Webサイトの移行は、単なる引っ越しではなく、サイトのパフォーマンス向上やビジネスの成長を支える重要なプロセスです。適切な移行は、検索エンジンのランキング向上やユーザーエクスペリエンスの改善にもつながります。
ここでは、Webサイト移行を成功させるための手順と注意点を、チェックリストとともにご紹介します。
Webサイトの移行とは?

Webサイトの移行とは、Webサイトをあるホスティング環境やプラットフォームから別の環境へ移行するプロセスを指します。移行する際は、Webサイトのファイル、データベース、設定を移動する必要がありますが、サイトの機能、SEO、ユーザーエクスペリエンスへの影響を最小限に抑えることが重要です。
Webサイトの移行には、以下のようなプロセスが含まれます。
- ホストの変更
- ドメインの変更
- コンテンツ管理システム(CMS)の変更
- Webサイトのデザインやテーマの変更(ShopifyのようなオールインワンCMSの場合)
- URL構造の変更(例:HTTPからHTTPSへの移行)
サイトを引越しする理由とタイミング

Webサイトを移行する主な理由は、ビジネス目標の変更やWebサイトを取り巻く環境の変化です。例えば、スモールビジネスが事業拡大を目指し、ブランディングに有効なEコマースプラットフォームへ移行してリニューアルする、新しい機能を活用するために、古いCMSで構築されたWebサイトを最新バージョンへ移行する、などが考えられます。
この場合、サイト移行のタイミングは計画的に決めることができます。
セキュリティの向上も重要な理由の一つです。独自開発されたサイトや、古いテクノロジーを使用して構築されたWebサイトは、サイバー攻撃のリスクにさらされる可能性があります。新たなセキュリティ上の脅威や脆弱性が発見された場合、Webサイトを更新・移行する必要が生じることがあります。
この場合は、緊急性があるため突発的にサイト移行を実施しなければならない可能性があります。
いずれの場合も、Webサイト全体を移行する前に、移行の目的、移行にかけられる予算や人員、ビジネスへの影響を十分に考慮することが求められます。
Webサイト移行の種類

主要なWebサイト移行の種類には、ドメイン移行、リプラットフォーム、ハイブリッド移行の3つがあります。それぞれの違いについて詳しく説明します。
1. ドメイン移行
ドメイン移行とは、Webサイトをあるドメイン名から別のドメイン名へ、またはあるトップレベルドメイン(TLD)から別のTLDへ移動するプロセスを指します。
ドメインを移行する理由には、ブランドにより適したURLにしたい、プロトコル、サブドメイン、ドメイン名、サイト構造の変更など、技術的な要因によって移行が必要になるなどがあります。
2. リプラットフォーム
リプラットフォームとは、Webサイトを現在のプラットフォームやCMSから別のものへ移行するプロセスを指します。例えば、現在のプロバイダーからShopifyへ移行する、または単に最新バージョンのプラットフォームへアップグレードする場合がこれに該当します。
リプラットフォームを行う理由として、現在のプロバイダーに満足していない場合や、ビジネスの成長に伴い、サイトの規模拡大やアクセス増加に対応できるホスティング環境が必要になるケースが挙げられます。
場合によっては、技術的な制約によりデザインやURLの変更が必要になることがあります。
3. ハイブリッド移行
ハイブリッド移行は、ドメイン移行にもリプラットフォームにも明確には分類できない移行を指す総称です。例えば、複数のWebサイトを統合し、単一のプラットフォームに集約するケースがこれに該当します。
複数の変更を同時に行うことでコスト効率良く移行できる場合もありますが、一度に多くの要素を変更すると移行プロセスはその分複雑になり、リスクも高まります。そのため、ハイブリッド移行を実施する際は、十分な計画を立てて進めることが重要です。
Webサイト移行の手順

Webサイト移行の手順は大きくサイト移行の計画・実行・移行後の調整という3つの手順に分けることができます。
それぞれの段階で重要なポイントを押さえながら移行を進めることで、Webサイト移行前・移行中・移行後に発生しうるエラーを防ぎ、移行プロセスをスムーズかつ効率的に進めることができます。以下に、手順ごとのポイントを詳しく解説します。
1. Webサイト移行の計画
Webサイトを移行する前に、移行の範囲と目的を明確に定義し、移行ができるだけスムーズに進むように準備を整えます。関係するチームメンバーとも移行計画を共有しましょう。
移行前に実施すべき重要なタスクとして、以下の4つがあります。
- Webサイト内のコンテンツ一覧の作成:Webサイト内のコンテンツをリスト化しておくことで、万が一移行時にコンテンツが失われてもすばやく特定し、問題を修正できます。
- バックリンクプロファイルの評価:Webサイト全体のバックリンク(被リンク)を把握することで、新しいサイト上で正常に動作するページへリンクをリダイレクトできるようになります。
- アクセシビリティの確認:新しいWebサイトが、障がいのあるユーザーを含むすべての訪問者がアクセスできるものであることを確認します。ウェブアクセシビリティ対応ができていない場合は、政府のアクセシビリティガイドを参考にしましょう。
- 検索エンジンの巡回を制限する:サイト移行が完了する前に、サイトのどの部分へのアクセスを許可・制限するかを指定するrobots.txtファイルを作成して検索エンジンの巡回を拒否し、新しいWebサイトが検索エンジンにインデックスされる(検索できるようになる)のを防ぎましょう。
また、個々に作業する必要のあるURLリダイレクトの設定やブログ投稿や記事の移行も計画に入っているか、しっかりと確認しましょう。
- URLリダイレクトの設定:顧客がお気に入りに保存している可能性のあるページにリダイレクトを設定することで、移行後に顧客がページにアクセスできず離脱してしまうリスクを最小限に抑えることができます。
- ブログ投稿や記事:Shopifyの場合、ブログ記事やコンテンツを移行するためのツールやアプリが用意されています。ただし、埋め込み画像のパスを相対パスに置き換える必要があるため注意が必要です。また、メディアファイルを外部にホスティングする方法もあります。他のプラットフォームでも、それぞれ独自の移行ツールが用意されています。
Webサイト移行による混乱を最小限に抑えるには、アクセスの少ない時間帯やトラフィックが低い時間帯に移行を実施し、移行期間中は新しいコンテンツの公開や新規ページの追加を避けることも大切です。新しいサイトにホームページ準備中ページを作っておくのもよいでしょう。
また、移行前に販促キャンペーンを実施してユーザーに移行の予定を周知すれば、前もって備えてもらうことができます。
2. Webサイト移行の実行
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移行前に新しいサイトの動作をテストする:旧サイトと新サイトのURL、メタデータ、その他の関連情報を比較し、すべてのコンテンツが正しく表示されていることをチェックします。また、リンクや問い合わせフォームなどが正常に動作することも確かめておきましょう。
リンク切れなどの問題は、Google Search Consoleで特定できます。また、新しいサイトを公開する前に、本番環境とほぼ同じステージング環境で潜在的な問題を洗い出し、事前に対処するのも有効です。 - DNS設定を更新する:ドメインを移行する場合、DNS設定を更新し、新しいサーバーと紐づくように設定します。この設定を行うことで、新しいサイトがユーザーに正しく表示され、移行完了後に検索エンジンによる巡回が可能になります。
- リダイレクトを設定する:旧URLから新URLへのリダイレクトを設定します。リダイレクトには301リダイレクト(恒久的なリダイレクト)を使用すると、検索エンジンが新しいURLを正しく認識し、インデックスが更新されます。この手順はSEO対策として特に重要です。
- 外部リンクを更新する:SNSのプロフィール上のリンクなどを新しいURLに更新します。ホスティングプラットフォームによってはこのステップが不要な場合もあります。
3. Webサイト移行後の調整
- robots.txtファイルを更新する:robots.txtファイルを更新し、新しいサイトがクローラー(巡回プログラム)に巡回されるよう設定します。サイトが巡回されることで、リンク切れやエラーレスポンスコード、その他のSEO上の問題が明らかになります。
- トラッキングタグを確認する:ツールがページ訪問を正しくトラッキングできているかをチェックします。ステージング環境から本番環境へ移行する際は、クロールをブロックするBasic認証やインデックス登録を制限するnoindexタグなどの解除を忘れないようにしましょう。
- サイトマップをテストする:Google Search ConsoleでXMLサイトマップ(サイト内のすべてのURLを収めたサイトマップまたはインデックスファイル)をテストし、GoogleやBingなどの検索エンジンが正しく読み取れるようにします。
- Google Search Consoleのアカウントを設定する:新旧両方のドメインでGoogle Search Consoleのアカウントを設定し、アドレス変更ツールで手続きを進めます。これにより、旧ドメインから新ドメインへの移行を検索エンジンに正しく通知できます。
- サイト移行の影響を評価する:GoogleアナリティクスやGoogle Search Consoleといった無料ツールを使用して、ページの読み込み速度やページビュー、ユニークビジター数(一定期間内にサイトを訪れた重複しないユーザーの数)などのトラフィック統計を確認し、移行前の指標と比較します。これにより、新しいサイトの問題を特定し、Webサイト移行の影響を評価できます。
- 内部リンクを更新する:すべてが正常に動作していることを確認したら、未更新のまま残っている内部リンクを最新の情報にします。
Webサイト移行のチェックリスト

Webサイトの移行は、ブランドにとって大きな変革となるプロセスであることは間違いありません。以下のチェックリストを活用し、重要なポイントを確実に押さえておくとよいでしょう。
- 移行の目的と目標が明確になっているか
- ページや画像、ダウンロードコンテンツなどWebサイト内のすべての要素が一覧として整理されているか
- 移行後に比較できるよう、現在のサイト構造、SEOのパフォーマンス、アナリティクスデータが記録されているか
- 移行はトラフィックが少ない時間帯に計画されているか
- Webサイト全体のバックアップが作成されているか
- 新しい要件に合ったホスティング環境が選定されているか
- ドメイン名を変更する場合、ドメイン設定とDNSレコードが適切に管理されているか
- プラットフォームを変更する場合、新しいホスティング環境にCMSがインストール・設定されているか
- 旧URLと新URLを適切に対応させ、変更後のすべてのURLに301リダイレクトが適用されているか
- 入力フォーム、チェックアウト(決済)、検索機能など、サイトの全機能が正常に動作するか
- Google Search Consoleなどのツールを活用し、リンク切れやその他の問題が特定されているか
- すべてのデバイスでサイトが適切に表示・動作するか
- ステージング環境でテストを実施し、潜在的な問題に対応できているか
- 移行を実行し、新しいXMLサイトマップがGoogle Search Consoleにアップロードされているか
- ソーシャルメディアのプロフィールや外部サイトのリンクが、新しいURLに更新されているか
- 移行後のサイトのパフォーマンスを監視するためのツールが設定されているか
このような項目をチェックすることで、移行後のトラブルを最小限に抑え、スムーズな運用へとつなげることができます。
サイト移行時によくある4つのミスとその回避策

1. 移行計画が不十分
移行の計画が適切に立てられていない、または計画がずさんな場合、移行の遅延、サイトの機能停止、データの消失といった問題が発生する可能性があります。
これを防ぐためには、移行の全体像を整理し、移行の目的を明確にする、関係者全員と連携を取る、指標やベンチマークを把握する、移行期限を設定する、コンテンツインベントリを作成するといった準備を行い、ステップごとに具体的なタイムラインを設定することが大切です。
2. 移行後のWebサイトを十分にテストしていない
移行が完了した後、Webサイトのすべてのコンテンツや機能が正しく動作するかをテストすることが不可欠です。具体的には、リンク切れや画像の欠落(すべての画像が正常に表示されるか)など、ユーザーが利用する際に影響する問題がないかを確認する必要があります。
これらを事前にテストせずに移行を完了してしまうと、サイトの信頼性や利便性が損なわれ、顧客が離れてしまうリスクがあります。また、異なるブラウザやデバイスでの動作確認も忘れずに行うことが大切です。
3. 旧URLのリダイレクトや更新をしていない
移行によってURLが変わる場合は、旧URLから新URLへの301リダイレクトを設定することが非常に重要です。ブックマークされている可能性のあるページ、Webサイト内のリンク、他のWebサイトからのリンクには特に注意して設定することが大切です。
旧URLをリダイレクトまたは更新していないと、リンク切れが発生し、検索結果の順位が下がる可能性があります。また、リンク切れに遭遇するとユーザーはサイトを離れてしまうかもしれません。その結果、トラフィックや収益の損失につながる可能性があります。
4. 更新されたサイトマップが検索エンジンに認識されていない
検索エンジンは、新しいページや更新されたページを発見し巡回するために、サイトマップを利用します。サイトマップの更新を怠ると、検索エンジンはサイトの変更を把握できず、新しいページのインデックスが適切に行われない可能性があります。
更新されたサイトマップが確実に認識されるようにするには、必ず上記のサイト移行の手順3に従って作業してください。
Shopifyへ移行するメリット

移行コストや運用コストを抑えスムーズに導入できる移行先のプラットフォームとしておすすめなのがShopifyです。以下のようなメリットがあります。
- 競合よりコストがかからない:ある調査によると、北米の主要なプラットフォームと比較して、Shopifyは総所有コスト(TCO)が最大36%優れていることがわかっています。また、サイトデザインからデータ移行までにかかるコストは、競合他社のほうが平均49%高いという結果も出ています。さらに、運用・サポートコストやプラットフォーム利用料、決済手数料などのEC関連のコストも、競合のほうがShopifyより平均20~30%高いという結果が出ています。
- 短時間で導入できる:ストア開設にかかる時間も、Shopifyでは競合と比べて37%速いというデータもあります。
移行にかかる手間やコストを最小限に抑えながら、効率的にECサイトを運営できるプラットフォームを探しているなら、Shopifyは有力な選択肢のひとつとなるでしょう。
まとめ
Webサイトの移行は、サイトのパフォーマンス向上や目標の達成に向けた重要な戦略ですが、適切な計画と手順を踏まないと、SEO順位の低下やユーザー離脱などのリスクを伴います。
Webサイト移行には、ドメイン移行、リプラットフォーム、ハイブリッド移行の3種類があります。移行を円滑に進めるには、移行前にサイトの全コンテンツを整理し、SEOやバックリンクの影響を考慮した計画を立てることが重要です。また、移行中のテストやリダイレクト設定を適切に行い、移行後もサイトマップの更新やパフォーマンスの監視を継続することが必要です。
Webサイト移行は、ビジネスの成長を支える重要なプロセスです。記事の中に挙げたチェックリストを活用して計画的に移行を行い、Webサイトの魅力をさらに高めましょう。
よくある質問
Webサイトを新しいドメインに移行することは可能?
可能です。この場合、Webサイトのファイル、データベース、ドメイン名を新しいホスティングプラットフォームやドメインへ移行する必要があります。
ホームページ移行費用の概算は?
Webサイトの移行費用は、数万円から数十万円までの範囲で幅があります。サイトの規模や複雑さ、ホスティングプラットフォームやドメインの種類、必要な追加作業の量、サイト所有者のニーズや目標によって異なります。
Webサイト移行が重要な理由は?
Webサイト移行が重要なのは、サイトのパフォーマンス向上、セキュリティ強化、ユーザーエクスペリエンスの改善に役立つからです。移行には、ドメインの変更、サイト構造の更新、コンテンツの調整などが含まれるため、慎重な計画と実施が求められます。
文:Yukari Watanabe