「プライベートブランド」商品は、ドラッグストアやスーパー、コンビニなどでも目にする機会が多いアイテムです。大企業が手がけるブランドというイメージがありますが、やり方を知れば、あなたのプライベートブランドを立ち上げることも可能です。
今回は、プライベートブランドとは何か、その意味やメリットとデメリット、最後にプライベートブランドの立ち上げ方と成功させるためのポイントをご紹介します。
プライベートブランドとは?
プライベートブランドは、小売業者が自社ブランドの商品を開発・販売する際のブランドを指します。英語の「Private Brand」の表記をより正確に表現するために、間に点を入れて「プライベート・ブランド」と記載されたり、頭文字を取って「PB」と表記されることもあります。スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどで取り扱われている場合が多いので、よく目にするという人も少なくないでしょう。
プライベートブランドには、食品から衣料品、化粧品、日用雑貨など、さまざまなカテゴリーの商品があります。小売業者が自社ブランド商品の企画・開発、販売までを手がけるという特徴がありますが、製造方法は2種類あります。
自社製造
有名小売業者などの場合は、プライベートブランド商品を自社工場で製造し、販売することがあります。自社製造を行うには、生産ラインの確保や製造技術が必要となります。
OEM
OEM(オー・イー・エム)とは、Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)の頭文字を取ったもので、自社ブランドの商品やサービスを他社に委託するビジネスモデルです。自社で企画・開発した商品の製造のみを他社に委託する場合や、企画した商品の開発と製造の両方を委託する場合があります。
プライベートブランドの作り方
プライベートブランドは、大企業が扱うイメージを持たれがちですが、方法がわかれば自分で立ち上げることができます。プライベートブランドの立ち上げを検討している方に向けて、その方法とOEMメーカーを選ぶ際のポイントをご紹介します。
プライベートブランドを作るための5つのステップ
1. ブランドを構築する
プライベートブランドを立ち上げるには、まずブランドを構築することからスタートしましょう。ターゲットや競合他社をリサーチして、ブランドの顔となるカラーやロゴなどを準備します。すでに自社ブランドがあり、そのプライベートブランドを立ち上げる場合は、このステップは不要です。
2. 販売する商品を決める
ブランドを構築したら、販売するプライベートブランド商品を決めましょう。最初は少数のラインナップから始めることも可能です。将来的にラインナップを増やしたい場合は、同じ製造メーカーが幅広く対応してくれるのか、アイテムのカテゴリー毎に異なるメーカーに製造をお願いする必要があるかどうかを確認することも大切です。
プライベートブランド商品の製造を委託する場合は、主に2通りの方法があります。
・ナショナルブランド商品の改良・製造を委託する
1つ目は、製造メーカーと相談しながら、すでに存在するナショナルブランド商品の改良と製造を委託する方法です。ゼロから商品を企画・開発をするとなると、打ち合わせや開発に時間とお金がかかりますが、この方法であれば費用を抑えられるだけでなく、消費者のニーズに応えられるプライベートブランドの改良・改善に力を注ぐことができます。
・新商品を企画・開発して、製造を委託する
2つ目は、製造メーカーと相談しながら、プライベートブランド商品の企画や研究開発を行い、製造を委託する方法です。消費者のニーズに沿った商品のイメージが出来上がっている場合は、メーカーが持つ技術とノウハウを活用して商品を製造できるメリットがあります。自社工場で製造ラインを確保して商品を製造したり、自社工場を所有している場合でも、コスト削減のために、OEMメーカーに委託することができます。
3. 販売方法を決める
プライベートブランド商品は、小売店で取り扱ってもらうほかに、ECサイトを立ち上げて、オンラインで販売することもできます。自社店舗を構えている場合は店頭で販売できますが、EC事業としてオンラインのみで販売することも可能です。
4. 製造メーカーを選ぶ
プライベートブランド商品の製造を委託するOEMメーカーを選びます。取り扱う商品によっては、複数のOEMメーカーに製造を委託する必要があるでしょう。
OEMメーカーを選ぶ時のポイント
・製造を依頼したい商品を取り扱っているか
・受託製造の実績があるか
・希望するロット数(一度に製造できる数量)で発注ができるか
・品質管理がしっかりしているか
・サポート体制が整っているか
5. 集客して、販売する
販売する準備が整ったら、自社店舗もしくは自社ECサイトで販売を開始します。売り上げを伸ばすためには、効果的にマーケティングを行う必要があります。動画を使ったマーケティングやSNSマーケティングなど、さまざまな手法を駆使して、より多くの消費者にプライベートブランドをアピールしましょう。
プライベートブランドのメリット
コストを抑えられる
自社製造の場合は、人件費の安い海外工場で生産することでコストを抑えることができます。OEMの場合も、製造設備や技術への投資を必要としないため、低コストで商品を製造することができます。
発注量を調整しやすい
店舗ごとの売上などを見ながら販売予測をして、発注量を調整できるため、膨大な在庫を抱えるといったリスクを避けることができます。また、売れ行きの良い商品は多めに発注するなど、地域のニーズに合わせて発注量を調整することで、売上アップにつなげることができるというメリットがあります。
利益率を上げやすい
プライベートブランド商品は、自社で価格設定が行えるという強みがあります。中間マージンも発生せず、広告宣伝費も不要です。そのため、低いコストで製造した商品を高い利益率で販売することが可能です。
固定客を獲得・維持できる
プライベートブランド商品は、他社では購入できないことから、商品を独占的に販売することができ、固定客を獲得・維持しやすいメリットがあります。店頭に並び始めた当初は、安価で品質があまり高くないというイメージがありましたが、近年では高品質なプライベートブランド商品も増えています。プライベートブランド商品を求める顧客が店舗へ足を運ぶきっかけになることもあり、店舗の売上アップにもつながります。
顧客のニーズに合った商品を開発できる
小売業は、顧客の趣向の変化や商品の売れ行きなど、顧客のニーズをつかみやすい業種です。顧客が必要としている商品や、固定客に人気の商品を把握できるほか、人気が出そうな商品などを企画・開発できるチャンスもあります。顧客と接点を持てる小売業者だからこその強みを活かすことができます。顧客のニーズに応えられる商品ラインナップを拡大できると、販売数の増加やリピーターの獲得につながります。
プライベートブランドのデメリット
品質管理をしっかりとする必要がある
プライベートブランド商品の品質に関するクレームがあったり、低品質であると判断されたりすると、その商品だけでなく、プライベートブランド全体のイメージダウンにつながります。安定した品質の商品を提供し続けるには、品質のチェックや検品が重要になります。
また、返金や交換などの対応も自社で行わなければなりません。場合によっては、顧客からの問い合わせやクレームに対応するためのお客様相談窓口やコールセンターを設置することも必要になるでしょう。
認知度を上げるまでに時間がかかる
多くの小売業者は、自社のプライベートブランド商品だけでなく、広く流通している他社商品も販売しています。テレビCMや広告、ウェブサイトなどで紹介されている商品は認知度が高く、顧客に安心して商品を手に取ってもらうことができるからです。
しかし、プライベートブランド商品は、販売開始直後は認知度が低いので、顧客に存在を知ってもらい、安心して購入できる商品であることをアピールする必要があります。
ナショナルブランドや自社ブランド(ストアブランド)との違いは?
ナショナルブランドとは?
ナショナルブランドとは、メーカーが製造している商品で、全国展開しているものを指します。プライベートブランドの対義語として使われ、National Brandの頭文字を取って「NB」と呼ばれることもあります。ナショナルブランドは、主に販売店などで目にする知名度の高い商品を指し、製造元のメーカーも知名度の高い大企業であることが多いです。
ナショナルブランドの一例として、日清食品のカップヌードルやキリンの一番搾り、日本ハムのシャウエッセンなどがあります。
プライベートブランドとナショナルブランドの違いは?
プライベートブランドが小売業者や流通業者が手がける自社ブランド商品を指すのに対して、ナショナルブランドは製造メーカーが手がける商品を指します。また、プライベートブランドは自社で販売するのに対して、ナショナルブランドは小売業者に商品を卸し、販売も小売業者が行います。
価格に関しては、プライベートブランドの方がナショナルブランドよりも安価になる傾向があります。その理由は、ナショナルブランドは商品の製造後、流通業者や卸業者などを通して小売店へと届けられるため、流通のコストがかかるからです。宣伝費や広告費などがかかることも挙げられます。
自社ブランド(ストアブランド)とは?
自社ブランドは、小売業者が開発・販売するブランドを指します。ストアブランドとも呼ばれ、プライベートブランドと同義で使われることも多い言葉です。自社ブランドは、ナショナルブランドに対抗するための商品と言えます。
自社ブランドの一例として、イオンのトップバリューや、セブン&アイホールディングスのセブンプレミアムなどがあります。
プライベートブランドと自社ブランドの違いは?
プライベートブランドと自社ブランドは、広義では同じ意味で使用されることがあります。厳密にいうと、自社ブランドはナショナルブランド商品に対抗する商品であるのに対し、プライベートブランドは顧客のニーズを元に企画・開発される商品を指します。
プライベートブランドビジネスを成功させるポイント
消費者のニーズにあった商品を扱う
プライベートブランド商品を企画・開発する前に、マーケティングリサーチやトレンド調査、人気調査などを行い、どのような商品が消費者に求められているのかを絞り込みます。そのうえで、消費者のニーズや悩みを解決できるプライベートブランド商品を企画しましょう。
消費者のニーズをしっかりと分析することは、ブランド戦略を立てる際にも役立ちます。ナショナルブランドがまだ取り扱っていない、付加価値の高い新商品を開発できれば、自社の強みとしてアピールしやすく、ナショナルブランド商品との差別化を図ることができます。プライベートブランド商品を目当てに店舗やサイトに定期的に訪問してくれる消費者に他の商品も購入してもらうことで、売上アップが期待できます。
販売計画と在庫管理を徹底する
付加価値の高いプライベートブランド商品の開発に成功したとしても、販売計画がしっかりしていなければ、売り上げが伸びなかったり、在庫を抱えてしまうことになります。販売数を元に販売計画を立てて、必要な数量を発注することで大量の在庫を抱えてしまうリスクを回避しましょう。
販売場所が自社店舗または自社ECサイトに限られるため、最初は最小ロット数で発注をし、売上に合わせて徐々に発注量を増やせるのもプライベートブランド商品の強みです。無理な販売計画を立てず、販売数や消費者の動向に合わせて数量を調整するとよいでしょう。
ブランド戦略を立てる
プライベートブランド商品は近年、高品質のアイテムも登場し人気を集めていますが、消費者が当初抱いていた「安かろう悪かろう」というイメージが完全に払拭されたとは言えません。
安くてもクオリティが高いことを消費者に理解してもらうために、ブランディング戦略を立てることが重要です。商品イメージに合ったスローガンを作って宣伝したり、ブランドイメージに合ったパッケージをデザインしたり、どの商品にも統一感のあるデザインを採用したりすることで、消費者にブランドを認知してもらいやすくなります。
また、ブランド戦略の中でも、コミュニケーション戦略はブランドイメージ形成において大切な要素です。ターゲットの消費者にプライベートブランドを知ってもらい、良いイメージを持ってもらい、また購入したいと思ってもらえるように、目的に合わせて広告やSNS、動画を活用したり、イベントを企画したりしましょう。
ブランド戦略を立てて実行したら、プライベートブランドの認知度が上がったかどうか、売り上げにつながったかどうかなどの分析を行い、必要に応じてブランド戦略を立て直し、より効果的に認知度と売上アップにつなげていきましょう。
まとめ
ビジネスモデルとしても注目を集めているプライベートブランドは、あなたも立ち上げることができます。メリットとデメリットをしっかりと理解して、あなただけのプライベートブランドの立ち上げに挑戦してみるのもよいかもしれません。
リセラーやEC事業もプライベートブランドの立ち上げと同じく注目を集めているビジネスモデルなので、是非参考にしてみてください。
よくある質問
プライベートブランドと自社ブランド(ストアブランド)の違いは?
プライベートブランドは消費者のニーズを元に企画・開発される商品を指すのに対して、自社ブランドは既存のナショナルブランド商品に対抗する商品を指します。広義では、同じ意味で使用されることがあります。
プライベートラベルとプライベートブランドの違いは?
プライベートラベルとプライベートブランドの違いは特にありません。日本では主に「プライベートブランド」と呼ばれますが、英語圏では「private label(プライベートラベル)」と呼ばれます。
プライベートブランドを英語だと何?
プライベートブランドは、英語圏では「private label(プライベートラベル)」と呼ばれています。
ナショナルブランドとプライベートブランドの違いは?
ナショナルブランドは製造メーカーが製造している商品とそのブランドを指すのに対して、プライベートブランドは小売業者や流通業者が手がける自社ブランド商品を指します。