バーチャルリアリティ(VR)は、従来の映画よりも没入感があり、通常のゲームよりもインタラクティブな体験を楽しめます。それだけでなく、消費者にとっても企業にとっても、その用途はエンターテイメントの領域を超えています。
VRは、2014年にGoogleが発表した段ボール製ヘッドセットから大きく進化しました。この記事では、VRの現状、ビジネスにおける商業的・企業的な利用事例、VRの可能性を紹介します。
VRを徹底解説
バーチャルリアリティ(VR)とは?
バーチャルリアリティ(VR)は、ユーザーが専用のヘッドセットや外部センサー、コントローラーを使用して、周囲を見回したり移動したりといった体験やインタラクションができる、人工的な3D環境です。
VRはゲーム専用ではありません。エンターテインメント、マーケティング、リモート作業、トレーニング、教育など、さまざまな分野で画期的な応用が期待されています。
映画やビデオゲームなど他のメディアとは異なり、VRはウェアラブル機器を使用して、ユーザーを体験に完全に没入させます。VRはゲーム専用ではなく、エンターテインメント、マーケティング、リモート作業、トレーニング、教育など、さまざまな分野で画期的な応用が期待されています。VR技術は今後10年間で大きな成長が見込まれています。
VRの種類
とは言え、すべてのVR体験が同じではありません。スマートフォンで座ったまま体験できるものもあれば、特別なハードウェアと専用の物理空間が必要なものもあります。
VRの種類は、VRの歴史と進化に基づいて4つのカテゴリーに分類できます。
1. 非没入型VR
非没入型VRは、現実の物理的空間から切り離されることなく、バーチャル環境とインタラクションできます。仮想環境内でキャラクターを操作するゲームは、非没入型VRの一例です。
こうしたタイプは一見するとVRのようには思えませんが、非没入型VRは「本当の」VRを理解するための重要な基盤になります。
非没入型VRの例:
- World of Warcraftのような、仮想キャラクターと一緒に仮想世界を探索する、大規模マルチプレイヤーオンラインゲーム
- Microsoft Flight Simulatorのような、実際の体験を模倣するシミュレーター
- Gatherのような、ブラウザ内の仮想オフィスを従業員やイベント参加者が移動してインタラクションできる、ゲームをヒントにしたリモート共同作業ツール
2. セミ没入型VR
セミ没入型VRは、多くの人が想像するVRの最もシンプルな形です。ほとんどの場合、スマートフォンの既存のハードウェアを使って、スマートフォンの動きや方向とユーザーの体験を融合させます。
セミ没入型VRの特徴は、仮想空間内を移動する感覚をシミュレートできる一方で、物理的空間内での移動は体験の一部ではないことです。
Google Cardboardのような低コストのヘッドセットを使うと、スマートフォンがVR対応アプリのディスプレイ兼プロセッサとして機能し、セミ没入型VRの体験がより充実します。
こうした点から、セミ没入型VRは完全没入型VRよりもコンテンツの制作と消費の障壁が低く、マーケティングコンテンツに最適なメディアとなります。
セミ没入型VRの例:
- 旅行、不動産物件、博物館などのバーチャルツアー
- ライブストリーミングされたイベントやコンサート
- 穏やかなビジュアルと音声を使ったVR瞑想アプリ
Volvoは、セミ没入型VRを利用して、車両のバーチャルテスト走行を作成しています。これを体験するのに必要なのはスマートフォンだけです。
3. 完全没入型VR
完全没入型VRは、最も高度なVRの形であり、特別なハードウェアが必要です。完全没入型VRでは、ユーザーはヘッドセットを装着し、内蔵センサーまたは外部センサーが物理空間内での動きを追跡し、リアルな3D体験を提供します。
かつては、完全没入型VRを体験するには、最高級のVRデバイス、コントローラー、高性能のゲーミングPCまたはコンソール、専用カメラが必要で、数十万円の高額な費用がかかりました。それに加えて、ヘッドセットに接続されたケーブルに足を引っ掛けることがあり、没入感が損なわれることもありました。
2020年にMeta Quest(旧Oculus)が発売され、完全没入型VRは大きな変革を迎えました。価格がスマートフォンやタブレットPCと同水準に下がり、接続ケーブルや専用スペースが不要になり、完全没入型VRがより手に入れやすく、しかも持ち運び可能になりました。
その後、手の動きを追跡する機能や、ヘッドセットやコントローラーの振動を利用して仮想オブジェクトや壁との衝突を模倣するハプティックフィードバックなど、さらなる没入感を高める新機能が追加されています。
完全没入型VRの例:
- シューティングゲームのHalf-Life: Alyxや、無料でプレイできるEスポーツのEcho VRのようなVRゲーム
- Meta Horizon Worldsのような、他のユーザーと一緒にゲームや映画鑑賞、バーチャルコンサートへの参加など、ユーザー生成による無限の仮想世界を体験できるVRソーシャルネットワーク
- Meta Horizon Workroomsのような、対面でのオフィス内のやり取りを再現するリモートコラボレーション体験
4. 複合現実型VR
複合現実(MR)は、VRを別の方向に進化させます。ユーザーが仮想世界に入り込むのではなく、ユーザーの周囲の環境に仮想オブジェクトを置くことで、拡張現実(AR)のレイヤーを追加します。
複合現実は、特に未来の商業分野においてさまざまな利用方法が考えられます。仮想の鏡で服や化粧品を試着したり、家具やインテリアをリビングに表示したりすることを想像してみてください。
複合現実の最もシンプルな形は、スマートフォンのブラウザとカメラだけで実現できますが、ヘッドセットやVRメガネの多くは、環境とインタラクションしたり、仮想現実で環境を再現したりすることで体験を向上させています。
複合現実の例:
- Size.Link(Shopifyのアプリ、英語のみ)を使用すると、スマートフォンのカメラを使って、空間内の任意の寸法を視覚化できます
- 製品の高精度な3Dモデルを作成し、スマートフォンカメラを使用して自宅に投影し、「どのくらい大きいのか?」や「既に持っているものと合うのか?」といった購入に関する疑問を解消します
- 物理環境をスキャンし、それをデジタルで再構築してアップロードし、VR内で素早く簡単に編集や変更ができるようにします。以下は、ShopifyのAR/VRチームによる家具ショッピングデモです。
What if you could bring your home shopping?
— Russ Maschmeyer (@StrangeNative) August 16, 2022
Our latest prototype lets you teleport real furniture from the store into a 3D scan of your living room. It's amazing to experience first hand. 🤩 pic.twitter.com/gAPawRXgGB
事業や企業にとってのVRの利点
VRが消費者に浸透するにつれて、事業や企業の利用例も出始めています。これらの利点はすぐには明らかにはならないかもしれませんが、没入感とインタラクティビティを組み合わせたVRの可能性を示す実験やプロトタイプの例が多数存在します。
リスクなしでリアルな従業員トレーニングプログラムを提供
VRは、リスクのある環境や物理的に再現するのが難しい役割の従業員を訓練するために使用できます。すでに、医療専門職がリスクのないVR環境で手術を練習できるプラットフォーム、Ossoが実用化されています。
これまでは教室環境や学習管理システムを使用して教えられてきたソフトスキルの開発も、VRを使用して、よりリアルなインタラクティブな方法で強化できます。
Talespinのようなプラットフォームでは、VRヘッドセットの内蔵マイクを使用することで、パフォーマンス管理からパートナーシップ構築まで、AI駆動の仮想パートナーに対して声で応答するリーダーシップ開発トレーニングを提供しています。
顧客が「試してから購入」しやすくする
VRは、物理的な製品の詳細な仮想モデルをユーザーに提供するのに十分な技術を持っています。これにより、元の製品とほとんど区別がつかない(または2D製品写真からは不可能な特定の疑問に答えるのに十分な)モデルを作成できます。
インテリア業界や家具業界の企業は、VRを使用して顧客の自宅で製品をシミュレートできます。3Dモデルデザイナーを雇って、写真を使って製品の仮想バージョンを作成してもらい、その3Dモデルを再利用、編集、複製して他のバーチャル体験に使用することができます。
ユーザー行動を理解するデータポイントの深掘り
分析は、企業が時間をかけてユーザー体験を改善する方法に大きく影響します。たとえば、ウェブサイトのスクロール深度、特定のボタンのクリック数、ページでの平均滞在時間などを示すヒートマップがあります。
VRでは、目の動きから仮想オブジェクトを拾って調べる方法まで、意思決定を情報提供するためのデータポイントが増えます。
小売業者は、VRを使用してショッピング体験をシミュレートし、ユーザーの行動を追跡できます。たとえば、どこを見ているか、何とインタラクションしているか、何を購入しているかを追跡できます。以下は、ShopifyのAR/VRチームによる、目の動きに基づくVRヒートマップのデモです。
リモートワークのつながりと生産性を向上させる
最近のギャラップ調査によると、リモートで働ける米国の従業員のうち、出社のみで働くことを選んだのはたった2割でした。
リモートワークが一般化する中、リモートコラボレーションも進化する必要があります。ウェブベースのソリューションが一般的ですが、VRソリューションも、会議、ミーティング、チームビルディング活動、さらにはバーチャルオフィスを促進するために登場し始めています。
VRの先駆者であるMetaは、Meta Questヘッドセット向けにHorizon Workroomsを立ち上げました。これにより、物理的な作業空間とカスタマイズ可能なバーチャルオフィスを結びつけることができます。
自分に似たVRアバターを作成し、コンピュータの画面を共有し、プレゼンテーションを行い、異なる大陸のチームと一緒にホワイトボードに書くことができ、Zoom疲れを回避できます。
VRはバーチャル、でもメリットはとてもリアル
VRは、消費者、商業、ビジネスに広く応用され、近年急速に拡大しています。現代の生活はSF小説のように仮想世界の生活からはほど遠いですが、VRはエンターテインメントや現実逃避だとして、その価値を軽視するのは間違いです。
仮想のオブジェクトや環境は現実ではないものの、VRの可能性は確かにリアルです。
VRに関するよくある質問
バーチャルリアリティ(VR)とは何ですか?
バーチャルリアリティ(VR)は、ユーザーがインタラクションできる完全にデジタルな世界です。ユーザーは、特別なヘッドセットとセンサーを通じて、3D環境内を移動しながら体験することができます。このタイプのVRは、ゲームでよく使用され、ユーザーが仮想世界を探索し、内部のオブジェクトとインタラクションを行うことができます。しかし、たとえばトレーニングシミュレーションなどのビジネスアプリケーションにも使用されます。
VRの3つの種類とは?
非没入型VRは、最もシンプルな形のVRで、特別なVRヘッドセットを必要としません。セミ没入型VRは非没入型VRの一歩進んだもので、ユーザーが物理的な動きを制限または追跡せずに実験を制御できます。完全没入型VRは、最も高度なVRの形で、ユーザーは内蔵または外部センサーを搭載したヘッドセットを装着し、物理空間内での動きを追跡し、リアルな3D体験を提供します。
VRのコストは?
VRのコストは、数千円から数十万円までさまざまです。体験の種類や、購入するヘッドセットやアクセサリーの種類によって大きく異なります。完全没入型VRには、HTC ViveやMeta Questなどの高級ヘッドセットとコントローラーが必要で、価格は数万円からスタートします。
良いVRの例は?
VRの良い例は、ゲーム(Half-Life: Alyx)、エンターテインメント(Netflix VR)、ソーシャルネットワーキング(Horizon Worlds)アプリケーションなど、VRの強みが発揮される分野に見られます。