スマートフォンで簡単に支払いができるモバイル決済サービスが、ビジネスシーンでも日常生活でも急速に普及しています。PayPay、LINE Pay、モバイルSuicaなど、さまざまな決済サービスが登場し、現金やカードを持ち歩かなくとも買い物ができる社会が到来しているといえるでしょう。
モバイル決済は、事業者と顧客双方にとって便利で魅力的な決済手段です。この記事では、モバイル決済の種類や導入のメリット、おすすめのモバイル決済について解説し、圏内シェアの多いモバイル決済サービスについてもランキング形式でご紹介します。
モバイル決済とは?
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モバイル決済とは、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどのモバイル端末を使用して行う非接触型の電子決済方法です。スマホ決済とも呼ばれ、QRコード決済、非接触IC決済(NFC)、キャリア決済など、さまざまな方式があり、利用者は現金やカードを持ち歩く必要なく、安全かつスピーディーな支払いができます。モバイル決済を受け付ける店舗は、専用のクレジット端末機やアプリを使って支払いを受け付けます。
経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに約40%にするという目標を設定し、実現に向けた取り組みを推進しています。2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%となっており、モバイル決済の利用者は着実に増えてきています。
モバイル決済サービスの種類3つ
モバイル決済サービスには、大きく分けて「QRコード決済」、「非接触IC決済(NFC)」、「キャリア決済」の3種類があります。
1. QRコード決済
QRコード決済は、専用アプリをスマートフォンにインストールし、QRコードやバーコードを読み取って決済を行う方法です。
具体的なサービスとしては、「PayPay」や「LINEPay」、「楽天ペイ」などがあり、あらかじめクレジットカードや銀行口座を登録しておくことで、手軽に決済が行えます。方式には以下の2つがあります。
- ユーザースキャン方式:利用者が店舗のQRコードを読み取る
- ストアスキャン方式:店舗側が利用者のQRコードを読み取る
2. 非接触IC決済(NFC)
NFCチップを内蔵したモバイル端末に電子マネーやクレジットカードなどの決済情報を登録し、端末をリーダーにかざすだけで決済ができる方法です。
具体的なサービスとしては、「Apple Pay」や「Google Pay」、「モバイルSuica」などがあり、方式には以下の2つがあります。
- プリペイド方式:事前にチャージした金額から支払い
- ポストペイ方式:後払いで決済(クレジットカード連携)
3. キャリア決済
キャリア決済とは、ソフトバンク、docomo、auなどの各携帯電話キャリアのIDとパスワード認証を通じて、商品の購入代金を携帯電話料金と一緒に支払う決済方法です。
具体的なサービスとしては、「d払い」や「auかんたん決済」、「ソフトバンクまとめて支払い」などがあります。
キャリア決済の大きな利点は、クレジットカード情報の入力が不要なため、クレジットカードを持っていない人でも利用可能であるという点です。一方で、利用できる月間の上限額がクレジットカードと比べて低く設定されているため、高額な買い物には向いていません。
モバイル決済導入のメリット
モバイル決済を導入することで、店舗側と顧客側の双方に多くのメリットがあります。以下にその主な利点を解説します。
店舗側のメリット
業務効率の改善
現金管理や釣り銭の準備が不要になり、レジ業務を効率化できます。これにより、従業員の負担軽減と顧客対応の向上が期待できます。
顧客満足度の向上
支払い速度が向上しレジの待ち時間が短縮されるほか、決済方法の選択肢が増えることで顧客満足度が高まります。
安全性の向上
現金を扱う機会が減ることで、盗難や紛失リスクが軽減します。また、決済代行サービスを介し暗号化技術を使用して決済を行うため、不正利用も防ぎやすくなっています。
顧客側のメリット
利便性の向上
スマートフォン1台で支払いが完結し、現金やカードを持ち歩く必要がありません。特に小銭の受け渡しが不要な点は、日常の買い物における負担軽減につながります。
特典やポイントの活用
モバイル決済アプリでは、キャッシュバックやポイント還元、割引クーポンなどの特典を提供している場合が多く、顧客はよりお得に買い物ができます。
スムーズで素早い支払い
NFCやQRコード技術を使用することで、支払いが数秒で完了するため、レジでのストレスが減り、快適な買い物体験が得られます。
感染リスクの軽減
現金のやり取りを減らすことで、接触機会が減るため、感染症予防の観点でもメリットがあります。
モバイル決済導入時の選定ポイント
モバイル決済を導入する際は、自社のビジネスに最適なサービスを選ぶことが重要です。以下のポイントを参考に、適切なモバイル決済方法を選定しましょう。
1. 決済手数料と振込手数料
モバイル決済サービスの利用には、以下の手数料を考慮する必要があります。
- 決済手数料:売上ごとに発生する手数料。相場は約3.24~3.74%ですが、長期的な利用では小さな差が大きなコストにつながる可能性があります。
- 振込手数料:売上金が自社の銀行口座に振り込まれる際に発生する費用。相場は約200円〜300円ですが、一部サービスでは無料の場合もあるため、事前に確認することが重要です。
2. 入金サイクル
入金サイクルとは、決済から売上金が自社口座に振り込まれるまでの期間です。資金繰りに影響するため、なるべく短い入金サイクルを選ぶことをおすすめします。
- 短期:翌営業日入金(例: 楽天ペイ)
- 長期:数日~数週間(場合によっては資金繰りに注意が必要)
3. 対応している決済手段の種類
顧客が求める決済手段を把握し、対応しているサービスを選びましょう。消費者庁の「キャッシュレス決済の動向整理」によれば、若年層ではQRコード決済、中高年層では電子マネーの利用率が高い傾向があるということがわかっています。確認すべきポイントは以下です。
- QRコード決済(PayPay、LINE Payなど)の対応状況
- 非接触IC決済(Apple Pay、Google Payなど)の対応状況
- キャリア決済やモバイルウォレットの対応状況
4. サポート体制の充実度
導入後のトラブルを迅速に解決できるよう、サポート体制が充実しているサービスを選ぶことが大切です。特に、以下のサポート内容をチェックしておきましょう。
- 導入時の技術サポート
- トラブル発生時の対応スピード
- 電話やチャットでの問い合わせ対応
おすすめのモバイル決済ランキング
以下は、決済手数料、導入コスト、サポート体制、対応する決済方法などを総合的に評価したおすすめのモバイル決済サービスランキングです。事業の規模やニーズに合わせて最適なサービスを選びましょう。
1. スマレジ
初期費用:スマレジ・PAYGATE端末代 39,600円(税込)※キャンペーン期間中0円
月額費用: 3,300円(税込)
決済手数料:2.00%〜
振込手数料:要問い合わせ
入金サイクル:クレジットまたは電子マネー売上:月2回、QRコード決済売上は月1回
決済サービス:クレジットカード、QRコード決済、電子マネー、非接触IC
特徴
- iPadやiPhoneを用いた高機能なクラウドPOSレジも提供しており、連携も可能
- クレジットカード、電子マネー、QRコード決済、非接触IC決済に対応
- プリンターやカードリーダーが内蔵されており、別途オプション品を購入する必要なし
おすすめポイント
サポートサイトや電話窓口を通じた365日体制のサポートがあり、特にモバイル決済を迅速に導入したい小規模から中規模のビジネスに最適。
2. AirPay(エアペイ)/Airペイ QR
初期費用:0円(ただし自前のiPadまたはiPhoneが必要)
月額費用:無料
決済手数料:2.95%~
振込手数料:無料
入金サイクル:月3回(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行は月6回)、QRコード決済は月1回
決済サービス:クレジットカード、電子マネー、QRコード決済
特徴
- 初期費用と月額費用が無料で導入しやすい
- クレジットカード、電子マネー、QRコード決済(PayPay、LINE Payなど)に対応
- みずほ銀行や三菱UFJ銀行利用時は、入金サイクルが月6回で迅速
- 無料のPOSレジアプリ「Airレジ」で、注文の入力から会計までが一括で可能
おすすめポイント
小規模事業者や初めてモバイル決済を導入する店舗に最適。
3. Square(スクエア)
初期費用:Squareターミナル端末代 39,980円(税込)
月額費用:無料
決済手数料:3.25%〜
振込手数料:無料
入金サイクル:週1回(みずほ銀行、三井住友銀行は翌営業日)
決済サービス:クレジットカード、QRコード決済、電子マネー、非接触IC(NFC)
特徴
- クレジットカード、電子マネー、QRコード決済、非接触IC決済(NFC)など、幅広い支払い方法に対応
- 内蔵プリンター付きで、レジ周りをコンパクトにまとめられる
- みずほ銀行や三井住友銀行では翌営業日入金可能でキャッシュフローが改善できる
おすすめポイント
複数の決済手段を1台で管理したい店舗や中規模以上の事業者におすすめ。
4. STORES決済(ストアーズ決済)
初期費用:端末代 19,800円(税込)
月額費用:無料
決済手数料:1.98%〜
振込手数料:無料(自動入金または売上10万円以上は無料)、または200円(手動入金で売上合計が10万円未満)
入金サイクル:手動入金:翌1〜2営業日
自動入金:月1回
決済サービス:クレジットカード、QRコード決済、電子マネー
特徴
- QRコード、クレジットカード、電子マネーに対応
- 自動振込オプションで入金手続きを簡素化
- 電子マネーの決済手数料が業界最安水準の1.98%
- 業種特化型のPOSシステムとの連携が容易
おすすめポイント
安定した売上が見込まれる店舗や、特定の業種に特化した運営を行う事業者におすすめ。
5. Paypay(ペイペイ)PayCAS Mobile (ペイキャスモバイル)
初期費用:0円〜
月額費用:1,980円
決済手数料:2.48%~(中小企業応援プログラム)
振込手数料:無料
入金サイクル:月2回
決済サービス:クレジットカード、電子マネー、QRコード決済
特徴
- 日本国内でのQRコード決済シェアが高く、幅広い層に利用されている
- 店舗独自のポイントプログラムとも併用可能
- 導入から運用までのサポートが充実
おすすめポイント
集客力を重視する店舗や、低コストで導入したい事業者に最適。
6. 楽天ペイ
初期費用:楽天ペイ ターミナル端末代 38,280円(税込)※キャンペーン利用で無料
月額費用:無料
決済手数料:3.24%〜
振込手数料:1回330円(楽天銀行は無料)
入金サイクル:依頼した3日後、または3日後・月1回・月2回いずれかの自動入金(楽天銀行は翌日・月1回・月2回いずれかの自動入金)
決済サービス:クレジットカード、電子マネー、非接触IC
特徴
- QRコードや非接触IC決済が利用可能
- 楽天ポイントの還元や利用が可能で、顧客満足度を向上できる
- 楽天銀行口座を利用すれば、土日祝日も含め365日翌日入金が可能
おすすめポイント
楽天ユーザーをターゲットにしたい店舗や、キャッシュフローを重視する事業者に最適。
まとめ
スマートフォン一つで手軽に決済ができるモバイル決済は、その利便性から顧客と事業者双方にさまざまなメリットをもたらします。また、幅広い決済方法を提供することで、新たな顧客層の獲得や、顧客満足度の向上も可能です。
また、モバイル決済は実店舗だけでなく、ECサイトにおいても活用できます。自社のECサイトを構築する際には、Shopifyを利用することで、QRコード決済や非接触IC決済、キャリア決済など、多種多様なモバイル決済を簡単に導入することができます。これにより、顧客が使いやすく、かつ、事業者にとって効率的なECサイトを作ることができるでしょう。
よくある質問
NFCモバイル決済とは?
NFCモバイル決済とは、近距離無線通信(NFC)技術を使用し、非接触ICチップが内蔵されたモバイル端末を用いた決済方法のことを指します。スマートフォンやタブレットなどのNFC対応端末をリーダーにかざすだけで、素早く安全な支払いが可能です。「Apple Pay」や「Google Pay」、「モバイルSuica」などが代表的なサービスです。
日本のモバイル決済シェアは?
経済産業省によると、2023年のモバイル決済を含むキャッシュレス決済の比率は39.3%で、年々増加しています。
電子マネーとモバイル決済の違いは?
電子マネーとモバイル決済の違いは支払い方法にあります。 電子マネーは基本的に利用者が事前にチャージするプリペイド式で、その残高を使用して商品やサービスを購入します。一方モバイル決済は、プリペイド式の前払いだけでなく、クレジットによる後払いも選択できます。
モバイル決済の安全性は?
モバイル決済は、暗号化技術や生体認証などの最新のセキュリティ技術を採用しており、従来の現金取引やカード決済よりも安全性が高いとされています。また、紛失時にも遠隔操作でロックできるため、不正利用のリスクも最小限に抑えられます。
店舗での導入費用はどのくらい?
導入費用は選択する決済サービスや必要な機能によって異なりますが、初期費用は端末代のみ、月額費用は無料といったサービスもあります。決済手数料は一般的に3.24%~3.74%程度です。
文:Yoshiaki S. Ikeda