ビジネスオーナーには、計測して把握すべき重要な指標が数多くあります。
純利益率から売上高、顧客維持率に至るまで、これらの重要な指標は、ビジネスを成長や拡大させる際に正しい道を歩むための道標となります。適切な指標を計測しないことはリスクとなり、ビジネスという旅の上で予期しない危険に繋がってしまう可能性があります。
特に注意を払うべき重要な指標の1つが、顧客生涯価値(LTV)です。この指標は、ビジネスにおける過程で平均的な顧客から期待できる価値を示します。
このガイドでは、 顧客生涯価値(LTV)とは何か、そしてその重要性について詳しく解説します。
顧客生涯価値とは?
顧客生涯価値(LTV)とは、顧客との関係全体を通じて顧客から生み出すことができる純利益の合計を表す指標です。これは、顧客の初回購入、リピート購入、企業との平均的な関係期間が考慮されます。
LTVは、現在の顧客のロイヤルティの理解や評価をするのに役立ちます。顧客が何度も購入を続ける場合、通常、ビジネスが正しい方向に進んでいるというよい兆候です。また、LTVが大きいほど、顧客獲得コストにかかる支出を抑えることができます。
次に例を紹介します。
ホンダの車やミニバンに満足している人がホンダの車を生涯にわたって何台も購入する場合、その人のホンダに対するLTVは最大で10万ドルになることもあります。一方、コーヒーを毎日飲む人のLTVは、飲む回数の多さや購入場所によっては、それを超えることもあるでしょう。逆に、一生に家を2回購入する人のLTVは、不動産会社にとっては15,000ドル程度にしかならないかもしれません。購入額自体は大きな価値がありますが、不動産会社が手にする手数料は全体の価格のわずかな一部だからです。
大局的に見ると、LTVは特定の顧客関係に関連する利益の指標であり、その関係を維持するためにどれだけ投資する価値があるのかを判断する指針となります。つまり、ある顧客のLTVを500ドルと見積もった場合、その関係を維持するためにそれ以上のコストが掛かってしまうと利益にはならないのです。
LTVを理解すると、 ビジネス戦略を形成するのに役立ち、既存の顧客を維持することに焦点を当てることができます。もちろん、新規顧客と既存顧客のいずれもが、ビジネスの成長において重要な役割を果たします。
顧客生涯価値が重要な理由
LTVを理解することで、顧客が通常どれほどの期間、商品を購入し、その関係の中でどれだけ支出するのか、という情報に基づいて意思決定することが可能となります。この指標は、新規顧客の獲得、顧客の維持、カスタマーサポート、さらには商品やサービスの品質に関する戦略を構築するのにも役立ちます。
異なる顧客セグメントのLTVを計算することは、ビジネスの意思決定において多くメリットがあります。LTVを把握することで次のことが分かります。
- 新規顧客を獲得するためにどれだけのコスト(CAC:顧客獲得単価)が支出可能なのか、利益を上げられる関係が築けるのかどうか
- 平均的な顧客が長期にわたって支出すると予想される正確な金額
- 高い価値をもたらす顧客が求めている商品の種類
- 最も利益率の高い商品
- 売上の大部分を生み出している顧客関係
- 最も利益をもたらす顧客タイプ
- カスタマージャーニーと離脱率に関する詳細
LTVを基に、最もロイヤルティの高い顧客をより深く理解することができます。彼らが何を好み、なぜ購入を続けるのか、といった質問への答えが浮き上がってきます。
これらの情報に基づいた意思決定は、ビジネスの利益を大幅に向上させることができます。
ビジネスで計測するべき指標はどれも、数値を知るだけでは不十分です。LTVを活用して、全体的なビジネス戦略を打ち立てなくてはなりません。
- LTVが上昇している場合、商品開発やカスタマーサクセスチームへの投資を継続した方がよいかもしれません。
- LTVが低下している場合、マーケティング戦略を見直して改善する必要があるかもしれません。
LTVを理解する主なメリットの1つは、長期的に顧客獲得コストを大幅に削減できることです。
LTVを向上させる方法
顧客体験と利益を向上させられる、実績のあるアプローチを次にいくつか紹介します。
- 顧客が購入した商品を簡単に返品できるようにします。返品方法が複雑だったり高い費用が掛かったりすると顧客満足度が低下し、再購入する可能性を下げてしまいます。
- ロイヤルティが高い顧客に対して戦略的な例外を設けます。例えば、提供しているサブスクリプションサービスを解約しようとしている顧客がいる場合、小さな割引を提供するなどして、ユーザーを維持できるようにオプションを提供します。
- 最も高い価値をもたらす顧客にインタビューして、彼らがブランドを選び続ける理由を把握します。
- 配達日の期待値を設定し、期日を過ぎないようにしたり、それよりも早めたりすることを目指します。例えば、8月1日までの配達を約束した場合、7月20日までに手元に届く方が、配達予定日より遅れて到着するよりもはるかによいのです。
- ロイヤルティプログラムを作成します。達成可能で魅力的な報酬を提供してリピート購入を促進します。
- ロイヤルティの高い顧客に報酬を与えます。日頃の感謝の気持ちを込めて無料の特典を提供することで、ブランドへのロイヤルティを高めます。
- 既存の顧客限定の特別セールを実施します。
- アップセル(購入に対してアップグレードの提案をすること)を活用して、顧客取引の平均単価を高めます。例えばマクドナルドが「ご一緒にチキンマックナゲットはいかがですか?」と尋ねることなどを指します。
- 定期的にコミュニケーションを取ります。長期にわたる顧客は、自分たちが忘れられていないことを感じたいと思っています。彼らが連絡しやすくなるようにアプローチしましょう。
LTVを活用してビジネス戦略を打ち立て、長期的な顧客を惹きつけ、維持することで、より高い利益を上げられる成功したビジネスを構築できます。このような顧客はサポーターかつリピート購入者となるでしょう。
顧客生涯価値に関するQ&A
LTVにおける3つの要素とは何ですか?
LTVを計算するには、次の3つの情報が必要です。
- 顧客の平均購入額
- 顧客が購入する平均頻度
- 顧客が通常どれくらいの期間ブランドにロイヤルティを示すか
顧客生涯価値の計算式は何ですか?
LTVの最も基本的な計算式は次の通りです。計算式は必要に応じてやや複雑になることがあります。平均購入額 × 購入頻度 × 平均顧客寿命 = LTV
顧客生涯価値を計算する具体例はありますか?
例えば、衣料品ブランドのeコマースの場合、平均的な顧客が年間3回、200ドル分の商品を購入し、5年間顧客であり続ける場合、その顧客のLTVは「3,000ドル(200ドル × 3回の購入 × 5年)」になります。
顧客生涯価値はどのように増加させられますか?
LTVを増加させるには、パーソナライズされたショッピング体験を提供し、閲覧や購入履歴に基づいて商品を勧めることやリピート顧客に対してロイヤルティプログラムや特別割引を提供することなどが検討できます。また、メールマーケティングやソーシャルメディアを通じて顧客と定期的に関わることで、長期的な関係を育むことに繋がります。