起業したばかりでも既にビジネスを運営していても、組織の使命や価値提案、ターゲットオーディエンス、会社の目標、財務予測を明確にするためのビジネスプランを持っていることでしょう。これは、ビジネスにおける「誰が」「何を」「なぜ」を示すものです。しかし、本当に成功するためには、会社のビジョンをどのように、いつ実行するのかということについて詳細を把握する必要があります。
数年あるいは数十年にわたる会社の方向性を描いた戦略計画を持っているかもしれませんが、真の成功は、日々の業務を最終的な結果に向けて集中させることに依存しています。そのためには業務計画が必要なのです。
業務計画とは?
「オペレーションプラン」、「オペレーション・プランニング」とも呼ばれる業務計画は、チームや個々のメンバーがビジネス目標を達成するために従うべき日々、週次、月次のプロセスを説明する文書です。業務計画は基本的に、”どのように”戦略計画を実現するのかを示す取扱説明書の役割を果たします。
業務計画には通常、以下のものが含まれます。
- 社内のタスクやプロセスを網羅したリスト
- 各従業員および各部門の役割と責任に関する詳細な説明
- 戦略目標を達成するためのタイムライン
業務計画と戦略計画の違い
「戦略計画」と「業務計画」は混同されやすいですが、これらは密に連携して機能し、異なるメリットをもたらします。
- 戦略計画は組織の戦略目標を定義しますが、業務計画はそれらの目標を達成するために何をすべきかを示します。つまり、業務計画を作成するには、まず戦略計画を策定する必要があります。
- 戦略計画は組織全体に関わりますが、業務計画は部門ごとに異なります。部門が異なると、組織の目標を達成するために固有の機能を果たします。例えば、戦略計画が収益を10%増加させることを目指している場合、財務部門の業務計画には利益率の計算が含まれるでしょうが、マーケティング部門はキャンペーンを実行して売上を増やすためのマーケティング資料を作成します。
- 戦略計画は長期的な期間をカバーしますが、業務計画はその戦略を実行するためのアクションを週次、月次、四半期、または年次のタイムラインに沿って詳細化します。例えば、マーケティング部門の計画には、ソーシャルメディアの週次投稿スケジュールや、エンゲージメント指標の月次レビューが含まれるかもしれません。
業務計画のメリット
行動志向の起業家にとって業務計画は、DropboxやGoogle ドライブに埋もれてしまう文書が1つ増えるようで、未来についての無駄な考察のように思えるかもしれません。しかし、これは全体的な計画プロセスへの批判というよりも、計画が芳しくないという兆候です。
スタートアップ企業は、会社の規模の小ささから業務計画は必要ないと考えるかもしれませんが、計画が限定的であることや計画自体がないことを「機敏性」として正当化することもあります。しかし、カリフォルニア大学アーバイン校と提携して設立された独立研究プロジェクトであるUniversity Lab Partnersによると、スタートアップが失敗する最大の理由の1つは業務計画の欠如とされています。
業務計画のメリットには以下のようなものがあります。
- 無駄な努力が減る。業務計画がなければ、ビジネス経営者は主要な関係者との認識を一致させるのに苦労し、日々企業の取り組みを再考して優先順位を見直さなくてはなりません。このプロセスは時間がかかるだけでなく、しばしば一貫性がなく、さらには競合する取り組みに繋がり、貴重なリソースを無駄にし、直線的な道を波打つループ線に変えてしまいます。
- チームワークが向上する。業務計画は、責任を明確にすることでチームワークを改善できます。その結果、各メンバーは自分の役割と期待されることをよりよく理解でき、全員が役割を果たし、すべてが戦略目標に向かって進みます。
- コラボレーションが増える。業務計画は、ビジネスにおける他の領域からの情報のサイロ化(連携が取れずに孤立して、情報共有できていない状態)を特定するのに役立ち、さまざまな部門がより効果的に連携する多様なクロスファンクショナルチーム(CFT)を生み出します。例えば、利益率を増加させるという戦略目標の場合、業務計画はマーケティングチームに最も利益率の高い商品の認知度を高めるように求める場合があります。このような要望により、商品在庫の利益率に関するデータを所有する営業やデータチームとのコラボレーションが生まれます。
- 生産性が向上する。機能的な業務計画は生産性を向上させることができます。従業員は自分が何をすべきかを正確に把握できているため、より速く作業できます。運営および戦略目標に結びつかない日々のタスクは、従業員の手元から外すことができます。
- 期待が明確になる。Gallup社のある研究によれば、期待の明確さは従業員の最も基本的なニーズの1つであり、パフォーマンスを生み出すことにおいて不可欠です。一方、Gallup社の別の調査によると、従業員の約半数が自分に期待されていることを理解できていないことが分かっています。よく練られた業務計画は、達成可能な目標と現実的な期待を文書化します。
業務計画を作成するには、まず戦略計画が必要であり、組織の目標とタイムラインを特定します。業務計画におけるあらゆるプロジェクトやタスクは、戦略計画の「なぜ」に結びついているのです。
例えば、戦略目標が2年で年収を40%増加させることであれば、それを達成するために業務計画の要素として多くのプロジェクトが考えられます。では、どのプロジェクトを進めるのかはどうやって決めるのでしょうか。
- データを見ましょう。最大の機会はどこにありますか?
- チームに相談しましょう。販売に関して最も多くの反対意見を生み出す理由や、カスタマーサポートに対して最も頭を悩ませる理由はどれですか?
- 業界の情報を読みましょう。業界に特化した調査は、企業はどこで最も多くの利益を逃していると示唆していますか?例えば、eコマースのショッピングカートの70%近くが放棄(カゴ落ち)されており、放棄されたカートに関するメールの開封率とクリックスルー率は驚異的です。
会社の目標を達成するために、次のような多様なプロジェクトを特定できます。
- SNSマーケティングキャンペーンの実施
- ダウンロード可能なアセットを公開してメルマガへの登録の促進
- 既存顧客向けに友達紹介プログラムの実施
- 業界の展示会に参加
戦略目標に与える影響に基づいてプロジェクトの優先順位を決定し、チームメンバーに責任を割り当ててプロジェクト計画を実行可能な日々のタスクに分解します。
この段階で必要なリソースを特定して、仕事を完了するために必要となるものを従業員に尋ねます。例えば、SNSキャンペーンを実行する担当者なら、事前に投稿をスケジューリングするための自動化プラットフォームや、投稿のエンゲージメントに関する統計を分析するためのツールが必要となるかもしれません。
望ましい成果を個々のタスクに分けて締切を設定します。例えば、SNSキャンペーンを作成するためにタスクを分解した場合は、次のようなものになります。
- 営業ディレクターがプロモーションする商品やサービスを特定する。
- 会計士がキャンペーンの運営予算を提供する。
- マーケティングディレクターがメッセージングのガイドラインを確立するためのクリエイティブブリーフを作成し、クリエイティブアセットを実行するチームメンバーを割り当てる。
- コピーライターがエンゲージメントをテストするために3つのバージョンでコピーを準備する。
- グラフィックデザイナーがキャンペーン用のグラフィックアセットを作成する。
小規模ビジネスの経営者は、これらの役割と責任のすべてを担うことがあります。また、従業員が数人しかいない場合は、一人が複数の機能を担当することもあります。重要なのは、タスクを分解して割り当てることです。
現実的な締切を設定する際には、特に一人の従業員が複数のプロジェクトや同じプロジェクトの複数の部分に取り組んでいる場合、従業員の意見を聞くことが役立ちます。ただし、従業員にあまりにも多くの時間を与えないように注意してください。人々は締切まで時間に余裕があると先延ばしにする傾向があり、パーキンソンの法則は「完了までに使える時間を埋めるために仕事は膨張する」と示唆しています。
締切を守ることができないこともあります。しかし、「締切があること」は、タスクが時間通りに終了しないということがすぐに分かるため、問題を解決してより大きなプロジェクトを軌道に戻すことができるということを意味します。タスクに締切を設定したプロジェクトは、堅実な業務計画があるということを示すよい兆候なのです。
業務計画が機能しているかどうかを知るには?
業務計画が整ったら、取り組みによる影響をより詳細に把握する必要があります。これを行うための方法は次の2つがあります。
主要業績評価指標(KPI)
主要業績評価指標(KPI)は、企業が戦略計画と業務計画プロセスで特定された短期および長期の目標をどれだけ効果的に達成しているかを示す計測が可能な値です。
例えば、顧客ベースを拡大することが戦略目標であり、業務計画に週次のメールマーケティングキャンペーンを実行することが含まれている場合、成功を計測するためのいくつかの主要な指標は以下の通りです。
- メール開封率:主に件名の強さを反映します。
- クリックスルー率:キャッチコピーとオファーの効果を評価します。
- ランディングページのコンバージョン率:ランディングページの関連性を計測します。
目標と主要な成果(OKR)
目標と主要な成果(OKR)のモデルは、業務計画のパフォーマンスを計測について、もう少し広範な視野を持っています。つまり、OKRフレームワークには、業務計画を評価するために使用する計測値を特定するだけでなく、具体的な目標と、その目標が達成されたかどうかを判断するためのマイルストーンの両方が含まれています。
例えば、営業部門は顧客の離脱率を10%に減少させるというOKRを設定するかもしれません。この例では、顧客の離脱率を減少させることが目標で、10%が主要な成果です。OKRには実際にはKPIが含まれていることに注意しましょう。この場合、顧客の離脱率は、一定の期間内にサブスクリプションをキャンセルした顧客の割合という計測が可能な値です。
会社全体、部門ごと、個人のOKRをすべて相互に連携させることができ、従業員の仕事を大局的な目標に結びつけるのに役立ちます。
業務計画を洗練させる
最後に、プロジェクトが完了するか月末になったら、業務計画を見直すためのポストモーテムミーティング(事後会議)を設定します。会議では、プロジェクトの要約を振り返り、結果を確認し、何がうまくいって何がうまくいかなかったのかを特定します。
この演習を文書化すると、会社の目標を達成するための効果的な方法や改善点を特定できます。引き受けすぎてしまったのでしょうか。日常業務が十分に明確にされていなかったのでしょうか。必要なリソースが欠けていたのでしょうか。品質基準が高すぎたり低すぎたりしたのでしょうか?
これらの情報は、次回より適切な業務計画を立てるのに役立ちます。これにより業務計画のプロセスが効率化する可能性もあります。プロセスに慣れてしまえば、数日かかっていた作業も数時間で済むようになるかもしれません。
最終的に、詳細にわたる業務計画は、誰もが恐れることのないプロセスを生み出し、全員を一致団結させ、会社の目標を達成するための最善の機会につながるのです。
イラスト:Sjoerd van Leeuwen
業務計画に関するよくある質問
業務計画の目的は何ですか?
業務計画は、ビジネス目標を達成するために、各貢献者や部門が日々、週次、または月次で従うべき具体的なプロセスとアクションを特定します。
優れた業務計画とは何ですか?
最適な業務計画には、組織の目標を達成するために必要な日々の活動の具体的かつ詳細な説明と、それらの活動の成功を計測するための明確に定義された指標が含まれます。
業務計画はどのように構成しますか?
- 会社の目標を特定します。
- それらの目標を達成するために必要な日々の主要活動を明確にします。
- 各チームメンバーの責任を明確にし、概要を説明します。
- チームが直面する課題に関して主な想定をリストアップします。
- 日々、週次、月次ごとに成功を計測する方法を決定します。