企業同士が商品を売買できるBtoB卸売ストアは、取扱商品の選定や注文、支払いなどをオンライン上で完結させられ、業務負担を軽減できるメリットがあることから、BtoB ECにおいてニーズが高まっています。
この記事では、Shopifyで卸売ストアを開設する方法や卸売ネットショップを構築・運用するために便利なShopifyの機能、おすすめのアプリを紹介します。
BtoB向け卸売とは
BtoB向け卸売とは、法人同士で行われる卸売取引のことです。具体的には、製造業者やメーカーと卸売企業の取引や、卸売企業同士の取引、卸売企業と小売店の取引を指します。
BtoB(B2B)とは「Business to Business」の略で、企業間の取引を意味します。卸売とは、製造業者やメーカーから商品を仕入れた卸売企業が小売業者へ商品を販売することです。
従来のBtoB向け卸売では、電話やFAX、メールを使った取引が主流でした。取引数に応じて卸値の価格が変動するなど条件が取引先ごとに異なり、消費者向けのECサイトをそのまま卸売ECサイトとして活用するのが難しかったためです。しかし、近年ではこうしたニーズに対応したBtoB ECサイトを開設したり、BtoBマーケットプレイスに参入したりすることで、業務の効率化や販路拡大を目指す企業が増えています。
ShopifyでBtoB向け卸売ストアを開設する方法3つ
Shopifyを活用すれば、自社に合ったBtoB向けの卸売サイトを開設できます。開設方法を見ていきましょう。
1. パスワード保護機能を使う
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通常のShopifyストアのようにショップを立ち上げ、パスワード保護をかけることで個人ユーザーからのアクセスを防ぎ、特定の顧客だけがショップを閲覧できる状態にする手法です。
パスワード保護機能を活用した開設方法は、販売チャネルとしてBtoB向けの卸売ストアのみを開設し、小売りを行わないビジネスモデルに適しています。卸売顧客が少ない、あるいはどの顧客にも同じ価格で商品を販売する事業者にもおすすめです。
Shopifyでパスワード保護機能を設定する方法は、次のとおりです。
- 管理画面>「オンラインストア」をクリック
- 「各種設定」>「パスワード保護」>「パスワードを有効にする」をクリック
- 希望するパスワードを設定
設定したパスワードを顧客に伝えれば、Shopifyストアを卸売ストアとして使用できるようになります。
2. アプリを導入して卸売ストアを開設する
Shopifyアプリを使って、BtoCネットショップを卸売ストアとして開設できます。BtoB向け卸売を始めたばかりである場合や、取引企業が限定的である場合におすすめの方法です。
たとえば、Sami B2B Wholesale Pricing(サミB2Bホールセールプライシング)を使用すると特定のタグに該当する顧客だけが閲覧できるページを用意できます。ストア全体や特定の商品に対してBtoB顧客向けの特別価格を設定したり、一定量以上購入した顧客に対して自動的に割引を適用したりすることも可能です。
ほかにも、BtoB向け卸売ストアでの取引や業務を円滑にできるShopifyアプリが複数あります。
業務の効率化に役立つアプリ
- Ship&co(シップアンドコー):国内外への配送を効率的に管理できるアプリです。追跡番号の自動同期や配送状況の確認、送料の比較などを行えます。注文データをリアルタイムで同期して送り状やインボイスを発行することも可能です。
- Recustomer(リカスタマー):商品の返品や交換だけでなく、キャンセルによる配送の停止や返金の作業も自動化できるアプリです。返品やキャンセルに関するデータの収集・分析が可能なため、返品率の改善にも役立ちます。
取引円滑化に役立つアプリ
- Softify: Easy Invoice+(ソフティファイ:イージーインボイスプラス):販売する国の法律に準拠した請求書を作成できるほか、未払いの注文に対して自動的に支払いの督促メールを送信するなど、BtoB卸売ストアの事務処理を円滑化できます。
- Order Printer: PDF Invoice App(オーダープリンター:PDFインボイスアプリ):取引先に請求書を自動送信する機能や、作成した書類を一括でダウンロードできる機能が備わっています。
購入数に合わせて割引を適用するアプリ
- Steppun Discount(ステップンディスカウント):「商品を5個まで20%オフ」など、商品の数量に基づいて細かく割引を設定できます。「割引金額3,000円まで20%オフ」といった割引金額の制限を設定したディスカウントも可能です。
- Simple Discounts(シンプルディスカウンツ):購入数のほか「5,000円以上の購入で10%オフ」などの金額に応じた割引を設定できます。顧客ごとにタグをつけて分類し、それぞれに異なる割引を適用することも可能です。たとえば「B2Bタグ」をつけた顧客には10%、「新規登録タグ」をつけた顧客には20%の割引を適用するなどが考えられます。
顧客獲得に役立つアプリ
- Shopify Forms(ショッピファイフォームズ):新規のメール登録者や卸売顧客などの登録を促すフォームをカスタマイズできます。表示の位置やタイミングを設定できるほか、顧客データの保存も一括で行えます。
- Joy(ジョイ):同じ顧客から商品を購入し続けてもらうために役立つロイヤリティプログラムのアプリです。一定期間内に特定の金額以上、商品を購入した顧客に特別割引を適用したり、新規登録した顧客に初回購入時から使えるクーポンを提供したりするなどの設定が可能です。
- Transcy(トランシー):BtoB ECサイトを多言語へと自動的に翻訳するだけでなく、さまざまな国の通貨で買い物ができるようにするアプリです。画像の翻訳も可能なため、言語ごとに画像を手動で準備する手間がかかりません。国内だけでなく、海外の顧客にもアプローチしたい事業者におすすめです。
3. Shopify Plusで卸売ストアを開設する
Shopifyには、B2B卸売という企業間販売が可能になるオプションがあります。この機能は、Shopify Plusプランに加入すると利用できます。すでに消費者向けのD2Cストアを持っている事業者が、既存サイトとは別に卸売ストアを開設したい場合や、大規模な販売を行っている場合に適している方法です。
Shopify Plusで卸売ストアを開設する手順は、以下のとおりです。
- Shopify BtoB ECサイトを作成する
- 顧客企業を登録する
- 管理画面>「顧客管理」>「会社」>「会社を追加」で取引する会社を登録する
- 顧客企業の担当者を登録する
- 管理画面>「顧客管理」>「会社」>「お客様」>「お客様を追加」>「検索」をクリック
- 「新しいお客様を追加する」を選択し必要な情報を記入して保存
- 一般客のストアアクセスを制限する
- 管理画面>「オンラインストア」>「各種設定」に移動
- 「ストアへのアクセスを制限する」>「B2Bのお客様にのみアクセスを制限する」にチェックを入れる
- 「保存」をクリック
ShopifyのBtoB卸売を活用することで、外部アプリを追加せずに企業間の卸売取引に必要な機能を利用できます。たとえば、購入企業に合わせて特定の価格を設定したり、決済条件を定義したりすることが可能です。複雑な手続きを踏まずに卸売ストアを開設できる点も特徴です。
ほかにもShopifyのBtoB卸売では、以下の機能を利用できます。
- 会社プロフィール:取引先企業やロケーションを対象に、個別の決済条件やユーザー権限を設定できる
- 購入者別の商品公開:特定の購入者やロケーションに合わせた商品カタログを割り当てられる
- B2Bストア最適化:ストアテーマのLiquid(プログラミング言語)サポートやメールテンプレート、ブランディングなどのサポートが受けられる
- 数量ルール:商品やそのバリエーションに対して、最小値や最大値などの条件付きのルールを設定できる
- 価格表:顧客ごとに価格を設定し、会社プロフィールに割り当てられる
- 支払期日を記した決済条件:決済条件を自動的に設定でき、決済期限が迫った注文の代金を管理画面から追跡・回収できる
- 会社メタフィールド:会社とロケーションにカスタムデータフィールドを追加できる
- 簡単な再注文:顧客が再注文しやすくなる
- 柔軟な支払い受け取り方法:下書きや支払いリマインダー、請求書、商品受領後の支払いの条件などを設定できる
- チェックアウトで下書き注文作成:注文確認と注文承認が管理画面で行え、見積もり提案などが可能になる
- クレジットカード情報保護:チェックアウト時や顧客アカウントに登録されたカード情報を安全に保存できる
- B2Bロジックのカスタマイズ:Shopify Functions(ショッピファイファンクションズ)を使って、顧客に合わせた配送方法や支払い方法をチェックアウト画面に構築できる
- 購入のセルフサービス:顧客が自分で購入・注文状況を追跡できるようになる
- グローバル展開:販売先の国や地域に合わせて通貨や免税の設定を行える
- カスタムB2B:互換性のあるアプリを活用して、ビジネスに合ったサイト構築ができる
ShopifyでBtoB向け卸売ストアを開設するメリット
低コストで始められる
Shopifyのベーシックプランであれば、低コストでパスワード保護機能を活用したBtoB向け卸売ストアを開設できます。必要な機能のみをアプリで追加するため、高額な予算を必要としません。状況に応じてプランを変更したり、アプリを追加したりすることも可能です。
機能が充実している
Shopifyには、BtoB向け卸売ストアに必要な機能やアプリが充実しているため、あらゆる規模の卸売取引に対応できます。Shopify Plusプランでは、豊富なBtoB卸売向け機能が利用できるほか、リソースを一元管理している会社の基幹系情報システムをShopifyに統合することも可能です。
越境販売ができる
Shopifyは多言語・多通貨に対応しているため、海外市場への参入を目指している場合にもおすすめです。Transcyなどの海外の顧客獲得に役立つアプリを導入することで、日本国内だけでなく、世界各国での越境販売を目指せます。
専門家に相談できる
ShopifyのBtoB卸売オプションが利用できるShopify Plusプランを検討している場合、料金プランの詳細や使用しているシステムとの互換性、移行の支援などを専門家に相談できます。Shopifyはどのプランでもライブチャットなどを通じて、24時間いつでもサポートチームに相談することが可能です。Shopify Plusプランでは、電話またはライブチャットで優先的にサポートが受けられます。
まとめ
ShopifyでBtoB向け卸売ストアを開設する方法には、パスワード保護機能を使う方法とアプリを導入する方法、Shopify Plusプランに加入する方法があります。
ShopifyでBtoB向け卸売ストアを開設するメリットは、ストアの開設費や維持費を抑えて事業を始められる点です。BtoB向けのさまざまな機能が充実していることに加えて、何か困りごとがあれば、専門家のサポートが受けられるため、専門知識のない方でも使用できます。
取引先の企業が多い場合や取り扱う商品が多い場合には、B2B卸売が使えるShopify Plusプランがおすすめです。購入者別の商品公開や数量ルールの追加、グローバル展開などの機能を利用できます。無料体験も実施していますので、お気軽にShopifyをお試しください。
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よくある質問
ShopifyでBtoB卸売ストアを構築するのにおすすめのプランは?
BtoB卸売向けのオプションB2B卸売を利用できるShopify Plusプランがおすすめです。この機能はShopifyの管理画面に統合されており、顧客ごとに商品価格を設定するなど、さまざまな機能を使用できます。
ShopifyのBtoB卸売ストアは海外の企業とも取引できる?
Shopifyで構築したBtoB卸売ストアでは、海外企業とも卸売取引ができます。Shopifyは越境ECにも対応しているため、海外へと販路拡大を目指す企業にもおすすめです。
Shopify PlusではないプランでもBtoB卸売ストアを構築できる?
ベーシックプランやスタンダードプラン、プレミアムプランでもBtoB卸売ストアを構築できます。その場合は、パスワード保護機能を活用したり、Shopifyアプリを導入したりする必要があります。
文:Yukihiro Kawata