ダイバーシティを表現し、全ての人に置いてのブランドというメッセージを訴えかけているPARADE。Photo by Parade
3月も間も無く終わりを告げようとし、すっかり春らしい気候になってきました。まだまだ寒い日もあるニューヨークですが、マグノリアや桜の蕾が膨らみ出し、ちらほら街中に花が咲き始めています。毎年春の到来を感じ始める3月は「女性史月間」(Women’s History Month)です。
元々は1970年代にカリフォルニア州ソノマ郡の学校のカリキュラムで女性史を取り入れたこと、また、女性の地位向上を呼びかけたことから始まったと言われています。近年では3月8日の「国際女性デー」(International Women’s Day) は日本でも注目されはじめ、「女性のエンパワーメント」を掲げて女性の地位向上や男女平等を謳っていますが、ジェンダーギャップ指数ランキングの2021年版において日本は120位。先進国の中でもダントツ最下位というのが現状で、政治や企業のトップに女性が採用されている数が少ないとされています。
トップ3はアイスランド、フィンランド、ノルウェーと北欧勢が軒並みトップを占めています。この3国は現首相が女性、前首相が女性。ちなみにアメリカは30位となっていますが、カマラ・ハリス副大統領をはじめ、バイデン政権は女性閣僚の登用が過去最多になっています。
“ありのまま”が受け入れられる時代に
サイズ、形、肌の色や性別に囚われず、すべての体型を受け入れるというボディポジティブな発想の浸透によって「こうでなければならない」という概念は消えつつある。Photo by Parade
女性の社会的地位の向上が高まるとともに、「女子はこうあるべきだ」「女性はこうでなくてはいけない」といった女性に対する固定概念も薄まってきています。また、痩せている方が美しいといった女性の体型への固定概念も薄れ、さまざまな体型、ありのままの体型を受け入れる“ボディポジティブ”が多く聞かれるようになりました。
それに伴いファッションブランドはプラスサイズのモデルを起用するようになり、痩せ型の体型からプラスサイズまで、多くのモデルが入り乱れるビジュアルは「ありのままを受け入れていい」というメッセージを投げかけているようです。
完璧なプロモーションのモデルたちがファッションショーや広告を賑わせることで有名な「Victoria’s Secret」も数年前からプラスサイズのモデルを起用し、当時話題に。同ブランドがポディポジティブ路線へと舵を切ったのは象徴的で、最近ではVictoria’s Secretのファッションショーに出演していたモデルたちが「ダイエットを強要された」「痩せなくてはいけないというプレッシャーで精神的におかしくなりそうだった」など告白しています。
ボディポジティブを謳うインフルエンサーも共感を得ています。Instagramのプロフィールで自らを“Fat Girl”と紹介するGabi Freshは約90万人のフォロワーを持つインフルエンサーで、プラスサイズで着こなすファッションコーディネートを中心に投稿し、人気を集めています。
ボディポジティブを体現するインフルエンサーとして人気のGabi Fresh。(本人Instagramより)
変化を遂げるアンダーウエアブランド
女性のありのままが受け入れられ始めている昨今、アンダーウエアブランドが急速に変化を遂げています。今まで「胸を綺麗に見せる」「胸を大きく見せる」「異性に魅力的なデザイン」などの観点からデザインされたアンダーウエアを良く見たものですが、アメリカで支持を集めているアップカミングなアンダーウエアブランドはまた違った特徴を持っています。
時代を象徴するアンダーウエアブランドには下記のような特徴があります。
1.身に着ける本人が心地いいということが一番重要
ワイヤー入りのブラジャーは影を潜め、スポーツブラタイプのノンワイヤーでつけ心地のいいブラが台頭。ショーツも無駄な装飾のないデザインが主流となっています。また、コットン100%やオーガニック素材、ストレッチ性のある素肌につけて気持ちのいい素材使いも特徴です。
2.ダイバーシティに対応した幅広いサイズやデザイン
ありのままを受け入れるという点でカスタマーも女性に限定されていません。LGBTQ含め、多くの人が楽しめるようにデザインもユニセックス、広告にも男女が登場し、幅広いサイズ展開も特徴。また、身体的に障害を持った人たちも心地よくつけられるような工夫がされているブランドもあり、性別や体のサイズ、障害など、ダイバーシティに対応したデザインも多く見受けられます。また、女性に起こる月経に対してもオープンになろうと、月経対応の吸水ショーツもメジャーになってきています。
3.ソーシャルグッドを実現していく
身に着ける人たちが心地いいデザインというのはもちろんのこと、環境問題や社会問題に対してコミットしている企業というのも特徴です。多くのブランドが売上金を環境問題を解決するための事業に寄付したり、リサイクル事業にも積極的に取り組んでいます。また、企業としての社会的な立ち位置を明言することも忘れません。消費を通じて社会に貢献することは当たり前の行動になってきています。
ブラジャーのサイズはなんと80種類という、実際に女性たちのバストの形を参考に精密にサイズレンジに幅を持たせているThird Love。Photo by Third Love
心地いい下着の台頭は女性解放の証
これらのアンダーウエアブランドを経営するのはほとんどが女性オーナーです。素肌に纏うアンダーウエアを自分達が心地いいと思えるデザインにした背景には女性たちの決断の自由や表現の自由が見て取れます。ありのままを表現する、心地いいと思えるものに従うという我慢をしない姿勢は女性を取り巻くさまざまなしがらみからの解放を意味しているようです。
PARADE
アメリカのZ世代から支持を受けているブランド。コミュニティの多様性を受け入れ、ありのままを表現するという権利を訴えかけています。ブランドの広告ビジュアルには多様な人種、体型、性別のモデルが登場し、まさに今の時代を象徴するような仕上がりになっています。実際の下着は驚くほど肌触りがよく、全方位に伸びるストレッチ素材で心地いい。下着ブランドとしては初めてテラサイクルと協業し、下着のリサイクルを実施しています。
最近では身体に障害を持ったモデルを起用するブランドも増え、多くのカスタマーに向けた商品だということを謳っている。Photo by Parade
Third Love
女性の多様な胸の形やサイズを考慮し、80以上のブラジャーサイズを用意し、完璧なフィッティングを追求したブランド。通気性もよく、サイズもXSから3Xまでという多様なバリエーションです。REFINERY29が年始に発表したMOST VALUABLE PRODUCTSにて、シームレスハイレグビキニがその商品の一部として輝いています。
Third Loveでは細かな質問項目によって自分に合ったブラジャーのサイズを割り出していくウェブサイトのサービスを行っている。
SAVAGE FENTY
歌姫でもありファッションアイコンのリアーナが手がけるランジェリーブランド。お披露目をしたファッションショーでは多様な体型のモデルを起用し、当時話題に。「社会が提言するセクシーな外見とは別に、どんな体型でもセクシーに見せる」をコンセプトにダイバーシティーを表現しているブランド。こちらもサイズはXSからXLまでと幅広く、多くの人が自分に合った一着を見つけられるようになっています。
ブランドスタート時からプラスサイズのモデルを大胆に使い、ランジェリーの新たな価値を提案しているSAVAGE FENTY。Photo by SAVAGE FENTY
SKIMS
カーヴィーな体型が象徴的なキム・カーダシアンのアンダーウエアブランド。女性の体型のカーヴィーな部分を強調する下着に加え、サイズの2倍まで伸びるストレスフリーのアンダーウエアまでを取り揃え、アンダーウエアと身体に関する新しいソリューションを提供しています。どんな体型にもフィットするシームレスなストレッチのボディスーツは体が包み込まれるような着心地の良さが好評です。
モノトーンやヌーディーカラーなど、肌の一部のようなアンダーウエアを提案しているSKIMS。身体にフィットする着心地の良さに定評がある。Photo by SKIMS
女性たちがより良い社会の実現に向けて開発をしたアンダーウエアには女性たちの「ありのままに生きる」「自分たちを表現する」という強いメッセージが隠されています。