購入した商品を、支払いが完了する前に受け取ることができる決済方法として、「BNPL(Buy Now, Pay Later=今買って、後で支払う)」 を導入するECサイトが増えています。2022年度のBNPLの国内市場規模は、約1兆2,600億円であったと推計されていますが、EC市場の拡大に伴い、2027年度には約2兆4,500億円に達する見込みです。また、日本には類似のサービスとして「後払い決済サービス」があり、こちらの市場も同様に拡大し続けています。
この記事では、BNPLの仕組みや特徴、導入によるメリット、そして国内の代表的なサービスについてまとめました。
BNPLとは
BNPL(Buy Now, Pay Later)とは、「今買って、後で払う」を意味し、その名のとおり、購入した商品を受け取った後に支払いができる決済方法です。ECサイトにおいて、特にクレジットカードに代わる決済方法として注目されています。クレジットカードと異なり、サービスへの登録と簡単な審査だけで利用できることから、消費者の人気を集めています。
BNPLと後払い決済の違い
BNPLは、日本で親しまれている「後払い決済」や「先延ばし決済」と類似のサービスですが、次のような違いがあります。
BNPLの特徴:
- 分割払いが可能
- 分割手数料無料
- 決済手数料は加盟店が負担する
後払い決済の特徴:
- 支払回数は原則一括のみ
- 分割する場合、手数料は消費者が負担する
- 翌月、あるいは翌々月まで支払いを先延ばしにできる
サービスごとの差も多様なため、昨今では両者の区別そのものが曖昧になり、「BNPL」「後払い決済」がまとめて語られる場合も多くあります。
BNPLの仕組み
1. 顧客が通常どおり買い物をし、チェックアウトを開始する
顧客はオンラインショップで商品を選び、チェックアウトに進みます。
2. BNPLサービスを選択する
顧客はチェックアウト画面で表示されたオプションから、BNPL決済を選択します。この時、初めての利用であれば、サービスへの登録が求められることがあります。
3. BNPLサービスが、簡単な審査を行う
顧客は氏名や住所などの個人情報を入力します。BNPL決済を提供している事業者が簡易的な審査を実施し、顧客が返済能力を持っているかを確認します。
4. チェックアウトが完了する
審査に通るとチェックアウトが完了します。顧客は支払いの前に商品を受け取ることができます。商品と共に請求書が送られてくる場合もあります。
5. 店舗がBNPL事業者に手数料を払う
BNPL決済を導入している店舗が、売上から一定の割合を手数料としてBNPL事業者に支払います。これはクレジットカード会社が加盟店舗に手数料を課すのと同様の仕組みです。
6. 顧客が代金を支払う
多くのBNPL事業者は、一定期限内であれば、無利息での支払いプランを提供しています。より長期間の返済を希望する場合、事業者は利息ありの支払いプランを提供します。この場合、クレジットカードと同様、早く返済するほど、支払う利息は少なくなります。
BNPLの消費者側のメリット
1. 支払い負担の軽減
購入時に全額支払う必要がなく、月々の返済で負担を分散できます。BNPLでは利息なしで分割払いができることも多く、安心して高額商品を購入することが可能です。
2. クレジットカードが不要
クレジットカードを持たない若年層や、カードの利用に不安がある消費者でも、気軽に買い物ができます。また、クレジットカードの審査を避けたい層にも人気があります。
3. 審査や手続きが簡単
煩雑な審査が不要で、基本情報の入力だけで即時利用できるため、購入までのプロセスがスムーズです。急な買い物でも、ストレスなく利用できます。
4. 予算管理がしやすい
事前に返済スケジュールが分かるので、計画的な家計管理が可能です。クレジットカードと異なり、好きなタイミングで支払えるサービスも多くあります。
BNPLの店舗側のメリット
1. 平均注文額の増加
BNPLでは、直ちに全額を支払う必要がなく、支払いまでにゆとりがもてるため、顧客の購入のハードルが下がります。
さらに手数料無料で分割が可能なことも多いため、より高額な商品を購入しやすくなり、顧客ごとの平均注文額の向上につながります。
2. カゴ落ちの減少
希望する決済方法がない人や、クレジットカード決済のセキュリティに不安を感じている人が、チェックアウト画面で離脱(「カゴ落ち」)してしまうことは少なくありません。クレジットカードの登録が不要で、簡単な審査で利用できるBNPL決済を導入することで、カゴ落ちの発生率を減らすことができます。
3. 新規顧客層の獲得
クレジットカードを持ちづらい若年層でも、BNPL決済が利用できれば、商品を購入することができます。また、セキュリティの観点からクレジットカードの利用に抵抗感がある層にも、BNPL決済は魅力的な選択肢です。
日本国内のBNPLサービス7つ
1. Paidy
Paidy(ペイディ)は日本発のBNPLサービスです。利用方法が非常にシンプルで、電話番号とメールアドレスだけで利用でき、アプリを使えば利用履歴も確認できます。全国で約70万の店舗で導入されており、コンビニ、銀行振込、口座振替で支払いが可能です。
3・6・12回の分割払いは本人確認と審査のあと分割手数料無料で利用できます。また、リアルのペイディカードを発行すると、VISAに加盟している実店舗でも利用が可能です(バーチャルカードは、ネットショップのみの利用に限定されます)。
2021年、PayPal(ペイパル)によって27億ドル(約3,000億円)で買収されましたが、Paidyは独自ブランドとしてサービスを継続しています。
2. NP後払い
NP(エヌピー)後払いは、ネットプロテクションズが2002年にスタートしたBNPLサービスです。顧客は後日送られてくる請求書を使用し、請求書発行後14日以内の好きなタイミングで代金を支払います。会員登録は不要です。2024年の段階で、全国で約130万の店舗で導入されており、コンビニ、郵便局、銀行、LINE Pay(ラインペイ)で支払いが可能です。
顧客は200円の支払いにつき1ポイントのNPポイントを獲得でき、ポイントの数に応じて商品と交換することが可能です。
3. atone
atone(アトネ)は、商品購入の翌月に一括で支払うBNPLサービスです。NP後払いと同じく、ネットプロテクションズによって提供されており、200円の支払いで1ポイントのNPポイントが貯まる点もNP後払いと同様ですが、こちらは簡単な会員登録が必要です。
コンビニ、Pay-easy(ペイジー)、口座振替で支払いができ、アプリで利用状況を確認できます。「atoneつど後払い」であれば会員登録も不要ですが、利用できる支払い方法はコンビニ端末あるいはPay-easyのみです。
4.アトカラ
アトカラは、三井住友カード、GMOペイメントゲートウェイ、GMOペイメントサービスの3社が共同で提供するBNPLサービスです。5万5000円を上限に、登録不要、年齢制限なしで利用できる「都度与信型」と、審査によって利用限度額が決まる「会員登録型」の2種類のサービスを提供しています。
代金は、コンビニや銀行、口座振替などで支払うことが可能です。
5. PayPayクレジット
PayPay(ペイペイ)クレジットは、PayPayで買い物をした代金を、翌月にまとめて支払えるBNPLサービスです。PayPay加盟店や対応しているサイトであればPayPayクレジットで支払いができます。分割払いには対応していません。
6. メルペイスマート払い
メルペイスマート払いとは、フリマアプリのmercari(メルカリ)が提供する決済方法であるメルペイで利用可能なBNPLサービスです。その月に使った分を翌月まとめて支払う仕組みで、コンビニ、飲食店、ドラッグストアなど、全国135万の加盟店で利用できます。手数料はかかりますが、分割払いも可能です。
7. GMO後払い
GMO(ジーエムオー)後払いは、GMOペイメントサービスが提供しているBNPLサービスです。商品と共に請求書が送られ、コンビニ、銀行、郵便局、LINE Payで支払いができます。
BNPLのShopifyへの導入方法
Shopifyで作成したECサイトにBNPLサービスを導入したい場合は、まず希望のサービスと契約したあと、次の手順にしたがってください。
- 管理画面左にある [財務] タブをクリック
- 画面の右にある [アカウント] 内の [支払い] をクリック
- 画面左の [決済] タブをクリック
- [決済] 画面に移行後、上から2つ目のセクション内にある [別の決済方法] 下部の [決済方法を追加] をクリック
- 決済方法検索画面で、検索窓に利用したい決済方法あるいはプロバイダー名を入力して検索
- [連携] をクリック
検索画面に出てこないその他の決済サービスについては、管理画面の [設定] にある [決済] セクションから、アプリとしてインストールすることで、導入できます。
まとめ
BNPLは、消費者の支払い負担を軽減し、購入意欲を高める重要な決済手段です。特に、クレジットカードを持たない若年層や、カード利用に抵抗を感じる消費者に対して、柔軟な支払いプランを提供できる点が大きな強みです。ECサイトにBNPL決済を導入することで、顧客満足度の向上、平均注文額の増加、カゴ落ちの防止、新たな顧客層の獲得が期待できます。
ECストアの新しい決済方法として、BNPL決済の導入を検討してみましょう。
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よくある質問
BNPLとは?
BNPLは、Buy Now, Pay Later(今買って、後で支払う)の略で、商品を受け取った後での支払いが可能な決済方法です。クレジットカードでも後払い・分割払いはできますが、BNPLでは、分割払いでも手数料が発生しないことが多いのが大きな特徴です。
BNPLと後払い決済は同じ?
BNPLと後払い決済は似たサービスですが、違いがあります。
BNPLは、顧客が手数料無料で分割払いを行うことができますが、後払い決済は、基本的に一括払いで、支払い期限の設定もより短めです。
BNPLとクレジットカードの違いは?
BNPLとクレジットカードはどちらも後払いの手段ですが、BNPLでは分割払いでも手数料が無料の場合が多く、消費者にとって負担が少ない点が特徴です。また、BNPLは簡単な審査で利用できるため、クレジットカードを持っていない若年層にも利用しやすいのが利点です。
BNPL決済において、店舗側にかかる費用は?
店舗側は、BNPL事業者に対して決済手数料を支払う必要があります。これはクレジットカード決済の加盟店手数料と同様の仕組みですが、クレジットカードよりも高い手数料が設定されている場合が多く、分割回数によってはより高額になります。
BNPL決済は未成年でも使用できる?
多くのBNPLサービスでは18歳以上の利用が推奨されています。
BNPL決済の問題点は?
BNPL決済の問題点は、審査なしで利用できる分、結果としてカードローンなどよりも延滞率が高い傾向があることです。延滞があっても店舗は支払いを受領できますが、消費者にとっては、気軽に利用できる分、支払いの管理が甘くなるリスクがあります。
文:Taeko Adachi