SEO、SNSキャンペーン、メール、広告、比較サイトなど、これらはマーケティングについて挙げられる一般的な手法です。
しかし、マーケティングとは、無限の可能性の中から顧客の前に立つ機会を見つけ出すことです。この信念こそゲリラマーケティングの核心です。
ゲリラマーケティングとは、実世界においてブランドの存在感を確立することで、潜在的な顧客にブランドをアピールするための斬新で型破り、かつ積極的なアプローチです。
この記事では、さまざまなゲリラマーケティングの種類を紹介し、ブランドの認知度を高め、話題を呼ぶために活用できるオリジナルなマーケティングアイデアについて学びます。
ゲリラマーケティングとは?
ゲリラマーケティングは、サプライズの要素を利用して商品やサービスへの関心を生み出すプロモーション戦略です。従来のマーケティングキャンペーンとは異なり、ゲリラマーケティングの主な目的は、観客が周りの人々に話したくなるような予想外の行動を起こすことです。
「ゲリラマーケティング」という用語は、広告会社の幹部を務めていた作家でもあるジェイ・コンラッド・レビンソン氏が作り出しました。その名の通り、小規模の軍隊が大規模で資源が豊富な軍隊に対して奇襲攻撃を行う「ゲリラ戦」に由来しています。また、ゲリラマーケティングの背後にある考え方として、限られたマーケティング予算でインパクトを生み出すことも挙げられます。
ゲリラマーケティングとオンラインマーケティング
ゲリラマーケティングは、顧客をオンラインからオフラインに誘導する完璧な橋渡しとなることがあります。TikTok、Instagram、Snapchat、ブログなどで人々がマーケティング活動について話したり共有したりすることによる口コミの話題となるだけでなく、選んだ場所に応じてターゲットを絞り、その場に居合わせた歩行者に対してオフラインでの露出に繋げることができます。また、アイデアがおもしろいとマスコミに取り上げられる可能性もあり、適切なタイミングに適切な場所に適切な人々が入れば、バイラル(口コミで情報が拡散)することもあります。
ほとんどのオンラインマーケティング戦略とは異なり、オフラインのゲリラマーケティングに詳細な「実施、計測、改善」のアプローチを適用することが難しい場合があります。代わりに、ゲリラマーケティングアイデアが成功するかは、創造性や実行力によって決まる場合もあり、運も関係するでしょう。
ゲリラマーケティングとバイラルマーケティング
ゲリラマーケティング戦略が成功すると多くの注目を集め、ソーシャルメディア(SNS)で拡散する可能性もあります。この2つにおける主な違いは、ゲリラマーケティング戦略を採用するかどうかに関わらず、ほぼすべてのマーケティングキャンペーンがバイラルする可能性を持っているということです。
ゲリラマーケティングの種類
ゲリラマーケティングの主要な種類は4つあります。
1. 屋外
屋外のゲリラマーケティングは公共の場で行われます。看板、ポスター、トラック、壁画、彫刻や、その他の人目を引く屋外アートのインスタレーションなど、ユニークな使用を考えてみましょう。
屋外のゲリラマーケティングは非常に珍しい形を取ることがあります。例えば、野球チームであるシアトル・マリナーズは、ベリンダ・カーライルの曲『Heaven Is a Place on Earth』を流し、ホーム球場であるT-モバイル・パークの観客席に75個のホットドッグをパラシュートで放つということイベントを実施しました。
2. 屋内
屋外ゲリラマーケティングと同様に、屋内ゲリラマーケティングも公共の場で行われます。主な違いは、屋外キャンペーンは路上、スタジアム、競技場、公園などの公共の場であるのに対し、屋内キャンペーンは駅、ショッピングモール、オフィスビル、空港などの屋内で行われます。
屋内のゲリラマーケティングの例として、スペインの再生可能エネルギー企業であるIberdrola社の「タービン改札キャンペーン」です。このキャンペーンでは、フランス・パリの地下鉄ミロメニル駅にある6つの自動改札ゲートを、実際にエネルギー(1人あたり0.2ワット)を生成する小型風力タービンに置き換えました。
3. アンブッシュ(待ち伏せ、便乗)
アンブッシュマーケティングは、イベントを公式にスポンサーせずに、イベントにブランドや商品を結びつけることが含まれます。例えば、イベント会場の近くに関連する看板やポスターを戦略的に設置したり、付近で関連商品を配布したり、フラッシュモブを企画したりすることができます。
アンブッシュマーケティングの背後にある考え方は、高額なスポンサーシップ契約を結ばずに、主要なイベントの魅力を利用することです。例えば、NIKEは2024年の『パリ・オリンピック』や2024年の『ユーロカップ』の公式スポンサーではありませんでしたが、パリの中心部にある建物を、フランスのサッカー選手 キリアン・ムバッペ氏とフランス国旗の赤、白、青の色でデザインされた巨大な広告で飾りました。(NIKEはフランスの2024年ユーロユニフォームをデザインしました。)
また、他の企業のキャンペーン、競合他社、提携したい企業のキャンペーンに対してキャンペーンを使って応えるような形でアンブッシュキャンペーンを行うこともできるでしょう。
4. 体験型
体験型マーケティングには、観客が関わることができる環境を作り出すことが含まれます。上記のタービン改札の例は、地下鉄の利用者が改札と物理的に関わりを持ったため、一種の体験型マーケティングと言えます。
他にも、体験型ゲリラマーケティングの戦術として、例えば『ハローキティ新幹線』などの既存のスペースをブランドが「占拠(乗っ取り)」することや、ジンジャーブレッドのみで作られたロサンゼルスのFlamingo Estateのホリデーポップアップストアなどの完全没入型のインスタレーションなどがあります。
既存の環境の特徴を中心にマーケティングキャンペーンを作成する体験型ゲリラマーケティングの一種に「アンビエントマーケティング」があります。例えばフォルジャーズが、米国・ニューヨーク市にあるマンホールから出る蒸気を利用して路上に湯気が立つ熱いコーヒーカップのように見える広告を作成した例は、今でも話題になっています。
ゲリラマーケティングキャンペーンの例
ゲリラマーケティングは、他のマーケティング戦略よりもリスクが高い可能性があります。サプライズを目的とするため、顧客がどのように反応するのかを予測することが難しいからです。しかし、ゲリラマーケティングキャンペーンが成功すれば大きな成果を得ることができます。
次に、中小企業がゲリラマーケティングを活用してブランドを宣伝した例を紹介します。
Heyday Canning Co.の豆交換
味付き缶詰豆を宣伝するために、Heyday Canning Co.社の共同創設者であるキャット・カヴナー氏は、通常のポップアップショップを開く代わりに少し違ったアプローチを取りました。「家にある豆の缶を持ち込みし、Heydayの缶1つと交換する『ビーンスワップ(豆交換)』というアイデアを兄が思いつきました」とカヴナー氏は『Shopify Masters』のポッドキャストで語りました。
「私たちは莫大なマーケティング予算を持っているわけではありませんが、持っているお金を1つのことに集中して、創造的で楽しく、そして突き抜けるような可能性があると思うことに投じたいと考えています。Heydayのブランド認知を高めるのに役立つことにリスクを取りたいからです」とカヴナー氏は言います。「それを踏まえて、私たちは『じゃあ、何ができるだろうか?』と考え続け、最終的に『ビーンスワップ』のアイデアに辿り着いたのです。」
「私たちはすぐに、ポップアップショップのビジョンを組み立てました。販売している商品はすべて豆です。Heydayの豆や、豆に関連した商品、ビーンハットやビーントートバッグ、ビーンソックスなどを製作することも考えていて、アイデアに夢中になっています。」
この豆専門店には行列ができ、すぐに在庫がなくなりました。さらに重要なことは、これによりブランドがSNSで話題を呼んだことです。「率直に、今回の取り組みについてはかなり幸運だったと思います」とカヴナー氏は話します。「最初からTikTokで拡散される成功を収めてスタートできたことは非常によいことですが、今後もそうなるとは限りません。将来的には他の取り組みも行うつもりですが、場合によっては完全な失敗となってしまうこともあるかもしれません。しかし、そのリスクを受け入れることが非常に重要だと思います。」
Jolie Skin Co.のトラック
Jolie Skin Co.社は、ほとんどの肌や髪の問題の根本的な原因はシャワーの水であるという考えに基づいて、フィルター付きシャワーヘッドを製造しています。このコンセプトを実現するために、Jolie Skinでは汚れたトラックのように見える広告を作成しました。
Jolie Skinのトラックはニューヨーク市を巡り、「あなたのシャワーの水がこのトラックよりも汚れているとしたらどうしますか?」というメッセージを広めました。この「汚れた」トラックは多くの注目を集めました。
「人々に言及された多さや投稿された回数などから判断して、これまでのマーケティングの中で最も成功した方法です。」と、Jolie Skin Co.共同創設者兼ブランドマーケティングおよび運営責任者のアルジャン・シン氏は『Marketing Brew』に語りました。
Grazaのチラシ『求ム』
オリーブオイルの会社であるGraza社は、昔ながらのチラシ『求ム』を使ってエクストラバージンオリーブオイル味のポテトチップスの再発売を宣伝しました。
チラシの配布はマーケティングにおいて新しいアイデアではありませんが、これがゲリラマーケティングの例となるのは、Grazaが迷子になってしまったペットを探す形式のチラシを予想外の方法で使用しているからです。チラシには「エクストラバージンオリーブオイル味のポテトチップス、2024年3月から行方不明」と書かれています。通行人が切り取り部分のQRコードをスキャンすると、Grazaのニュースレター登録ページに誘導されます。
ゲリラマーケティングキャンペーンに関するよくある質問
ゲリラマーケティングの例はありますか?
ゲリラマーケティングの例として、シアトル・マリナーズの「ホットドッグ・フロム・ヘブン」キャンペーンがあります。この野球チームは、パラシュートで数十本のホットドッグを降下させるというサプライズをファンに提供しました。
なぜ「ゲリラマーケティング」と呼ばれるのですか?
ゲリラマーケティングは、「ゲリラ戦」という用語に由来しており、小規模で機敏な戦術を用いて大規模な軍隊に対抗することを意味します。マーケティング戦術としては、ターゲットオーディエンスにリーチし、彼らの注意を引くためにサプライズやオリジナルの方法を活用することを指します。
ゲリラマーケティングは合法ですか?
ゲリラマーケティングは合法ですが、キャンペーンやイベントを作成する際は法律に違反しないよう注意する必要があります。例えば、壁や道路に落書きすることはできません。宣伝する材料を掲載する前に、都市や建物の所有者から許可を得なくてはなりません。