若い女性に大人気のブランド「17kg(イチナナキログラム)」。インスタグラムのフォロワー数は50万人以上を誇り、2019年4月にはラ・フォーレ原宿に実店舗をオープン。名実ともに有名ブランドへと上り詰めました。
今回のインタビューでは17kg(イチナナキログラム)の創業者でCEOの塚原さんと、同社COOの秋山さんに彼らの過去、現在、そして思い描く未来を聞きました。
自分が入りたいと思える会社を作る
創業者の塚原さんが「起業する」ということを漠然とイメージしていたのは高校生のとき。しかし、当時の彼には「学生でもできる」という概念がありませんでした。転機となったのは大学時代。ある記事を読んで、「自分でもできる」という考えを得たと振り返ります。
「どうやって学生が起業しているのかを調べてみると、自分でプログラミングをして、サービスを作って、資金を調達している方々を見つけました。それで自分でもできると思いましたね。それからはプログラミングなどを学んで、大学4年のときにIT系のサービスで最初の起業をしました」
当時立ち上げたサービスはぐんぐん成長。しかし、結果的には事業を売却することとなります。
「そのサービスは共同創業だったのですが、共同創業者と足並みが揃わず、方向性の違いというのがあり、売却することになってしまったんですよね。そして、今あらためて振り返ってみると、仕事自体もあまり楽しめてなかったなと感じています」
しかし、この出来事が現在の17kg(イチナナキログラム)の方向性に大きく影響しています。
「そのときから二社目を作るときには、自分が入りたいと思える会社を作りたいなというのをすごく意識していました」
17kgのCEOの塚原健司氏
塚原さんが次に注目したのがインスタグラム。インスタグラムの日本での成長と、インスタベースの購買体験の将来的な社会の変化を読み取り、インスタを軸としたブランド作りを考えました。しかし、どのような路線で行くべきなのか? 韓国系プチプラレディースファッションにたどり着くまでには試行錯誤がありました。
「インスタグラム上で物を販売しようと考えたものの、じゃあ何を売ればいいのかという点は、すごく悩みました。10ショップくらいのアカウントを試験的に立ち上げて、そこで色々施策を打って、ユーザーのリアクションを見てというのを試行錯誤しましたし、その時期は苦労しましたね。1人で10ショップの管理とか…(笑)」
そんな塚原さんの数々の研究の中で生まれたのが「17kg(イチナナキログラム)」。ブランドをローンチ後は、猛スピードで成長し、「事業の成長に会社をついて行かせるのが大変だった」と塚原さんは振り返ります。また、17kg(イチナナキログラム)では「フルリモート・フルフレックスタイム」制を採用し、自由に働き、若くしても裁量権を手にできる会社作りを進めました。まさに自分が思い描いていた会社です。それにより、優秀な社員も集まり、事業は瞬く間に成長しました。
「まさに、僕1人では手が回らないし能力も限界値を超えるというところまで来ていました。そこで秋山に加わってもらったんですよね」
ここから17kg(イチナナキログラム)はさらなる成長を見せることになります。
Shopifyのカスタマイズ性と海外販売機能が魅力
17kg(イチナナキログラム)はD2C(Direct-to-Consumer、自社で企画・製造した商品を卸や小売店を通さずに消費者に販売する形態)スタートアップというポジションで経営されています。昨今ますます耳にするようになったD2Cですが、取り組むことによるメリットについて塚原さんは次のように語ります。
「インスタグラムなど、販促ができる新しいプラットフォームができたことによって、そこを起点に物を売ったり、プロモーションをしたりできるというところが、D2Cのメリットだと思います。多額なマーケティングの費用をかけずにお客さんを獲得していくことができるようになったという点ですね」
「例えば、アパレル自体は数多くありますし、ブランドもすごくたくさんあるんですけど、僕の起業時の仮説としては、マーケットが大きすぎるゆえに食いあったりすることがないと思っていたんですね。片方が急激に伸びたからって片方が落ちるマーケットじゃないと思っていました。現に自分でやってみて、仮説の通りだったので、D2Cとはいえ、マーケットの大きいところに挑戦していくのが大事だと思ったりはしています」
17kgのオンラインストア
立ち上げ時には他ECプラットフォームで運営していた17kg(イチナナキログラム)ですが、現在はShopifyを使って運営しています。他社からShopifyへ乗り換えた理由は「カスタマイズ性」と「海外販売」が大きな理由と教えてくれました。
「Shopifyを見ていて思うのは、ECを今後自分達でゼロから作る必要があるのかな?というところですね。それくらい自由度が高くて、優れているサービスだと思っています。また、僕らがエンジニアを抱えないで事業を回すというところも実現できているので助かっています。事業に必要なデータを細かくとったりすぐに確認できることも良いですね。ストアのことは24時間気になるのですが、モバイルアプリからすぐにデータを確認できますし、UIもとても見やすいですし…そういう点でShopifyに替えて良かったと思っています。」
「また、自社商品がアジア圏にもとても相性が良いと思っているので、今後はそこをターゲットに販売できたらと考えております。以前使っていたプラットフォームでは海外販売がちょっと難しいところもあったので、今後どんどん挑戦していきたいと思っています」
インスタグラム上での新たな施策
ブランドが成長した今でも引き続き鍵となっているのはインスタグラム。アカウントのフォロワーは50万人以上という驚異的な数字を誇っていますが、今後は広告運用やライブコマースを本格的に行ってよりインスタグラムを活用する計画を立てています。
「僕らが元々使っていたECサービスではリピートやコンバージョンを計測するのが難しかったのですが、Shopifyに乗り換えたことでようやく計測ができるようになりました。なので、現在は広告のテストを本格的に始めて、様々な数値を集めていて検証している段階にあります」と秋山さんは語ります。
17kgのインスタグラム
また、インスタグラムを使ったライブコマースに関しても今後の軸として考えています。
「最近ではCOHINAさんなどが力を入れているライブショッピングという分野に深掘りしていきたいと考えています。インスタグラムではライブを配信中だと、ストーリーズのアイコンの先頭に表示されますし、ライブを見てくれる層というのは熱量が高いファンだと考えているので、そういった方々に対してプッシュ型のセールスをしていきたいですね。僕らもある程度のフォロワー数ができたので、今後はそういった取り組みも進めていきたいです」
さらに、ラ・フォーレ原宿にオープンした実店舗の第1号店では、オンラインとオフラインの垣根をなくして、さらなる成功を目指しています。
「海外の実店舗の事例を見ていると、オンラインとのデータ統合が進んでいるんですよね。クレジットカード情報で両者を紐づけて、裏側のCMSではオンラインとオフライン関係なしにユーザーのデータがたまっているような例があります。そうすると、販売提案などの施策が実店舗でもオンラインでもできるので、お客様にとってもより良い顧客体験になると考えています」
世界で勝てる企業になる
「僕らは3年後を目処にIPOを目指しています」
塚原さんは未来の目標について語ります。
「そのためには3桁億円以上の売上をしっかり出すということを目標としています。その上で日本国内に世界で勝っているといえる企業がほとんどないと言われているなかで、僕たちが最初の例になれるように、グローバルでもしっかり成果をあげるというところをこの3年間くらいで突き進んでいきたいです」
17kgのCEOの塚原健司氏と同社COOの秋山洋晃氏
さらに17kg(イチナナキログラム)が見据える先にはより大きな存在があります。
「僕たちはLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンを超えるというところを最終目標にしています。それは本当に10年とか数十年というスパンでの挑戦にはなるとは思うんですが、将来的にはブランドコングロマリット企業として世界一になるということを目指しています」
その言葉通り、彼らは他分野への横展開もすでに計画。新しいブランドを立ち上げる予定です。
「ファッション以外だと、美容系やコスメというジャンルで展開して販売していこうと考えています。これらのジャンルは17kg(イチナナキログラム)のユーザー層ともすごく合いますし、興味関心も似ていると思うので、まずはそこから始めていきたいと思っています」
そして、そこでも鍵となるのはインスタグラムという存在です。
「ファッションとコスメはインスタグラムとの相性がすごく良いです。僕らの会社のミッションというのが “Create and Lead the World Trend” (世界のトレンドを作り牽引していく)なのですが、インスタグラムというのはまさにそのミッションに不可欠な存在で、僕らのユーザーさんとの接地面として常にあり続けると思うので、そこからどんどん新たなビジネスをしていきたいですね」
インスタグラムの活用など、コマースの新時代を突き進む17kg(イチナナキログラム)。次に待っているのは世界です。
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