インターネットのおかげで地理的な影響が弱まり、世界のどこに住んでいる相手ともつながりやすくなりました。その一方で、ウェブサイトやブログなどで発信する際には、今でも発信元の国や地域を示すことが重要となる場合もあります。
URLの右端にある文字列が、地理的な位置を示す場合もあることをご存じの方は多いでしょう。たとえば「.jp」は日本、「.us」は米国、「.uk」はイギリスを意味しますが、こうしたものは、そのサイトの発信元がどこかを知る手がかりになります。
これらは、「country code Top Level Domain(国別コードトップレベルドメイン)」と呼ばれ、頭文字を取って「ccTLD」と略されます。
ccTLDとは?

ccTLDは、URLでいちばん右に配置される文字列であるトップレベルドメイン(TLD)のうち、国や地域別に割り当てられているものを指し、ウェブサイトの発信者が所属する国や地域を知る手がかりとなるものです。ISO(国際標準化機構)のISO3166で規定されている2文字の国コードが原則として使用されます。
ccTLDの管理は、それぞれの国において「レジストリ」と呼ばれるドメイン管理組織によって行われており、日本のccTLDの管理はJPRS(株式会社日本レジストリサービス)が対応しています。国際的な調整は、 Internet Assigned Numbers Authority (IANA:アイアナ)が 行っています。IANAは、世界中の新しいccTLDの割り当てや、既存のccTLDの管理などを担っています。
TLDは企業のURLを構成する重要な要素であり、ブランディングにも影響するものです。ターゲットとする国や地域とのつながりを強調し、ブランド戦略の一環で、汎用的な「.com」ではなく、ccTLDが選択されることもあります。
ccTLDの一般的な使用目的

ccTLDは、企業や団体のウェブサイトに地域らしさを加え、魅力を引き立てる目的で使用されます。ccTLDを活用し、情報の内容や言語を対象国に合わせたものにすることで、ウェブサイトが現地の人々の目に留まる可能性が高まります。その結果、SEO(検索エンジン最適化)的な効果も高まり、ウェブサイトが検索結果に表示されやすくなります。また、ccTLDによっては、URLに表示させたい単語の一部として機能することもあり、見た目上の理由から使用されることもあります。たとえば、TV(テレビ)のニュアンスをURLに入れたい企業が、「.tv(ツバル)」を使用する例などがあげられます。
以下で、ccTLDが利用される主な目的を3つ説明します。
- ユーザーの国に応じて表示させる言語を変えたい場合。ccTLDは、ユーザーの国に応じて表示させる言語を切り替えられるようにする目的で、グローバル企業に使用されることがあります。これは、複数国での存在感を高める狙いがあります。たとえば、アメリカが本社の企業がインドで多くの売り上げを得ている場合、「.in」で終わるURLを取得し、ヒンズー語で表示されるウェブサイトを作成するケースなどが挙げられます。EC大手のAmazon(アマゾン)は、米国では「amazon.com」を、日本では「amazon.co.jp」をURLに使用しています。
- 特定の国や地域専用のコンテンツを用意したい場合。企業が特定の国での事業拡大を目指し、その国の人々にメッセージを届けたい場合にも、ccTLDは活用できます。たとえば英語圏に本社を置く企業が、スペイン国内での事業拡大を目指している場合、スペインのccTLD 「.es」を使用してスペイン市場専用のサイトを作ることで、地域の人々の特性や好みに合わせたメッセージを発信できます。
- ブランド名やブランドの世界観を反映したURLを使いたい場合。ブランドの名前や世界観をURLで表現するためにccTLDが活用されることもあります。ccTLDの中には、その国に拠点がなくても取得できるものもあり、これを利用して覚えやすいURLを作成する企業もあります。たとえば、スペインのccTLDである「.es」は国外の企業でも取得可能なため、スペイン国外にある大手靴メーカーが「www.sho.es」という印象的なURLを取得するというケースも考えられます。
ccTLDの例一覧

.jp(日本)
.us(アメリカ)
.uk(イギリス)
.fr(フランス)
.de(ドイツ)
.cn(中国)
.kr(韓国)
.in(インド)
.sg(シンガポール)
ccTLDが割り当てられている国・地域の数は、2022年3月現在で255個です。ccTLDの多くは、登録主の住所がその国・地域にあることが登録要件となっていますが、上述のように一部のccTLDは国外からの取得も可能です。
ccTLD以外のTLD
TLDは、ccTLD以外にもさまざまな種類があります。以下にccTLD以外のTLDを3種類紹介します。
- gTLD(分野別トップレベルドメイン):gTLDは特定の領域や分野に対して割り当てられたTLDで、「.com」「.net」「.info」「.org」の4つが主なものとなります。gTLDは、地理的な制限がなく世界中のだれでも利用できるため、世界で使用されているドメイン名の大半がgTLDとなっています。
- geoTLD(地理的トップレベルドメイン):geoTLDは、特定の都市や地域向けに設計されたTLDで、「.tokyo」(東京)や「.nyc」(ニューヨーク)などがあります。地域に密着した企業や観光業、自治体のウェブサイトなどで活用されています。
- IDN ccTLD(国際化国別コードトップレベルドメイン):IDN ccTLDは、日本語やロシア語など、アルファベットではない文字に対応したccTLDです。日本の「.日本」、ロシアの「.рф」などがこれに該当します。
まとめ
ccTLDは特定の国や地域に割り当てられたトップレベルドメインです。多くの場合、各国の企業などが自国向けのウェブサイトに利用しますが、グローバル展開する企業がターゲット市場とする国に向けてその国のccTLDを使う場合もあります。これは、表示させる言語やコンテンツの内容を市場に合わせる目的があります。
よくある質問
ccTLDとは?
国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)は、国や地域別に割り当てられているトップレベルドメイン(URLでいちばん右に配置される文字列)を指し、サービスウェブサイトの発信者が所属する国や地域を知る手がかりとなるものです。ISO(国際標準化機構)のISO3166で規定されている2文字の国コードが原則として使用されています。
ccTLDはSEOに影響する?
ccTLDはSEOに影響します。ccTLDを利用しているサイトは該当する国や地域に関係している可能性が高いと判断され、検索結果で優先して表示されます。ターゲットの居住エリアが限られているのであれば、該当する国や地域のccTLDを使うことで有利になります。
gTLDとccTLDの違いは?
gTLDとccTLDの違いは、誰でも取得できるかどうかにあります。gTLD(ジェネリックトップレベルドメイン)は世界中の誰でも登録することができますが、ccTLDはその国や地域に住所があることが条件となります。しかし、一部のccTLDには、gTLDと同様に世界中の誰でも利用できるものもあります。
文:Harumi Miyabayashi