どこかで見たことがあるような東京の景色。繊細なデザインで観る者の足を止め、じっと眺めているとその場所にまつわる思い出が蘇ってきます。
Ciaolinkがデザインする「Farewell My」シリーズ。現在は東京と香港の2都市で展開中で、デザイン性の良さとリーズナブルな価格から多くの人にインテリアもしくはプレゼントとして購入されています。
外国人がみた東京、香港の魅力を商品化して成功を収めているCiaolink代表の高見さん。彼女がプロデュースする作品のこだわりと起業家についてインタビューしました。
商品開発のきっかけ
すべては香港からはじまりました。高見さんは旦那さんの仕事の関係で香港に住んでいました。香港は2年~3年のスパンで仕事をして、他の国に移っていくというエクスパット(駐在員)が非常に多い国です。日本でいうと「転勤族」がたくさん住んでいる街。高見さん自身も香港に住んでいるときに多くの知り合いを見送ってきました。しかし、そんなときにひとつの悩みに直面します。
「香港で知り合った人たちが仕事の関係で他の国に移るときにはいつもギフトを贈っていました。フェアウェルギフト(送別品)というものです。でも、ちょうどいい値段で素敵なデザインの商品が全然なかったんですよね」
ギフト選びでモヤモヤする高見さん。しかし、過去の経験からひとつのアイデアが生まれます。「自分でやってみよう」と。
「そんな状況の中『自分で作ってみようか』と思ったのが起業のきっかけです。実は私は元々は美術館でアーティストさんとコラボレーションしたグッズを作ってきた経験があったので、それを活かして何かできるんじゃないかというのはありました」
そのときに偶然、友人のアーティスト(山口潔子さん)の香港スケッチを見て、ひとつのアイデアが思い浮かびます。元々のキャリアとアイデアがマッチしました。
こだわりの作品
高見さんがプロデュースしている「Farewell My」シリーズは、外国人駐在員や観光客の方に向けて、外国の方から見た東京や香港の魅力的な風景を緻密な絵で表現しています。「Farewell My」シリーズこだわりのひとつは素材である「パチカ」という紙。加熱してプレスをすると、プレスした部分が透明になるという特殊な紙です。このパチカを使って、高い技術をもった職人さんが1点1点丁寧に作品を作っています。
「職人さんがプレスをする時間が1秒違うだけで見え方が変わってきます。絵柄によってもタイミングが異なるので、一緒に研究を重ねて完璧なタイミングを見つけ、作り上げています。本当に綿密な技術が必要な作業です」
また、作品の色にもこだわりがあります。絵を様々なインテリアのスタイルに合うようにするために、色はワンポイントのみ。1点1点箔押しで、作品の特徴などをとらえた色を計算しながら入れています。また、作品の風景に関しても、高見さん自身で街を歩き回り、また、海外の友人のアドバイスや外国人がSNSなどにアップロードしている画像などを研究して決めています。
「どのようなシーンが魅力的なのか、その土地に住んでいる人にはなかなかわからないものです。ですので海外の人はどういう風景が日本らしいと感じるのか意識しながら常に街を歩いています。選んでいるシーンもいわゆるガイドブックに載っているようなシーンではありません。東京タワーもあのアングルで撮った写真はあまりなかったりします。今後もそういう研究をしながら、新しい作品を作っていきたいですね」
Shopifyとの出会い
高見さんがShopifyと出会ったのは香港時代。最初のストアは知り合いのデザイナーに頼んで独自に構築しました。しかし、様々な壁が立ちはだかります。
「独自で構築するときにデザインをこだわろうとすると難しいんですよね。例えば、フォントやスペースなどの微妙なこだわりを変更するときも、スライドショーをもっとかっこよくしたいときにも追加でお金を払わなければならなかったりとか、自分の理想を形にするのにすごく時間とお金がかかったんです。にも関わらず、完成したものに関しては100%OKという訳ではありませんでした」
ホームページは商品のブランドを象徴する大事なメディアなので、「もっと自分のイメージするストアを作りたい」。そう思っていた高見さんはある日、Shopifyに出会いました。「Shopifyの最初の印象は『かっこいい』というところから始まりました。自分がやりたかったことが、月79ドルでこんなに簡単にできるんだと思ってすぐに飛びつきました。私自身はホームページには全然詳しくなかったんですけど、遊びながら進めていくうちにすべて自分で作れるようになり、そこからはずっとShopifyです」
「オリジナルですべてデザイナーにお願いしていたときに比べると格段に安い。ウェブ制作に慣れていなくてもすぐにプロフェッショナルなホームページを作れます。無料のテーマもあります。私はBrooklynを使っているんですが、すごくカッコよく作れてるし、そういうところがオススメですね」
戦略
「東京や香港に住んで何年後かには引っ越すエクスパットの人たちをターゲットとしています。そういう方は数年とはいえ、家族と一緒に住んだ街の風景を自国に帰った時に壁に飾りたかったりします。そこで求めやすい価格で良いデザインでシンプルなものを提供したいと思っています。日本ではお土産というジャンルでは侍グッズのようなカジュアルなものや江戸切子など伝統工芸品と種類はありますが、送別品というと、極端に選択肢が少なく、なにをあげたらいいか迷ってしまいます。Ciaolinkの絵は彼らが暮らした経験や思い出に直接つながるギフト。実際に暮らした街の風景の絵を見ることで、東京から離れても思い出が蘇ってきます」
Ciaolinkの作品ははじめはエクスパットの人の中でブームが起こり、その後地元の人にも広まったといいます。
「最初は地元の人はほとんど買われなかったんです。なぜかと言うと、地元の人は自分の住んでいる街のどこが魅力的なのか意識しながら生活していないですよね、だから、私の絵を見ても初めはピンとこないんだと思います。しかし、この風景がクールだよというのが外国人たちに広がり始めると、地元の人たちにも浸透して私の絵を通して香港の魅力に気づいてくれるといった傾向がありましたね。東京でも同じようになればいいなと思っています」
また、新しい作品を発表してどんどん広まっているCiaolinkですが、戦略的にはあまり露出は増やしていません。
「ブランディングをちゃんと確立したいと思っています。商品を広めるためだけに、いろんなところには置きたくない。やはり、自分がいいと思ったお店に置いてもらいたいと思っています。オンラインがメインですが、実際の商品と触れ合う場所を作るために、ホテルやインテリアショップにお取扱いいただいています。実際にご覧いただき、商品の良さを知っていただくことが大事な一歩だと思っています。最初にお店でご購入されたあとにオンラインで再購入してくれる方も多くなっています」
消費者目線でアイデアを
今や起業家として活躍する高見さんですが、自分が起業家になるとはまったく思っていなかったと語ります。しかし、アイデアに突き動かされ、自分のビジネスを展開。では、私たちにおいて、そのアイデアはどこから降ってくるのでしょうか。どうやって見つけるのでしょうか。
「ニーズを見極めるために色んなものを見て、とにかくアクションのが一番良いと思います。例えば私自身は香港で一消費者として生活する中でニーズがあるのに選択肢が少ないモノに気づきました。そして、迷わずアクションをし続けました。いいものを作るため、今までにないものを作るために。その中での失敗や挫折は計り知れないほど経験しましたが、やめませんでした。これだと思ったものを見つけたら、アクションし続けて逃さないことだと思います」
「これから物作りをしていこうと考えたら、今までにないものを作らなければならないと思います。そして、それはすごく斬新なものであったり、みんなが度肝を抜くような革新的な技術である必要はないと思います。個人の経験に直接触れ、その人を驚くほど喜ばさせるようなものを作るのが大事かもしれないですね。日本には物がいっぱいあるけれど、その中にないものはどこかにはあるんですよね。そういうセンサーをきちんと張っていくと良いのではないでしょうか」
また、Ciaolinkさまには先日行われたポップアップイベントにご出店いただきました。そちらの動画もぜひご覧ください。
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