世界最大のECモールAmazon(アマゾン)は個人事業主や企業、公的組織といった事業者をサポートするAmazonビジネスというサービスを無料で提供しています。この記事では、Amazonビジネスの特徴や、個人アカウントとの切り替え方法、利用するメリットとデメリット、登録方法、料金などを詳しく解説します。
Amazonビジネスとは
Amazonビジネスとは、個人向けのAmazon.co.jpに、事業者向けの機能やサービスを追加した、Amazonの法人・個人事業主向け購買サービスです。ビジネスにおける購買プロセスを改善し、業務を効率化することを目的としており、個人事業主から大企業、公的機関まで、幅広い事業者に利用されています。
Amazonビジネスに登録すると、法人価格で通常より安く買い物ができる、会計ソフトと連携できる、請求書払いができるなど、さまざまなメリットが享受できます。
基本的には無料で利用できますが、複数人で共通のアカウントを使用したい場合や、送料無料で利用したい場合は、「Business(ビジネス)プライム」という有料会員プログラムも用意されています。
Businessプライムとは
Businessプライムとは、Amazonビジネス専用の有料会員プログラムです。
Businessプライムの会員になると、利用ユーザー数を増やせる他、対象商品のお急ぎ便、当日お急ぎ便、お届け日時指定便を何度でも無料で使用できます。
また、一部プランでは、購買データを可視化して分析するダッシュボードや、購買をコントロールする機能などを利用できます。
料金プランは無料のDuo、有料のEssentials、Small、Medium、Unlimitedの5つのプランが用意されており、最大ユーザー数や、使用できる機能が異なります。
Businessプライムは、Amazonプライムと名前が似ていますが、まったく異なるプログラムですので注意してください。Amazonプライムが個人や家庭向けのサービスに特化している一方、Businessプライムは購買活動の管理に特化しており、登録できるのも個人事業主や法人といった事業者のみです。Amazonプライムで提供されているサービス(Amazonプライム・ビデオや、Amazonミュージック、Amazonフォト、Amazonフレッシュなど)は、Businessプライムでは利用できません。
Amazonビジネスの特徴
事業者向けの価格設定
Amazonビジネスでは、3000万種類以上の商品で法人価格が設定されており、通常のAmazonより安く購入できます。また製品によっては、一定数以上の購入で割引が適用される数量割引もあります。
会計ソフト、購買システムなどとの連携
freee(フリー)、弥生会計などの会計ソフトとデータを連携することができます。
また、EPCUS(エピカス)など連携に対応している購買システムを利用している場合は、使用中の購買システム上で、Amazonビジネスの商品を購入することが可能になります。
請求書払いのオプション
1カ月分の購入代金を、まとめて請求書払いすることができます。締め日は5日、10日、15日、20日、25日、末日から選択可能です。支払い期限が請求書の締日から1ヶ月後になるため、キャッシュフローを改善することができます。
請求書払いを利用するには申請が必要で、審査の際に購入限度額が設定されますが、限度額の増額をオンライン申請することが可能です。
購買データ
Amazonビジネスでは、詳細な購買データを一覧で取得することができます。例えば、次のようなレポートを取得することができます。
- 照合データ:注文履歴と支払い履歴を比較したレポート(身に覚えのない請求の調査などに利用する)
- 注文履歴データ:注文履歴の詳細を商品単位でまとめたレポート
- 返金データ:返金に関する情報をまとめたレポート
- 出荷データ:出荷状況、配送状況、出品者名など、配送された注文情報の詳細をまとめたレポート
- 商品詳細データ:注文した商品の詳細情報をまとめたレポート
その他、データの利用目的に応じて表示する項目をカスタマイズし、CSV形式のレポートとして出力し、ダウンロードすることも可能です。
また、Amazonビジネスでは、領収書や購入明細書、見積書、適格請求書および適格返還請求書など、経理業務関連の書類の取得も簡単です。書類が必要な注文番号のボックスを選択し、選択した注文の関連書類を一括でダウンロードできます。
インボイス対応
Amazonビジネスでは、Amazonが販売する商品を購入した場合だけでなく、個々の出品者(販売事業者)から購入した場合であっても、その出品者が適格請求書(インボイス)を発行できる業者であれば、注文履歴からインボイスを取得することが可能です。
複数ユーザーでの運用(Businessプライム)
ひとつのビジネスアカウントに複数のユーザーIDを紐付けて運用することができます。紐付けられるユーザーの人数の上限は、Businessプライムのプランによって異なります。
承認ワークフローの設定(Businessプライム)
物品の購入やサービスの導入を行う際、多くの企業で稟議書が必要とされますが、Amazonビジネスでは、購入承認手続きのためのワークフローを設定できます。注文金額別にルールや承認者、代理承認者を割り当てるなど、詳細な設定が可能です。
購買分析ダッシュボード(Businessプライム)
購買分析ダッシュボードは、ダッシュボードを作成する「設定者」と、データを基に分析を行う「参照者」の役割をメンバーに割り当てた上で、購買履歴データを分析できる機能です。グラフなどの形式でデータを視覚的に確認できます。購買履歴は、注文書番号や出品者(販売事業者)、部署などのグループ、購買カテゴリーなど、項目ごとにフィルタリングして閲覧することも可能です。また、支出目標やコスト削減目標に対する状況をリアルタイムでモニタリングしたり、注文状況から購買傾向を分析したりすることができます。
設定者、参照者の人数の上限は、Businessプライムのプランによって異なります。
購買コントロール(Businessプライム)
購買コントロール機能を使えば、購買を推奨している商品を優先的に表示する推奨ルールや、コンプライアンスに応じた制限ルール、禁止ルールを作成できます。
推奨ルールでは、従業員に優先して選択してほしい商品や出品者、ブランドなどを表示することができます。例えば、事業者が地元の販売者を応援したい場合、Amazonの検索場面で特定の所在地にある販売者の出品を上位に表示することも可能です。
制限ルールでは、購入前に承認が必要なものや、できるだけ購入を控えるべきものを表示します。承認ワークフローと組み合わせて活用することもできます。
禁止ルールでは、特定の商品をブロックできます(Unlimitedプランのみで使用可能)。
Amazonビジネスと個人アカウントとの切り替え方法は?
- アカウント設定のドロップダウンメニューを開く
- ドロップダウンメニューから「アカウントの切り替え」を選択する
- Amazonビジネスのアカウントを選択または追加する
Amazonビジネスと個人アカウントの切り替えは、パソコン、スマートフォン、タブレットなど、どのデバイスでも上記の手順で簡単に行うことができます。アカウントを追加しておけば、ログアウトしてから再ログインするという面倒な手順をふむ必要はありません。
個人アカウントの情報とAmazonビジネスアカウントの情報はそれぞれ別々に管理されていますが、同一の利用者であるという認識は保持されるため、おすすめ機能などは保持されます。
Amazonビジネスのメリットとデメリット
Amazonビジネスのメリット
コストが削減できる
大量購入に対する割引や事業者向けの価格設定により、コストの削減が期待できます。
経理業務の負担を軽減できる
事業共通のアカウントを使用することで、立て替えなどの方法で品物を購入する機会が減少し、経理業務の負担が大幅に軽減されます。また、経理ソフトと連動させて入力を自動化させれば、入力作業そのものが不要になります。
事業に応じた決済方法が選択できる
クレジットカード、デビットカード、コンビニ、ATM、代金引換、一部のネットバンキングおよび電子マネー、法人用クレジットカード、請求書払いなど、事業に応じた支払い方法が選べます。請求書払いを利用すると後払いができるので、仕入れの金額が大きい場合なども、資金繰りが把握しやすくなり、キャッシュフローを安定させることができます。
購買プロセスが効率化できる
Businessプライムに登録した場合、従業員からきた購入申請に承認を出すワークフローが設定できるため、購買プロセスの効率化が期待できます。事業にまつわるさまざまな購買プロセスがひとつのアカウントに集約されるため、管理も容易です。
購買データが活用できる
「いつ、だれが、何を、どれくらい購入したか」といった詳細な購買履歴データを出力して、分析に役立てることができます。さらに、Businessプライムに登録した場合、購買分析ダッシュボードを利用して、購入パターンを分析し、予測し、支出の最適化を測ることができます。
Amazonビジネスのデメリット
Amazonプライムと併用できない
Amazonビジネスは、Amazonプライムと併用することができません。そのため、個人利用しているAmazonプライムアカウントからAmazonビジネスアカウントに移行すると、Amazonプライム会員の資格が停止され、Amazonプライムで提供されているサービス(Amazonプライム・ビデオや、Amazonミュージック、Amazonフォト、Amazonフレッシュなど)は利用できなくなってしまいます。
Amazonプライムのサービスを利用し続けたい場合、個人アカウントはそのまま残しておき、事業用の別のメールアドレスを使用して新規アカウントを作成しましょう。
個人のAmazonアカウントからAmazonビジネスアカウントに移行すると購入履歴が共有されてしまう
個人のAmazonアカウントからAmazonビジネスアカウントに移行した場合、個人アカウントの過去の購入履歴も引き継がれます。そのため、個人アカウントから引き継いだAmazonビジネスアカウントに別のユーザーを紐付けると、過去の個人的な品物の購入履歴までも共有されてしまうことになります。
ビジネスアカウントを別のユーザーと共有する可能性がある場合は、個人アカウントからの移行を行うのではなく、事業用の別のメールアドレスを使用して新規アカウントを作成しましょう。
無料会員の場合、2,000円未満の購入に送料がかかる
無料のAmazonビジネス会員の場合、2,000円未満の購入に配送料が発生します。何度も配送料が発生すると費用がかさんでしまうため、少額の発注を繰り返し行うといった使い方をする可能性がある場合は、Businessプライムへの登録を検討しましょう。
Amazonビジネスの料金
Amazonビジネスは、登録費も年会費も無料です。ただし、Amazonビジネス専用の有料会員プログラムであるBusinessプライムに加入する場合のみ、会員プランに応じて次の年会費が発生します。
- Duo:ユーザー数最大1名。個人での購入と事業のための購入を区別したい個人事業主や、中小企業のオーナー向け。すでに個人アカウントでAmazonプライム会員に登録済みの人限定のサービスであり、年会費無料。
- Essentials:ユーザー数最大3名。購買分析ダッシュボード機能を、参照者数最大3名で利用可能。購買コントロール機能有り(推奨、制限の設定が可能)。年会費5,900円(税込)。
- Small:ユーザー数最大10名。購買分析ダッシュボード機能を、設定者数最大1名、参照者数最大10名で利用可能。購買コントロール機能有り(推奨、制限の設定が可能)。年会費13,500円(税込)。
- Medium:ユーザー数最大100名。購買分析ダッシュボード機能を、設定者数最大1名、参照者数最大100名で利用可能。購買コントロール機能有り(推奨、制限の設定が可能)。年会費37,800円(税込)。
- Unlimited:ユーザー数無制限。購買分析ダッシュボード機能を、設定者数最大2名、参照者数最大100名で利用可能。購買コントロール機能有り(推奨、制限、禁止の設定が可能)。年会費270,000円(税込)。
まとめ
Amazonビジネスは、Amazonが事業者向けに提供するサービスです。サービスの特徴として、法人価格での販売や会計ソフトとの連携、請求書払いなどがあり、事業者は購買プロセスの改善など業務の効率化につながるさまざまなメリットが得られます。さらに有料会員プログラムであるBusinessプライムに加入すると、複数ユーザーでの利用や購買データ分析などの追加機能が利用可能です。
法人だけでなく個人事業主も登録が可能で、事業規模に応じてプランを選ぶことができます。Amazonビジネスに未登録の事業者の方は、登録を検討してみるのもよいでしょう。
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Amazonビジネスについてのよくある質問
Amazonビジネスアカウントは個人でも利用できる?
Amazonビジネスアカウントは、個人でも無料で登録ができます。ただし、あくまで個人事業主としての登録のみ認められており、 一般の個人としての登録はできません。個人事業主としてAmazonビジネスに登録する場合、登録情報を確認するために、以下の書類のうちいずれか1点のコピーを提出する必要があります。
- 過去2年以内の確定申告書B
- 開業届出書
- 過去2年以内の所得税青色申告決算書
- 過去2年以内の青色申告承認申請書
- 過去2年以内の収支内訳書
- 営業許可証(飲食業、小売などの場合)
- 施設所開設届出書(医療センター、診療所などの場合)
Amazonビジネスの年会費は?
Amazonビジネスは年会費無料で利用できます。
Amazonビジネス専用の有料会員プログラムであるBusinessプライムに加入する場合のみ、プランに応じて下記の年会費が発生します。
- Duo:すでに個人アカウントでAmazonプライム会員になっている場合のみ利用可、無料。
- Essentials:5,900円(税込)。
- Small:13,500円(税込)。
- Medium:37,800円(税込)。
- Unlimited:270,000円(税込)。
Amazonプライムと、Business プライムの違いは?
Amazonプライムは個人や家庭向け、Businessプライムは事業向けの会員プログラムです。名前は似ていますが、内容も料金も完全に別のプログラムです。 Amazonプライムが個人や家庭の利用に特化した特典を提供している一方、Businessプライムは、購買活動の管理に特化した機能を提供しています。 Businessプライムでは、Amazonプライムで提供されている、Amazonプライム・ビデオ、Amazonミュージック、Amazonフォト、Amazonフレッシュなどのサービスを利用することはできません。
AmazonビジネスとAmazonプライムは併用できる?
AmazonビジネスとAmazonプライムは併用できません。Amazonプライムに登録しているアカウントでAmazonビジネスに登録すると、Amazonプライムサービスの利用はできなくなります。
Amazonビジネスと個人アカウントとの切り替え方法は?
- アカウント設定のドロップダウンメニューを開く
- ドロップダウンメニューから「アカウントの切り替え」を選択する
- Amazonビジネスのアカウントを選択または追加する
Amazonビジネスは登録後すぐに利用できる?
登録手続きを終え3営業日以内の審査が終わるまでは利用できません。
Amazonビジネスを解約するには?
- アカウントのメンバーが5人以下であることを確認する。メンバーが6人以上の場合は削除する
- 未払いの請求書が残っていればすべて支払い、「アカウント設定」>「ビジネスアカウントの設定」をクリックする
- サイドメニューの「企業情報」の一番下の「ビジネスアカウントの登録解除」をクリックする
- 「続行」をクリックする
上記の手順でAmazonビジネスアカウントを解約できます。解約後、Amazonビジネスのアカウントは自動的に個人アカウントに移行します。
文:Taeko Adachi