ここ2〜3年で日本でも認知度が高まりつつある「ブラックフライデー」。日本でもブラックフライデーセールを行う事業者が増えてきています。2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、実店舗の販売からオンライン販売に大幅にシフトし、この流れは2021年も変わらないだろうということが予想されます。また、多くの買い物客が国内国外問わずに買い物を行うので、ブラックフライデーは、越境ECと国内ECどちらでも売上を拡大する大チャンスなのです。
ブラックフライデーに合わせて日本国内でセールを実施し大成功を収めているブランドがドッグカメラを販売するFurbo(ファーボ)。ブラックフライデーのセール期には通常期と比べて、Shopifyで運営するオンラインストアでの売上が毎日5〜60倍増加したとのことです。今回の記事ではブラックフライデー・サイバーマンデー(BFCM)でセールを続けている「Furbo(ファーボ)」を販売するTomofun株式会社の代表取締役の布施健さんにお話を伺いました。
(インタビューは2019年に行われましたが、2020年に読んでもとても参考になる内容だわん🐶)
2017年からブラックフライデーに参加
Furbo(ファーボ)が最初にブラックフライデーセールをはじめたのは2017年。当時、日本でブラックフライデーのオンラインセールを行なっていた企業は「トイザらス」や「ZARA」など海外系のブランドが中心でした。Furbo自体もグローバルのブランドですが、ブラックフライデーに参加するきっかけについて布施さんは「先行者利益」と「季節的な需要」が大きかったと振り返ります。
「今後、ブラックフライデーのインパクトが日本で大きくなってきたときに先行者利益が効きやすいというところと、それによってブラックフライデーで想起されやすいブランドになれると考えたからです」
「さらに、ブラックフライデーやサイバーマンデーというのは冬のボーナスの時期と年末のギフト需要が相まっているんですよね。お客様がクレジットカードで決済するときに、キャッシュフロー的な観点でも、12月初旬にはボーナスが入ります。ですので11月末というのは大きな買い物をしやすい。理論的に考えた結果、日本でブラックフライデーのセールをやらない理由がないと思ってはじめました」
2018年を2017年と比較して
Furbo(ファーボ)は最初に参加した2017年のブラックフライデーセールで成功を収めます。2017年はブラックフライデーで年間最大の売上を達成。この成功が翌年以降の自信とつながりました。しかし、今振り返ってみると2017年は目先の利益に必死だったと言います。
「2017年を振り返ると、売上の目標自体はありましたが、そこに到達するためのロジックが十分ではなかったと思います。当時は目標を達成するためにはこのくらいはマーケティングに使えるだろうという広告予算を感覚で探り当てて、セールを実施したという感じでしたね。結果的には売れて良かったのですが、そこでもっと戦略的になる必要を感じました」
2018年のブラックフライデーでは、Furbo(ファーボ)は前年の反省を活かし、戦略的にセールの準備をはじめました。特に注力した箇所が「予算の最適化」です。
「2018年の違いはセール期間中に広告予算を最適化したことでした。1年間の経験から、Facebookとグーグルに何%出稿すべきかや、Eメールから獲得するコンバージョンの割合はこれくらいなど、投資先のメディアの反響の想定ができるようになりました。もちろん感覚でやるよりか効果は大きく、セール期間中の売上は通常期に比べて毎日5-60倍を達成しました」
2018年のブラックフライデー時のストア
Furbo(ファーボ)ではチャネルをペイドメディアとアーンドメディアに大きく分けています。ペイドはFacebook、Google、Yahoo! Japan、LINE、Criteoなどに出稿し、アーンドではインフルエンサーやPRなどに取り組んでいます。Furbo(ファーボ)は今までのデータに基づいて、予算の配分を最適化しています。
「僕たちのストアは、ペイドメディアの中だと認知という意味合いだとInstagram広告が最も相性が良く、続いてFacebookという順番です。なので、例えばFacebookの広告に100万円を使うときでも、80万円はInstagramで、20万円はFacebookというような設計や、プレイスメント、ターゲッティングの観点も加味して獲得単価を最安値にしています。GoogleやYahoo! Japanでも同様に、最も効率が良くなるように設計しています」
「さらに予算設計はリードの獲得時と実際のセール時でも変えるようにしています。セールで何台売るためにはマーケティングコストはいくらになるか計算し、例えば、リードで40%を使い、本番で60%使うと決めたら、40の中でどのように設計するかというのを考えています」
効率的なリードの獲得と最大化。これがFurbo(ファーボ)が今年重点的に取り組む施策のひとつです。
リード獲得から緻密に計算されたセール戦略
布施さんが実感したように、世の中はただ単にセールをするだけで売上が劇的に上がりほど簡単にできてはいません。しっかりとした売上を生み出すには緻密な戦略が必要となります。Furbo(ファーボ)はリード獲得という点を重視して今年はブラックフライデーに向けたマーケティング活動を行なっています。
「メールアドレスの獲得をリードとして定義づけしていますが、昨年から今年にかけてブラックフライデーを含めた様々なマーケティング活動を行なっていく中で認識したのは、うちの商品はセールで知ってすぐに購入するという需要があまりないということです。いかに事前にお客様に知ってもらうかというのが重要で、セール時の売上を垂直立ち上げさせるためには、セールが始まってから多額のマーケティング投資をするよりかは、いかに事前にリードを取っておくかという点が非常に大切だということを学びました」
実際にリード獲得に力を入れて臨んだ今年のAmazonのプライムデーでは、わずか2日間で数千台を販売。一時はアマゾン全体の中の売上ランキングでEchoなどを抜いて1位になったとのことです。そのときの経験が自信となり、今年のブラックフライデーでも同じようにリード獲得を重点化しています。
「今年はトータルで何台売るという目標から、広告費を予算最適化するだけではなく、事前の広告投資を全体予算の中から何%割いたり、事前のリード獲得単価を最適化したりという点も含めて設計しています」
ブラックフライデー参加はまだ先行者利益がある
「例年、大きな会社がブラックフライデーセールをはじめるというのを聞くので、そういう意味では日本でも徐々にブラックフライデー自体の認知度が広がっているのは感じますね。なのでほんとに、早めに参加すべきだと思います。」と布施さんは語ります。
「他の会社がセールをやっていないということも参加する理由になります。そこで競合を上回る売上を獲得できるかもしれないですし。逆にブラックフライデーの認知度が上がり、みんながセールをやるようになると競争が激しくなって売れなくなってしまいますよね。なので、なるべく早めにやったほうがいいと思いますし、準備自体も早ければ早いほど成功確度を上げられると思いますね。僕たちは9月後半から少しずつ準備して、10月頭から本格的に動き出しています」
Furbo(ファーボ)が行う準備というのは販売台数の目標を決めるところからはじまります。「まずは、販売台数の目標を決め、そこからマーケティングに使用する予算を計算し、リード獲得の時期やセール中での予算の比率を出して、メディアごとに決定しています。
「準備を早い段階でやるのがキーポイントかなと思っています。セールに向けてたまに環境が変わったりするんですよね。例えば、アマゾンのサイバーマンデーがこの日からはじまるなど、年ごとにセールのスタート時期や開催日数など変わってくるということがあるので、そのようなときでもすぐに修正ができるようになるべく早いうちから準備をするのが大事です。僕らの場合は最初の認知度を取りに行く広告は10月の中旬や下旬から始めていますね」
Tomofun株式会社の代表取締役の布施健さん
ブラックフライデーでの勝利のためには早い時期からの準備が不可欠。過去の運用でFurbo(ファーボ)はノウハウを手に入れました。では、ここの認知度獲得ではどのようなことをやっているのでしょうか。
「セールでは新規のお客様を取りにいきますが、セールの瞬間に「私が悩んでいたことを解決する商品が安くなっているから買おう!」と新規顧客に思わせなければなりません。すると、およそ1ヶ月半前はそのようなソリューションやプロダクトがあるということを1人でも多くのターゲットに伝える必要があると思っています。その時期には商品のメインのソリューションを伝えるという方向性で、幅広い層にリーチできるように心がげています。例えば、ウチではお留守番中の不安を解消するので、「愛犬のお留守番心配じゃないですか?」などの、そういうメッセージに共感してもらう人に商品を知ってもらうことが大事だと思っています」
セールに大事なのは早めに準備し、そして実施すること
今年からブラックフライデーのセールにはじめて参加しようかと悩んでいるストアさんも少なくはないでしょう。そんなストアへのアドバイスとして「1日でも早く準備する」と布施さんは自身の経験を踏まえ語ります。
「早めにすべて動くということに越したことはないと思いますね。遅くなればなるほど、売上を作るのは難しくなると思います。1日でも早くいろんな準備を、年末に向けて、取引先とも話を進めていくことです。社内的な準備や試算、計算も今からやっておけば仮に状況が変わってもその計画をもとに変更することができるので、そこが一番のポイントです。」
では、ブラックフライデーに向けて十分な準備ができないストアはセール自体の参加を避けるべきなのでしょうか。布施さんは「実績やデータを来年に活かすことができるのでやるべき」と答えます。
「翌年以降に比較ができるという意味で考えると、とりあえずやることは大事だと思いますね。実績やデータが資産化できることがポイントだと思います。もちろん、ただ「値段を下げました」ではあまり意味がないと思うので、予算をいくら使うや、どのようなロジックでその予算を出したや、予算の使い道で、どこのチャネルに何%のお金を投入して、結果として売上はこうなった、などという最低限のデータがあれば、終わったあとにセール前の予測と、その予測がどうだったのかという評価ができます」
そうすることによって、来年のセールでは去年のプランと実績のギャップがどこにあり、どのようなロジックで、どこに予算を使うべきかという、より精度の高いプランができるようになると思います。そして、しっかりとデータを残しておく。これを繰り返すことによって、より精度が高くセールでの勝利をつかみとることができるのです。
2019年のブラックフライデーでの取り組み
Furbo(ファーボ)は2019年のブラックフライデーではリード獲得に集中するとお話していましたが、具体的にはどのような施策をセールまでに考えているのでしょうか。
「まだ企画段階ですが、できるできないということを抜きに、非現実的なものも含めて、色々と考えています。多くを明かすことはできませんが、PR的に話題になりそうなことをセールに合わせてやろうかなと思っています」
さらに布施さんはアマゾンの動きについても注視しています。
「実は今年からアマゾンがサイバーマンデーだけではなく、ブラックフライデーも本格的にセールを行うという噂が出ていたりします。そうなった場合でもさっき言ったように準備を早い段階で行うことで調整する予定です。実はアマゾンは昨年も日本でブラックフライデーを小さくやっていたようですが、ほとんど話題にならなかったんですよね。ただ、今年からセールを開催するにしても、全貌が見えてくるのは直前になりますし、僕たちとしてはそれを待っていても仕方ないので、自分達に都合の良いストーリーでセールの予測を立てています。彼らの動き次第で、アマゾンとShopifyの売上台数の比率などを調整しながら、予算を変更する可能性はありますね」
どんなことが起こっても前もって準備をしておけば対応ができる。今年のブラックフライデーは11月29日と、まだ2ヶ月ほど時間はありますが、今からできることは多くあるはずです。今回からブラックフライデーのセールに参加しようと思っているストアさんは、セールで勝利をするためにも徐々に準備をはじめる必要がありそうです。
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