Shopify Plusで実現する三陽商会のOMO。8つのECサイトを統合し、GMV115%達成

アパレルの製造・販売を手がける三陽商会は、中期経営計画で「EC戦略」を成長戦略の柱の一つとし、ECプラットフォームの整備やブランディング強化、実店舗との相互補完体制(OMO)の確立に注力しています。

そんな同社は、2023年秋にECのプラットフォームを国内ベンダーからShopify Plusへと移行し、大幅リニューアルを実施。自社モールサイトの「SANYO ONLINE STORE」とブランドサイトの「CRESTBRIDGE ONLINE STORE」の2サイトを運用し、以下の成果を出しています。

【Shopify Plus導入による成果 ※前年同期比(リニューアル前との比較)】

  • GMV(流通取引総額)115%
  • 全ECサイトのセッション数120%
  • 利益率の高いプロパー商品の売上120%

今回は、同社事業統轄本部マーケティング&デジタル戦略本部ウェブビジネス部の部長、斉藤裕介氏にShopify Plusへのリプレイスの背景や同社のオンラインサイトの成長戦略、今後の展望についてお話を伺いました。

複数ブランドを抱えるアパレル事業者ならではの課題

三陽商会は戦時中の1943年に東京で設立。1946年に防空暗幕を使った紳士用レインコートに始まり、その後コートの専業メーカーから総合アパレルメーカーとして成長を遂げてきました。

2008年にはオンラインストア「SANYO iStore」をオープン。先進的なEC施策を打ち出していくなかで、以下の3つの課題が浮き彫りになりました。

課題① ECサイトが8つに点在しており、ユーザーとのコミュニケーションやサイト運用が非効率的に。

1つ目の課題は、ECサイトが自社のECモールサイトと各ブランド独自のECサイトで合計8つに分かれていたことです。斉藤氏は当時について、次のように振り返ります。「ユーザーとのタッチポイントが複数存在してしまっていたため、コミュニケーションが取りづらく非効率でした。また、それぞれのブランドサイトにも担当者が必要で、人的リソースやコストの面でも無駄が生じていました。」

課題② 国内ベンダーのプラットフォームでは、ユーザーニーズやトレンドへの対応が限界に。

2つ目の課題は、2015年から利用していた以前のECプラットフォームの拡張性に限界を感じていたことです。「アパレル業界は日々変化する消費者ニーズやトレンドに合わせてサービスを提供していく必要がありますが、機能の拡張性の観点でも、コスト的にも限界がありました。ユーザーからみても使いづらいサイトになっていましたし、ちょっとしたアップデートのハードルも高くなっていました」(斉藤氏)。

課題③ プロパー商品がセール商品に埋もれ、強みである「ものづくり」が訴求できていない。

3つ目の課題は、サイト内でプロパー商品とセール商品をうまく切り分けられなくなっていたことです。「1つの商品ページの中にセール品とプロパー品が混在していることで、いわゆるセール中心のオンラインサイトに見えてしまい、当社の『ものづくり』という強みをユーザーに訴求できていませんでした。プロパー商品の存在感が希薄になってしまっていたので、はっきりと区別した見せ方にする必要がありました」と斉藤氏は振り返ります。

これら3つの課題を解決するために、Shopify Plusへの移築を決断しました。2014年から10年にわたりWebビジネスに携わってきた斉藤氏は、「Shopifyは世界中で使われているプラットフォームで信頼性が高く、国内のベンダーよりも比較的、低コスト・短納期で開発できる点が魅力でした」と語ります。

同社のように複数ブランドを展開し、オンラインサイトを10年以上運営している企業のECサイトリニューアルには、システムを根幹から見直す必要があります。たとえば、決済や在庫の引き当て、出荷指示なども、既存システムとの連携が不十分ではフロントエンドをいくらきれいにしても実装できません。

「このバックエンドとの繋ぎ込みは地味ですが、どうしてもコストがかかってしまう。リニューアルに向けて、通常であればまずEC担当者は社内で決裁を通していく必要がありますが、莫大な予算をいきなり提示すると社内の承認が得られず、プロジェクト自体のスタートが切れません。そのため、フロントエンドの改修コストはできるだけ抑えたいところでした。拡張性が高いShopify Plusなら、コストを抑えつつ導入のハードルも低く、眼に見えるフロントエンドの改修を皮切りに、バックエンドもテコ入れできると考えました」(斉藤氏)。

運用コストが大幅削減、OMOやブランドを意識したECサイトが実現

実際、Shopify Plusを導入した結果、ECサイトの運用コストが大幅に削減できたと斉藤氏。「サイトを統合したことにより、運営担当者を少人数に集約することができ、ECサイト運用が効率化されたことで、コスト削減にもつながりました。また、Shopify Plusはデジタルの知見やスキルが高くない社員でもブランドイメージを保ちながらサイト更新ができ、他部署の社員も必要なデータをすぐに収集できるようになりました。これにより、社内全体のデジタルリテラシー向上にもつながっていると思います」

さらに、Shopify Plusを導入し、ブランドごとのECサイトを統合したことで、送客での相乗効果に加えて、サイト内に新たにアウトレットページを設置、課題であったプロパー商品とセール商品の明確な棲み分けも実現しました。

【Shopify Plus導入による成果 ※前年同期比(リニューアル前比)】

  • GMV(流通取引総額)115%
  • 全ECサイトのセッション数120%
  • 利益率の高いプロパー商品の売上120%

これらの成果を支えたShopify Plusの機能について、詳しく見ていきましょう。

店舗試着を強化「OMO機能」で利用率が従来サービスの5倍に

リプレイスの目玉としたのが「TRY&PICK 」という、ユーザーがオンラインストアで気になった商品を指定の店舗で試着できるという店舗試着サービスの導入でした。

この店舗連携のOMOサービスではオンライン上で試着したい商品を選択する際に、オプションで「コーディネートを提案してほしい」や「商品のケア方法を知りたい」など店頭サービスを事前に選択できる細かい設定も実装しました。

従来の「店舗取り置きサービス」と比較すると利用率が約5倍となり、ECから店舗への送客にも効果を発揮しました。

LP構築アプリ「PageFly」。作成したページ数は1年弱で2000以上

Shopifyの魅力の一つは、Shopify App Storeで8000を超えるアプリの中から自社に合ったものを導入できる拡張性にあります。たとえば、PageFly (ページフライ)は自社のオンラインサイトのテーマに合わせて、さまざまなページを簡単に作成できるShopifyのアプリです。専門的な知識がなくても、簡単にノーコードでLP(ランディングページ)を作成できます。

斉藤氏はそのメリットについて、「Shopifyリニューアル後の約1年間で、作成したページ数は2000ページを超えています。各ブランドサイトを統合し、「SANYO ONLINE STORE」を一つの統合メディアプラットフォームとして、ストア内に各ブランドのページを構築していったのですが、ブランドのトーンに合わせてデザイン設計がしやすく、品質を担保しながらもライトに構築することができました。すべて外注するとその分コストが増えてスケジュールも伸びてしまうという問題がありますが、その点も解消されました」と説明します。

メイン以外のストア構築「リミテッドストア」で地方ファンの期待に応える

Shopify Plusならではの機能「Expansion Store」を活用して、ファミリーセールなど期間限定のセール・イベント専用ストアを追加しました。「リアルな場でのみ開催していたファミリーセールをオンラインでも開催しました。これまでは、どうしても大都市のみでの開催になっていたのですが、オンライン開催にすることで地方のファンのニーズにも応えられるようにしました」(斉藤氏)。

三陽商会 事業統轄本部マーケティング&デジタル戦略本部ウェブビジネス部 部長 斉藤裕介氏

リニューアルは土台に、さらなるOMO体験の実現へ

リプレイス後、順調に成果を出し続けている同社ですが、あくまでも土台ができあがったという状態だと言います。最後に斉藤氏は、Shopify Plusを活用した今後の展望について、次のように語ります。

「今回のリプレイスによるリニューアルはあくまでもスタートラインと考えており、機能面や数字面においてもまだまだ満足していません。今後、次のフェーズに向け、例えば多言語化してインバウンド需要にも対応できるようにしたり、ユーザーがオンラインストアと店舗をもっとストレスなく買い回りができたりする環境を構築していきます。Shopifyへのリプレイスをきっかけに裏側のデータ整備も含めて良い土台づくりができたので、さらに店舗とECをシームレスに連携させていくことにも取り組んでいきたいです」と力を込めました。

業界

アパレル・アクセサリー

ご利用の製品

Shopify Plus