ECサイトで新商品を売り出せばわずか数分で売り切れ、ポップアップストアには長蛇の列ができる。そんな人気アパレルブランドである「keniamarilia(ケニアマリリア)」。「着物文化の永続」を目標として掲げて、上質な着物を丁寧にリメイクした一点もののアイテムは、熱狂的なファンが多く存在します。
「keniamarilia(ケニアマリリア)」を手がけるのは、アパレルのOEM会社、メーカー勤務、フリーランスとして「HEAVENESE(へヴニーズ)」の衣装デザイン・製作に関わるなど、アパレル業界15年のキャリアをもつ座波ケニア(ざは けにあ)氏。今回はECサイトへ懸ける思い、ブランド成長のカギとなったECサイトとSNS戦略の関係、Shopify導入の経緯や今後の展望について座波氏に伺いました。
目次:
1.“自分の声が直接届く”を求めて、自社ECサイトを開設
2.実現したい未来を見据えてShopifyで挑戦
3.流入経路の90%がX(旧Twitter)経由のECサイト
4.Shopifyでブランドの成長を加速させる
5.“大きい志”のお供には「その道のプロ」とShopifyを
1.“自分の声が直接届く”を求めて、自社ECサイトを開設
ーーー自社ECサイトの開設に至った経緯を教えてください。
ECサイトは、ブランドの立ち上げと同タイミングである2019年の10月末に開設しました。
ECサイト開設当初は当ブランドの代表的なアイテムである「ケ二シャツ」と「ケニスカ」のみの商品展開で、7着しかアイテムがありませんでした。
リリースしてみてもし売れなかった場合、着物が悪いのではなく売り方やデザインなど、着物ではない別の要素に問題点があるはずだと考えていました。それを一歩下がって見つけられる余力がある状態で作り始めた。だから最初は、7着だけのリリースにしました。
アイテム数が少ないことに加えて、当時は「カート機能」が何を指すのかすら分からず、ECサイトでの売り方を全く知らないままスタートしました。
知識や経験もなくアイテム数も少ない中でECサイトからの販売をスタートさせたのは、以前から「会ったことのない人に私の思っていることが直接届くツールを介して洋服を売りたい」と強く感じていたからです。
アパレルは基本的に、サンプルを作り展示会を開いて人を呼び、バイヤーさんにオーダーを付けてもらって雑誌に掲載されて…といった商流なのですが、長くアパレル業界で働く中で、“自分の声が直接お客さんに届くツール”がないとずっと思っていたんですね。
「keniamarilia(ケニアマリリア)」に関しては特に、着物のリメイクというだけでとっつきにくい商品なので、私の思いややりたいこと、ブランドのコンセプトが誤解なく伝わるツールがほしかった。
直接届けるという意味では店舗で売ることももちろん考えましたが、まずはどのくらい支持をしてくれる人がいるのか確かめたかったので、第一段階としてECサイトから始めてみました。
▲初期の「ケ二シャツ」
▲初期の「ケ二スカ」
2.実現したい未来を見据えてShopifyで挑戦
ーーー自社ECを運営するにあたってShopifyに決めた理由を教えてください。
座波氏:ECサイトの立ち上げ時はShopifyではなく別のプラットフォームを使用していました。ECでの売り方を勉強する中で、信頼するマーケターの方にすすめてもらったことをきっかけに、現在はShopifyを利用しています。Shopifyにおける国内トップレベルの構築・運用実績を誇るR6Bと出会い、Shopifyの仕組みなど、一つひとつ一緒に確認してもらいながら構築・運営を進めていきました。
当時はECサイトやShopifyの知識も乏しかったので不安もあったのですが、R6Bのようながっつり伴走してくれるパートナーに出会えたので、非常に心強かったですね。
ECサイトを移行した際、お客さんがついてきてくれるか実は怖かったんです。R6Bやファンの方々の応援もあり、無事にカートの引っ越しをすることができました。
3.流入経路の90%がX(旧Twitter)経由のECサイトーーーブランドやECサイトを構築するうえで、こだわったポイントを教えてください。
ブランドやECサイトを立ち上げる前に、X(旧Twitter)での発信から始めました。というのも、まずは私がやろうとしていることに対して理解して賛同してくれる仲間がほしかったんです。
アパレルと言えばSNSはInstagramを中心に発信する場合が多いと思いますが、あえてX(旧Twitter)に絞りました。
考えていることをダイレクトに伝えて、言葉を介してコミュニケーションをとりたかったからです。“映え”だけでキャッチアップされると誤解されると思っていたので。
また、着物のリメイクはどうしても“イロモノ”に見られがち。加えて私が外国籍ということもあるので、ぽっと出てきてなんとなくブランドをやっていると思われたくありませんでした。
そういう理由もあり、Xではブランドについて発信するというよりかは、着物や歴史、文化、浮世絵、版画など、私が大好きなものをとにかく投稿ツイートしまくるということを1年ほどやっていました。まずは人となりを知ってもらおうと。その甲斐あってか、満を持して「ブランドを立ち上げます」とXで発信したときには、日本のトレンドに上がるくらい盛り上がりました。
でも実は、ブランド立ち上げのツイートをしたときは5000人に満たないフォロワー数でした。
そもそもフォロワーを増やそうと思っていませんでしたし、一般的なインフルエンサーブランドと思われたくなかった。
やりたいことや着物への思いを地道にツイートし続けてきたことで、今フォローしてくださっている皆さんは、「keniamarilia(ケニアマリリア)」の生産背景をしっかり理解した上でファンになっていただいていると思います。
成果を急ぐとなるとファンにも飽きられやすい。簡単についたお客さんは簡単に離れてしまうと私は思います。だからこそ、時間をかけて関係性を構築してきた「keniamarilia(ケニアマリリア)」のファンの皆さんは簡単に離れない。一人ひとりの熱量が非常に高いです。
R6Bに、コンバージョン経路のデータを定期的に見せてもらっているのですが、やはり圧倒的にX(旧Twitter)からのコンバージョンが多いですね。
アパレルであればInstagramからECサイトへの流入は、広告なども含めて平均35〜60%と聞いていますが、「keniamarilia(ケニアマリリア)」の場合は、Xからの流入が90%。Instagramからの流入2%というときもありました(笑)
ファンの方々の中では、Xでアイテムの事前告知を確認する、ECサイトで購入する、購入後X(旧Twitter)で発信する、というように購入前から購入後まで全てのアクションが確立されており、地道にX(旧Twitter)で発信し続けたことが功を奏したと感じています。
4.Shopifyでブランドの成長を加速させる
ーーーShopifyを導入してよかったと思う点を教えてください。
一つは海外のクレジットカードに対応している点ですね。海外のお客さんや海外に住んでる日本人の方々が買い物をしてくれるようになりました。海外への展開を視野にいれていたので、導入して正解でした。
絹製品なので関税などいろいろな問題はありますが、とにかく海外の人からのアクセスがすごい。まだまだ広げられるという確信を得ました。
もう一つは、サイトを作り込みやすい仕様である点。
ブランドをもともと知っているお客さんではなく、知らないお客さんに対してブランドのコンセプトや思いを伝えていこうと思ったときに、ECサイトにアクセスしていきなりカートとなると、言葉を選ばずに言えば「品がないな」と思っていました。
知らずにアクセスしてきて、1着3万円となると「高い」と感じるのは自然なことですよね。そのため、どういう思いでブランドをやっていて、どこと一緒に組んでいて、どんなふうに作って…というブランドの文化を丁寧に深く伝える必要があると思っていたので、ECサイトも作り込みたかったんです。
ブランドの全てを網羅できるという1ページがほしかった。ECサイトにとどまらず、総合的なブランドサイトのようなイメージですね。
今後は、「keniamarilia(ケニアマリリア)」を日本だけでなく、本格的に海外に広げていきたいと考えています。改めてきちんと海外の人にも興味を持って着てもらえるものを作っていきたいです。英語サイトも作りたいですね。
今後の展望も踏まえると、Shopifyに切り替えて本当によかったと感じています。ブランドを立ち上げるうえで、やってよかったことのうちの一つですね。
5.“大きい志”のお供には「その道のプロ」とShopifyを
ーーーShopifyの導入を検討している皆さんへ一言お願いします。
助けてくれたり伴走してくれたりするShopifyに詳しい人を、必ず巻き込んで味方にしたほうが良いですね。1人でできるものだと思わないこと。
必ずしも一人でできないわけではないとは思います。しかし、“志”ややりたいことが大きいのであれば、なおさらプロを巻き込むのがベストです。
【関連リンク】
- keniamarilia(ケニアマリリア): https://keniamarilia.jp/
- R6B: https://r6b.jp/
- 【座波ケニア×R6B対談】ファンと伴走者とともに歩むブランドづくり。成長のカギとなったSNS戦略と「Shopify」への向き合い方 Marketeer(マーケティア): https://marketeer.jp/zaha_rb6/