レコメンド機能は、ウェブサイトへのアクセス履歴などの膨大な情報を収集し、対象とする利用者と同じような商品やカテゴリに関心を持っているほかの利用者を関連づけてグループ化し、共通項のある利用者がよく見ているものの、対象とする利用者がまだ見ていない商品を表示させる仕組みのことです。
ECサイトでこうしたレコメンド機能を活用することで、各顧客の1回の購入における合計金額を増やすことができます。その秘訣は、購入者の意図に合った商品をおすすめすることです。ここでは、ECサイトでのレコメンド機能の使い方を紹介します。
ECサイトのレコメンドとは
ECサイトのレコメンド機能とは、ネットショップの利用者に対し、それぞれが興味を持ちそうな商品を提案する仕組みです。利用者一人ひとりの閲覧履歴や購入履歴、行動パターン、年齢や職業などの属性情報に基づき、提案が行われます。レコメンド機能を導入する際に活用されるのが、レコメンドエンジンと呼ばれるソフトウェアです。レコメンドエンジンは、導入すれば必ず売り上げが増えるというわけではありませんが、さまざまな商品に対して顧客が興味を持つきっかけづくりに役立ちます。
ECサイトのレコメンド機能のメリット
ECサイトでレコメンド機能を導入すると、上記のようなメリットがあります。
販売数と収益を増やせる
商品のおすすめを一人ひとりに合わせたものにすることで、 1回の注文における平均額を示す平均注文金額(AOV)が劇的に向上します。2023年にBarilliance(バリアンス:英語)が実施した調査では、各ECサイトの収益は平均31%がレコメンド機能によって生み出されているという結果となりました。また、McKinsey(マッキンゼー)の報告(英語)で、Amazon(アマゾン)で購入された商品のうち、35%がレコメンドエンジンによっておすすめされたものであることも判明しています。
ユーザー体験を向上させられる
おすすめ内容を一人ひとりに合わせたものとすれば、顧客は必要な商品のページにすぐ移動できるようになるため、快適に買い物ができるようになります。Moengage(モエンゲージの調査(英語)では、レコメンド機能による提案を受け、49%の顧客が当初買う予定のなかった商品を購入したという結果が出ています。
顧客ロイヤリティを高められる
レコメンド機能を効果的に使うことで、顧客満足度の向上や顧客維持を実現しやすくなります。顧客は、ECストアで自分のニーズに合う魅力的な商品がおすすめされていると、そのリピーターやファンになる傾向があります。つまり、顧客一人ひとりに合わせた施策を行うことで顧客満足度やブランドロイヤリティが向上しやすくなるといえるでしょう。
マーケティング費用を効果的に投入できる
顧客の行動や好みを理解できれば、ECストアにどのような商品を揃えるべきか、どのようなマーケティング戦略を立てるべきかが見えてきます。さらに、広告の表示対象も絞り込めるようになります。以前にサイトを訪問した人に、その時に閲覧したであろう商品に絞って広告として表示できるようになるためです。また、広告として表示する商品の選択に過去の顧客データを活用すれば、新規顧客へのリーチも増やすことができます。
改善に役立つデータを取得できる
レコメンドエンジンを活用すれば、顧客の行動や好みだけでなく、トレンドに関するデータも取得できます。このようなデータをうまく利用することで、ECサイトでの商品ラインナップを見直し、機械学習アルゴリズムの設定を改善することが可能です。こうしたデータはまた、顧客の嗜好を反映させた新商品を開発する際にも役立ちます。
レコメンドエンジンの種類
レコメンドエンジンでは、おすすめする商品の選択にさまざまなアルゴリズムや技術が活用されます。代表的なレコメンドエンジンは、以下の3種類です。
協調フィルタリング
協調フィルタリングは、二つに分類されます。一つは「ユーザーベース協調フィルタリング」で、もう一つは「アイテムベース協調フィルタリング」です。
ユーザーベース協調フィルタリング
ユーザーベース協調フィルタリングとは、顧客の嗜好や行動の類似性に焦点を当てる手法です。具体的には、過去の購入履歴や評価、いいねなどの行動における顧客同士の共通点を見つけ出し、似たような行動をとったほかの顧客が興味を持った商品をおすすめします。
アイテムベース協調フィルタリング
アイテムベース協調フィルタリングは、顧客同士を比較するのではなく、商品の類似性に焦点を当てる手法です。具体的には、顧客が過去に関わった商品と似た特徴を持つほかの商品をおすすめします。
コンテンツベースフィルタリング
コンテンツベースフィルタリングは、商品の属性や特徴に基づいておすすめのアイテムを紹介する手法です。この方法では、顧客が関心を示した商品の属性情報や商品説明を分析し、似た特徴を持つほかの商品をおすすめします。たとえば、コンテンツベースフィルタリングを活用すれば、閲覧者が特定のブランドの靴を閲覧あるいは購入した際に、同様のスタイルや色、素材が取り入れられたほかの靴をおすすめすることができます。
ハイブリッド型レコメンド
協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリング、それぞれの手法にある弱点を補うために用いられるのが、両者を組み合わせたハイブリッド型レコメンドです。たとえばハイブリッド型では、特定のユーザーに対し、協調フィルタリングを用いて嗜好が似ている顧客を特定した後、コンテンツベースフィルタリングを活用して商品の属性に基づくおすすめ商品を見つけ、そのユーザー個人に合わせたおすすめを提示できます。
ECサイトでレコメンド機能を活用するコツ
ECサイトでレコメンド機能を活用し、顧客の購買体験をできるだけ良いものにすることで、追加購入を促すことができます。ここでは、レコメンド機能を効果的に活用し、顧客体験を向上させ、売り上げを伸ばすためのコツを紹介します。
リピーターの購入履歴を活用する
顧客一人ひとりに対して関連性の高い商品をおすすめできるよう、購入履歴や閲覧履歴、ショップでのやり取りや行動の記録であるインタラクションデータを活用しましょう。こうした情報を活かして、商品ページやカートページに「一緒に購入されることが多い商品」や「あなたへのおすすめ」といったセクションを設けることで、追加購入を促すことができます。
カテゴリーページの表示を各顧客に合わせる
顧客がスムーズに商品を選べるよう、商品カテゴリーページにレコメンド機能を導入しましょう。たとえば「ベストセラー商品」や「最も高く評価されている商品」といったセクションを設けることで、顧客は欲しい商品を見つけやすくなります。
クロスセル戦略を取り入れる
ショッピングカートページや各商品ページで、関連のある商品をあわせて提案するクロスセル戦略を取り入れるのも一つの手です。たとえば「この商品を購入した人はこんな商品も購入しています」や「一緒に購入されることが多い商品」といったセクションを設けて、平均注文金額の向上を狙いましょう。
おすすめ内容を顧客一人ひとりに合わせる
おすすめする商品は顧客一人ひとりの嗜好や行動に基づいたものとしましょう。レコメンド機能の質を向上させ、顧客に再度訪れてもらうためには、顧客個人のニーズに合った検索結果が表示されるようにしたり、口コミ評価の高い商品を紹介したりすることが重要です。
レビューを活用する
顧客の好意的なレビューや評価をECサイトに表示させ、商品の魅力を強調するのも良いでしょう。実際に製品やサービスを利用した顧客の感想や口コミは信頼されやすく、購入の後押しとなることもあります。
ECサイトと実店舗を連携させる
ECサイトと実店舗の両方を運営している場合、一方のストアで得られた顧客情報をもう一方のストアにも活用し、効果的なアプローチを行いましょう。たとえば、実店舗の家具ショールームでソファを購入した顧客からメールアドレスなどの個人情報を取得できた場合、ECサイトではその顧客に対してクッションや枕といった関連商品をおすすめするといった対応が取れるでしょう。
改善を重ねる
A/Bテスト(顧客によってコンテンツの表示スタイルを変え、それぞれのスタイルで得られた成果を比較する手法)を利用し、おすすめ内容や精度を改善したり、おすすめの表示位置によって売り上げや顧客からの信頼感がどう変化するかを確認したりするのも良いでしょう。A/Bテストを活用してECサイトをより良く改善することで、運用コストを膨らませることなくレコメンド機能の効果を極限まで高めることが可能です。
ほかのブランドを研究する
競合他社のウェブサイトでレコメンドエンジンがどのように活用されているのかを観察しましょう。競合サイトで得た知見を、自社のECサイトに応用することができるかもしれません。
まとめ
ECサイトにおけるレコメンド機能は、各顧客の行動データや商品の類似性などに基づいておすすめアイテムを一人ひとりに提案し、購買体験を向上させる仕組みです。この機能を活用することで、平均注文金額を高めたり、リピーターを獲得したりしやすくなります。機能をより効果的に活用するには、関連性の高い商品を表示するクロスセル戦略を取り入れたり、レビューを活用して商品を実際に購入した顧客の感想を伝えたりするといった手法が有効です。
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よくある質問
ECサイトにおけるレコメンド機能の例は?
レコメンド機能は購買行動や嗜好に基づいて商品を提案する仕組みのことで、たとえば「この商品を購入した人はこんな商品も購入しています」や「一緒に購入されることが多い商品」といったセクションをウェブサイトに設置できる機能を指します。
商品のおすすめは何に基づくべき?
レコメンド機能を活用して商品をおすすめする際は、顧客の嗜好や行動、購入履歴、閲覧履歴などに基づいて、一人ひとりに合った提案を行えるようにすることが重要です。
レコメンド機能のメリット・デメリットは?
メリット:
- 販売数と収益を増やせる
- ユーザー体験を高められる
- 顧客ロイヤリティを高められる
- マーケティングを効率的に行える
- 改善に役立つデータを取得できる
デメリット:
- ECサイト上の商品数が少ないと効果が薄い
- ECサイトの利用者が少ないと提案の精度が低い
- 導入にあたって初期費用がかかる
Shopifyにレコメンド機能はある?
Shopifyには、オンラインストアにレコメンド機能を組み込めるアプリが複数存在します。詳細は、Shopifyのアプリストアで確認できます。
文:Yukihiro Kawata