サブスクリプションサービスは、定期収入を得るのに有効なビジネスモデルです。しかし、いざサブスクで起業したいと思っても、どう始めたらよいかわからない人も少なくないでしょう。本記事では、サブスクサービスとその作り方を分かりやすく解説します。
サブスクリプションサービスとは?
サブスクリプションサービスとは、顧客に商品やサービスを所有・購入してもらうのではなく、一定期間利用する権利を提供するビジネスモデルです。顧客は、月単位や年単位で料金を支払います。
「定期購読」や「継続購入」を意味する英語の「Subscription」から来ており、サブスクとも呼ばれます。サブスクリプションサービス自体は新しいビジネス形態ではなく、日本では新聞や雑誌などの定期購読が以前から利用されています。近年は音楽ストリーミングや動画ストリーミング、漫画などのデジタルコンテンツのサブスクサービスが人気です。また、食材配達サービスや自動車などのサブスクのビジネスモデルもあります。サブスクビジネスは大手企業だけではなく、スタートアップ企業や個人事業主などの小規模事業者も参入しています。
サブスクリプションサービスビジネスの始め方
提供する商品やサービスをすでに決めている方は、以下の手順に従ってサブスクサービスビジネスを始める準備を進めていきましょう。サブスクは、デジタルコンテンツだけでなく商品(モノ)の販売手段としても非常に有効です。
1. 商品やサービスの需要を確認する
提供する商品やサービスが顧客に求められているかの判断は大変重要です。低価格で斬新な商品やサービスのサブスクを提供したとしても、欲しいと思う人や魅力的であると感じる人が少なければビジネスとして難しくなるでしょう。取り扱いたい商品やサービスに関する調査を事前にしっかりと行い、そうしたものがビジネスとして伸びしろがあるかどうかを確認しましょう。
2. 適切なサブスクモデルを選ぶ
需要に関する調査が完了したら、次は適切なサブスクモデルを選んでいきましょう。サブスクには以下のモデルがあります。
会員制モデル
会員制モデルは、月会費や年会費を払った会員に対してサービスを提供するモデルです。サブスクリプションサービスで人気のモデルの一つで、音楽ストリーミングや動画ストリーミングなどが有名です。自社ブランドの割引商品や限定商品、飲食店の食べ放題や飲み放題を提供する際にも使用されます。
定期購入モデル
定期購入モデルとは、特定の商品(モノ)を顧客へ定期的に届けるサブスクで、オムツやペットボトル飲料、洗剤など消耗品を提供するのに向いています。顧客にとっては、毎回注文する手間が省けるだけではなく、在庫が切れてしまうなどの事態が避けられるメリットがあります。また、定期購入は割引価格で提供されることが多いため、継続率が高いのが特徴です。
レコメンドモデル
レコメンドモデルとは、顧客の好みや趣味に合わせてセレクトした商品を届けるモデルで、扱われる商品はアパレルや美容、フードなどが一般的です。事前アンケートに基づき、顧客に合わせたものが提供されます。サブスク開始後も顧客にアンケートの回答を依頼したり、商品の感想を集めたりして、顧客の好みを分析します。このことにより、数を重ねるごとにデータが蓄積され、その顧客に合った商品を提供しやすくなります。
頒布会モデル
頒布会モデルとは、サービス提供側が商品をセレクトして顧客に届けるサブスクです。企業側が人気商品や新商品、おすすめ商品などを選択・決定する点がレコメンドモデルとは異なります。頒布会モデルでは「何が届くかわからない」というサプライズ体験を顧客に提供できます。化粧品や食品、花などさまざまな分野で活用されているモデルです。
3. サービスの詳細と頻度、価格を決める
サブスクのモデルを決定したら、サービス提供方法や頻度、価格などの詳細を決定します。競合分析や3C分析を行い、それらの結果をもとにサービスの詳細や頻度を決定します。たとえば会員制モデルの場合、サービスレベルが異なる複数の料金プランを用意するかどうかを決めます。あるいはレコメンドモデルの場合、セレクトした商品を買い取りとするかレンタルとするか、最低注文回数を設けるのか、などを決めます。
サブスクリプションサービスは解約のハードルが低い特徴があるため、継続してサービスを利用してもらうための工夫が必要です。カスタマージャーニーマップなどを活用して、ターゲット層の行動を分析し対策を講じるのもおすすめです。
また、魅力的なサービスを提供しても料金設定が高額であると、見込み客に利用してもらえません。さらに、初回特典を利用してサブスク登録した顧客の解約にもつながります。サブスクは定期的に支払いが発生するため、顧客が継続して支払えると感じる価格設定が重要です。価格の付け方の記事も参考にしてみてください。
4. マーケティング戦略を立てる
自社のサブスクを広く知ってもらうだけではなく、継続して利用してもらうためのマーケティング戦略を立てましょう。マーケティングの手法には主に以下のものがあります。
- インスタマーケティングなどのSNSマーケティング
- 動画マーケティング
- メールマーケティング
価格やサービス内容といった情報を、上記のマーケティング手法を使って見込み顧客に確実に伝える方法を考えていきましょう。さまざまな価格のサブスクを扱う場合には、ひと目で金額やサービスの違いが分かるよう工夫してみてください。複雑な料金表は好まれません。サブスクのお試し期間や契約期間がわかりやすいよう、1枚の画像にまとめてインスタなどのSNSに投稿するといったやり方も良いでしょう。ウェブサイト上やSNSでレビューなどのUGC(ユーザー作成コンテンツ)をサブスク登録者に促すマーケティング戦略もおすすめです。サブスクの口コミが増え、認知度向上につながります。
また、継続してサブスクサービスを利用してもらえるよう、既存顧客に対するマーケティング戦略も考えておく必要があります。定期的にアンケートを行えば、サブスク登録者のニーズを引き出したり、改善点を洗い出したりすることができます。また、改善を行った場合には、その旨を顧客に知らせることで、「ニーズに応えてくれる企業である」と感じてもらえます。カスタマーサポートに力を入れるのも良いでしょう。
5. システムを構築する
最後に、サブスク管理ができるシステムを構築してサブスクリプションサービスを始めましょう。サブスク向けのシステムを構築する方法は、主に以下の2種類があります。
- 外部サービスを使ったシステムの構築:サブスクサービスを提供できるプラットフォームなどを利用してシステムを構築します。こうした外部システムにはあらかじめ必要な機能が搭載されていることが多く、サービスを短時間でリリースできます。ただし、特定の機能を付けるなどのカスタマイズがしにくい場合があります。なお、Shopifyではさまざまなサブスク管理アプリが使用できます。こうしたアプリを使うことで、簡単にサブスクサービスをリリースできます。
- 自社開発によるシステムの構築:自社でシステムを構築すれば、提供するサービスに合わせて柔軟にカスタマイズできるメリットがあります。しかし、構築のノウハウやリソースが必要で、ゼロからシステムを構築しなければならないため、技術や時間、費用が必要となります。
Shopifyで使えるおすすめのサブスク管理アプリ7つ
- 定期購買:日本製のサブスクアプリです。無料で機能を試すことができるため初めてのサブスクサービス提供の際にもおすすめです。最低購入回数を設けない、解約手続きが簡単であるなど、顧客が安心して利用できることに特化した「やさしいサブスク」機能群を提供するアプリとしても知られています。
- Mikawaya Subscription:アプリ利用者から高評価を得ているサブスクアプリです。マーケティング機能に特化しており、テスト決済の機能を利用してテスト購入を行い、動作確認ができます。実際にECサイトを運営しているデベロッパーが開発したツールです。
- NoCode Subscriptions:リーズナブルにサブスク提供を始めたい人におすすめのアプリです。ノーコードでサブスク機能をつけられます。また、サブスク登録があるたびに通常は必要となる手数料が、本アプリの有料定額プランではかからないのも魅力です。
- Go Sub | 定期購入 | Subscription:UIがシンプルで手軽に定期購入オプションを追加できるアプリです。日本語に完全対応しており、カスタマイズも可能です。
- PayWhirl Subscription Payments:14日間の無料体験ができるアプリです。評価が高くアプリ利用者も多いのが特徴です。
- Bold Subscriptions:カスタマイズのしやすさが人気のサブスクアプリです。無料体験期間が30日間あるためアプリをじっくり試せます。
- Recharge Subscriptions:スタンダードプランは月額料金がかからず、必要な費用はサブスク登録があった際の手数料のみです。初期設定のステップがわかりやすいため、素早くサブスクサービスを立ち上げることができます。
Shopifyなら、こうしたアプリを利用することでコードの知識がなくても定期購入のオプションを追加したり、サブスク用商品を登録したりすることが可能です。
Shopifyでサブスクリプションを設定する方法
1. サブスクリプションアプリをインストールする
Shopifyでサブスクリプションを設定するには、前述のようなサブスクリプションアプリが必要です。なお、これらのアプリを利用するにはShopifyペイメント、PayPalエクスプレス、Autorize.net(オーサライズドットネット)、Stripe(ストライプ、一部のサービス提供者のみ利用可能)のいずれかの決済ゲートウェイサービスをストアで使用している必要があります。また、Klarnaやモバイル用iDEALなど、地域限定の決済方法はサブスクリプション商品に対応していません。サブスク提供の条件についてはサブスクリプション設定ページでご確認ください。
2. サブスクリプションアプリを設定する
インストールしたサブスクリプションアプリ内で設定を完了させます。使用するアプリによって設定内容は異なります。その後、管理画面でサブスクリプションアプリの設定を完了してください。
3. サブスクリプションポリシーを追加・編集する
定期購入を設定すると、新しい購入オプションのキャンセルポリシーページがストアの管理画面に追加されます。このキャンセルポリシーは、チェックアウトの際に表示される「サブスクリプションポリシー」となるので、提供するサービスに合わせてポリシーの内容を追加したり編集したりしましょう。
4. サブスクリプション商品を設定する
管理画面から「商品」をクリックし、サブスクリプションを設定する商品をクリックします。商品をサブスクリプションのみで販売する場合には「商品をサブスクリプションとしてのみ販売する」にチェックを入れます。サブスクリプションだけではなく、一度限りの購入も可能にしたい場合は、チェックを外しましょう。
サブスクリプションサービスを提供するメリット
1. 収益が予測しやすい
サブスクビジネスは、登録者数に基づき収益の予想を立てられるという特徴があります。月額料金または年額料金という形で顧客から支払いが行われるため、顧客数とサブスク料金をもとに毎月や毎年の収益を予測できます。収益を予測できれば、キャッシュフローをつかみやすくなります。
2. 継続的な収益を得られる
継続的な収益を見込める、というのもサブスクリプションサービスの魅力の一つです。
売り切りのスタイルとは異なり、毎月、3ヶ月ごとなどのタイミングで定期的に収益を得ることができます。継続してサービスを利用してもらうためには、顧客維持を意識した質の良いサービス提供を心がける必要があります。サブスクビジネスは、軌道に乗れば不労所得を得られるようになるため、在宅で稼ぐ手段としても有効です。
3. 業界や業種に関わらず参入しやすい
サブスクはさまざまな業界や業種で活用されているため、参入しやすく始めやすい事業モデルです。ソフトウェアや動画・音楽ストリーミングだけではなく、食材やコスメ、ファッションなど幅広い分野で導入されています。自動車やバイク、家具など大型商品のサブスクのほか、イベントなどに参加できる体験型サブスクリプション、対象住宅に住み放題になるサブスクリプションもあります。ビジネスモデルとして確立している業界や業種だけではなく、新たなアイディアを打ち出すことで注目を集め、サブスクビジネスとして成功を収めることもできるかもしれません。
また、低予算で始めることができるので、初期費用を抑えたいアントレプレナー(起業家)や自宅で稼ぐ方法を探している人にもおすすめです。
4. アップセルやクロスセルがしやすい
サブスクのビジネスモデルは、顧客との信頼関係を築きやすく、アップセルやクロスセルがしやすい特徴があります。サブスクの顧客に多様なアプローチを取ることができるため、自社ブランドや自社サービスのファン獲得に有効なモデルと言えます。こうした顧客には、新商品や新サービスのプロモーションで高い効果が見込めます。さらには、蓄積した顧客の好みや趣味に関するデータに基づいて、顧客のニーズに合った商品とサービスを提案することが可能で、売り切りアイテムのクロスセルやサブスクプランのアップセルが期待でき、全体の売上アップにもつながります。
サブスクリプションサービスを提供するデメリット
1. キャンセル率が高い
サブスクリプションサービスはキャンセル率が高く、継続利用してもらうためには顧客のニーズを把握したり、質の高いカスタマーサービスを提供したりするなど工夫が必要です。新商品を提案する、あるいはサブスクの特典を見直すことも大切です。
2. 一定数の顧客を集めるまで時間がかかる
サブスクサービスは、一定数の顧客を集めるまで時間がかかります。サブスクで起業したばかりの場合、前述のマーケティング戦略を実行して、新規顧客の獲得と既存顧客の維持の両立を目指す必要があります。サブスクビジネスが軌道に乗るには時間がかかることが予想されるため、これらの内容を考慮した事業計画書を作成しましょう。
3. 顧客の初回購入を促す対策が必要
単発で購入する商品と異なり、サブスクは一定期間継続することを前提としているため、定期的な出費に対する抵抗感から初回購入をためらう顧客が一定数います。顧客の抵抗感を下げるために、無料体験期間を設ける、初月無料、スタータープランを準備するなどの対策が必要です。
まとめ
近年、多岐にわたる業界や業種で注目を集めるサブスクリプションサービスは、起業家だけではなくスタートアップ企業にも人気のビジネスです。Shopifyのサブスクリプションアプリを使えばコードの知識がなくてもサブスクビジネスを始められ、顧客ニーズに合った定期購入を提案できます。ShopifyはECプラットフォームとしてだけではなく、実店舗での販売管理をサポートするShopify POSも展開しており、会計や売上管理を一元管理できるため、ECサイトと店舗のマルチチャネルで事業を展開したい人にもおすすめです。
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サブスクリプションサービスに関してよくある質問
サブスクリプションサービスの例は?
サブスクリプションサービスの例は、音楽配信サービスのSpotify(スポティファイ)やLINE MUSIC(ラインミュージック)、動画配信サービスのNetflix(ネットフリックス)やHulu(フールー)、食材配達サービスのOisix(オイシックス)やらでぃっしゅぼーやがあります。
サブスクとは?
サブスクとは、「サブスクリプション」の略語で、「定期購読」を意味します。顧客は月会費・年会費などを支払うことによって、その期間中に該当するサービスや物を受け取れるようになります。
サブスクにおすすめのShopifyアプリは?
サブスクにおすすめのShopifyアプリは、日本製のサブスク管理アプリ「定期購買」や高評価を得ている「Mikawaya Subscription」、完全ノーコードの「NoCode Subscriptions」などです。
個人事業主でもサブスクビジネスを始められる?
個人事業主もサブスクビジネスを始めることができます。サブスクビジネスで新規起業を目指す人は「会社を設立する方法」を参考にしてください。