「Her lip to」 は、モデルでタレントの小嶋陽菜さんがプロデュースするライフスタイルブランドとして2018年に誕生しました。上質な生地や細部までこだわったデザインが特徴で、20~30代のファッション感度の高い女性から多くの支持を集めています。
アパレルブランドの展開からスタートし、現在ではBEAUTYラインの「Her lip to BEAUTY」や、ランジェリーライン「ROSIER by Her lip to」といった新たな領域にも進出し、事業を拡大しています。さらに、2022年には表参道に「House of Herme(ハウス オブ エルメ)」というコンセプトストアをオープンしています。
こうした急成長を支えるために、柔軟で拡張性の高いECプラットフォームが必要となり、2022年からShopifyの Plusプランを導入。その後、台湾や香港を含む8カ国に海外進出を果たすなど、グローバル展開も進めています。
Shopify Plusプランを活用することで、次のような成果を得ています。
【ShopifyのPlusプラン活用による成果】
- GMV(流通取引総額):120%増*
- 顧客のリピート率:149%増*
- Shop Payの利用顧客割合:118%増*
- 越境ECによる売上増加率:約400%**
*導入直後の14カ月間(2022年5月〜2023年6月)と直近14カ月(2023年7月〜2024年9月)の比較
** Shopifyの越境ECサービスの利用開始(2024年4月)から半年での売上増加率
今回はShopifyのPlusプラン導入の背景と成果について、「Her lip to」を運営する株式会社heart relation 取締役の岡田寿代氏と、EC開発を担当する立松佳菜子氏にお話を伺いました。
急成長する「Her lip to」に浮上した3つの課題
2022年当時、「Her lip to」は独自の世界観を持つアパレルおよびビューティ商品を展開し、トレンドに敏感な顧客層から高い支持を得て、売上は順調に拡大していました。しかし、この急成長に伴い、ECビジネスでは次のような課題が浮上していました。
■トラフィック急増時のサーバーダウンによる顧客満足度の低下
人気商品の発売時にアクセスが集中し、サーバーダウンが発生。その結果、サイトが一時的に利用できなくなり、顧客からは「購入できない」「待機中に商品が完売してしまった」といった不満が寄せられ、顧客満足度に悪影響を与えていました。
■カスタマイズ性の制約により、ブランド体験の実現が難航
「Her lip to」では、快適なショッピングはもちろん、気分の上がる特別な体験の提供を重視しています。しかし、従来のプラットフォームではカスタマイズの限界があり、サイト全体でブランドの世界観を表現するのが難しく、結果的に顧客に期待通りの体験を提供できないことがありました。岡田氏は「実現したいアイデアや機能があっても、その実現に向けてのハードルが高く、思うように進まないことにストレスを感じていました」と振り返ります。
■手作業が多く、データが活用しづらい非効率な運営
以前利用していたプラットフォームでは、商品のサイズやバリエーションごとの画像表示、レコメンデーション機能、ランキング機能など、販売をサポートする機能が不足していました。また、各種データを抽出したり分析したりするためには毎回データをダウンロードし、別のツールで処理する必要があり、データをリアルタイムで活用することが非常に難しい状況でした。
これらの課題を解決するために、「Her lip to」はShopifyのPlusプランを導入しました。岡田氏は、「ShopifyのPlusプランが提供する豊富な機能やアプリは、ブランドの世界観を表現するために不可欠な安定性と柔軟性を実現してくれます。また、海外展開を進める私たちにとって、越境EC機能が充実している点も非常に魅力的でした」と評価しています。
さらに、事業の多角化に伴い、ブランドの一貫性を保ちながら効率的な運営を目指して、ブランド別に運営されていたオンラインストアを「Her lip to」ブランド下に統合しました。この取り組みにより、データを一元管理する体制が整い、ロイヤリティプログラムやパーソナライズされた顧客体験の提供が実現しました。
その効果について、立松氏は「顧客の購入行動に基づいたクロスセルにより、異なるブランド間での顧客体験をつなげる取り組みを進めています。たとえば、『Her lip to BEAUTY』のユーザーに『ROSIER by Her lip to』を提案するなど、より効果的なマーケティング戦略を展開できています」と語ります。
さらに、Shopifyが多様なサービスとAPIで連携できる点も評価しています。特にアパレルブランドにとって、顧客が購買時以外にもブランドの発信するコンテンツに触れる機会を増やすことが重要です。そこで、Shopifyのブログ機能と自社開発のアプリを連携させ、アプリ限定の記事を配信することで、ユーザーとの接点を効果的に増やしています。
顧客体験と運営効率化を両立させるShopify Plusの機能・アプリ
ShopifyのPlusプランに移行したことで、システムの安定性が大幅に向上しました。アクセス集中時のサイトダウンが解消され、その対応にリソースを割く必要がなくなりました。その結果、顧客体験を向上させる施策など、ビジネスの成長につながる重要な業務に集中できる運営体制を構築することができました。
では、具体的にShopifyのどのような機能やアプリを活用して、顧客体験を改善させながら運営の効率化を叶えているのでしょうか。1つずつ確認していきます。
Shopify ペイメント:Shopify ペイメントはShopifyが提供する決済処理サービスで、オンラインストアでのクレジットカードや「Shop Pay」などでの決済方法を簡単に導入できます。この機能を導入したことで、購入の利便性が向上し、顧客の離脱率が大幅に低減しました。「Her lip to」には入荷後すぐに完売する商品が多いことから、ワンタッチでカード情報やお届け先を入力できる「Shop Pay」がユーザーから好評を得ており、その利用率は59%に達しています。
さらに、「Shop Pay」ユーザーの平均注文単価は他の決済方法を利用している顧客よりも23%高く、ブランドへのロイヤリティが高い顧客層のリピート購入を促進し、LTV(顧客生涯価値)の向上にも貢献しています。
Launchpad:イベントやキャンペーンの管理を効率化するための自動化アプリで、これを利用することで、新商品やセールの開始・終了をはじめとする様々なイベントを事前にスケジュール設定できるようになりました。
導入前は、新作発表や夜間のキャンペーン告知に担当者が常に張り付いて対応していましたが、Launchpadを活用することで販売期間を事前にスケジューリングし、自動で商品を公開できるようになりました。時間や労力が削減されたことで、より効率的な運営が可能になっています
Shopify POS Pro:Shopifyの店舗向けのPOSシステムで、オンラインとオフラインの顧客データや在庫情報を統合管理する機能が強化されています。Shopify POS Proの導入によって、在庫管理が楽になったのはもちろんのこと、同社の会員プログラム「Club Hers」におけるオンラインとオフライン連携も実現しました。
具体的には、ポップアップイベントに訪れた新規顧客に対してメルマガを送ったり、既存顧客には購入履歴に基づいた接客を実施することで、よりパーソナライズされた顧客体験を提供できるようになりました。
Checkout Extensibility:購入者が入力した配送先住所が正しいかどうかを自動的に確認する「配送先バリデーション機能」や、配送日時の指定をノーコードで実装できる拡張機能です。この機能により、お客様が求めるチェックアウト体験を提供することはもちろん、お客様の入力ミスによるトラブルを削減し、カスタマーサポートチームの負担を軽減しました。
このようなShopifyの豊富な機能やアプリによって、従来は手動で行っていた多くの業務を自動化でき、顧客体験の向上にさらにリソースを割けるようになりました。
また、ShopifyのPlusプランでは、様々なテストやカスタマイズを試せる開発環境を提供しています。これにより、ストアの運営を中断することなく、新機能やデザインのテストが行えます。立松氏は「開発や運営をパートナー任せにせず、インハウスでPDCAを回して改善を進めている企業にとって必須の機能」と述べ、この開発環境を利用してさまざまなパターンを試した上でから本番をリリースをしています。
Shopifyの越境ECツールでグローバル展開を加速
特に近年「Her lip to」が注力しているのが、越境ECです。日本国内だけでなく、台湾や香港、アメリカを含む8カ国で事業展開し、Shopifyを通じて各国の市場に応じた柔軟な商品展開や価格設定、UIを導入しています。
同社が利用する代表的なShopifyの越境ECツールとしては「Translate & Adapt」アプリを活用し、手動で翻訳することなく、販売国に応じた自動翻訳が行われることでローカライズを成功させています。さらに、Shopifyの越境ECマーケット機能を活用し、アクセスする国ごとに商品ラインナップをカスタマイズ。輸出入規制や日本とは異なる季節サイクルに合わせて表示する商品を調整することで、コンバージョン率(CVR)の向上にも貢献しています。
また、テーマをカスタマイズすることで、国別に「Her lip to」のストアフロントのテーマを最適化し、各市場に応じたユーザー体験を提供しています。その結果、Shopifyの越境ECサービスの利用開始から半年で売上が400%増加し、以前の越境ECサービスを使用していた時と比較して売上が2倍以上になりました。
岡田氏は「越境ECの推進をはじめ、Shopifyの豊富な機能・アプリのおかげで欲しい機能を柔軟に追加できる点が魅力です。さらに顧客データ、在庫、売上などの情報がすべて連携できるため、データ活用の幅が広がり、効率化と顧客満足の向上が同時に実現できています」と述べ、ShopifyのPlusプラン導入が事業へ与えた好影響を評価しています。
【Shopify Plus活用による成果】
- 流通取引総額:120%増*
- 顧客のリピート率:149%増*
- Shop Payの利用顧客割合:118%増*
- 越境ECによる売上増加率:約400%**
*導入直後の14カ月間(2022年5月〜2023年6月)と直近14カ月(2023年7月〜2024年9月)の比較
** Shopifyの越境ECサービスの利用開始(2024年4月)から半年での売上増加率
Shopifyで実現するクロスセル戦略とさらなるブランド成長
特に、ビューティーやランジェリーなど、複数のブランドから蓄積された顧客データを活用したクロスセル戦略がリピート購入に大きく貢献しています。また、ユーザーが決済情報を登録し、次回以降ワンタッチでカード情報やお届け先を入力できるShop Payの利用顧客割合も118%増加し、スムーズな購入体験がロイヤリティ向上に繋がっています。
今後については、顧客データを活用したOne to Oneのコミュニケーション戦略をさらに強化していく方針を固めています。
アパレルやビューティー分野では、購入体験だけでなく、ブランドが発信するコンテンツも重要です。Shopifyの柔軟なカスタマイズ性がそのニーズにも応えてくれると期待しています
さらに、アプリを活用したコンテンツマーケティングを通じて、顧客との接点を増やし、LTVを向上させる取り組みを進めていく考えです。立松氏は「LINEやメール、アプリのプッシュ通知を通じて、顧客それぞれに最適なチャネルでアプローチしていきたい」と述べ、データを活用したパーソナライズされたコミュニケーションが顧客のロイヤリティ向上のカギになるとみています。
最後に、岡田氏は「将来的にはリアル店舗も増やし、オンラインとオフラインの接点を融合することで、シームレスで快適な顧客体験を提供し、より多くのお客様にセルフラブをお届けすることが会社の目指す姿です」と話します。その目標に向けて、ShopifyのPlusプランを活用し、今後も顧客と深いつながりを築きながらブランドの成長を目指していくと語ります。