環境問題に警鐘を鳴らすZ世代のオピニオンリーダーの出現やパンデミックをきっかけに環境問題を意識し始めた人も多く、最近では個人レベルで小さいことからでも環境問題へのアクションを起こす人が増えてきています。全米で最大の人口を誇るニューヨーク市は持続可能な都市の最前線であることを表明し、2030年までに廃棄物ゼロを達成するという目標を掲げています。市が掲げる目標を実現するために、ニューヨークに拠点を構える企業や病院・学校やコミュニティにも厳しい規則が設けられ、ゴミゼロのライフスタイルに向けた取り組みを行っています。ニューヨーク市は「そもそもゴミを出さない」という考えの“ゼロウェイスト”の実現に向けてさまざまな取り組みを行っているわけですが、下記のようなアクションを始めています。
ニューヨーク市が掲げる革新的な計画「OneNYC」の指針
- ゼロ・ウェイスト・チャレンジNYC
- 商業用リサイクルの義務化
- 商業用有機廃棄物に関する規則
- ビニール袋の禁止
- ゼロ・ウェイスト・スクールの開発
2030年までに商業廃棄物処理を90%削減するというニューヨーク市のコミットメントが「ゼロ・ウェイスト・チャレンジNYC」です。この取り組みは2016年に実施され、ホテルやアリーナ、食品卸売業者や製造業者、商業ビルのオーナーなど、廃棄物を発生させる大規模な企業を対象に実施されることになりました。Final Zero Waste Challenge Reportによると、この厳しい取り組みに対し、ニューヨークの5つの行政区にまたがる39の拠点で31以上の企業がこのチャレンジに参加し、大きな成功を収めました。24,500トン以上の有機物を堆肥化し、322トンの食品を必要としているニューヨーカーに提供するなど、約37,000トンの廃棄物が削減されたといいます。
上記の取り組みがきっかけとなり、2016年からニューヨークの企業に対し、リサイクルの義務化も導入されました。民間運送業者と契約し、廃棄物の収集・分配方法を計画し、分別収集、共同収集、シングルストリーム収集の表示をしなければならなくなりました。このように、ニューヨーク市の取り組みにより、企業は迅速に2030年までに廃棄物ゼロを達成するという目標に向かって舵を切ったことになります。
消費者のチョイスも広がり、個人でゼロウェイストを実践する時代に
世界の中でもトレンドの発信地として知られるニューヨークは環境問題に対する取り組みをブランドや企業単位で取り入れていくスピードも早いです。実際、アメリカの別の州(とりわけコンサバティブな内陸の州)などに行くといまだにスーパーで大量のプラスティックバッグが使われていたりする光景は分かりやすく意識の違いを感じることができます。市をあげた取り組みの成果はカーブサイド・ピックアップによって2005年に約350万トンあった廃棄物が2017年には310万トン以下にまで減少するなど、一歩ずつ効果を見せています。ビニール袋の使用禁止やペーパーバッグの有料化、GrowNYCなどが設置したコンポストボックスが街中で容易に見つけられるようになったことなどは、日常生活でも“見える化”してきている変化です。
こうした世の中の変化を受けてショッピングの概念も変化をしてきています。嗜好品に比べ、必要なものは購入しなくてはいけない日用品の消耗品などは、前述した「そもそもゴミを出さない」ゼロウェイストをコンセプトにしたショップが増えており、シングルユースを減らし、プラスチックを使わず植物性の成分で出来た商品を取り揃えたEコマースショップが増えてきています。
その背景には、Z世代を中心に環境問題に警鐘を鳴らすオピニオンリーダーがインフルエンサー化して発言権を持つことにより、消費者が各々の生活から取り入れられる環境問題に対するアクションを起こすようになったことです。代表的なのはSOHOにポップアップショップをオープンし、実店舗化も実現した「Package Free」のファウンダーでもあるLauren Singer。彼女はInstagramでも36万人のフォロワーを持つオピニオンリーダーで、自身がニューヨーク在住のため、ニューヨーク市のゼロウェイストに関する取り組みを自ら実践し、支持している一人でもあります。
ゼロウェイストを掲げるD2CのEコマースショップが急激に増えていますが、実店舗化をするメリットも大いにあります。プラントベースで作られた洗濯洗剤やキッチン洗剤、シャンプー、コンディショナー、ハンドソープなどはボトルを持ち込むことでリフィルをし、パッケージのゴミを減らし、郵送にかかるボックスなどのゴミも実店舗に足を運ぶことで発生しなくなります。ニューヨーク市をはじめ、アップステートニューヨークでも意識の高い人たちが集まるエリアにはゼロウェイストをを掲げる店舗が存在し、ローカルブランドを取り扱うなど、スモールビジネスを応援しています。
サランラップをコンテナに、キッチン用スポンジはプラントベースのものに、ペーパータオルの代わりに再利用可能な吸水タオルに。Eコマース、実店舗など、消費者も多くのチョイスがあるため、小さなことからでも楽しみながら日々の生活に取り入れることができる環境が整いつつあります。
ゼロウェイストを実店舗で実践する「A Sustainable Village」へインタビュー
マンハッタンのイーストビレッジに店舗を構える「A Sustainable Village」。ニューヨークやブルックリン、女性オーナーのブランドを中心にプラスティックを排除した商品、リフィルをできるステーションを店内に設置し、店を訪れるお客さん同士のコミュニティ構築や情報交換のできる場を提供している。Co-FounderのJaclyn Rosterさんに話を伺いました。
1.どのような経緯でA Sustainable Villageをスタートさせましたか?
A Sustainable Villageはニューヨークのイーストビレッジ地区にあるミッション主導型の社会的企業リテールショップで、主に女性やマイノリティが設立した小規模なブランドによって作られたサステナブルな製品を販売しています。また、ハンドソープ、食器用洗剤、シャンプー、コンディショナーなどの家庭用品をお客様がご自分の容器に詰め替えることができる、詰め替えステーションも設置しています。
私たちがショップをオープンするきっかけとなったのは、子どもたちが受け継ぐであろう世界のことでした。さらに、サステナブルな領域で販売されている多くの新製品やブランドを紹介したいと思ったことです。 これらのブランドを紹介し、議論するための小売店があれば、オンラインショッピングよりも有効な体験ができるはずです。 また、私たちの精製所ではお客様がボトルを再利用できるようにし、不必要な使い捨てのプラスチックを削減しています。
「サステナブルなライフスタイルへの旅は、完璧ではなく、前進する」をスローガンにしています。
2.ブランド設立メンバーのバックグラウンドを教えてください。
私は金融と教育のバックグラウンドがあり、現在はニューヨークで教育学の教授として働いています。 ビジネスパートナーは、ファッション関係の仕事をしています。
3.他のブランドにはないA Sustainable Villageの強みは何ですか?
A Sustainable Villageはニューヨークでも数少ないサステナブルショップです。 私たちの小売店では、お客様が市場に出ている新しいサステナブルな製品を体験し、サステナブルな交換の方法について直接会話をすることができます。 このショップができる前は、お客様はオンラインでしか買い物をすることができませんでした。これが実店舗のある強みだと思っています。
4.“ゼロ ウェイスト”という意味は消費者にどのように理解されていると思いますか?
本当の意味で廃棄物ゼロのライフスタイルを実現できる人はごくわずかだと考えています。 なので、ゼロ ウェイストとは、地球上の足跡をより意識するように努力することです。私たちが購入するものにも、良心的な選択をすることが含まれています。
ニューヨークの消費者は環境に配慮することを望んでいますが、私たちは便利さを追求する文化を持っているので、行動を変えるには時間がかかるでしょう。しかし、近年消費者は自分の財布で選択をしています。 消費者はグリーンウォッシングを意識しており、環境に積極的に貢献していると思われるブランドに資金を投じたいと考えるようになりました。
5.なぜ、Shopifyプラットフォームを選びましたか?
POSシステムとの連携も容易だったからです。
6.追加して欲しい機能などはありますか?
ウェブサイトをより簡単に、より使いやすいデザインになったら嬉しいです。
7.今後、ブランドが目指すゴールを教えてください。
社会的および環境的パフォーマンスの私的認証である「Bコーポレーション」企業になりたいと思っています。また、年間売上の少なくとも1パーセントを環境問題に貢献している国際組織「1% for the planet」のメンバーになりたいと思っています。
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