重要なポイント
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お客様の期待値はますます高まっている
スピーディーかつ無料の配送が新しい標準に。しかしサプライチェーンの問題でそれが困難な現状
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消費者の需要に合わせて戦略を転換
レジリエントなブランドは、在庫をより多く確保し、商品調達先を多様化し、返品率を下げ、デジタル化を進めている
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今すぐ適応することは、より強力な物流ネットワーク構築につながる
サプライチェーンの鈍化と一貫性の欠如により、ブランドの将来に対する考え方や成長の仕方が変わる
消費者ニーズはサプライチェーン復旧を待ってはくれない
パンデミックが世界中でサプライチェーンの停滞を引き起こし、多くの企業はまだ行き詰まっていると感じています。貿易ルートが開かれると思った矢先にロシア・ウクライナ戦争が勃発しました。サプライチェーンはかつてなく混雑しています。アンケートを行った900社のグローバルブランドのうち、66%はサプライチェーンの問題が2023年に一層悪化すると予測しています。*
数値の単位はすべて米ドルです
サプライチェーン危機が企業に与える影響
出典: Shopify/Ipsosによるコマーストレンド調査。14か国で900社の中小企業と大企業を対象としたアンケート (2022年8月~9月)
サプライチェーン管理はコマーストレンドのペースについていけていない
ジャストインタイム (JIT) 生産方式は、第二次世界大戦後の経済で、保管費用と無駄を削減する方法としてトヨタが実用化して以来、標準的な手法になりました。JITアプローチは、お客様の需要を満たせるように、その名のとおりジャストインタイムで商品を調達し、生産し、組み立て、出荷することを目標としています。この半世紀にわたり、世界中の企業でJIT方式が導入されています。
その一方でサプライチェーンは複雑さが増し、広い地域に広がって、連続フロー生産の理想をひそかに脅かしています。JITではサプライチェーン内のすべてが中断することなく機能している必要があります。チェーンの輪が増えれば増えるほど破綻が起きる可能性のある場所が増えます。パンデミックはその脆弱性を全面的に露呈しました。グローバルサプライチェーンの混乱は、2019年から2021年にかけて3倍以上に増加し、大半の企業はすぐにそれに対処できませんでした。
パンデミックを乗り越えることだけを願ってサプライチェーンの見直しを図ったブランドもあります。しかし、多くのブランドにとって、パンデミックは破綻の始まりに過ぎませんでした。2021年だけで、この混乱により世界中の企業に平均1億8400万米ドルの損害が発生しました。2022年になってからも、積み出し港では貨物が滞った状態が続きました。新型コロナウイルス感染症対策措置が依然として実施されている中国では、それが特に顕著になっています。また、戦争が始まって以来、無数の商品が、ロシアを通過する通常の列車輸送ルートを避けて、海上輸送へと切り替えて輸送されています。
JITサプライチェーンが現代のコマースの負荷に持ちこたえられないことは不思議ではありません。JIT生産方式は、相互につながる複雑なコマース業界を念頭に開発されたものではないからです。天然資源、空間、資本という、特定の不足に対応するためにある特定の文化によって出された答えだったのです。今日のブランドの大半に昔のトヨタと同じ課題があるわけではありません。かつてのトヨタは十分な空間と天然資源なしに国内市場で苦戦していました。しかし、キャッシュフローを維持したいというトヨタの動機を多くのブランドが共有しており、JITが現代のブランドでうまく機能しない理由はまさにそこにあるのです。
2020年代の複合的危機は、JITサプライチェーンは破綻した際にどれだけ膨大なコストがかかるかを示しました。グローバル展開を進めるShopify Plusマーチャントを対象としたアンケートによると、10社のうちほぼ6社が商品の在庫切れによる売り逃しを報告しています。✝︎評判に傷が付くことは言うまでもなく、23%のマーチャントが報告した顧客関係は取り戻すことがさらに難しいものです。消費者は我慢に嫌気が差しています。ブランドは、コマースの次の時代で成功できるように新たな解決策を見つける必要があります。
将来を見据えた物流ネットワークを築くには
1. 在庫を増やす
在庫の増強はShopify Plusマーチャントがサプライチェーン危機に立ち向かう上で最も一般的な方法です。2022年春にマッキンゼーが調査した10社のうち8社は、すでに2021年に在庫増強に取り組んでいました。世界の大手企業3,000社は、2019年と比較してGDPの1%増しの在庫保有量相当を保持しています。
販売可能な在庫を増やすことで、より簡単にお客様のニーズに応えることはできますが、バランスの問題があります。在庫の確保は過剰在庫を抱えることではありません。保有する在庫の量を少しずつ増やしていくことで (費用、スペース、需要に応じて)、売れない在庫を抱えて資金繰りを圧迫してしまうリスクを低減できます。
また、購入者のほとんどは現在購買力が衰えているので、ブランドは、手元にあるより高額なアイテムの数量に意識を向ける必要があります。2022年の第2四半期には、100ドルを超える価格のアイテムの売上高在庫比率が急上昇したShopifyマーチャントも見られました。おそらく、これは買い物客がインフレ対策としてより安い商品を選んでいるからでしょう。ですから、注意深く在庫を管理することは非常に重要です。
2. 商品調達先を多様化させる
低コスト、高生産性、信頼できる品質は、もはや成功を収めるサプライチェーン構築の中心に据えられる要素ではありません。サプライチェーンはレジリエンスによって優劣が決まることを何千もの会社が苦しい体験から学びました。
Shopify Plusマーチャントの約3分の1が、商品調達先を多様化することでサプライチェーンに緩衝機能を備えようとしています。マーチャントの30%は新規サプライヤーを見つけ、29%は複数のサプライヤーや国から商品を調達するようになりました。
他にも、近場で商品や原材料を調達するという方法があり、これは、2022年にShopifyマーチャントの31%が導入しています。
3. 返品率を減らす
ブランドは、獲得したお客様ごとに平均29ドルの記録的な損失を出しています。これは過去8年間で222%の増加となっています。顧客獲得コストの高さもさることながら、返品がその大きな原因となっています。実店舗で購入した商品の返品がわずか8~10%であるのに対し、オンラインで購入した商品の返品は20~30%に上ります。
返品アイテムが実店舗で再販されるか、配送センターで再梱包されるか、あるいは埋立地に放置されるかにかかわらず、それはビジネスの収益に与えるのと同じくらい現代の消費者にとって重要な問題なのです。返品が少なければ、それだけ満足している購入者が多いことを意味し、輸送や梱包による環境負荷も減り、サプライチェーンの重要側面である在庫管理の負担が軽減されることを意味します。
返品を最小限に抑えるには、お客様がオンラインで見た商品そのものが届くと確信できる必要があります。商品ごとに、詳細な商品説明、カスタマーレビュー、360度ビューを表示することでお客様の期待値を設定し、返品率を減らすことができます。拡張現実を通して商品に命を吹き込むことが、世界中の消費者の間で利用が広まるにつれて、実現可能な選択肢になりつつあります。
臨場感にあふれ、配信者とやり取りができる、ライブストリームショッピングも、お客様には買おうとしている商品がどのようなものか、また、どのように使うのかがよくわかり、大幅に返品率を低下させることができます。
TargetやWalmartのような大手ブランドでは、少額商品に対して返品不要の返金を提供しています。しかし、多くの企業にとって、返金のみのアプローチは採算が合いません。代わりに、Zaraなどの一部のブランドは返品手数料を取り入れるようになっています。
Zaraのイギリス支社は、2022年にヨーロッパの近隣諸国にならい、郵送返品に手数料を加えました。返金時の差引額は1.95ポンド (2.39米ドル) とわずかですが、この傾向は増加すると予測するアナリストもいます。
返品手数料の請求については意見が割れており、返品手数料はブランドロイヤリティにマイナスの影響を与えると危惧する声も聞かれます。しかし、お客様は、実店舗でのアイテム返品が無料という選択肢がある以上、これに賛成するものと考えられます。どちらにしても、返品ポリシーを明白に説明し、常にそれを遵守することは非常に重要です。
4. サプライチェーンをデジタル化する
グローバルサプライチェーンが不安定になればなるほど、ブランドはより迅速な対応が求められます。調査対象のブランドの3分の1がサプライチェーンにおける手動処理のデジタル化を計画していました。スキャンアプリや在庫管理ソフトウェア、また、機械学習と人工知能 (AI) ベースのソリューションを利用してロードプルからダイナミック・リルーティングまでさまざまな処理を行うことになるでしょう。**
より多くのインサイトを得ることは、混乱や需要を予測するのに役立ちます。それにもかかわらず、供給ネットワークの深い階層を可視化している会社はほとんどありません。マッキンゼーによると、AIを有効活用したサプライチェーン管理を早期に導入した会社では、取り組みの遅い競合他社と比較して、物流費用が15%、また在庫レベルが35%、サービスレベルが65%改善しました。
注目のマーチャント
Natural Patchは過剰在庫によってどのようにサプライチェーンの柔軟性を高めているか
オーストラリア企業のNatural Patchは、虫よけ、情緒安定パッチ、睡眠補助の効果を持つ、子どもの衣類に付ける天然素材100%のスティッカーを扱っています。サプライチェーンの苦境が始まった2020年に創業し、以来100%の成長を達成しました。
Natural Patchは、自社商品のメーカーから配送センターへの移送をもっぱら空輸 (最も迅速であるものの最も費用のかさむ輸送手段) に頼っていますが、空輸によってサプライチェーンの課題が回避されることはありませんでした。
Natural Patchは適切なバッファを残しておくことを学びました。同社は、在庫の20%、つまり3か月分の在庫を確保することで、マーケティングプロモーションやブラックフライデー前後の影響による想定外の遅延や需要の急激な高まりに対処しました。
「当社のルールは、在庫切れを起こさないことです」とJankie氏は述べ、「それは商品 [1点] の販促活動を止めることにとどまりません。さまざまなことが狂い、財務が混乱します」と説明しました。
手元に3か月分の在庫を置くことで、商品の生産から入荷までの期間に余裕を持たせ、ピッキング、梱包、出荷の準備ができます。もちろん過剰在庫を抱えることには、在庫でキャッシュフローが滞るなどのリスクがあります。Natural Patchにとって、商品の6か月、また12か月にわたる保有は在庫が「古くなる」ことを意味します。最新の商品やパッケージを販売できるようになるには、現在の在庫品が売り尽くされるまで待たなければなりません。
同社は、ビジネスを運営して2年間で、毎年1SKUから6SKUに増加させ、量ベースでの売上が倍増しました。この成長に弾みをつけ、Shopify Marketsを活用した世界展開が可能になりました。Shopify Marketsでオンラインストアをローカライズし、世界中の買い物客のために関税などの税額を計算しています。同社は信頼性の高い3PLを使用して国内でラストマイル配送を行うことができない限り、新規市場への進出は行いません (信頼性の高い3PLについてはアンケート回答者の62%が見つけるのが難しいと回答しています)。同社は卸売によってそのような国々への対応を行っています。*
Michael Jankie氏 The Natural Patch 創業者2年前なら「すみません、コロナの影響で配送に問題が発生しています」と言って切り抜けられたでしょう。しかし現在は、Amazonプライム会員であればその日のうちに商品が届くことを消費者が知っているため、その言い訳は通用しません。
Shopifyがお手伝いできること
サプライチェーンをShopify APIとオートメーションでデジタル化する
自社で配送する場合でも、フルフィルメントを委託する場合でも、Inventory States APIを利用すれば、より多くの在庫を簡単に管理することができます。Shopifyで在庫管理システムを統合すれば、常に在庫をリアルタイムで表示できます。
また、Shopify Flowを使えば、エンドツーエンドのフルフィルメント処理の管理に伴う手作業を合理化し、減らすことができます。フルフィルメントオートメーションには、下書き配送ラベルの作成、配送方法ごとの注文のタグ付け、予定どおりに配送されなかった注文に対するフォローアップメッセージの送信などがあります。
配送を収益源にする
無料プラットフォームShopify Shippingで経費を減らして利益を増やしましょう。Shopify Shippingのメリットは次のとおりです。
- 大手配送業者の配送ラベルを最優遇料金で提供
- 管理画面に直接統合された事前交渉済みの料金
- すべての対象ラベルで組込型保険を提供
3PLでサプライチェーンをアウトソーシングする
物流をデジタル化し、アウトソーシングしようと考えている企業向けのShopify Fulfillment Network (SFN) は、迅速で信頼のおける配達を提供するソフトウェアベースのソリューションであり、ビジネスの拡大に役立ちます。SFNでは国内のフルフィルメントネットワーク全体のデータを活用して、自動的に購入者の最も近くにある商品を出荷します。また、Shop Promise機能がデフォルトで搭載されいるため、オンラインストアで推定配達所要時間をお客様に伝えることができます。
サプライチェーンのトレンドに関するよくある質問
Shopify Plusで在庫管理とフルフィルメントを自動化することにより、負荷をいかに軽減できるかをご確認ください。
1ステップだけですぐにトレンドサマリーをダウンロードできます
数百万ものShopifyのブランドからのデータを集約したShopify独自のレポートは、今後1年間においてビジネスが成長を促進していくために必要なツールとインサイトを提供します。
2023年コマーストレンド