Webサイトを閲覧している時に、コンテンツがなかなか表示されず、「サイトがダウンしている?それともサイトが重いのだろうか?」と思ったことはないでしょうか。もしかすると、それは不安定なコンテンツ配信の影響かもしれません。
CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)は、ウェブコンテンツを効率的に配信するためのサーバーネットワークであり、サイトスピードの改善や安定性の向上に役立ちます。CDNがなければ、Webページの読み込みが非常に遅くなってしまい、ユーザー体験を損なう可能性があります。
本記事では、CDNの仕組みやメリット、導入すべき理由について詳しく解説します。CDNを活用することで、グローバル展開を目指す越境EC事業やマーケティング戦略に不可欠とも言える、インターネットでのユーザー体験の向上やセキュリティの強化が可能となります。
CDNとは
CDNは、地理的に分散された複数のサーバーを相互に接続して、ユーザーがウェブコンテンツを閲覧する際に、居場所の近くのサーバーからデータを届ける仕組みで、コンテンツ配信ネットワークとも呼ばれています。CDNにより、ユーザーが世界中のどこにいても、ネットワークの遅延を減らして、ウェブページやアプリケーションをスムーズに楽しんでもらうことができます。
全世界のユーザーを特定のウェブサイトのひとつのサーバーに集中アクセスさせるのではなく、世界中のサーバーにウェブコンテンツを分散配置することで、ユーザーがいる地域のサーバーからすばやく配信されるようになっています。例えば、欧米諸国にいるユーザーが日本のサイトを訪問する場合、日本のサーバーに直接アクセスするのではなく、自国のCDNにデータを送ることでロード時間を短縮できます。これにより、何百万人ものユーザーが同時にオンラインになっても、ウェブサイトを正常に動作させることが可能になります。
例えば、ファストフードチェーンで考えてみましょう。自宅の近くにマクドナルドがあるにもかかわらず、ビッグマックを買うために県をまたいで遠くの店舗に行ったりはしませんよね。CDNはこのチェーンのあり方に似ています。
CDNの仕組み
CDNは、ウェブコンテンツをより効率的に配信するための仕組みです。例えば、自社のマーケティングキャンペーンが成功してサイトへのアクセスが急増した場合でも、ユーザー体験の質を落とすことなく、大量のトラフィックを処理することができます。
具体的には、オリジンサーバーがドメインに対する最初のリクエストを受け取り、適切なCDNサーバーへリダイレクトします。 その後、CDNサーバーにキャッシュされたコンテンツが、ユーザーに物理的に近いサーバーから配信されます。
オリジンサーバーとは、ウェブサイトの元データ(コンテンツ)が保存されている元サーバーであり、このサーバーにユーザーからの最初のリクエストが送られます。静的ウェブページ(画像、テキスト、コード)、ソフトウェアのダウンロード、リッチメディア(音声や動画)、アプリケーションによって生成される動的コンテンツなどが格納されています。
オリジンサーバーのコンテンツのコピー(キャッシュ)は、世界中のデータセンター内に分散配置されたキャッシュサーバーに保存されます。これらのデータセンターは「PoP(ポイント・オブ・プレゼンス)」と呼ばれており、さまざまな場所に配置されているため、ユーザーは自分がいる地域に一番近いサーバーにアクセスすることになります。PoPは、別名「エッジサーバー」とも呼ばれます。
ユーザーからリクエストされたファイルがCDN上にない場合、該当するデータをオリジンサーバーから取得し、ユーザーに配信します。これにより、その後のユーザーからのリクエストもより迅速に処理されるようになります。また、CDNの管理ソフトウェアはAIや機械学習を活用して、どのコンテンツがリクエストされるかを予測することも可能です。予測を通じて事前にCDNにコンテンツを取得・保存し、オリジンサーバーと常に同期することで、ユーザー体験の向上を実現できます。
CDNを使用しているのは誰か
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CDNは複雑なウェブサイトを海外を含めたさまざまな地域に配信したり、ユーザーのオンライン体験を向上したい企業、ビジネスオーナー、マーケターが使用しています。Webアーキテクチャの一部として導入するのが望ましいでしょう。
CDNは、1990年代後半には大企業のウェブサイトやビジネスアプリケーションでのみ利用されていました。当時は技術が登場したばかりだったこともあり、コストも高く、利用範囲も静的コンテンツの配信に限定されていました。
ここ数十年で状況は大きく改善し、CDNはより一般的になり、導入しやすい環境が整ってきました。コストも下がり、一部のウェブホスティングパッケージとして組み込まれることも増えてきました。今日では、静的コンテンツだけでなく、動的コンテンツも効率的に配信できるようになり、特に広範囲にわたる地域へのリッチメディア配信などにおいて不可欠になっています。
CDNを使用する理由
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CDNを活用することで、インターネットコンテンツの読み込み速度を速めることができるため、ECサイト、SNS、動画コンテンツなどの容量の大きなコンテンツを閲覧する際にもより数多くのユーザーが同時にコンテンツを快適に見ることができます。ローカルネットワークの混雑を軽減し、負荷を分散するために混雑したサーバーのトラフィックをリダイレクトして、単一のサーバー障害による影響を回避できます。エンドユーザーに知られることもありません。
CDNのメリット
1. ユーザー体験とウェブサイトのパフォーマンス向上
ほとんどの企業がCDNを利用している主な理由は、ダウンロードやストリーミングの待ち時間を解消して、顧客満足度とユーザー体験を向上させることです。特に帯域幅の使用率が高い(通信速度が遅くなる)ウェブサイトにおいては重要です。
2. 帯域幅コストと消費の最適化
CDNを通じてコンテンツを配信することで、サーバーのロード時間が短縮され、ローカルネットワークの障害を軽減または解消できます。結果として、帯域幅の使用率を抑えて、より効率的なネットワーク利用が可能になります。
3. 同時接続ユーザー数の増加
各地域のエッジサーバーへ分散することで、単一の大規模な中央集中型システムよりも多くの同時接続ユーザーに対応することができます。
4. ウェブサイトのセキュリティと可用性の向上
サイバー犯罪者が企業のセキュリティに攻撃をしかけたり、不正に侵入しようとする際によく用いられるのが分散型サービス拒否(DDoS)攻撃です。CDNは、アクセスポイントの数を増やすことでDDoS攻撃から企業を守り、より信頼性と可用性の高い(システムがいつでも利用可能な状態)ウェブソリューションを実現します。
また多くのCDNには、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)などのセキュリティ機能のオプションを追加することができます。
5. 地域ごとのアクセスとパフォーマンスを制御可能
特定の地域にコンテンツ配信を集中させたい場合もあるでしょう。オリジンサーバーの代わりに、適切なCDNサーバーを当該地域に配置することで、ウェブのパフォーマンス向上を図ることが可能です。また、CDN管理ソフトウェアにより、需要の急増にも自動的に対応できます。
特定の地域ではアクセスを制限したい場合もあると思いますが、CDNプラットフォームであれば、そのような設定も可能です。
CDNのデメリット
ここまでメリットをご紹介してきましたが、一部の企業にとっては逆の場合もあります。導入を検討するにあたっては、デメリットも確認しておきましょう。
- コスト:本格的なウェブソリューションを運用する場合は、CDNホストの初期費用とデータ転送量に基づく運用コストが発生します。コストが予想以上に膨らむ可能性もあるので、事前に計画しておきましょう。
- 地理的な制約:自社ユーザーがいる地域に、CDNインフラを適切に配置することが重要です。この調整が不十分だと、パフォーマンスとコンテンツの可用性が低下する恐れがあります。企業によっては、複数のCDNを異なる地域に展開した方がよい場合もあります。
- 管理の複雑さ:サードパーティのCDNを使用すると、Webソリューションの展開や管理がより複雑になります。また、サポートの階層が増えるために、システムの問題解決も複雑になる可能性があります。
- 地域ごとの規制:一部の国や地域によっては、特定のCDNがホストするコンテンツへのインターネットアクセスが制限されています。ウェブサイトへのリーチに影響する可能性があります。
オンラインビジネスにCDNが重要である理由
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ビジネスを始めたばかりであれば、CDNは絶対に必要というわけではありませんが、資金に余裕ができてきたり、オンライントラフィックが相当量に達したら、導入を検討したいところです。トラフィック量にもよりますが、一般的にCDNサーバーは、月額数百円〜数千円程度から利用可能です。世界規模のトラフィックを抱える大企業であれば、月額数万円〜数十万円程度でしょう。
オンラインビジネスにおいては、それなりの出費にはなりますが、キャンペーン中にユーザー体験が低下したり、ウェブサイトのコンテンツが正しく読み込まれなかったりした場合のリスクを考えると、導入する価値があるかもしれません。ユーザーが動画の読み込みや視聴などで多くの帯域幅を消費している場合に、パフォーマンスを維持するのに特に有効です。
CDNはウェブコンテンツが意図どおりに機能するための重要な役割を担っています。CDNをうまく活用して、よりよいユーザー体験を提供し、オンラインビジネスを運営・拡大しましょう。
CDNに関するよくある質問
CDNはどんなサービス?
CDNは、世界中に分散され、相互接続されたサーバーのグループであり、ウェブコンテンツをスピーディーかつ円滑に配信します。ドメインに対するリクエストを受け、適切なCDNサーバーに誘導し、キャッシュされたコンテンツをユーザーが使用しているサーバーに配信します。
CDNのメリットとは?
キャッシュされたコンテンツを複数のサーバーから配信できるため、インターネット閲覧において、全体的な帯域幅とコストを削減できることです。これによってユーザー体験が向上し、より多くのユーザーが同時にコンテンツにアクセスできるようになります。
CDNとプロキシの違いは?
CDNは、さまざまなデータセンターで運用されている、世界中に分散した無数のプロキシサーバーのネットワークです。プロキシサーバーは、コンテンツを要求するユーザーの端末とそのリソースを提供するサーバーとの仲介役として機能します。
おすすめのCDNプロバイダーは?
CDNプロバイダーはたくさんありますが、日本の主要なプロバイダーは以下のとおりです。
文:Miyuki Kakuishi