「書籍を出版したいけど費用が高い‥‥」「在庫をたくさん抱えるのが怖い」などの理由で、紙媒体としての書籍の出版を諦めている方も多いでしょう。
しかし、プリントオンデマンドを利用したプリントオンデマンド出版なら、高額な費用と在庫がネックになる自費出版のハードルを下げられます。趣味から発展させて副業や在宅の仕事として行うこともできます。
今回の記事では、プリントオンデマンド出版の概要や選び方、メリット・デメリット、プリントオンデマンド出版社を紹介します。コストやリスクを抑えて書籍を出版したい方や趣味を仕事にしたい方は、ぜひ参考にしてください。
プリントオンデマンド(POD)出版とは?
プリントオンデマンド出版とは、注文された部数のみ印刷するプリントオンデマンドの仕組みを利用して、書籍を出版することです。従来の自費出版では、100部や300部などまとまった印刷が必要で、高額な費用と在庫が必要でした。しかし、プリントオンデマンド出版では在庫を抱える必要がなくコストを抑えられます。販売方法は、プリントオンデマンド出版社に任せる場合と、Amazon(アマゾン)や楽天などのプラットフォームへ自分で販売登録をする方法があります。
プリントオンデマンド出版では、SNSマーケティングなどを行って継続的に新しい読者へ販売促進できれば、不労所得を得ることも可能です。在庫を抱えるリスクがなく低予算で始めやすい事業なので、ネットで稼ぐ方法を探している方にもおすすめです。
プリントオンデマンド(POD)出版社の選び方
1. 印税の設定方法
プリントオンデマンド出版では、書籍販売価格の一定割合が著者の収入になる印税という形式がよく採用されています。印税の設定方法は、「販売価格と印税率が決まっている場合」と、「販売価格を自分で設定できる場合」の2つがあります。初めての出版で本の適正価格が分からない方は事前に販売価格が決められている出版社がおすすめです。一方で、ファンがいてある程度の販売数が予測できる場合は、手取りの利益を増やすために自分で販売価格を設定できる出版社を利用すると良いでしょう。
2. 販売プラットフォーム
販売数を伸ばすためにも、ターゲット層に合ったプラットフォームで販売することが重要です。プラットフォームによっては、販売登録の際に書籍の流通管理に使われているISBN(国際標準図書番号)やJANコードの取得が必要となるなど複雑なため、適したプラットフォームへの申請・登録代行に対応できるプリントオンデマンド出版社を選ぶのがおすすめです。
対応している販売プラットフォームとしてはAmazonが多く、その次に楽天ブックスやネット書店が多くなっています。作品の読者層が分からない場合は、まずAmazonで販売を始め、そこからアンケートなどで読者層の調査をしてみてもいいでしょう。
3. 入稿形式
書籍の内容を印刷用にデータ化して出版社へ送る工程は「入稿」と呼ばれます。プリントオンデマンド出版の場合、その方法は「PDF化」したものを送付するか、ウェブフォームなどを通じて「直接入力」する場合が多い傾向にあります。Word(ワード)などで執筆することに慣れている方はPDF入稿、ブログのように執筆したい方は直接入力できる出版社のほうが挑戦しやすいでしょう。また、出版するまでの間、アドバイスやサポートを受けながら制作できる出版社もあるので、一人での執筆に不安がある方はサポートが充実している出版社がおすすめです。
その他にも以下のポイントを比較して自分に合う出版社を選びましょう。
- 出版登録料金
- 印刷費用
- 販売価格
- 書籍のサイズ
- 有料サービスの種類(カラー印刷、表紙作成、校正など)
プリントオンデマンド(POD)出版社:4社比較
1. ∞books(むげんブックス)
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∞booksはデザインエッグ株式会社が提供するプリントオンデマンド出版サービスです。ユーザーはウェブ上で直接原稿を入力し、ISBN付きの書籍を出版できます。出版された書籍は、Amazonや全国の書店を通じた取り寄せで販売されます。初回の出版は無料で、2作品目以降も出版済み書籍の売上が各10冊以上になっていれば無料で出版可能です。サイズはB6、書籍の販売価格は50ページ880円から、150ページ1600円から(※モノクロの場合)に固定されています。費用を抑えながら手軽に出版を始めたい方に適したサービスです。
- 印税:販売額の10%
- 出版費:無料(※2作品目以降は一定数の販売数を満たす場合)
- 販売プラットフォーム:Amazonや全国の書店
- 入稿形式:直接入力
- その他のポイント:有料の表紙デザイン、カラー印刷対応、無料のISBN登録
2. MyISBN(マイアイエスビーエヌ)
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MyISBNhは、∞booksと同じくデザインエッグ株式会社が運営する自費出版サービスで、5,478円(税込)の登録費用でISBN付きの紙の本を出版できます。原稿はPDF形式での入稿が必要で、WordやPowerPoint(パワーポイント)で作成したデータを使用します。また、本のサイズも選択できるため、∞booksよりもデザインなどにこだわって書籍を制作したいという方に適しています。出版された書籍はAmazonや楽天ブックス、全国の書店で販売でき、印税は販売価格の10%が著者に支払われます。最低販売価格は50ページの本で880円、150ページで1600円、250ページで2500円からです。
- 印税:販売額の10%
- 出版費:5,478円(出版登録料金、税込)
- 販売プラットフォーム:Amazonや楽天ブックス、全国の書店
- 入稿形式:PDF、直接入力
- その他のポイント:有料の表紙デザイン、カラー印刷対応、出版後の修正可能、無料のISBN登録
3. パブファンセルフ
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パブファンセルフは個人が簡単に紙の本や電子書籍を出版できるプリントオンデマンドサービスです。印刷用のPDFデータがあれば1冊から印刷可能です。書籍の価格設定は自由で、印刷費と販売手数料を差し引いた額が著者の収益となります。Amazon、Amazon Kindle(電子書籍)や楽天ブックス、三省堂書店などで販売でき、ISBNの取得はオプションで提供されています。電子書籍と紙書籍の同時出版が可能で、内容の修正も無料で行えます。サイズは新書判、A4、レター判などさまざまで、24〜828ページまでの書籍を出版できます。料金はモノクロで891円から、カラーは1,573円からです。
- 印税(販売売上の支払い):販売価格から印刷費と販売手数料(販売価格の40% + 税)を差し引いた額
- 出版費:無料
- 販売プラットフォーム:Amazon、Amazon Kindle(電子書籍)や楽天ブックス、三省堂書店
- 入稿形式:PDF、EPUB(電子書籍)
- その他のポイント:有料の原稿データの作成支援、電子書籍かんたん変換、ISBN登録、国会図書館寄贈、サンプル本作成
4. 金風舎
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金風舎はプリントオンデマンド出版を提供する企業で、担当者が付いて表紙・紙面の制作やプロモーション活動などの手厚いサポートを行うことが特徴です。電子書籍の同時出版も可能で、販売価格は500円から4,500円まで(Amazonの規約)です。出版登録料金は、原稿が完成している場合で30万円からとなっており、他のオンデマンド出版社と比べて高めですが、その分サポートが充実しています。初めての出版で手厚いサポートを求める方に適しています。
- 印税:販売額の10%
- 出版費:【原稿がすでに完成している場合】30万円〜、【企画から相談したい場合】問い合わせ
- 販売プラットフォーム:Amazon、楽天ブックス、三省堂書店、書店からの注文販売
- 入稿形式:要問合せ
- その他のポイント:有料の図版作成、担当者によるサポート、プロモーション
プリントオンデマンド(POD)出版のメリット
初期費用と在庫リスクを軽減できる
POD出版では、注文が入ってから必要な部数だけを印刷するため、従来の出版方法のように大量の在庫を抱える必要がありません。これにより、初期費用を大幅に抑えることができ、在庫管理や保管に伴うコストやリスクも回避できます。特に、初めて出版をする方や、小規模な市場をターゲットにする場合、経済的な負担を最小限に抑えられる点は大きな魅力です。
長期的な販売が見込める
POD出版では、書籍のデータがオンライン上に保存され、注文があるたびに印刷・発送される仕組みのため、在庫切れや絶版の心配がありません。そのため、作品を長期間にわたって販売し続けることが可能で、読者はいつでも必要なときに書籍を手に入れることができます。特に、専門的な内容やニッチなテーマの書籍において、この柔軟性は大きなメリットとなります。
簡単に内容を修正できる
簡単に内容を修正できることもPOD出版の大きなメリットの一つです。POD出版ではデータを修正するだけで新しい内容の本をすぐに販売できます。そのため、誤植の訂正はもちろん、最新の情報を反映させたり、読者のフィードバックをもとに内容を改善したりしやすいのが特徴です。特に、技術書や実用書など、頻繁に情報の更新が必要な書籍に適しています。
プリントオンデマンド(POD)出版のデメリット
製本の選択肢が限られている
プリントオンデマンド出版では、一般的にソフトカバー(ペーパーバック)が主流で製本の種類が限られるため、こだわりのある装丁は難しいことがあります。また、カラーページを多く使用する場合、コストが高くなることもあります。装丁にこだわりたい場合は、POD出版社の対応範囲を事前に確認し、希望の仕上がりに近い選択肢があるか検討することが大切です。
仕上がりに差がでる場合がある
POD出版は発行部数に合わせて印刷・製本を行うため、オフセット印刷などの大量印刷と比べると仕上がりに若干の違いが出ることがあります。品質の均一性を求める場合には、POD出版の特徴を理解し、試し刷りを依頼したり追加費用で印刷の品質を上げられないか担当者に聞いてみたりするといいでしょう。
書店販売は難しい
プリントオンデマンド出版の場合、販売先はオンラインのみの場合がほとんどです。書店販売ができるプリントオンデマンド出版の場合でも、書店側から注文があった場合のみの対応となり、書店に常時本を置いてもらえる可能性は低いです。書店販売にも力を入れたい場合は、出版社から書籍を販売してもらう方法や自費出版する方法など、プリントオンデマンド出版以外の方法を模索した方が良いでしょう。
まとめ
プリントオンデマンド出版は初期費用と在庫を抱えるリスクを抑えられる出版サービスです。制作コストが安く済むため、趣味から発展させる場合でも気軽に書籍の出版に挑戦できます。しかし、ハードカバーで表紙帯がついているような本格的な製本や書店販売はオンデマンド出版では難しいというデメリットもあります。
趣味からの挑戦に不安を抱えている場合は、好きなことをビジネスにした人たちのケースを見てみたり、趣味で起業する方法を調べてみたりするといいでしょう。プリントオンデマンド出版社のそれぞれの特徴を照らし合わせて、自分に合った方法で書籍出版を目指してください。
よくある質問
POD出版とは?
POD(Print On Demand)出版とは、オンデマンド出版とも呼ばれ、注文に応じて1部から必要な部数のみ印刷・製本できる出版サービスです。
プリントオンデマンド(POD)出版の費用の目安は?
0円から出版できますが、サポートが手厚い出版社だと30万円程度かかります。また、書籍の販売価格を著者が設定できるPOD出版社では、印刷費用が設定されている場合があります。
文:Ryotetsu