eコマースのユーザーエクスペリエンス(UX)を改善することは、トラフィックを増やすことを必要とせずにオンラインストアの収益を増やす方法のひとつです。
一方、考えられることとは相対的に、eコマースの優れたUXデザインは、ウェブサイトの視覚的なデザイン以上のことを考慮する必要があります。
オンラインストアのUXデザインとは、最初のクリックから購入に至るまでのユーザーの購入プロセスを通じて、ユーザーとどのようにコミュニケーションを取り、サポートし、購入を促すのか、全体を指します。
今回は、eコマースのためのUXデザインの効果的な活用方法6選から、避けるべきよくある落とし穴、そしてUXデザインに気を付けたいストアの分野を特定する方法について学びましょう。
eコマースにおけるUXデザインとは?
eコマースにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)とは、オンラインストアでシームレスな楽しいショッピング体験を作り出すアプローチです。ウェブサイトのデザイン、ナビゲーション、検索機能の最適化、そして顧客のニーズを予測してチェックアウトプロセスを簡略化することなどが含まれます。
eコマースのUXデザインの目的は、ユーザーの負担を軽減し、エンゲージメントを高め、結果として売上を増加させることです。
eコマースにおけるUXデザインの範囲
ウェブサイトのデザインはUXデザインにおいて重要な役割を果たしますが、考慮すべきことは他にも数多くあります。eコマースのためのUXデザインのデザイナーは、ウェブサイトには次のような機能を検討します。
- 読み込み時間:ウェブサイトは、デバイスを横断して迅速かつ一貫して読み込まれるか?
- ナビゲーションメニュー:メニューはユーザーの目線を考慮して構成されているか?
- アクセシビリティ:オンラインストアは最新のアクセシビリティ基準を満たしているか?
- ジャーニーマッピング:ユーザーがリンクやボタンをクリックした時に正しい場所に誘導されるか?
- モバイルフレンドリー:ストアはモバイル端末で適切に機能するか?
- コピーライティング:ウェブサイトのメッセージは、効果的に情報を伝え、ブランドを表現しているか?
eコマースのUXデザインにも独自の優先事項があります。UXデザインのデザイナーは顧客のサポーターとなり、最も満足のいくショッピング体験を視覚化して実装します。カスタマージャーニーは、顧客がウェブサイトにアクセスする前からすでに始まることがあります。
小規模スナックのeコマース企業として成功を収めている「Bull and Cleaver」の創業者ダニエル・パトリシオ氏によると、eコマースストアのUXデザインに関する最大の誤解は、「ホームページがユーザーエクスペリエンスの始まりを表す」ということです。
パトリシオ氏は次のように述べます。「ユーザーは商品ページやブログ投稿に直接アクセスすることがあります。Bull and Cleaverでは、サイトで最もアクセスされるページは、ビルトンとビーフジャーキーの違いに関するブログ投稿と、広告のランディングページである商品ページです。」
eコマースのためのUXデザインの効果的な活用法6選
上述の定義を念頭に置いて、ユーザーエクスペリエンスを洗練させ、スムーズなカスタマージャーニーを作り出すための効果的な方法6つをご紹介:
- 機能を最優先する
- ウェブページではなく販売ファネルを構築する
- 注意と意図を引きつける
- ユーザー重視のメッセージを書く
- オンラインストアのナビゲーションを直感的にする
- モバイル端末でのeコマースのUXデザインを常に考慮する
1. 機能を最優先する
実際のところ、ウェブサイトのスタイリッシュさとコンバージョン率の間には、ほとんど相関関係がありません。実際、派手なデザイン要素はユーザーを混乱させたり、注意を逸らせたりしてしまうことがあり、PCやモバイル端末が古いモデルの場合はパフォーマンスを制限してしまうことがあります。
この原則を最もよく体現しているのはAmazonです。毎日何百万もの買い物客にサービスを提供しているにもかかわらず、マーケットプレイスは常にページの読み込み時間やナビゲーションの容易さなどの機能的側面を優先し、フォントや色、インタラクティブな要素などのデザイン面の特性は後回しにします。
「一般的に、派手な機能には注意が必要です」、とBull and Cleaverのダニエル・パトリシオ氏は言います。「高パフォーマンスの素晴らしいウェブサイトを作った後、Upworkの開発者が追加した機能を1つによって壊れてしまうことがあります。この問題において画像スライダーは最も悪い例でしょう。」
パトリシオ氏はこうも述べます。「ウェブサイトにおいて、他のデザイン機能が本質的に悪いわけではなく、スピードはひとつの特徴であり、コンバージョンの鍵です。危険なことは、スキルの低い開発者が実装してウェブサイトの速度が遅くなってしまうことです。」
優れたeコマースのウェブサイトの中には、あらゆるユーザーストアに正常に移動してアクセスできるようにするために、インタラクティブな機能やダイナミック(動的)な機能ではなく静的な画像を選択しているものもあります。例として「Allbirds」のホームページをご覧ください。
2. ウェブページではなく販売ファネルを構築する
eコマースのUXデザインの目標のひとつは、ウェブサイトを「セルフサービス」にすることです。つまり、顧客がサポートなしでアクセスし、閲覧し、チェックアウトすることができるということを意味します。
直感的なオンラインストアは、バウンス率が低く、カゴ落ち(カート放棄)を減らします。ストアの直感性を高めるためには、人々がウェブサイトに到達した理由や、どこからアクセスしてきたのかを考慮しましょう。
ウェブサイトをアクセスする人は、例えば次のような人々かもしれません。
- 広告をクリックしたソーシャルメディア(SNS)ユーザー
- Google検索でウェブサイトを見つけた人
- CTA(行動喚起)に反応したメール購読者
- 直接ウェブサイトに来た最近の顧客
成功したビジネスではこのような複数の理由や顧客の期待を把握してUXデザインを作成して販売ファネルを構築し、販売チャネルやマーケティングキャンペーンを開始し、その後にウェブサイトに移行します。
「eコマースのUXデザインを活用して、より多くのコンバージョンを実現する最良の方法のひとつは、販売ファネルを使用することです。」とパトリシオ氏は言います。「SEO(検索エンジン最適化)を考えるとよいでしょう。ウェブサイトを作成する前に、自分自身にきっとこう問い掛けるはずです。『どのような人が検索しているのか?』『彼らは何を探しているのか?』『彼らが必要とするコンテンツは何なのか?』『それが購入に繋がるのはどこか?』」
eコマースストアの一般的な販売ファネルは、ソーシャルメディア広告からウェブサイトのランディングページにユーザーを誘導することです。下記はポータブルバッテリー会社「Sharge」のソーシャルメディア広告が、特集された商品の詳細に誘導するランディングページへ視聴者を導く様子を示しています。
このランディングページがeコマースのUXデザインとして効果的である理由は、ユーザージャーニーを考慮して作成されているからです。
ページの内容は、ユーザーが過去にウェブサイトのホームページを訪れたことがあるとは想定しておらず、ソーシャルメディア広告に掲載された情報以外はブランドについて何も知らないことを前提としています。加えて、ページが次のことを行っています。
- CTAボタンと価格を上部に配置し、意欲的な訪問者が簡単に購入できるようにしている
- 商品の使用例やメリット、技術的な特徴を含めている
- 顧客レビューの形で社会的証明を取り入れている
- 顧客により適した他の商品を推奨する
3. マーケティングで注意と意図を引きつける
eコマースのUXデザインにおいて、マーケティングはユーザージャーニーの始まりとしばしば見なされます。
マーケティングの段階でユーザーの心に入る方法のひとつは、コンテンツが注意を引いたり意図を引き出したりするのかを把握することです。
- 注意を引く:受動的に閲覧しているため、提供している商品やサービスを探しているわけではないユーザーを考慮します。動画広告やソーシャルメディア投稿を通してユーザーにそのことを気づかせることができれば、ユーザーの関心を育むことができます。オーディエンスのセグメンテーションとターゲティングを使用して、提供しているサービスに対する関心を示す特定の特性を持つユーザーに焦点を当てることができます。
- 意図を引き出す:提供している商品やサービスを積極的に探しているユーザーを考慮します。その意図は、検索エンジンに入力する語句に反映されます。キーワード調査を使用すると、これを
- よりよく理解して、コンテンツやウェブサイトのSEOをそれに一致させることができます。
下記は、犬用品のオンラインストア「Ruffwear」が、幅広い犬の飼い主層から、これら2つの異なるタイプのユーザーを引きつける方法を示しています。
このFacebook広告で、Ruffwearは画像カルーセルを使用して、受動的にスクロールしているユーザーの注意を引きつけます。閲覧者は左から右、上から下に読むのではなく、最初に大きなテキスト(「犬用の冬用ジャケット」)に目が行きます。
文字のサイズを通じてメッセージの階層を確立し、期待する順序で情報に注意を引きつけます。また、CTA(行動喚起)のメッセージでリンク先への期待値を設定します(Ruffwearは「今すぐ購入」を使用して犬用ジャケットのコレクションページに誘導します)。
検索エンジンからアクセスしたユーザーの意図に応えるためには、Ruffwearは「犬用の冬用ジャケット」というキーワードに一致するコンテンツを作成します。ページタイトルが検索とどのように似ているのか、ページのメタディスクリプションには関連する語句が含まれているのか、ということに注目しましょう。
ユーザーが検索する意図に一致すればするほど、関連する検索結果に表示される可能性が高くなります。
4. ユーザー重視のメッセージを書く
自動的な行動である呼吸は、何かが呼吸を困難にさせるか注意を向けさせない限り、その行為を意識することはないでしょう。
eコマースのウェブサイトのナビゲーションもこれと同じように自動的なアクティビティでなくてはなりません。商品説明がユーザーの注意を逸らせてはならず、ナビゲーションの指示がユーザーの購入を妨げてないことが大切です。
優れたUXデザインのメッセージ(コピー)は、呼吸を詰まらせるものではなく、心を落ち着かせてリフレッシュさせ、目立たずにその目的を果たします。次のようなオンラインストアのユーザーエクスペリエンスを向上させるためのコピーライティングのアドバイスを試すことをお勧めします。
- リンクやボタンがどこに導くかを説明する言葉を使用する。
- ユーザーが購入ジャーニーを続けるための目印を提供する。
- ユーザーにとって欠けている可能性のある情報を追加する。
- リンクに有益なアンカーテキスト(サイト内に設置するリンク付きの文章)を書く。
- 「詳細を見る」、「カートに追加」などのCTA(行動喚起)には適切な言葉を使用する。
- 顧客が共感しやすい口調で話す。
- 重要な情報を分かりやすい話し言葉や箇条書きの形式で含める。
- ページやチャネル全体で情報の連続性を確保する。
書き始める前に、ターゲットユーザーや彼らの目的、ビジネスの目標についてできるだけ多く把握すると、ユーザーの期待を理解して満足させることができます。
言葉を減らす
ウェブサイトの可読性を高める簡単な方法は単語数を減らすことです。簡潔で適切に選ばれた言葉によって、ウェブサイト訪問者は必要な情報をできるだけ早く見つけ出すことができます。
サイトの中で言葉を節約することが有益な場所のひとつは、ランディングページのファーストビュー(スクロールせずに表示される)部分です。ページの上部であるこの箇所では、多くの場合、ブランドがユニークセリングプロポイント(独自の販売提案)や主要な商品情報を伝える場所です。
空気清浄機の会社である「Molekule」のホームページを例に挙げると、ページにアクセスして数秒以内に、ユーザーはこのブランドについて下記のことが分かります。
- その製品で受賞歴があること
- 汚染物質を収集するだけではないユニークな空気清浄機を製造していること
- 4つ星以上のレビューがあること
- 650ドル〜1,300ドル(約10万円〜20万円)の範囲で商品を販売していること
- 100%返金可能な30日間のトライアルを提供していること
- PECOと呼ばれる独自の技術を持っていること
UXデザインのコピーをワイヤーフレーム化する
UXデザインのコピーとランディングページのレイアウトをホワイトボードや紙を使ってプランニングしたり、「Miro」のような無料のワイヤーフレームツールを使用したりすることができます。
Miroには、ユーザージャーニーやウェブサイトのアーキテクチャを視覚化し、コピーをレイアウトするためのテンプレートが含まれています。
💡 プロのアドバイス:たったひとつの単語や文がユーザーエクスペリエンスに与え得る影響を過小評価しないようにしましょう。
5. オンラインストアのナビゲーションを直感的にする
ユーザビリティ専門家として著名なスティーブ・クルグ氏は、著書「Don’t Make Me Think」の中で、「一つ一つのクリックが無意識で明確な選択である限り、何回クリックをしなければならないかは重要ではありません。」と記しています。
ウェブサイトのコピーと同様に、サイトをほぼ自動運転でナビゲートできることが理想です。普段、何をクリックするのか、なぜクリックするのかということを積極的に考えることはなく、最も早くニーズを満たす行動を取るだけです。
直感的なナビゲーションは、ウェブサイトのメニューに含まれるリンク以上の力があります。ユーザーが意識していないニーズを予測し、ウェブサイト全体で自主的な体験(エクスペリエンス)を実現する必要があります。
「ホームページでは商品、ページ、コレクションに簡単にアクセスできるようにしましょう。」と「Bull and Cleaver」の創業者ダニエル・パトリシオ氏はアドバイスします。「ホームページに実用性があることが重要でしょう。ブランドを美しくするためだけではありません。スクロールやクリックの度にユーザー行動を予測する必要があります。」
メニューのレイアウト
eコマースのウェブサイトのナビゲーションに関しては、面倒な作業はメニューによって行われます。
サイトを閲覧しようとしている新しい訪問者は、最初に上部のナビゲーションメニューを試す可能性があります。そこでは、サイズ、商品、カテゴリ別にショッピングするためのオプションが表示される必要があります。人気の商品を強調したり、商品の選択をパーソナライズするための質問を提供したりして商品をお奨めすることも可能です。
「Inkbox」は、顧客が豊富なナビゲーションのオプションを通して膨大な数の商品をナビゲートできるようにしているテンポラリータトゥーの会社です。ウェブサイトの特徴は次の通りです。
- 「お気に入りを見つけましょう!」というCTA(行動喚起)を含む検索バーのスティッキー(固定)ヘッダー。ユーザーがスクロールすると上部のメインメニューは消えますが、検索バーは残ります。
- 一部の項目をクリックするとサブメニューが開き、仕組みや会社概要ページへの情報リンクも表示されるナビゲーションメニュー。
- サイズを選択する重要な決定要素として考慮しているユーザー向けに、サイズに基づいたコレクションリストを表示。
メニューにある「Shop」をクリックすると、明確にラベル付けされたオプションと、ミステリーバンドル(秘密の招待状)やタトゥーに関する質問などの「あなたのためだけに選びました」というカテゴリーが表示されます。
ユーザーがメニューからリンクをクリックすると、特定のフィルターが適用された適切なページ、商品、コレクション、またはショップ検索に移動します。
そこから、フィルターや並べ替えのオプションを使用して検索を絞り込むことができるほか、ナビゲーションメニューに戻って他のものを閲覧することもできます。
サイト全体のためのフッターナビゲーションには、注文に関するサポートを求めている顧客、プレスキットを探しているジャーナリスト、ブランドと提携したい潜在的なパートナーなど、少数のユーザーにのみ関連する不要なリンクが含まれています。
例えば、お問い合わせページは、すべてのユーザーにアクセスされたいものではなく、また、顧客がカスタマーサポートに問い合わせる前には、できればよくある質問ページに誘導したいことでしょう。Inkboxは、これらの優先事項に基づいてフッターメニューを戦略的に編成し、追跡、配送、返品ポリシーに関する質問に対するセルフサービスオプションを提供しています。
6. モバイル端末でのeコマースのUXデザインを常に考慮する
多くのeコマースストアには、PCよりもモバイル端末からの訪問者が増えています。これは、スマートフォンでの買い物とPCでの買い物の間にある多くの違いに対応する必要があることを意味します。
スマートフォンでは、クリックではなくタップし、要素は縦に整理され、ナビゲーションメニューはハンバーガーボタン(3本の横線が並ぶアイコン)の中に隠れています。
Shopifyでの販売者の場合、すべてのテーマにはレスポンシブデザインがあり、PC、タブレット、スマートフォンの画面に最適なユーザーエクスペリエンスを自動的に作成して適応します。
今日の世界ではモバイルトラフィックがウェブ全体の約半分を占めているため、オンラインストアを小さい画面向けにデザインすることを考慮することが重要です。
Shopifyのテーマの編集では、変更を加える際にPCとモバイルのビューを切り替えることができます。
モバイル端末での支払いは、オンラインショッピングにおける最大の障壁の一つでした。小さなキーボードで何度もタップして配送先の情報やクレジットカード情報を入力すると、ショートメッセージが受信されるだけで、カートを放棄する原因となることがありました。
現在では、Shop Pay、Apple Pay、Google Pay、Meta Pay、PayPalなど、非常に多くのモバイル決済オプションが利用できるようになり、ユーザーはすでに配送情報や支払い情報がすでに入力されている迅速なチェックアウトのオプションを利用できます。
eコマースのUXデザインによくある避けるべきミス
ここまででUXデザインの6つの基礎を学び、eコマース用ウェブサイトの要素がユーザーエクスペリエンスを妨げていることに気づきやすくなるかもしれません。
リンク切れ、直感的でないナビゲーション、分かりづらいコピーなど、オンラインストアに問題がないか精査することはeコマースのユーザーデザインの継続的な課題のひとつです。しかし、商品ページの構を深く掘り下げる前に、まずはUXデザインにおいて次のような一般的な落とし穴を探すことから始めましょう。このチェックリストを使用してサイトを精査し、迅速なUXデザイン改善を行ってください。
eコマース用ウェブサイトに次のものが含まれているか、自問してみましょう。
- 遅い要素はありませんか?
- 配慮のないコピーはありませんか?
- 強制するようなユーザージャーニーではありませんか?
- ページが間違った画面用にデザインされていませんか?
遅い要素
人気のあるデザイントレンドであっても、コンバージョンを増加させるという最終的な目標を妨げてしまう場合、芳しくないUXデザインの例となる可能性があります。これは、デザイン要素がデータを多く消費し、ページの読み込み時間を増加させる場合に特に当てはまります。次のようなページデザインの要素に注意しましょう。
- パララックススクロール:不必要に実装すると気を散らしてしまう可能性があります。
- 自動カルーセル:読み込みが遅く、読みづらく、CTA(行動喚起)としてのパフォーマンスを低下させてしまうことがよくあります。
- ゴーストボタン:クリックできないように見えることが多く、見落とされてしまう可能性があります。
- 動画の背景:注意を逸らせたり、読み込み時間を増加させてたりしてサイトの速度を低下してしまう可能性があります。
配慮のないコピー
ユーザージャーニーやニーズを認識していない配慮のないコピーの一般的な例は、ウェブサイト上で情報を一度しか提供せず、ユーザーが他の場所にアクセスした場合、その情報を検索することを期待することが挙げられます。
例えば商品ページの場合、多くのユーザーは広告や検索エンジンの語句(クエリ)を介してアクセスしていて、ウェブサイトの他のページは見ていない可能性があることを前提とすることが重要です。
会社概要ページを見たことも、ブランドストーリーの紹介動画を観たことも、製造へのコミットメントや配送ポリシーに関する情報も読んだことがない潜在的な顧客の視点を想像してみましょう。その人が自信を持って購入するために必要な情報は何であるかを考慮することが大切です。
「Chubbies」の例を挙げると、このブランドがサイトの他の場所にすでに存在する情報のことをどのように繰り返しているかが分かります。
- 還元ポリシーの概要
- 使用できる割引コードを顧客に思い出させる
- 関連商品を提示する
強制するようなユーザージャーニー
人為的なユーザージャーニーを強制することは避けなくてはいけません。代わりに、最も人気のある既存のページやコンテンツを強化しましょう。
販売者となってすぐの場合、ホームページや商品ページを慎重にデザインすることに多くの時間を費やし、その後、コストを掛けた広告、メールによるキャンペーン、検索エンジンの最適化(SEO)を行ってトラフィックを促進しようとすることがあるでしょう。一方、経験豊富な販売者の場合、アクティビティが自然に蓄積されているウェブサイトのページや箇所にリソースを割り当てます。
例えば、外部の検索エンジンから特定の商品ページに直接アクセスしているユーザーが多いことに気づいた場合、そのページが重要であることを示す明確なサインです。
ユーザーをホームページにリダイレクトしようとするのではなく、この商品ページを最適化します。商品説明が明確で説得力があることを確認し、高品質の画像を追加し、「カートに追加」ボタンが目立つようにし、配送や返品ポリシーなどの重要な情報をページに直接含めるようにしましょう。
同様に、分析の結果、ユーザーが会社概要ページをほとんどアクセスしないことが分かった場合は、そのページを再デザインするためにリソースを投資する必要はありません。ホームページや人気の低いページに過剰に気に掛けることは、eコマースのUXデザインにおいては不必要に困難でコストの掛かるアプローチです。
間違った画面用にデザインされたページ
モバイルフレンドリーなユーザーエクスペリエンスがほとんどのeコマースストアにとって重要であることは確かですが、PCユーザーを犠牲にしてモバイルデザインを強調し過ぎないことが重要です。
よくある落とし穴は、特定のページがPCユーザーを惹きつけている場合でも、このモバイルファーストアプローチをすべてのページに一貫して適用することが重要です。
例えば、商品仕様を表示して比較するために大きな画面を好むPCユーザーが頻繁にアクセスする詳細な商品比較ページがあるとしましょう。このような場合、モバイルファーストデザインを強制するのはよくありません。代わりに、このページはPC表示用に最適化する必要があります。これは、商品を並べて比較するレイアウトを使用し、より大きな高解像度の画像を組み込み、ドロップダウンメニューなどのインタラクティブな要素がPC上でスムーズに動作することを確認することを意味します。
eコマースサイトのUXデザインの問題を見つけて解決する方法
ここまでで解説した原則は出発点としては適切ですが、商品や顧客と同様に、より複雑なUXデザインのニーズや問題に直面することがあるでしょう。これらのニーズを見つけて問題を解決するには、診断プロセスが必要です。
次は、ユーザーエクスペリエンスの一定量のフィードバックを定期的に収集するための一般的な方法をいくつか紹介します。このようなどデータやツールは、訪問者のエンゲージメントが低下しているポイントや、ユーザーの注意を引いているウェブサイトの場所を特定するのに役立ちます。
セッションリプレイ
多くのeコマース小売業者は、「Lucky Orange」などのセッションリプレイツールを使用して、ウェブページでアクティビティーを行う訪問者を記録します。実際のユーザー行動を観察すると、ユーザーエクスペリエンスの質に関する確かなインサイトを得ることができます。
オンラインストアでアクティビティを行うユーザーを観察するときは、停止、後戻り、素早いクリックなどの行動を探しましょう。
停止
ユーザーがスクロールを止めたり、ページ要素で停止したりした場合、それはユーザーの注意が引き付けられたことを示しています。これは、ユーザーが有益な動画を視聴するために立ち止まった場合などの、肯定的なサインであることもあれば、メニューの操作が難しいと感じてユーザーが停止した場合なの否定的なサインかであることもあります。
後戻り
ユーザーが前のページに戻る「後戻り」は、混乱や必要な情報を見つけるのが難しいことを示している可能性があります。これは、ナビゲーションが不明瞭であったり、情報が不足していたり、複雑過ぎるチェックアウトのプロセスが原因である可能性があります。
素早いクリック
特に同じ場所での素早いクリックは、イライラや混乱を示している可能性があります。これは、ボタンが反応しない、指示が不明確である、またはページの読み込みが遅いことが原因である場合があります。
ページ分析
「Google アナリティクス」などのeコマース分析ツールは、サイト上のユーザー行動に関する貴重なインサイトを提供します。これらのツールは、直帰率、各ページでの滞在時間、ユーザーがストア内を辿る経路などの指標を表示します。このデータを分析すると、パフォーマンスが低下しているページや混乱を引き起こしているページを特定して、必要な調整を行うことができるようになります。
ユーザーテスト
ユーザーテストを行うサービスを雇ってウェブサイトに関する質の高いフィードバックを収集したり、これまでサイトを使用したことがない知人にテストを依頼したりすることができるでしょう。「割引コードを取得して、1万円の買い物でチェックアウトしてください」と指示を与え、被験者がその指示に従おうとする様子を観察します。
【ボーナスアドバイス】ユーザーに思考プロセスを声に出して説明してもらいましょう。
5秒テスト
よく行われるユーザーテストの一つは、フォーカスグループにサイトを短期間見せて、サイトのブランドメッセージと価値提案が明確かどうかを確認することです。ストアに5秒間アクセスした後、グループにそのサイトについて覚えていることを尋ねます。
被験者が主なメッセージや価値提案を思い出せない場合は、影響を高めるためにサイトのデザインやコンテンツを簡素化する必要があることを示している可能性があります。
ヒートマップ
「Hotjar」のようなヒートマップツールをオンラインストアに追加すると、ユーザーのクリックの分布を分析して、訪問者がページをどこまでスクロールしたかを確認できます。
ユーザーがページのあるセクションを完全に無視している場合はそのセクションを削除することを検討しましょう。十分に下までスクロールしていないユーザーが多くいる場合は、勢いを失っている可能性がある理由を掘り下げます。
以下は「Bull and Cleaver」のヒートマップの例です。ここでは、ユーザーがページの下部にあるドライフルーツのコレクションをスキップしており、このページがこれらの商品を販売するのに最適な場所ではないことを示唆しています。
以下のヒートマップデータに対して考えられる対応策は次の通りです。
- ドライフルーツのコレクションを、よりユーザーの期待に沿った別の商品カテゴリに置き換える。
- 訪問者がチェックアウトする準備ができたときに、ドライフルーツのスナックをクロスセルとして提供する。
- ドライフルーツのスナックをより効果的に宣伝するために、ページにより多くの新しいコピーや情報コンテンツを追加する。
eコマースのUXデザインは反復的なプロセスです
ユーザーエクスペリエンスのデザインの仕事に終わりはありません。常にストアの機能を実験し、成果を分析し、微調整や改善を行う必要があります。
場合によっては、変更したものが効果的でなければ元のデザインに戻すこともあるでしょう。また、貴重な成果を発見して、その学びをサイトの別の場所に実装する方法を考えることもあります。
このようなプロセスを通じて、ユーザージャーニーのセグメントや段階全体について多くのことを学ぶことができます。しかし、最終的には、eコマースのUXデザインに投資することで、ショッピングが楽になる方法によって顧客との出会いが訪れます。
eコマースのUXデザインに関するよくある質問
eコマースにおけるUXとは何ですか?
eコマースにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)とは、顧客がオンラインストアとの関わり方を指します。これには、ユーザーがウェブページにアクセスする時に想定されるコンテキスト(背景や状況)から、商品の閲覧方法、チェックアウトの仕方など、あらゆるアクティビティを行う方法すべてが含まれます。
なぜUXデザインがeコマースにとって重要なのですか?
優れたUXデザインはすべてのeコマースビジネスにとって不可欠です。コンバージョン率を向上させ、顧客満足度を高め、ショッピングカートの放棄(カゴ落ち)を減らすのに役立つため、収益に直接影響を与える可能性があります。
eコマースビジネスにおけるUIとUXとは何ですか?
UIはオンラインストアのユーザーインターフェースを指し、ウェブサイトの視覚的およびインタラクティブな要素を含みます。一方、UXはユーザーエクスペリエンスを指し、全体的な体験の質や、顧客が必要な情報を入手したり、商品を購入したり、購入を完了したりすることがどれだけ簡単であるかということを表します。
UXデザイナーとはどのような仕事ですか?
UXデザイナーはウェブサイトのユーザーのニーズを理解し、UIデザイナーや開発者と協力してウェブサイトを使いやすく楽しいものにします。