読む
- おもちゃ屋さん × YouTube × 越境ECで大成功!「何をやっても無駄にならない」農家から転身して起業家になった物語
- ホッケーグッズから学校の制服まで幅広くECで販売するF-H-Eのストーリー
- オリジナルデザインのアパレルをオンデマンド印刷で世界へ販売 本業とリンクするブランドを立ち上げたCHA2のストーリー
- 自然の造形美を伝えるSola cubeとウサギノネドコのストーリー
- デザイナーが選ぶ、Shopifyで構築されたおしゃれなECサイト30選
- 10年後のじぶんを大切にしよう。大人気YouTuberオガトレが自社ECをはじめた想いとは
- チベットの民族衣装と現代を融合したブランドを生み出した女性のストーリー
- 中古ゲーム機を越境ECで販売するレトロアジアのストーリー
- 洋服選びに悩む女性をお助け 注目のD2CブランドのSOÉJUの取り組み