スタイリッシュなデザインのピアス。さりげなく一粒のラボグロウンダイヤモンドが輝く。まさに新しい時代のダイヤモンドの纏い方(画像提供:PRMAL)
近年アメリカではパンデミックの影響もあってか、ジェネレーションZ世代を中心に人間が生活していく上で基礎となる“衣食住”のシーンでも環境問題を意識する動きが高まりを見せています。“食”のシーンでは地球温暖化、森林伐採、動物倫理の観点から大豆やエンドウ豆などを使用したプラントベースミートや動物の細胞の一部をラボラトリーの中で培養する培養肉が注目を集めています。“住”に関しては現在新しく建設されているビルなどは米国グリーンビルディング協会が運用を行っている建物と敷地利用についての環境性能評価システのLEED認証を掲げるビルを目にする機会が増えてきました。今年6月にチェルシーにオープンしたGoogle StoreはLEED認証の中でも最高峰のLEEDプラチナ認証を取得している店舗。企業イメージとしても今後サステナブルを意識したマーケティングは企業のイメージアップ、売上アップに繋がることになってくるでしょう。
ファッション性の高いデザインでデジタルネイティブの心を掴んでいる (画像提供: PRMAL)
ラボグロウンダイヤモンドとは
“衣”のシーンではThredUp社のレポートによると、中古品のファッション市場は2019年の280億米ドルから2029年には800億米ドルになると予想されていますが、ジュエリー業界にも異変が起きています。ファッションのトレンドと同様に環境破壊や労働者の人権保護から天然に採掘されたダイヤモンドと同じ化学的、物理的、光学的特性を持つラボで製造されたダイヤモンド、「ラボグロウンダイヤモンド」の市場が急成長しています。
実はラボグロウンダイヤモンドの歴史は長く、1950年代には工業用として使用されていました。それが宝石として商業用に市場に進出してきたのは2010年半ば頃のことです。ラボグロウンダイヤモンド市場が急成長している背景としては天然ダイヤモンド採掘の際に生じる土地の荒廃や大量の水の使用などの環境破壊を軽減できることに加え、児童労働や危険度の高い職場環境での作業など、ラボで安全に作られるラボグロウンダイヤモンドは労働環境の保護や透明性も昨今消費者の心を掴む要因となっています。
重ね付けても主張しすぎない上品さ (画像提供: PRMAL)
さらにアメリカでは婚約指輪にダイヤモンドのクオリティよりも大きさを重要視する傾向にあり、天然ダイヤモンドに比べ、価格も30〜45%に押さえられているラボグロウンダイヤモンドは婚約指輪としての需要も高まってきています。アメリカのウェディング誌BRIDESによると、婚約指輪の平均は1カラットで年齢を重ねるに連れてサイズは大きくなる傾向にあります。ちなみにゼクシィによると、日本の平均カラットは0.2〜0.4ボリュームゾーンとなり、アメリカ人は大きさを求める傾向にあることが伺えます。しかしながらラボグロウンダイヤモンドは品質も保証されています。現在、サンフランシスコ発のADA DIAMONDSやロサンゼルス発のVRAIはカリフォルニアの米国宝石学会GIA認証の取れたラボグロウンダイヤモンドを使用しているため、クオリティも保証されています。
繊細なダイヤがふんだんに使用されたイヤーカフ (画像提供: PRMAL)
また、カリフォルニアに本社を構えるDIAMOND FOUNDRYは俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が出資をしたことでも有名なラボグロウンダイヤモンドの製造会社で、世界で唯一、ゼロカーボンフットプリントの認証を受けています。同社は製造過程よりナチュラルエネルギーを使用することにフォーカスしており、再生可能なエネルギーや、ワシントン州コロンビア川のエネルギーを使用しています。ラボグロウンダイヤモンドはテクノロジーが生み出した産物でもあり、多くのラボグロウンダイヤモンドブランドがサンフランシスコを拠点とするなど、テックインダストリーと切っても切り離せない関係ということも伺えます。
PAUL ZIMNISKYの分析によると、ラボグロウンダイヤモンドの市場は、現在推定19億ドルとされていますが、年率約23%で成長しており、2023年には52億ドル、2035年には149億ドルに達すると予測され、未来のダイヤモンド市場を担う役割になると期待されています。
パールを組み合わせたイヤーカフはダイヤモンドをふんだんに使ってK10 | ¥71,500 K18 | ¥93,500という価格。 (画像提供: PRMAL)
サステナブルなダイヤモンドは日本でも急成長中
日本でもラボグロウンダイヤモンド市場がここ数年で急成長をしています。京都の老舗ジュエラーの今与がラボグロウンダイヤモンドブランドのSHINCAをスタートし、2021年には百貨店の松屋が独自でラボグロウンダイヤモンドのENEYを立ち上げるなど、多くのブランドが誕生しています。
天然ダイヤモンドは高額なことから婚約指輪など、“一生に一度”という意識もまだまだあるようですが、これらのラボグロウンダイヤモンドのデザインはファッション性もあり、日頃から身につけて楽しめるため、“ダイヤモンドを日常使い”、“アフォーダブルラグジュアリー”というメッセージを感じます。
ユニセックスで楽しめるリングもスタイリッシュ (画像提供: PRMAL)
日本でラボグロウンダイヤモンド市場を牽引するPRMALにインタビュー
前述したサンフランシスコのDIAMOND FONDRY社とのコラボレーションや香港のブランドとの協業、社会貢献活動など、日本のブランドとしてグローバルを見据えているラボグロウンダイヤモンドブランドのPRMAL(プライマル)。2020年1月にブランドをスタートしたPRMALの福島 剛 /クリエイティブ・ディレクター、プライマル共同創業者にインタビュー。
PRMALブランドを始めたきっかけは何ですか?
PRMALというブランドを立ち上げたきっかけとして、ジュエリー業界を変えていきたいという使命感がありました。私たちのミッションは「エシカルで上質なジュエリーを身近にする」ことなんです。私自身、家業として代々、宝飾品業界に携わってきました。そんな中、不透明なサプライチェーンやダイヤモンド採掘の問題といった業界全体の持続性に関する問題を目の前で見てきました。そして、この現状を変えていきたいという想いがずっとありました。
2018年から2019年にかけて、宝飾品用途の合成ダイヤモンド流通スタートを目の当たりにし、これは業界にとって大きな転換点になることを確信しました。宝飾品としてのラボダイヤモンドの価値を理解し、伝統を大切にしながらも、現代の私達のあるべき姿、価値観を融合できるジュエリーブランドを立ち上げられる人間は自分以外にいないと感じ、その想いを具現化するものとして、旧知の友人とPRMALを立ち上げました。
PRMALの名前の由来は、Premium Minimal。ミニマルで上質なものを届けたいという想いがブランド名にこめられています。
PRMALブランドの強みは何でしょうか?
店舗を持たずオンライン販売を中心することで、中間マージンを大幅にカットしています。ファインジュエリーをもっと身近に、手に取りやすい価格でお客様にお届け出来ることが強みです。
またPRMAL創業メンバーの二人が、宝飾品業界とITエンジニアという異分野のドメインエキスパートです。伝統的なジュエリーブランドのように、「ジュエリーブランド運営メンバーが、各種テクノロジーをアウトソースする」するような形ではなく、PRMALはジュエリーとテクノロジーが融合した、完全なるデジタル・ネイティブブランドとして立ち上げました。ジュエリーデザイン、クリエイティブ、動画制作、ウェブサイト運営、広告、カスタマーサポートなどのブランド運営を、一気通貫で自社で完結して行っていることも強みです。
持続可能なブランドとして、世の中をどう変えていきたいですか?
PRMALは、2020年1月のブランド創業時から売上金の1%を森林保全に寄付をお約束しています。1% for the Planetのビジネスメンバーに加盟し、日本国内では、音楽家・坂本龍一氏が代表を務める森林保全団体のmore treesへ、スポンサー活動を行っています。
日本ではまだまだ馴染みが薄いですが、「脱炭素社会」というのは、世界中で最も関心が寄せられている話題といっても過言ではありません。ブランドを通じて、少しでも興味をもつきっかけになれることを願っています。
PRMALのブランドのコンセプトは 「"A Beautiful Choice.” その選択は、生き方を美しくする」。お客様に対しても伝統的なブランドのようなジュエリーを販売だけではなく、プライマルが支持する「生き方」を発信しています。メッセージに共感する人が自然と集まり、インクルーシブに、幅広い世代から永く深く愛されるブランドを目指しています。
天然ダイヤモンドやその市場に関してブランドとしてどういった意見をお持ちですか?
天然ダイヤモンドには天然ダイヤモンドの良さがあると思っています。何億年もの年月を経て形成されて、それがマグマの噴火と共に地表に現れて、、それだけでも神秘的で奇跡的なもの。天然石のパワーなど感じたいという方や、その神秘的なところに惹かれる方は、天然ダイヤモンドを選ぶべきだなとも思っています。
ただ、実際には様々な不都合な真実が隠されていることも事実ではあります。そういった社会、業界構造を少しでも変えていけるように、我々は動いていかないといけないなという使命感も持っています。
製品を宣伝するために行っている特別なマーケティングの手法はありますか?
私たちの一番の強みはオンラインとオフラインが融合したブランドであることです。
ファッション雑誌への露出、伊勢丹やエストネーションといった百貨店、セレクトショップでのポップアップショップの開催などの伝統的なプロモーション活動をしながらも、一方でInstagram上でインフルエンサーと共に定期的なライブ配信や、AR Shopping などのバーチャル試着サービスなど様々なデジタル施策を含めて、1チームが一気通貫で行っております。
例えば、ポップアップショップのジュエリーショーケースでは、全ての商品にQRコードの値札がついており、QRコードをスキャンすることで、着用動画をみれたり、AR試着を試すことができます。
またオンライン中心ということも強みです。最もコストがかかる常設の店舗運営などが不要なので、その分のコストが商品に転嫁されず、価格競争力の高い商品をお客様に提供可能となっています。伝統的なブランドが取り扱う1カラット相当のダイヤモンドのジュエリーを、プライマルでは半額ほどのお値段で購入できます。ジュエリーが好きな人こそ、この凄さに気づいて頂けると思います。
なぜShopifyプラットフォームを選ばれましたか?
私たちのようなD2Cブランドに最適な世界観を、構築・運営できるプラットフォームだからです。
実はPRMALは、創業当時はオープンソースの Spreeをベースとし、社内エンジニアが直接システム開発を行っていました。
自社開発では完全な柔軟性が手に入る一方で、サービスを安定して運営するために、システム負荷対策、バックアップ、顧客データ保護など、ユーザの目に見えない莫大なコストがかかっていました。また決済手段を1つ追加するだけでも1-2週間の開発工数がかかるなど、社内のリソース効率という意味でも課題をかかえていました。
Shopify に移行したことで、このような作業から完全に解放され、ブランドの世界観構築に技術者リソースを集中できるようになりました。エコシステムも充実しており、決済手段追加すらノーコードで対応可能です。少し前までは考えられません。
何か追加してほしい機能はありますか?
PRMALでは英語をメイン言語に、日本語をあわせて多言語でサイト運営しております。
現在は Langify のアプリを通じて実現していますが、Shopify ネイティブで多言語化対応が出来るととてもシームレスになり、ありがたいと思います。
ブランドが目指すゴールを教えてください。
全ての人にとってジュエリーをもっと身近なものにしたい、それが我々の想いです。ジュエリーを身につけた時の心の高揚感は特別なものです。この素晴らしさを一人でも多くの人に伝え、より日常にジュエリーがとけ込んだ世界を実現できることがブランドのゴールです。
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