ビジネスで用いられるフレームワークとは、思考や戦略構築の「枠組み」のことを指します。このフレームワークがあることで、社内の意思決定や共通認識の構築、問題解決、マーケティング戦略の構築を進めやすくなるといったメリットがあります。
そこで今回は、数あるフレームワークのなかでも、多くの企業で使用されている「3C分析フレームワーク」を取り上げます。3C分析フレームワークの概要・メリット・デメリット・3C分析の進め方などについて詳しく解説します。
目次
3C分析とはどんなフレームワーク?
ビジネスにおけるフレームワークにはさまざまな種類がありますが、その1つに「3C分析」というフレームワークがあります。3C分析は企業のマーケティングにおける必要不可欠なフレームワークであり、適切に3C分析を行うことで売上アップや事業拡大などが期待できます。
つまり、これから起業を考えている方は3C分析について知り、起業後のマーケティングに活用することが事業成功の近道となるでしょう。しかし、「3C分析は聞いたことがあるけれど、具体的にどのようなものかわからない」「そもそも3C分析を聞いたことがない」という方もいらっしゃるでしょう。
そこでここからは、3C分析とは何かについて、3C分析の目的と必要性、マーケティングにおける位置付けを詳しく解説します。
そもそもフレームワークとは?
フレームワーク(Framework)は、本来「骨組み・枠組み・土台」といった意味を持ちます。しかし、ビジネスにおいては、社内の意思決定や共通認識の構築、問題解決、マーケティング戦略の構築などに関する枠組みを指します。
また、アプリケーションを開発する際に使われる専門用語として、「アプリケーションフレームワーク」と呼ばれるものがあります。これは、アプリケーション開発時の土台となるソフトウェアを指します。アプリケーションを開発する際に、土台となるフレームワークに必要な機能を追加していくのです。
このようにフレームワークにはさまざまな種類が存在します。「枠組み」に当てはめながら、ビジネスを進めることで無駄な作業を抑え、効率よく企業戦略を立てることに役立ちます。
3C分析の意味
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」の3つの頭文字「C」から由来し、これら3つの関係性を相互的に分析する方法を指します。マーケティング戦略では、内部環境と外部環境のいずれかだけにフォーカスするのではなく、それぞれを分析することが重要です。3C分析では「Company(自社)」を内部環境、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」を外部環境と位置付けています。
3C分析が初めて提唱されたのは、1982年に出版された大前研一氏の自著『The Mind of the Strategist』です。この著書が出版されると、3C分析は日本のみならず世界中で知れ渡り、マーケティング戦略における確固たる地位を築きました。
また、近年では「Customer(市場・顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」の3Cだけではなく、流通(Channel)を加えた4Cや、協力者(Collaborators)と環境(Context)を加えた5Cへとさらにその種類を拡大し、注目され続けています。
3C分析の目的と必要性
今や世界中で多くの企業がマーケティング戦略の一環として行われている3C分析。その目的は、KSF(Key Success Factorの略。「成功要因」という意味)の発見につなげることです。
Customer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)をそれぞれ分析することで、KSFを発見しやすくなり、KFSを発見できれば事業を成功させるための方向性を導き出せます。
内部環境のみを分析するのではなく、外部環境も分析して両者を比較することで、自社の強みと弱みを見つけられるのです。この結果、効率的にマーケティング戦略を立てることができます。
このように3C分析はマーケティング戦略に活かすために行われ、マーケティング戦略を有効に進めるために必要な分析方法とされています。
マーケティングにおける3C分析の位置づけ
マーケティングにおいて必要不可欠な3C分析は、マーケティング戦略の一部である「環境分析」のフレームワークに位置づけされます。
一般的なマーケティング戦略の順序
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①環境分析(=3C分析)
▼
②基本戦略
▼
③施策
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上記のように、マーケティング戦略の序盤で行われる環境分析において3C分析が活用されます。
マーケティング戦略ではまず3C分析を行った上で、戦略を構築し施策を打ちます。つまり、戦略の成功を左右する要素として、3C分析があります。
しかしながら、環境分析は3C分析のみで行うわけではありません。SWOT分析やPEST分析など、複数のフレームワークが存在し、それらを組み合わせて分析をすることが多いです。これらのフレームワークにおいて3C分析は、客観的な情報を集約することに主軸を置いて展開されます。
なお、3C分析とSWOT分析、PEST分析の違いについては、下記で詳しく解説します。
他のフレームワークとの違い
ここからは、3C分析と他のフレームワークとの違いについて解説します。環境分析として用いられるその他のフレームワークには、以下のものが挙げられます。
- SWOT分析
- PEST分析
- 4P分析
それぞれのフレームワークと3C分析の違いを解説します。
3C分析とSWOT分析の違い
3C分析とは、ここまでご紹介したとおりCustomer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の3つを分析する方法です。マーケティング戦略の環境分析のうち、客観的な情報を集めることを目的に行われます。
対するSWOT分析とは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Thread(脅威)の4種類の要素を分析する方法です。3C分析と同様、マーケティング戦略では環境分析の一環として行われます。
また、以下のように内部環境と外部環境の両面から分析するという点においては、3C分析と類似していることがわかります。
3C分析とSWOT分析の構成要素 |
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3C分析 |
SWOT分析 |
内部環境 |
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外部環境 |
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では、3C分析とSWOT分析にはどのような違いがあるのでしょうか。それは「目的」です。
3C分析は内部環境と外部環境を比較し、自社の強みや弱みを見つけることを目的に行います。対するSWOT分析は、状況に合わせて臨機応変にマーケティング戦略を展開することを目的としています。
このように内部環境と外部環境を分析して比較する点は同じであっても、SWOT分析では自社の強みと弱みを把握するだけではありません。自社の好機や窮地に対し、どのようなマーケティングを展開すべきかを明確にすることも可能です。
3C分析とPEST分析の違い
つぎにPEST分析との違いを解説します。3C分析とPEST分析との明らかな違いは、分析の構成要素にあります。
PEST分析とは、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会環境)・Technology(技術)の4種類の要素を分析する方法です。このように、PEST分析の要素はすべて外部環境で構成されています。3C分析は内部環境と外部環境をそれぞれ分析するため、外部環境のみを分析するPEST分析とは分析する構成要素において大きな違いがあります。
3C分析とPEST分析の構成要素 |
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3C分析 |
PEST分析 |
内部環境 |
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ー |
外部環境 |
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さらに、分析目的も異なります。3C分析は自社の強みと弱みを見つけることが目的であるのに対し、PEST分析は外部環境が自社に与える影響を詳細に分析することを目的としています。
このように内外部から自社を客観的に分析する3C分析と、外部環境のみにフォーカスした分析手法であるPEST分析は、マーケティング戦略の主旨に大きな隔たりがあります。
3C分析と4P分析の違い
最後に、4P分析との違いを解説します。3C分析と4P分析の違いは目的にあります。
4P分析とは、Product(商品・製品)・Price(価格)・Place(立地・流通)・Promotion(広報・宣伝)を分析する方法です。4P分析は内部環境と外部環境を分析することから、分析の構成要素は3C分析と似ています。しかし、4P分析は自社の製品やサービスの販売促進を目的に利用するという点で3C分析とは異なります。
3C分析と4P分析の構成要素 |
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3C分析 |
4P分析 |
内部環境 |
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外部環境 |
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このように3C分析と4P分析は分析する要素に似ているものの、作成する目的が異なります。ただし、3C分析に4P分析を取り入れることで、より明確に自社の強みと弱みを把握できることから両者を併用する企業も少なくありません。
3C分析のメリット・デメリット
マーケティング戦略に3C分析を取り入れることは、さまざまなメリットがある半面、複数のデメリットが存在する面もあります。ここからは、3C分析を行うメリットとデメリットを解説します。
3C分析のメリット
3C分析を作成することで得られるメリットは、主に以下の3点です。
- 現時点での自社の状況を定性的かつ定量的に把握できる
- 競合他社との差別化が図れる
- ユーザーニーズを正確に把握できる
3C分析では内部環境と外部環境を分析して両者を比較し、自社の強みと弱みを把握できるため、現時点での自社の状況を定性的かつ定量的に把握できます。
Customer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)それぞれの要素を分析すると、収益力・市場シェア・グループ力や組織力・人的リソース・ブランドイメージなどが明確になります。
また、3C分析ではCompetitor(競合)についても分析するため、競合他社との差別化が図れるメリットがあります。競合他社について分析することで、商品・サービスの提供や内容について他社と差別化が図りやすくなります。その結果、自社の収益を向上しやすくなることにもつながるのです。
さらに、Customer(市場・顧客)についても分析するため、ユーザーニーズを把握できるというメリットもあります。ユーザーニーズを理解できれば、顧客が求めるタイミングで情報を提供できたり、新商品への開発にも役立ったりと、売上アップへと繋げることができます。
3C分析のデメリット
3C分析は効率的にマーケティング戦略を施策できる一方で、以下のようなデメリットがあります。
- 情報収集に時間がかかるケースが多い
- BtoBで競合会社が多い場合、情報収集しにくい
- 企業規模が大きいと、焦点が定まりにくい
3C分析は情報収集に時間がかかる場合があります。変化が激しい現代社会では、最新情報が更新されるスピードは早く、収集に時間をかけすぎていると、せっかく収集した情報を使う頃には劣化している恐れがあります。このような事態が生じた際には、正確にマーケティング戦略が立てられない、再度情報を収集しなければならないといった問題を抱えることになります。そのため、3C分析では情報収集に時間をかけすぎず、最新の情報を分析することが重要です。
また、BtoBのビジネスを行っている企業が3C分析を行う際のデメリットとして、競合他社の情報が集まりにくいという点が挙げられます。一般的にBtoBのビジネスを主とした事業では、競合他社が多い傾向にあるため、情報収集が思うように進みません。
情報収集がしにくいことから、時間がかかり、情報収集に時間をかけ過ぎると、前述のとおり収集した情報が古くなる悪循環に陥る可能性があります。
さらに、大規模な事業展開を行っている企業の場合、3C分析を行う際に焦点が定まりにくいというデメリットがあります。それは、企業規模が大きいことで、取り扱っている商品や事業部が多数あるためです。
商品数や事業部が多いと、商品単位や事業部単位でデータ分析を掘り下げる必要があり、その分3C分析に手間がかかってしまいます。
このように、3C分析には複数のデメリットも存在するため、デメリット面を理解したうえで3C分析を作成することをおすすめします。
3C分析のやり方・進め方
ここまでご紹介した通り、3C分析はマーケティング戦略において重要なフレームワークの一つです。そのため、経営する上で3C分析のやり方や進め方を把握しておくことは大切です。
そこでここからは、3C分析の進め方・その方法・分析時の重要なポイントを解説します。
3C分析の進め方とその方法
3C分析では、Customer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の3種類の要素を分析しますが、それぞれで分析の進め方が異なります。それぞれの要素の概要と共に、分析の進め方を確認しましょう。
まず、3C分析におけるCustomer(市場または顧客)では、以下について分析します。
市場 |
顧客 |
|
|
市場分析については、PEST分析と並行しながら分析を進めることをおすすめします。なぜなら、PEST分析で外部環境を把握したうえで、3C分析で内部環境を分析することで、スムーズに分析を進められるためです。
また、顧客に対しては、普段の購買データに加えてアンケート調査を行うことも有効です。また、直接顧客に調査するだけではなく、顧客と接している販売員やオペレーターにもヒアリングすることで、より効率的に分析が進められます。
つぎに、Company(自社)は以下について分析します。
- 自社製品の特徴
- 今後の自社製品における展開
- 売上及びシェア
- 投資能力
- 資産や資本金
- 企業全体の理念や今後のビジョン
- PR力
自社の分析を行う際は、「VRIO分析」というフレームワークの活用をおすすめします。なぜなら「VRIO分析」を作成することで、競合他社と比較した際の市場での優位性や自社の強みについて分析できるためです。
なお、「VRIO分析」とはValue(経済)・Rarity(希少性)・Imitability(模倣困難性)・Organization(組織)の4種類の要素について分析する方法のことです。
最後に、Competitor(競合)の分析は競合他社の全てを分析するのではなく、特に意識したい箇所のみを分析します。以下は、主なCompetitor(競合)の分析における項目例です。
- 顧客数
- 商品やサービスの特徴
- 販路
- カスタマーサポート
- PR力
- 動向
- 売上単価や顧客単価
- 収益や生産性
ただし、1項目に注視しすぎるのではなく、複数の視点から分析することが重要です。なぜなら、1つの視点のみで分析するとその範囲の分析しかできず、競合他社と自社製品を正確に比較できなくなるためです。
競合他社について分析する際は、複数の項目について意識したい箇所に焦点を当てて分析しましょう。
Customer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)すべてが分析できれば、3要素に関係性を持たせて3C分析は終了です。
3C分析する際の重要ポイント
3C分析を効率的にかつ、正確に作成するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 分析に時間をかけすぎない
- 行き詰まったら分析の順序を再考する
- 事実に基づいて正しく分析する
3C分析では、分析に時間をかけすぎず迅速に行うことが大切です。前述の通り、市場のトレンドの移り変わりは非常に早く、分析に時間がかかると分析内容が古くなる可能性があるためです。
3C分析の結果を有効に活用できなければ、分析をする意味を持たなくなります。必要な情報のみを選別したうえで、迅速かつ正確に情報を収集しましょう。
また、3C分析の際、万が一進行が行き詰まった場合は、分析の順序を再考してみましょう。分析の順序を再考し、新たな視点に目を向けることで、再びスムーズに分析が進められることがあります。3C分析の順序に明確な決まりはありません。分析を進めやすい順序で、柔軟に進められるようにしましょう。
さらに、3C分析は正確な情報を収集することも重要です。とくに、多くの企業が3C分析を希望的観測で行ってしまっています。希望的観測で3C分析をしても、思うように売り上げが伸びないという事態を招きかねません。3C分析をする際は常に客観的な判断で行い、希望的観測にならないようにご注意ください。
3C分析の企業事例
マーケティング施策を有効に進められる3C分析は、多くの企業で作成されています。日本でも有名な企業として、スターバックスやマクドナルドが挙げられます。
スターバックスは日本でもとくに人気がありますが、その高い支持率の背景には3C分析があります。スターバックスの3C分析は以下の通りです。
Customer(市場・顧客) |
Company(自社) |
Competitor(競合) |
・美味しいコーヒーを手軽に飲みたい ・落ち着ける空間でコーヒーを飲みたい など |
・ハイセンスブランド ・高品質で高価格など付加価値が高いコーヒーの提供 ・ホスピタリティ性の高さ ・落ち着ける空間の提供 |
・気軽に立ち寄りやすい ・低価格 |
また、数あるファストフード店の中でも、世界中で圧倒的な支持を集めるマクドナルドも3C分析を作成しています。マクドナルドの3C分析は以下の通りです。
Customer(市場・顧客) |
Company(自社) |
Competitor(競合) |
・低価格で美味しく食べたい ・手早く食べたい ・子どもも食べられるメニュー |
・低コスト ・迅速に提供 ・子ども向けのメニューの開発 |
・本格的なハンバーガーではあるものの値段設定が高め ・注文が入り次第調理するため提供までに時間を要する ・子ども向けメニューが少ない、または無い |
3Cのテンプレート・フォーマット
初めて3C分析を作成する場合や、3C分析にかかる時間及び労力を減らしたい場合には、テンプレートやフォーマットを活用しましょう。
今や多くの企業で導入されている3C分析は、無料でテンプレートやフォーマットが提供されています。使いやすいテンプレート・フォーマットをダウンロードして作成の手間を省きましょう。
まとめ
事業を成功させるために役立つ3C分析。3C分析は時間をかけすぎず、かつ客観的な視点で正確に行うことで効率的にマーケティング戦略を立てられます。起業したてや3C分析を初めて行う場合は、テンプレートやフォーマットを活用しましょう。
会社を起業する方法の一つとしておすすめな方法であり、コロナ禍においても成長している業界がネットショップ開設です。なぜなら、ネットショップの開設はインターネット環境があれば必ずしもオフィスなどを借りる必要がなく初期費用を抑えられるためです。ネットショップは巣ごもり需要によって売上を急速に伸ばしています。起業する際は、将来性の見込めるネットショップ開設がおすすめです。
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